世界雑感☆新しい世界は日本から始まる☆

世界の激動を感じつつ、日本経済への応援メッセージを徒然に綴るページです。
ご訪問ありがとうございます。

【経常黒字&外準潤沢なのになぜ1兆ドル超の対外債務?】中国:過剰投資・過剰生産で陥る苦境④

2018-04-09 00:02:12 | アジア

前回からの続き)

 ご存知のように中国は世界一の外貨準備保有国です(3.06兆ドル:2017/6時点)。そしてドイツに次ぐ2番目の経常黒字国でもあります(1630億ドル:2017年推計値)。他方で中国は、じつは外国から巨額の借り入れを行ったりしています。国家外貨管理局によると、同国の対外債務残高は20179月末時点で1.68兆ドルにもなるそうです。とくに近年は中国企業によるドル建て債の発行が増えており、2016年には1110億ドルと、前年から26%もの増加となっています・・・

 いったいどうしてこんなことになるのでしょう。本来なら中国は、対外収支が黒字なうえにドル等を大量に持っているのだから、外国からおカネを借りたり投資をしてもらう必要がないはずです。実際、同じような状況にある日本は国内で貸し借りができている―――中央政府や地方自治体、民間企業等の多くが国内で資金調達ができている―――わけです。であればかの国だって、国「内」のおカネの余ったところからおカネを必要なところに融通させれば、流出リスク等が想定されるマネーをいちいち国「外」から借りてこなくても十分にやっていけそうに思えますが・・・

 ・・・このあたりは中国の特異な金融事情が大きく影響しています。つまり中国では、実質的には政府管轄下にある銀行が、共産党などの意向を受けて、鉄鋼をはじめとする様々なジャンルの大手国有企業にばかり融資をするのに対し、民間企業等にはおカネをなかなか貸し付けません。よって彼らはやむなく、ノンバンクとか海外の銀行などから高利のマネーを借りてくることになります。いっぽうの国有企業は、けっこう簡単におカネの調達ができるので効率の悪い企業でも資金繰りがついて生き残るし、市場動向とか経営リスクの見極め等も甘くなり、設備等を余計に抱えることになりがちに。こうして中国は上記のような、外準が潤沢なのに対外債務もまた多い、といったミョ~なことになっているわけです・・・

 このへんは先述した鉄鋼産業が典型例でしょう。中国では共産党政府が保有する大手の鉄鋼会社のほか、地方政府系の企業や民間の鉄鋼メーカーが乱立しています。そうなった理由は上記のとおり、投資傾倒型の経済政策とか国有企業優先の融資などのせいでしょう。この歪みを解消するべく、前回書いたように、中国は2年間で1億トンもの鉄鋼生産力を整理等したそうですが、余剰分があと2億トン分もあるもようです。まあ国も民間もこのようにスゴイ勢いで立ち上げちゃったわけですから、これだけ残っているのは不思議ではありません。それでも2億トンって日本2国分に近いスケールですから、これを本当に何事もなくリストラできるのか、非常に疑わしいところです。いくら一党独裁の国でも、相当に揉めそうな気がしますが・・・

(続く)

金融・投資(全般) ブログランキングへ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【中国GDP、投資を下げて個人消費を上げるのは不可能】中国:過剰投資・過剰生産で陥る苦境③

2018-04-07 00:00:35 | アジア

前回からの続き)

 前回綴ったように中国は、異様なほどのスケールで投資に邁進した結果、巨大ゴーストタウンに代表される無茶無益なハコ物を大量に作ってしまったほか、鉄鋼業界などは日本の数倍もの生産能力を有するに至りました

 さすがに中央政府はこうした過剰投資の弊害に気が付き、2014年あたりからその抑制に動いているようで、GDP成長目標を引き下げ、いっぽうで内需型への経済構造改革を進めるとしています。現に2014年の同国GDPに占める投資のシェアは44.8%と、2011年から3%あまり下がりました。鉄鋼設備も2016.17年の2年間で1.1億トン以上を削減し、今年はさらに3千万トン分を減らす予定とのことです。

 とはいっても・・・この改革、そううまくはいかないでしょう。企業リストラは失業者を増やすリスク等が想定されるうえ、中国はこれまで投資(およびこれを実行する国有企業等)におカネを振り向けるばかりで、国民一人ひとりを豊かにするような政策の実行を怠ってきたからです。したがって急に投資や設備を減らしたところで、その穴を埋めるほどに個人消費が盛り上がるとは考えられません・・・

