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Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー

2022-05-28 | 映画(ら行)

◼️「ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー/Rebel In The Rye」(2017年・アメリカ)

監督=ダニー・ストロング
主演=ニコラス・ホルト ケヴィン・スペイシー ゾーイ・ドゥイッチ ホープ・デイヴィス

作家志望だった若き日から、成功を収めた後隠遁生活に入るまで。J・D・サリンジャーの半生を描いた伝記映画。僕は熱心な文学青年でなかったからサリンジャーは「ナインストーリーズ」をつまみ食いした程度。作家自身についてあまりに知らなかったので、脚色も主観も誇張もあるだろうけど、こういう触れ方もいいかなとこの映画「ライ麦畑の反逆児」に手を出した。

確かに反逆児。表現を学ぶために大学で講義を受けながらも、教授の指導に対していちいち皮肉を返す。憧れだったニューヨーカー誌から掲載のラブコールがあったのに原稿の修正を拒否。文壇や業界、世間に媚びない彼の姿勢は、文学に対するひたむきな気持ち故なんだけど、他人の考えや意見に理解を示そうとしないので、一般から見ればやはり反抗的に映るのだろう。そして最後は世間からも背を向けてしまう。

第二次世界大戦に従軍し、戦場の悲惨な光景や経験から、一時は作品を書く気力を失ってしまう。このPTSDの描写は生々しく、「帰還兵なら誰にでもあること」と医師にも突き放され、一人苦しむ姿はなんとも痛々しい。

大学の恩師の支えとアドバイスもあって、その後のサリンジャーは「ライ麦畑でつかまえて」で成功を収める。しかし、多くの読者の共感を呼ぶ成功が、彼の日常をこの上なく不安に陥いるきっかけにもなった。世界中から届くファンレターを読まなくなったのはこうした原因があったのだ。ジョン・レノンを殺害したマーク・チャップマンが「ライ麦…」を持っていたことも知られている。フランソワ・オゾンのある映画で、このことを例に挙げて文学の無力さを説く人物が出てくる。影響力の怖さはあるけれど、文学は決して無力ではない。一部の人々に過激な影響になったかもしれないが、多くの人には支えになったのは間違いないのだから。

マイ・ニューヨーク・ダイアリー」と合わせて観ると、何故サリンジャーが人を避けるようになって、老舗出版社が彼を守ろうとしていたのか、背景を理解するのにきっとこの映画は役立つ。恩師役ケビン・スペイシー、ルーシー・ボーイントンも印象的な好助演。



コメント (2)
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ライトスタッフ

2022-05-07 | 映画(ら行)

◼️「ライトスタッフ/The Right Stuff」(1983年・アメリカ)

監督=フィリップ・カウフマン
主演=サム・シェパード スコット・グレン フレッド・ウォード エド・ハリス デニス・クエイド

宇宙開発競争で米ソが火花を散らしていた1950年代、アメリカのマーキュリー計画の舞台裏を描いた大作。80年代育ちとしては観ておくべき作品だと思うのだが、今回が初鑑賞。屈強な野郎ばっかりの映画だもの、当時の僕はそこで敬遠したんだろな(恥)。

ソビエトに先を越されてばかりの宇宙開発に、焦り始めたアメリカは有人宇宙飛行を実現させるべく、プロジェクトに参加する宇宙飛行士を集める。音速の壁に挑み続けてきたテストパイロットから志願者を募る。選ばれた7人は、困難な任務に挑むと決まっただけでまだ何もやってないのに英雄視される。その一方で開発者たちは彼らを宇宙船を操縦する役割だとは思っていない。そのギャップは次第に埋まり、計画の裏側で男たちが思い悩みつつもタフに向き合う様子が感動的だ。

シリアスな場面も多い中、散りばめられたユーモラスな場面が楽しい。初めての有人飛行の発射前に、尿意を堪えるパイロットに管制室は我慢しろと言い続けるのだが、そこにはウォーターサーバーで水を汲んだり、コーヒーをすする職員の姿が重なる編集のセンス。メキシコ人をからかうコメディアンを真似るパイロットの一人が、メキシコ人のスタッフから逆襲される場面も面白い。

