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「円高」を考える:円高は「悪」なのか?②

2012-06-07 00:00:52 | 日本

(前回からの続き)

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 本稿では、円高は本当に悪いことなのか? という問いに対する、

①現状では円高(ドル安)・円安(ドル高)それぞれにメリット・デメリットがあるが、
②一般論としては自国通貨が他国通貨よりも高いほうが有利かつ安全


という私的見解について論じています。
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 次に上記②について考察してみましょう。

 最近の消費税増税議論に関連して、「財政再建が進まなければ日本売りが始まって国債が暴落し、日本経済が破綻する!」といったセンセーショナルな論調を見かけることがあります(「だから消費税を増税せよ」という論法のようなのですが・・・)。

 後述するように、現状、日本国債が暴落するような事態はまず起こりえないのですが、日本国債の暴落、つまり超円安こそが恐ろしいという認識自体は正しいと思います。他国通貨に対する自国通貨の暴落がハイパー・インフレをもたらしてその国の経済や社会を大混乱に陥れるからです。

 いま、欧州金融危機の影響で世界の金融市場がリスクオフモードとなり、欧米金融機関が新興国から投融資金を本国に戻す動きを活発化させています。そのためブラジルレアル、インドルピー、メキシコペソといった新興国通貨がドルや円などに対してどんどん安くなっています。

 これらの国々ではガソリンや食糧などの価格が高騰し、国民経済や市民生活の安定が脅かされています。なかには自国通貨防衛のためのドル売り為替介入を実行等しているところもあるようですが、手持ちのドルを売り切ったらジ・エンド。自国通貨は大暴落して外貨建ての債務履行が不可能となり、国家は破綻に追い込まれるでしょう。

 そして何といっても注目なのがギリシャの動向です。

 今月17日に国会議員の再選挙が行われる予定ですが、その結果、緊縮財政拒否を主張する政党が政権をとったりしたら、ギリシャは国際社会からの資金供給を断たれてデフォルトに追い込まれ、ユーロ離脱を余儀なくされるかもしれません。そうなれば独自通貨ドラクマ(?)を再流通させるでしょうが、この新ドラクマはユーロに対して70~75%も減価すると見込まれています。それは輸入品の価格がユーロを使っている現在の3倍以上になることを意味します。

 ギリシャは石油、ガスなどのエネルギー資源のほぼ全量、食糧の約60%を海外からの輸入に依存しています。さらに医療品、機械類、ソフトウェア、文房具などもほぼ100%が輸入品。それこそ何から何まで輸入に頼っているような国です。つくづく観光しかない国なんだな、とため息が出てしまうほどです(そんなギリシャですが、不思議なことに、経済協力開発機構[OECD]の原加盟国として「先進国」扱いされています・・・)。

 そんな国がユーロを放棄してドラクマに戻ったら、つまり超通貨安を受け入れたら、市民の日常生活は輸入物品の激しいインフレで破壊されてしまうことくらい、ギリシャ国民なら誰でも見通せることです。だからこそ8割以上もの人々がユーロ圏残留を望んでいるのでしょう(そのためには国際社会との約束を守って緊縮財政を堅持するしかないのですが・・・)。

 こうした例をみれば分かるように、上記②のとおり、真に恐るべきは超通貨安のほうです。インドやギリシャなどの国々は、まさにその超通貨安に転落するかどうかの瀬戸際に立っているといえるでしょう。

 もっともわが国はこれらの諸国が直面している超通貨安がもたらす危機からは一番遠い地点にいます。以前にも書いたように、わが国は世界一の純債権国であるとともに、日本国債は自国通貨の円建てで発行されている(国債償還等のために外貨を調達する必要がない)うえ、国債の90%以上が自国民によって保有されている(海外ヘッジファンド等の売り浴びせ等の影響を受けにくい)ことなどのためです。

(続く)

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