 このあたりの実態も先般ご紹介した無人のマンション群が物語っています。それらの多くは立地等に難があるのはもちろん、周辺住民の大半にとっては価格がそもそも高過ぎるわけです。他方でディベロッパーは当然、採算割れの投げ売りは回避しようとします。こうして、売り手と買い手の間で価格の折り合いがつかず、未成約の物件が積み上がって、結局は「鬼城」があちこちに生まれることに・・・

 中国のGDPに対する個人消費の割合は4割弱(201739.1%)です。4兆元景気対策が実施されていた2010年に記録した過去最低値35.6%からは上がったものの、同年のアメリカ(69.1%)や日本54.6%)などど比べると依然として低いレベルにとどまっています(って、アベノミクス日本の値がじりじり下がっているのも気がかりですが・・・)。この個人消費を増やすのには、投資などと違って、手間も時間もかかります。勤労者の所得をもっと上げなければならないし、年金や医療保険といった社会的安全網の整備も必須でしょう。差別的な戸籍制度の撤廃を含めた各種の格差是正にも早急に取り組まなければなりません。でもこれらは・・・悠久の歴史が証明しているとおり、中国にはまず、できるはずがないわけです・・・(?)

 以上により、中国は消費拡大策を断念し、今後も手っ取り早くGDPの上乗せができる投資主体の経済運営を進めるしかなさそうです(?)。まあ・・・上記の設備削減等のおかげで、昨年は鉄鋼価格が2015年の3倍近くに上がったようですが、冬季の生産抑制策が解除されれば、高値につられてふたたび供給が増え、その価格は下落に向かうのではないでしょうか(?)。かといって投資拡大以外に中国経済をけん引する方策はなさそうだし、よって鉄鋼等の増産は止められず、その過程で余計に作られた分は薄利多売の輸出に回すことになって、アメリカ・・・のドナルド・トランプ大統領をさらに怒らせる、という展開になるような気がしますが・・・(?)

(続く)

金融・投資(全般) ブログランキングへ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【4兆元の景気刺激策で生産過剰・設備過剰に・・・】中国:過剰投資・過剰生産で陥る苦境②

2018-04-05 00:01:00 | アジア

前回からの続き)

 前述のように中国はいま、全世界で1年間に生産される鉄鋼の半分近く(2017年で約45%)を自ら作り、使っていると推定されます。同国のGDPが世界全体の15%ほどであることなどに照らすと、これ相当に過剰な量だといえるでしょう。で、これほどまでに中国が鉄を消費するのは、その異様な経済構造のせいだと指摘することができます。経済活動における「投資」(固定資産投資)のウェートが大きすぎるということです。

 中国のGDPに占める投資の割合は2017年時点で44.4%。これ、おおむね20%前後の先進国(米19.8%、日24.6%)の、ほぼ倍の数字です。同国のこの値は以前から高めでしたが、米リーマン・ショック(2008年)直後の世界経済不況に対処するために打ち出された総額4兆元(当時のレートで約60兆円)といわれる超大型の景気刺激策(2009年~)でいっそう上がりました。2011年には同48%の史上最高値に至るなど、同年前後から2014年にかけて45%以上の高い水準を推移しました。

 これに連動する形で起こったのが世界的な資源バブルです。中国で鉄がこれだけ必要とされるのだから当然、鉄鉱石の値段は跳ね上がるわけです。実際、2008年にトン当たり62ドルだったものが、わずか3年後の2011年には168ドルと2.7倍になりました。これは明らかに上記政策にともなう中国の「爆買い」の影響でしょう。さらに、こうして同国が大量の鉄を使えばエネルギーもそれだけ消費する、となって石油の値段も高騰しました。国際原油価格は20112014年あたりにかけて1バーレル当たり100ドルの大台を上回るレベルで高止まりを続け、この間、円安輸入インフレを待ち望んでいたアベノミクス日本大いに喜ばせた(?)わけです。

 で、この中国の投資ですが、シビアにコスパ評価する民間部門の自律的活動の結果・・・などではなく、国策すなわち共産党政府が主導して実行されたものです。よって、必然的に自分たちの息のかかった国有企業がその実行部隊になることに。こうして、官製巨大投資の骨格作りを担うことになった鉄鋼メーカーは、優先受注とかリベート(?)といった国家の全面的な支援を得て設備増強にのめり込み、過剰な生産能力を持つに至ったわけです。そんなことでもなければ日本の8倍、年間8億トンもの鉄鋼を一国で作れるはずはありませんからね。