「スペース・カウボーイ」でクリント・イーストウッドが「グレン議員も飛んだゼ」と高齢の自分たちが認められないことに反論する場面がある。「ライトスタッフ」でエド・ハリスが演じたのが、マーキュリー計画の一員で、後に77歳でスペースシャトルに搭乗する若き日のジョン・グレン。

ところで、この映画が製作されたのは冷戦真っ只中の1980年代。「ライトスタッフ」の後数年間には、名だたる反ソビエト的な作品が登場する。同じ年には防衛システムが少年にハッキングされる「ウォー・ゲーム」、翌年はソビエトがアメリカ本土に攻めてくる「若き勇者たち」、その翌年が少年がミグを撃ち落とす「アイアンイーグル」、ボクシングの米ソ対決「ロッキー4」。そして「トップガン」と続く。「ライトスタッフ」では、ロケットの炎を向こうで高笑いをするソビエト人がなんとも不気味な印象で映される。これも時代か。

ラストのイェーガーの勇姿。一事を貫く男のカッコよさにシビれる。







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レディ・バード

2022-01-28 | 映画(ら行)

◼️「レディ・バード/Lady Bird」(2017年・アメリカ)

監督=グレタ・ガーヴィク
主演=シアーシャ・ローナン ローリー・メトカーフ トレイシー・レッツ ルーカス・ヘッジス

もし僕が女子だったら、素直に観られないのを承知で、20歳前にこの映画に出会いたかった。おかしな事を言う、と思うかもしれないけれど。

この映画、「男にゃわからん」めいた感想をやたらと見かける。確かにこの映画に詰め込まれた、18歳女子が感じていることのいろんな感情や機微やニュアンスは、男子には理解できないだろう。親との関係については、個人的にはところどころ自分を重ねてしまうところがある。この映画で男子なりに感じた共感もあるけれど、「男にゃわからん」と言い放たれると、正直ちょっと悔しいww。

映画友達の女性に「これも観ないでシアーシャ好きとか名乗るのは、ちゃんちゃらおかしい」と言われたことがある。まだ観終わったとは伝えてないけれど、もし伝えたら「そう、観たの。でもわっかんないでしょ。男だもんねー」と言われそうな気もしている(笑)。多分彼女はそんな事言わないだろうけど、もし言われたらマジで悔しい。

でもね。優等生でもなく、変にトガってもないフツーと呼べる高校生の不器用でカッコ悪い日常は、十分に共感できる。あの年頃特有の、親の干渉や自分の住んでる場所をウザったく感じてしまうこと、素直に相談できずに怒らせてしまうこと。僕自身もあれこれ経験あるだけに、結構グサグサ刺さるところがある映画だった。お母さんごめんなさいと何度も思いながら観ていたw。

実は、シアーシャ・ローナンの「ブルックリン」は、大好きで映画館でリピート鑑賞したのだけど、今でもレビューが書けずにいる。社会人デビュー物語の映画は、イケてなかった当時の自分やいろんなことを思い出して何も書けなくなってしまうのだ。「レディ・バード」のエンドクレジット眺めながら似たような気持ちになったけど、少しは気持ちの整理ができたのか、この程度の駄文は書けている。

結局、自分は自分でしかない。自分でつけたレディ・バードでなく、クリスティンと名乗る"等身大の自分"を受け入れる姿は、胸に迫るものがあった。それは男子も女子もない気持ちだろ。80年代育ちの僕には、青春映画「ブライトライツ、ビッグシティ 再会の街」のラストで、マイケル・J・フォックスがそれまでの自分を顧みる場面にどこか重なって見える気もする。





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ライフ・オン・ザ・ロングボード 2nd Wave

2022-01-19 | 映画(ら行)





◼️「ライフ・オン・ザ・ロングボード 2nd Wave」(2018年・日本)

監督=喜多一郎
主演=吉沢悠 馬場ふみか 香里奈 泉谷しげる

前作「ライフ・オン・ザ・ロングボード」は、中高年男の再挑戦を描いた素敵な映画だった。続編となるこの「2nd Wave」は、サーフィンしか頭にない青年の物語。映画序盤からいきなり彼は見事に波を乗りこなす。「海猿」みたいに、最初からデキるヤツがなんだかんだでチヤホヤされるタイプの映画なんじゃないの?。その先入観は見事に打ち砕かれた。

