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ギリシャの破綻が火をつける?金融デリバティブリスク③

2012-06-17 00:01:30 | ヨーロッパ

(前回からの続き)

 2008年のリーマンショックが結局は破綻したリーマンブラザーズ関連のCDSを大量に販売していたAIG(American International Group;米保険会社)に波及したのと同じ構図が、今回のギリシャ危機で再現される可能性が高まっています。つまり、CDS売買に関与した金融機関の連鎖的な経営危機です。

 ギリシャだけにとどまらず、PIIGS諸国債や多くの銀行などに破綻の連鎖が起これば、それらに関連するCDSがもたらす負のインパクトはリーマンショック以上という予測もあるほどです。どうやらこのCDSショックは、単純な国債だけのデフォルトよりも、はるかに大きな打撃を欧米の金融システムに与えそうです。当然ながら、このリスク発生を最も恐れているのがCDS販売者である欧米金融機関でしょう。

 ギリシャの急進左派連合党首は、さらなる損失発生を恐れてギリシャ追加支援をためらうEUサイドのこうした弱みを十分に認識しているはず。だからこそ、緊縮策の放棄(=財政拡大に必要な資金供与の要請)を強気のスタンスで訴えることができるのでしょう。つまり、「ギリシャのデフォルトで本当に奈落のふちに立つのは、ギリシャをデリバティブ(CDS)で弄んだ欧州(の金融機関と、おそらく一部は米国の金融機関)のほうだ。だからわれわれがデフォルト宣言しなくてすむように支援しろ」と。

 本日17日はギリシャ国会議員の再選挙日。はたしてこの再選挙はどんな結末となるのか。かりに緊縮財政派が破れ、脱・緊縮財政派が政権を取ったら、ギリシャ新政権とEUとのデフォルトをめぐる「チキンレース」が始まるでしょう。ギリシャ「緊縮策は放棄だ!」、EU「緊縮策を放棄したら追加支援はしない!」で、妥協したほうが負け・・・。このあたりはおそらくギリシャが追加の緊縮策(約115億ユーロ)をまとめる期限となっている6月末までには結論が出ているでしょう。

 まあどちらが政権を握ろうが(多少の早い遅いの違いはあるでしょうが、)ギリシャが最終的に行き着くところは債務不履行以外にないとみています。いまのギリシャに数十兆円もの巨額債務を返済する能力も意志もないことは誰が見ても明白だからです。むしろ、そうなった場合にCDSをどう扱うのか。いま水面下では各国政府・金融関係者による激しい議論バトルが繰り広げられていることでしょう。

 CDSを含む世界のデリバティブの想定元本合計額は何と約600兆ドル(1ドル80円として約4.8京円)(2010年)だそうです。同年のアメリカのGDP(約13.1兆ドル)の約45倍もの規模に膨れ上がっています。これらのほんの一部がはじけただけで(決済事由が生じただけで)世界の金融市場は大パニックに見舞われるでしょう。有名な投資家バフェット氏はCDSのことを「金融大量破壊兵器」と呼んだそうですが、もしかしたらギリシャの破綻がこの物騒な兵器の起動につながるかもしれません。

(「ギリシャの破綻が火をつける?金融デリバティブリスク」おわり)

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