(前回からの続き)
中国の新興国支援ローン等の拙さ(失礼!)などに関連して思うところを綴ってきましたが、では中国はどうすればこの手の戦略をスマートにできるのか、について以下、考えることを書いてみましょう。
アフリカや太平洋島嶼国のような、支払い能力が高いとは言えない国々に対しては、いっそ割り切って返済義務を負わせない無償資金協力を増やす(グラント・エレメント[grant element]を高める)のがよろしいのではないか。これらで必要最小限のインフラ建設や、教育や医療などの制度改善を進めてもらうというものです。これグラント(贈与)だから受け入れ国側には大いに感謝され、そのお礼に国際政治の様々な舞台において自国を支持してもらえる可能性が高まるし、実際に事業を行うコンサルタントとか建設業者は自国企業のなかから選べるので、これらの育成や発展にもつながります。
他方、大型のプロジェクトは・・・民間企業主導で進めるべきでしょう。各社は株主の目があるため、費用便益分析の結果、採算が見込めるものだけを進め、そうでないものにはおカネを出しません。そうした当然の企業行動原理が結局は意義のあるプロジェクトだけを推進させるとともに、貸し手側における不良債権の増加とか、借り手側における返済不能の債務膨張を食い止めることになるわけです。もっとも中国は共産主義国であり、このあたりの市場メカニズムが理解できないため(?)、政府セクターが無茶をやらかす破目になり、結果的に上述のようなトホホ状態になっているわけですが・・・
さらに、前述した外貨準備としての米ドルの有効活用も中国にとっては重要な課題。でも、これを新興国向けに使うというのは、「ドル>新興国通貨」である以上、よほどの優良案件でもない限り、貸し付けた以上の利回りを得るのは難しいはずです。そんなおいしいプロジェクト、そうはないでしょうし、あったらあったで他国の企業等との激しい受注競争を勝ち抜かなくてはならない。で中国政府はヨソに取られてなるものか!などと意気込んで採算度外視の受注を重ね、結局はそれらの多くが不良債権化してトホホ・・・ってなオチになっているような(って、高速鉄道案件あたりがその典型例では?)。
そう考えると、中国のこの類のローン等のコスパが悪いのは、ある意味で日本のせい・・・というより、かの国が一方的に日本を意識し過ぎているせい、といえそう(?)。上記の「ヨソ」とは多くの場合「日本」ですからね。中国は少し前まで、ODA(政府開発援助)をはじめとする日本の各種支援を得て、そしてときには日本をパクりながら(?)インフラや産業基盤を整えてきました。その過程でこの分野における日本の強さを誰よりも知っていますから、意識せずにはいられないでしょう。いっぽう、わたしたちがプロジェクトの受注をめざすのは、科学的かつ合理的な計測に基づき、それに採算と相手国の利益向上が見込まれる場合であって、何でもかんでも中国に奪われまい!とか、落札金額をつり上げて中国にトホホなプロジェクトを高値掴みさせてやれ!なんて意地悪な感情からではけっしてないけれどね・・・
・・・って話がすっかりそれました。といった感じで、中国にとって潤沢な外貨準備を投入するに値する投資対象は現実にはなかなか見つかりません。であれば、ドルが少しは増えるから、という理由で、とりあえずは米国債を買うという選択になるのでしょうが、これだってリターンは微々たるものでしょう。う~ん、どうしたものか・・・