陸に上がった彼はダメ男。挨拶もできなければ、種子島で暮らす為の仕事を紹介されても、まともにこなすこともできない。サーフィンの恩師の娘からは冷たくあしらわれる始末だ。そんな彼が、病院の仕事で知り合ったお年寄りたちに尋ねられ、サーフィンの魅力を語る。地球に抱かれているみたいだ、生きているって実感する、と彼は言う。お年寄りとの関わりを通じて、彼が人間関係の大切さに気づき、行動が変わっていく。

前作同様、僕は素直に感動した。ベタな話だと言う人もいるかもしれない。でもダメ男が変わっていく成長物語は、古今東西そんなに本質が変わるもんじゃない。ベタだと感じるのは、死んだ父の思い、お年寄りや家族の再会のエピソードが絡むのを、きっとこそばゆく感じてしまうから。人が変われるのは誰かがいるから。それを素直に受け止めて観て欲しい映画だ。

傍目から見たサーフィンのカッコよさを写した映画はいくらでもある。でもサーファーが肌で感じている面白さ、楽しさ、夢中になる気持ち、うまく波に乗れて技が決まった瞬間のエクスタシーを真正面から捉えた成功作って実はあまりないと思うのだ。「ビッグ・ウェンズデー」以外の最近の作品なら、キャスリン・ビグロー監督の「ハート・ブルー」がサーフィンとスカイダイビングの魅力にちゃんと触れている稀な映画かな。特に邦画ではなかなかない。だけど本作はまさにその一つ。

種子島の美しいビーチの風景が気持ちを盛り上げてくれるだけじゃない。水面スレスレから波を撮ったサーファー目線の映像。さらに上空からの目線で、乗りこなす波の高さを、そして広がる海原と次々に迫ってくる波を捉える。その視点があってこそ、地球に抱かれる感覚という言葉が活きているように思えた。そして前作以上に、種子島の暮らしが描かれているのも素敵なこと。

夢中になれることがある素晴らしさと、人生の波を感じること、それに乗り遅れないこと。タイトルの意味がじんわりと心にしみる映画だった。





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ラストナイト・イン・ソーホー

2021-12-21 | 映画(ら行)


◼️「ラストナイト・イン・ソーホー/Last Night In Soho」(2021年・イギリス)

監督=エドガー・ライト
主演=トーマシン・マッケンジー アニャ・テイラー・ジョイ マット・スミス ダイアナ・リグ

「ベイビー・ドライバー」のエドガー・ライト監督の新作は、60年代ロンドンと現代を行き来するスリラー映画。「ティファニーで朝食を」のポスターが貼られた部屋、レノン=マッカートニー作の「明日なき世界」が流れる冒頭から心掴まれて、ホラーぽい映画苦手なくせに、もうワクワクが止まらない。本筋のネタバレ防止と、気づいたことの備忘録として、筋に関係ないことを好きに語らせてもらいますww。

もう一つの舞台となる60年代ロンドンを示すために、ヒロインが好む当時の楽曲が効果的に引用されているのがなんとも素敵。鏡を通じてシンクロするもう一人のヒロイン、サンディがオーディションで歌うのが、ペトラ・クラークの代表作Downtown。80年代にジョージ・ハリスンがカバーしたI've Got My Mind Set On Youに、ウォーカーブラザーズの「ダンス天国」。

泣きのバラードYou're My Worldのイントロのキーッ、キーッって高音のストリングスを、まるで「サイコ」の劇伴のように使う発想。やるじゃん!映画後半では、血まみれ刃物に瞳が映る演出が怖くって、イタリアの残酷映画テイストだなーと思ってたら、劇中出てくる店の名前が「インフェルノ」。ダリオ・アルジェントのホラー映画(音楽担当キース・エマーソン)へのオマージュなんですと!すげえ趣味の振り幅。エドガー・ライト、すげえな。

そしてテレンス・スタンプがカウンターで演奏の真似をしながら、「君の名を冠した曲だ!」と紹介するのがEloise。「ベイビードライバー」でヒロインの名前の曲があるだのないだの言う場面が思い出されて、映画館の暗闇で「またかい!」とツッコミ入れながら思わずニヤリ。

