(前回からの続き)
先述のとおり、カザフスタン(を含む産油国の大半)は、本来なら経済発展の(ほとんど)唯一の源泉である原油に関するすべて(探査、採掘、輸送、販売など)を欧米オイルメジャーに依存せざるを得ないため、せっかくの自国の「宝」を生かせる政策を自分たちの意思で十分実行することができません。他方のオイルメジャーとしては、当然ながら欧米株主の利益極大化を目的にカザフの原油を扱うわけだから、これを邪魔する税金とか各種規制、ようするに同国政府の政策的な介入は少ないに越したことはありません。となると、カザフ政府とメジャー各社の両者は結託しがちでしょう。つまり、前者は後者に便宜供与(税金を安くする等)を行い、後者は前者に見返りを提供、みたいな・・・
そのあたりの一端が窺えるのが、カザフのトップ層に長らく君臨し続けるナバルザエフ元大統領およびその取り巻きの巨額の私財の存在です。たとえば、英ガーディアン紙によると、彼ら彼女らは1998年から2002年までの間だけで英国にある34か所の不動産を買いあさったそうですが、その総額は5.3億ポンドにもなるそうです。カザフの経済規模等に照らしても明らかに過大なこの財産、マトモなものであろうはずはなく、やはり上記の癒着構造に由来するとみるのが自然でしょう。もしこの購入に充てられたマネーがカザフ側にちゃんとキープされていたら、いまごろはその一部が前記した価格調整金等として使われ、国民はそれだけ国際価格よりも安い価格で燃料を手に入れることができていたかもしれないのに・・・
上記に密接に関連するのが、この手のマネーの受け入れ先となっている英国のアングラ面です。こちらの記事に書いたように、紳士淑女の国を自称する?英国はじつは資金洗浄(マネーロンダリング)の(おそらくは)世界最大(悪?)の拠点となっています。だからこそカザフ(を含む各国)の独裁者らは特権を通じて蓄えたであろう資産を安心して英国に移転させることができるわけです。英国は王立?マネロンセンターといえるから、不正資金であれ何であれ、当局はその摘発とか没収等には動かない・・・どころか(下述のことから)手厚く保護するだろう、と予想できますからね・・・
そして英国は、そうしたアングラマネーの確保で国家、もう少し具体的には通貨ポンドの信認を維持しているといえます。このへんも上記過去記事に書きましたが、上記カザフのケースからも分かるように、マネロンにからむおカネ(独裁者の不正蓄財や武器・麻薬・人身の売買等に由来するマネー)は引き続き巨大と推測されるところ、世界ワースト2位の経常赤字国で、もはや堅気の手段では資金を集められない英国としては、ロンドンの不動産の価値(≒ポンドの価値)を高めるため、むしろ率先して?この種のマネーを大量にかき集めたいところでしょう・・・
こうして結びついたカザフの支配層、オイルメジャー、そして英国(などのアングラマネー受入国)は石油がもたらす利益で潤うことになります。そのいっぽう、いずれの国の一般市民は・・・エネルギー価格や家賃等のインフレに苦しむことに・・・