忘却への扉

 日記? 気づいたこと 何気ないひとこま 明日への伝言 願い 子供たちに 孫たちに そしてあなたに・・ 

海の見える山から

2009-09-10 | 共に
 今朝はこの秋1番の冷え込みだったが、次第に暖かくなった。正午を伝えるチャイムが鳴ったのを知らずにいた。少し前に姿は見えないままに響いていた草刈り機の音は止んでいて、もうそろそろお昼時かなとは思ったのだがすぐに忘れた。
 「帰るぅ?」の呼びかけに自動車の方へと歩く。久しぶりの青空に白い秋の雲がくっきりと浮かんでいる。標高300m近い果樹園横の農道終点からは、遠くに入江と海も見える。
 あの海は会えなくなった大切な人が暮らした県に通じている。トラックが動き出して景色も変わって行くにつれ気分を変化させる。その海の直線コースにも大切な思い出はある。
 だがもっと新しく大切な人との結びつきの場所となると、長い半島回りの遠い距離を想像する。だったらいつものように自動車で入江の手前で曲がり、トンネルを抜ける海沿いを走る方法を選ぶ。
 山を下って行くと海は見えなくなる。するとまた考えが変わる。山に囲まれたような地形の町だ。向かい側の山の後ろはすぐに海なのだ。ぐるりと回ると遠回りになるが、どうせ想像のこの山越え。
 直線だと大切な人との距離はぐうっと縮まった。このことになぜもっと早く気づけなかったのか。わが家に近い場所からでも想像できる。会えなくなった大切な人を思ってばかりの帰り道に涙を我慢した。