ストーリーや映像でもワクワクが止まらない。カフェドパリでのダンスシーンは、エロイーズとサンディが入れ替わるコンビネーションがあまりに見事。観客のミスリードを誘いながらも、決して情報量が少ない訳じゃない脚本と映像。これが遺作となったダイアナ・リグの存在感。2時間たっぷりワクワク、ハラハラ、喜ばせたり、怖がらせたりした後で、この映画は僕らにエールを送ってくれる。過去に憧れるのは勝手だが、決していいことばかりではない。過去から学んで前を見ろ、と。ラストシーンの彼女(たち)が眩しかった。

英国ワーキングタイトル社の映画、やっぱり好きだな。



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リスペクト

2021-11-13 | 映画(ら行)


◼️「リスペクト/Respect」(2021年・アメリカ)

監督=リエスル・トミー
主演=ジェニファー・ハドソン フォレスト・ウィティカー マーロン・ウェイアンズ オードラ・マクドナルド

音楽もの伝記映画が次々に製作されている。本人になりきった演技はもちろんだが、歌や演奏も聴かせなければいけない。ましてや数々の偉業をなし遂げたアーティストだけに、観客は思い入れがあるから中途半端なことはできない。主役は、デビュー作「ドリームガールズ」で歌唱力とビヨンセを喰らう名演技を見せたジェニファー・ハドソン。これ以上のキャスティングがあろうか。彼女なしにこの企画は実現し得なかっただろう。

映画「リスペクト」はクィーン・オブ・ソウル、アレサ・フランクリンの生涯を描いた力作。幼い頃から父親の教会で歌っていたアレサ。私生活でのトラブル、公民権運動、マネージャー男性との紆余曲折、様々な困難を経て、再び自分のルーツであるゴスペルを歌う1972年のチャーチコンサートに至るまでを描いたものである。

僕が初めてアレサ・フランクリンが歌う姿を見たのは、忘れもしない「ブルース・ブラザース」のThink。フリ〜ダム♪と歌うパワフルな姿だ。代表曲はなんとなくどこかで聴いたことがあるレベルで、80年代育ちなものでユーリズミックスとデュエットした楽曲や、Freeway Of Loveなど当時のヒット曲、映画「コミットメンツ」でカバーされたChain Of Fools、ストーンズのJumpin' Jack Flashのカバー(めちゃくちゃ好き♡)あたりを知っている。だから映画「リスペクト」で語られる時代の活躍は詳しくは知らなかったので、とても興味深かった。

公民権運動の時代だけに、白人と黒人の衝突や無理解は映画以上のものがあったことだろう。そんな中で白人ミュージシャンの演奏をアレサが気に入って受け入れるのは、グッとくる場面の一つ。チャーチコンサートのAmazing Graceの熱唱。そしてエンドクレジットで流れる、ご本人の(You Make Me Feel Like) A Natural Womanに感激。一緒にいるだけで素直な気持ちになれる。そんなパートナーへの気持ちを歌った名曲。世間の困難に向き合う女性の歌もパワフルで素晴らしいけれど、この曲の優しい響きが心に残った。




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レイダース/失われたアーク(聖櫃)

2021-10-06 | 映画(ら行)





◼️「レイダース/失われたアーク(聖櫃)/Raiders Of The Lost Ark」(1981年・アメリカ)

監督=スティーブン・スピルバーグ
主演=ハリソン・フォード カレン・アレン ポール・フリーマン ロナルド・レイシー

お正月映画で記憶に残っているものも数々あるけれど、このシーズンだからこそ狙って公開される大作やシリーズもの映画ってたくさんあった。学校で映画の割引券配ることもあったし、「男はつらいよ」の新作ポスター見て師走を感じていたりもしたっけ。映画ファンを公言した中学3年のお正月映画は、忘れもしない「レイダース/失われたアーク」だった。ハリソン・フォードとカレン・アレンの立ち姿が印象的なポスターを眺めながら、スピルバーグとルーカスのタッグだぞ、面白くないはずがない!と期待しかなかった。地元の映画館にドルビーステレオの音響機器が設置されて、初めて封切られるのが「レイダース」だったこともあり、期待はさらに高まったもんだ。