 そんな、いかにも計画経済国らしい経緯で投資に邁進したものの・・・あちらこちらで無理無駄が蔓延し、投資効率が上がらなくなってきたようです。中国国内にすでに100か所以上は存在するといわれる無人の大規模マンション群「鬼城」(ゴーストタウン)はその象徴です(なかには100万人規模のものまであるらしい?)。そんなのを荒野の真ん中みたいな、どう見ても今後、多くの人が集まるとは思えないようなところにバンバン建てちゃうところが共産国家らしいといえばそれまでですが・・・

(続く)

金融・投資(全般) ブログランキングへ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【中国、米の鉄鋼関税に報復関税賦課で対抗へ】中国:過剰投資・過剰生産で陥る苦境①

2018-04-03 00:04:34 | アジア

 かの国の苦境がこんなところにも表れている・・・ということなのでしょう・・・

 前稿で綴った、アメリカによる輸入鉄鋼等に対する高率の関税賦課ですが、その最大のターゲットが中国であることは間違いないでしょう。同国は最大かつ断トツの対米貿易黒字の計上国であるわけです(2016年は3470億ドルと、2位日本[689億ドル]5倍)。であれば、アメリカ第一主義を標榜するドナルド・トランプ政権がこれを問題視し、無茶であっても実質的に中国を狙い撃ちにしたような手に打って出るのも、まあ分からなくもない気がします。

 いっぽうの中国にとってはこれ、じつに理不尽な扱いに思えるところでしょう。露骨に保護主義的で世界貿易機関のルールに反している疑いがあるうえ、同じ鉄鋼でも中国製などに限定して関税を課そうというのですからね。そのためなのか2日、同国財務省は、果物や豚肉といったアメリカからの輸入品128項目に関税をかける報復的措置(?)を発動しました。アメリカの上記政策で被る損失を埋め合わせるため、とのことだそうです・・・

 このように、両国間の貿易摩擦は激しさを増し、互いに強硬策を繰り出すという、まさに米中貿易戦争の様相を呈してきました。アメリカとしては相手のこの程度の(?)パンチで引くわけにはいかないでしょうし、中国だって同じでしょう。よって、この先の展開がなかなか読めず、その行方次第では、わが国の国益にも何らかの影響が及びかねない気配ですが・・・

 さて今回、アメリカが「やり玉」に上げたかたちとなった中国・・・の鉄鋼ですが、これ現在の中国経済が抱える深刻な問題を象徴しているといえます。すなわち、過剰投資・過剰生産です・・・

 中国の2017年の鉄鋼生産量は過去最高の約8.3億トンと、全世界合計量のほぼ半分に達しました(49.7%)。2位が日本の1億トン余り(6.2%)に過ぎませんので、この値がいかに突出したものかが分かります。輸出量のほうは7543万トンと、ピーク時(201511240万トン)からは3割以上も減りましたが、逆に残りの7億数千万トンもの鋼材を中国はいま、国内で消費している勘定になります。つまり現在、世界中で作られる鉄鋼の45%ほどを何と!ひとつの国だけで使っていることになります。たしかに同国は国づくりを急ピッチで進めていることになっているわけです・・・が、そのへんを差し引いてもこれ過剰な数字といえるでしょう。中国のGDPはアメリカに次いで2番目の大きさですが、世界GDPに占める割合は15%くらい(2016年)ですからね・・・(データ:鉄鋼統計要覧)

(続く)

金融・投資(全般) ブログランキングへ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【今後の展開は円高株安で決まり(?)ならば対策は・・・】「輸出攻勢は無理筋」に気づくチャンス⑥

2018-04-01 00:01:20 | 日本

前回からの続き)

 先述したようにアベノミクス日本はいま、自分からはまったく動けなくなっています。米トランプ政権が対米貿易黒字の減額を厳しく迫るなか、日銀「異次元緩和」が結果としてもたらした円安環境が輸出支援策として「やり玉」に上げられそう。だからといってこれを縮小し、為替を円高に持っていったら今度は日銀年金基金等が買い漁ったリスク資産に巨額の含み損が発生するうえ、米長期金利が急騰し、ほかならぬアメリカに大ダメージを与えかねません・・・

 といった具合で、わが国は「では、いったいどうしたらいいんだ」的な難しい局面にいるわけです・・・が、この現状、それほど長くは続かないでしょう。こちらの記事に綴った展開にならざるを得ないからです、否応なく・・・。であればわたしたちのスタンスは決定します。すなわち同記事タイトルのとおり―――「リスク投資手仕舞い、『戻り地獄』ダメージを最小化せよ」・・・(?)

(「『輸出攻勢は無理筋』に気づくチャンス」おわり)

金融・投資(全般) ブログランキングへ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする