(前回からの続き)
以前のこちらの記事、そして前回、アベノミクスは「進むも地獄、戻るも地獄」と書きました。ではアベノミクスに誘われて(?)わたしたちは最終的にどちらの地獄に落ちるのか?・・・って、微妙なところですが、やはり本稿のタイトルのとおり、「戻り地獄」―――これまで綴ってきたような、アベノミクスの米国債に代表されるリスク資産の「高値掴み」のせいで発生する巨額の評価損を埋め合わせるための増税や年金カットなどなど―――のほうだと思われるわけです・・・
今月5日、米ドナルド・トランプ大統領は記者団に、FRB(米の中銀)は利下げをすべきだ、と語ったうえ、FRBに対して「量的引き締め」(quantitative tightening)を止めて「量的緩和」(quantitative easing;QE)を再発動するよう求めました。一般的に、中央銀行の金融政策は政治からの独立性が保たれるべきだとする考え方が強いわけですが、このトランプ氏の一連の発言はこれに反して中銀の政策に口を挟むもので、そのあたりを問題視する論調が米国内外のメディアを賑わせている感じがしますが・・・
・・・って、個人的にはトランプ大統領の発言は、中銀の独立性を脅かすものといった次元で論じるべきものではなく、為政者としての素直な政策的見解を述べたものと捉えるのが適当だと思っています。というのも、以前から何度も指摘しているとおり、アメリカにはQE以外の道はない、すなわちドルを刷りまくる以外の政策的な選択肢はゼロ(?)なわけで、誰もが知っていながら言い出せなかったそのことを、トランプ氏がストレートな物言いで口にしてしまっただけだと考えるからです。そう、アメリカには、トランプ政権が始まるず~っと前から、もはやQEしか、ありません・・・
その意味するところを日本からみると、いくら日銀が金融緩和を進めても―――結果として上記「進み地獄」に行こうとしても―――FRBがそれに輪をかけてQEを発動(≒ドルを増刷)してしまうから、どうしても円高ドル安になりがちだということ。このときは当然、円安局面のみで機能する「カブノミクス」(私的造語:アベノミクスの取り柄は「株のみ」)が崩壊して上記「戻り地獄」に舞い戻ってしまうわけです。そこでアベノミクス各位としては、これを防ぐべく、上記で吐き出されるドルを買い支える必要に迫られます。そのために・・・マネーがアメリカに向かうよう日銀が金融緩和を一段と強化して日本の金利を引き下げるとともに、今回のようにドル・米国債買いの原資を増やすべく郵貯マネーの増強に動いたりするわけです。その結果「戻り地獄」はいったん回避するものの、今度は円安インフレで「進み地獄」が出現して実体経済が沈没。そうこうするうちにFRBがまたもやQEを強化して・・・ってことを永遠に繰り返す・・・
まさに「地獄の石積み」―――日銀が金融緩和をいくら進めても、郵貯マネーを増強しても、「進み地獄」(円安インフレ)と「戻り地獄」(増税&年金カット?)の間を行ったり来たり―――に苦しめられているわけです、アベノミクス日本人は・・・。この不毛の連鎖を断ち切るには、不可避の「戻り地獄」は覚悟のうえで・・・