現在までのシリーズ4作品の中で、最も繰り返し観ているのは圧勝で第1作。ツカミの冒頭から突き抜けた面白さ、ナチスドイツを敵にした分かりやすい善悪の構図、たたみかける危機また危機、アクション、超常現象を描写する特撮。シリーズ第1作は登場人物のキャラクターを紹介するのに時間を割かれがちだけど、マリオンとの関係もインディのヘビ嫌いもストーリーに間をもたせることもなく、無駄がない。スピルバーグの見せ方のうまさが随所に光る。

オープニングで映る山の形がパラマウント映画のトレードマークに似ているとか、壁画に「スターウォーズ」のドロイドが描かれているとか、製作側の小さな悪戯が豊富に盛り込まれているそうで、当時今はなき「ロードショー」誌の紹介記事を隅々まで読んでいたのを思い出す。楽しむのが勝ちの大活劇だけど、大人になって見直すと、考古学の名の下で黄金のお宝を持ち去っていく欧米人に、現地の人はどう思っているのだろう…と心配になる場面もちらほら。

高校時代、自宅で繰り返し観た映画の一つで親父殿に勧めたが、予想外の反応が返ってきた。
「最後の亡霊みたいなのに悪人だけがやられる意味がわからん」
えーと…😓理屈がないとわかんない人だからな。あるがままに受け止めてよぉー、と思ったものである。まあ、「スターウォーズEP4」は、タトウィーン星を出るまでに飽きて投げ出した人なので、最後までよく観た方ではあるのだが。

野球部の応援でレイダースマーチ演奏してたから、同時代的に思い入れがある一作なのである。





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レミニセンス

2021-09-17 | 映画(ら行)


◼️「レミニセンス/Reminiscence」(2021年・アメリカ)

監督=リサ・ジョイ
主演=ヒュー・ジャックマン レベッカ・ファーガソン タンディ・ニュートン クリフ・カーティス

温暖化で海水面が上昇し、多くの陸地が水没。昼間は高温で活動できないので、人類は夜行性になっている…という世界。70年代からダークな未来観のSF映画をあれこれ観て育ったけれど、こういう未来を映画で示されても、なくはないよな、と思ってしまう今日この頃である。

夢に潜入して事件に挑むお話…と聞いていたし、クリストファー・ノーラン弟の製作なので、「インセプション」を期待していた。されど主人公が依頼を受けて事件の為に記憶をのぞき見るのはそれ程長い尺でもなく、彼が執着してしまった女性を他人の記憶の中でただひたすらに追い続ける物語。現実と記憶の映像が入り乱れるのだけど、「TENET」のように時間軸が絡み合うこともなく、「インセプション」のように複雑な多重構造でもない。主人公は危険も冒すけれども、装置を通じて映し出される記憶の映像から真実を見出そうとする物語。

キャッチコピーにある「潜入」めいた話ではない。原題は「回想」の意味だもの。他人の記憶の中を行き来して、バーチャルイメージの中で大活躍めいたことをすると期待してはいけない。見どころはその女性を取り憑かれたように追い続けるヒュー・ジャックマンの狂いっぷり。しかしそれは他人の記憶を再生して見ているだけでしかない切なさ。これは究極のすれ違いラブストーリーだ。

楽しかった記憶にすがって生きたり、装置で追体験を繰り返したりする人間の欲望はよくわかる。この思い出があれば生きていける…って気持ちは誰にでもあること。そこは共感する。「ストレンジ・デイズ」のレイフ・ファインズが、麻薬のように愛の記憶に溺れていたのも思い出させる。人は何かにすがって生きていくもの。

あなたがレベッカ・ファーガソン目当てなら、この映画損はない。



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竜とそばかすの姫

2021-08-01 | 映画(ら行)


◼️「竜とそばかすの姫」(2021年・日本)

監督=細田守
声の出演=中村佳穂 成田凌 染谷将太 玉城ティナ

他の作品でも書いたけれど、細田守監督はファンタジーの世界観を全面に出しつつも現実を忘れない人だ。本作と同じくインターネットの世界とリアルを描いた「サマーウォーズ」が大好き。バーチャル空間でのつながり、おばあちゃんが電話かけまくって「あんたならできる」と励ますつながり、一家がそれぞれの得意で事件に挑むつながり。サイバーゾーンとリアルのネットワークの関係が絶妙だった。

