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「円高」を考える:円高は「悪」なのか?①

2012-06-05 00:01:43 | 日本

 世界経済は、4月のはじめ、今年度予想としてここに記したとおりの展開となりつつあります。

(「2012年度予想『外貨動揺・円独歩高』でどうする日本」)
 ①:http://blog.goo.ne.jp/subaru-leaves05/e/d21e60fe58811b8dcc1c9f8c87dd3225
 ②:http://blog.goo.ne.jp/subaru-leaves05/e/2ad6ecfd4509cb3f01d8de83cb5c42d9
 ③:http://blog.goo.ne.jp/subaru-leaves05/e/2f0836b9f1657e28fac196c88f27ebfc
 ④:http://blog.goo.ne.jp/subaru-leaves05/e/02680f44433f92f02e26c788ab6b62a2

そして現在の為替相場はまさに「円独歩高」の様相といえるでしょう。このため日本政府や日銀などの首脳が会見で「円高が日本経済の最大のリスク」といった趣旨の発言をすることがますます多くなってきました。

 先日も書いたように、マスコミも「超円高」「歴史的な円高」といった表現をさかんに用いながら、円高をネガティブに捉えることが多いように思えます。

 では、円高は本当に悪いことなのか? 私的な結論を先に述べると、

①現状では円高(ドル安)・円安(ドル高)それぞれにメリット・デメリットがあるが、
②一般論としては自国通貨が他国通貨よりも高いほうが有利かつ安全


といったあたりが正解に近いと思っています。

 まず①について具体的に考えて見ましょう。

 言うまでもないことですが、円高のときは石油や天然ガス、小麦などのドル建てで取引される原材料・商品等の価格が円建てでは安くなります(メリット)。一方、円高になると、輸出企業の商品・製品の価格競争力が弱まるため、これら企業の利益や輸出額が減少する傾向となります(デメリット)。

 これに対し、円安のときはこれとは逆の現象が起きます。つまり、輸入原材料の円建て価格が上昇し、それがモノやサービスの価格に転嫁されてコスト高・物価高となります(デメリット)。一方、輸出企業の価格競争力がアップし、これら企業の利益や輸出額が増加します(メリット)。

 以上、当然ながら、円高・円安のいずれにも上記のようなメリット・デメリットがあることが分かります。

 ところで、ここ数年間のドル円の為替レートを見ると、とくに欧米諸国の不動産バブルが崩壊した2007年以降、急速に円高ドル安となってきています。アメリカのサブプライム問題が表面化する直前の2007年春先は1ドル約120円あまりだったものが、2012年の現在は同80円を下回るレベルへと、5年間で約5割もの円高ドル安となりました。

 しかしこれだけの円高になったにもかかわらず、わが国はリーマンショックで世界経済全体が落ち込んだ2008年~2009年にも各年間で約4兆円あまりの貿易黒字額を計上し、東日本大震災前年の2010年には黒字額を同ショック前の水準にほぼ匹敵する年間約8兆円近くまで伸ばしています。さすがに2011年は震災やタイ洪水などの影響で2.5兆円ほどの貿易赤字となり、今年も天然ガス輸入額が大きいことなどから赤字傾向は続いていますが、輸出額のほうは回復方向にあります(3月約6.2兆円、4月約5.6兆円と震災前年の2010年の3,4月とほぼ同じ水準)。

 一般的に通貨高になれば国際市場での価格競争力が落ちて輸出が減るものなのに、わが国の輸出産業には円高のハンディを乗り越える強さがあることがこのようなデータからも推察できます。やはりよく言われるように、メイド・イン・ジャパンの多くには他国製品にはない高い付加価値があるため、たとえ円高になっても世界中から引き合いがあるということなのでしょう。

 こうして見てくると、上記の①に関連して付け加えるとすれば、名目の為替レートが実質的なレート(実質実効為替レートビッグマック指数でみたレートなど)から大きく乖離していなければ、わが国は輸出面・輸入面それぞれで一定のメリットを享受できるため、マクロの観点からみた日本経済の強い基盤は揺るがない、といった解釈もできると思っています(なお、貿易収支はしばらく赤字が続く可能性があるが、徐々に輸出が回復していることや、所得収支[海外投資等から得られる配当等から海外企業等に支払う配当等を差し引いたもの]が毎年10兆円をゆうに超える黒字を安定的に計上し続けていることなどから、経常収支全体では黒字を維持するものとみている)。

 もっともわが国のGDP(国内総生産)に占める輸出の割合は15%程度(2010年)。残りが個人消費(約60%)をはじめとする内需となっていることからも分かるように、わが国はすでに輸出依存国とはいえなくなっています。その意味では、原材料価格の低位安定等を通じて内需拡大にプラス方向に働く円高のほうがメリットは大きいという見方もできるでしょう。

(続く)

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