(前回からの続き)
ここ数日だけでも、産油国そしてアメリカに関して、原油やガスの増産につながりそうなニュースが舞い込んでいます。まずはイラン。同国のロウハニ大統領は10日、フゼスタン州で大規模な油田が発見されたことを明らかにしました。イランのメディアによると、新油田の埋蔵量は推計530億バレルで、これが事実なら同国の原油埋蔵量は1.3倍に拡大し、ベネズエラ、サウジアラビアに次ぐ世界第3位になるとのことです。報道によると大統領は「アメリカの経済制裁にもかかわらず巨大油田を見つけることができた、イランは豊かな国であることをアメリカに告げたい」と語ったそうで、このあたり、上記制裁にひるむことなく、今後さらに原油輸出量を増やして米シェールに対抗するぞ、といった強い意志を感じさせます(・・・っても、新原油が市場に出てくるまでには相当な時間がかかりそうですが)。
いっぽうのアメリカは現在、液化天然ガス(LNG)のアジアへの輸出を増やしているところです。日経新聞によれば、同国のLNG輸出量は1~8月に計約2200万トンと前年同期比で6割近くも増えたとのこと。これに貢献したのがアジア諸国だそうで、日本が6割近く増えたほか、シンガポール、タイ、韓国も伸びています。他方、米中貿易戦争の影響で、中国向けは9割も減ったそうですから、いかに他のアジア各国向けが増えたか、というものです。
このアメリカのLNG輸出大幅増の背景には国内の天然ガス需給を引き締めようという狙いがあるようです。昨年の同国の天然ガス生産量は前年比で12%増え、今年も2ケタの増産が見込めそうだとのこと。その主役はシェールガスになりますが、中小業者によるシェア争いが激しく、生産調整が難しいため、輸出増で国内相場を下支えしないと採算を向上できない事情があるそうです・・・
上記イランとアメリカの状況から推測されるのは、原油そしてガス(天然ガス、LNG、シェールガス)ともに今後、世界中でいっそう増産される可能性の方が、資源減少の可能性よりも高く、したがってそれらの需給は緩和に向かい、価格は低下していきそうだ、ということ。であれば、各産油国やエネルギー関連企業そして米シェール会社は安値販売競争というシビアな消耗戦に向かいそうです(?)。そのなかで体力の弱い国や業者が次々と脱落、すなわちデフォルトや事業破綻に追い込まれ、これらの債券価格が暴落(利回りは急騰)そしてデリバティブ決済などが大発生して世界経済に打撃、なかでもQEで復活するはずだった(?)米金融経済に最大の(?)ダメージを与えるように思えてなりません・・・
っても、まあサウジアラビアとかUAEなどのような市場シェアの大きな産油国は何とか生き残っていく?のかもしれませんが、それらオイルダラーのパワーは上記消耗戦で大きく削がれていくでしょう。具体的には、かの国々の王族たちは、もはや「航空ショー」に見せかけた?戦闘機の見本市でドルの札束をばらまくなんてできなくなる、といったことです。最大の得意先の財布のヒモがこうして締まれば、米欧中露の兵器武器メーカー(って、英国とかロシアにとっては唯一のモノづくり産業?)も「商売上がったり」でどんどん干上がっていくような気が・・・?