さて「竜とそばかすの姫」もサイバーゾーンとリアルの話。しかし「サマーウォーズ」から10年余りが経ち、インターネットと僕らの関わりも変わってきている。壮大な仮想空間「U」でアバターたちが飛び回る様子は似ているし、映画冒頭から示されるその世界への没入感はワクワクさせてくれる。しかし青春の冒険エンターテイメントだった「サマーウォーズ」と違って、「竜とそばかすの姫」にはちょっとハードな現実が散りばめられている。スクールカースト、言えない気持ち、つながりたい気持ち、逃げ場としてのネット社会、心ない声、独りよがりな正義を振りかざす人々、孤独、虐待、エトセトラ。「おおかみこども」で感じた中途半端なリアル感とは違って、ヒロインすずをとりまく現実のしんどさは僕らも日々感じていることだし、見聞きしていることでもある。それだけに「サマーウォーズ」の爽快感を求めたら、裏切られてしまうだろう。

そう言う面での物足りなさは、ハードで現実的な部分がキーワードとして並べられているにすぎず、ヒロインの成長物語だけを手放しで賛美できないことだろう。クライマックスの展開も、これで解決できるの?本当に大変なのはここからなのでは?すずを助けているつもりの毒舌なやり手の友達も、結局はいちばんすずを型にはめていた訳で、彼女の改心とかないの?Uにアクセスするギアの仕組みや、竜がサイバー空間に屋敷を持てた理由とか、ツッコミどころが多々あって、ちょっとモヤモヤしてしまう。それでもすずの心境の変化と周辺の登場人物に絞って見れば、青春物語としてキュンキュンくる面白さはある。

音楽の良さもこの映画の魅力。観終わって、また聴きたくなる歌声だ。「自分の為に歌っているみたい」というひと言も、ネットで内省的な楽曲が受けている今どきの状況を感じさせる。でもストーリー上ですずが音楽製作する様子がもうちょっと出てこないと、いろいろあって歌えないけど音楽への情熱があることが伝わらない気もする。音楽製作アプリを触ってた少女時代を無言で示すことと、思いついたメロディを記録しなきゃってアプリを操作しようとする短い場面だけではちょっと不親切かも。

全体的には造形の面白さや美しさはあるだけに、ちょっと残念。これまでの細田作品からすると詰め込みすぎな印象が残った。





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リアリティ・バイツ

2021-06-13 | 映画(ら行)






◼️「リアリティ・バイツ/Reality Bites」(1994年・アメリカ)

監督=ベン・スティラー
主演=ウィノナ・ライダー イーサン・ホーク ベン・スティラー

90年代に社会人となった世代をそういうのかよく知らないが、いわゆるジェネレーションXの青春映画。大学を卒業して直面する現実の厳しさ、誰しもが経験あることだろう。特にマスコミ就職志望のウィノナ・ライダーの役柄は、同じ年頃の自分を思い出さずにいられなかった。理想の自分と現実との差異に悩む姿は、X世代でなくとも共感するところだろう。

イーサン・ホークって苦手な男優の一人なのだが、初めて彼をいいじゃん!と思った。どうも「いまを生きる」のお坊ちゃん役が印象強すぎで、こんなワイルドなぶっとい声で歌えるのか。見直したぜ。

80年代育ちの僕にとっては、「セント・エルモズ・ファイヤー」が青春映画のバイブルなのだが、90'sには同じように支持されている映画。世代を超えて共感するポイントも確かにある。けれど、この映画を観た時点の自分から見れば、この物語の結末は
”で、これからあんたたちどうすんの?”
という半ば呆れ気味な老婆心を抱かさずにはいられなかった。もう青春映画観てキャアキャア言える年齢ではないのかな?、と当時思った。だけどこういう迷いの中にいるのが、青春なのかもな、と今思う。

閑話休題。この映画のサントラ盤が大好きで大好きで大好きで。コンピ系サントラの中でも愛聴盤のひとつ。ナックのMy Sharona'94から始まって、レニー・クラビッツ、クラウデッド・ハウス、U2。ビッグ・マウンテンのBaby, I Love Your Wayも心地よい。そしてリサ・ローブのStay (I Miss You) は切なさの極み。



Reality Bites (1994) - Official Trailer




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