(前回からの続き)
先述したように、重篤な麻薬中毒患者が禁断症状に耐え切れず、誘惑に負けて新たな麻薬に手を出してしまうのと同じで、アメリカは現在の金融引き締めにともなう金利上昇に我慢ができず、これをふまえてFRBは現行の政策スタンスを180度転換して利下げ、そして量的緩和策(QE)再開による大量の低金利マネーの放出に踏み切る・・・しかないはずです、まもなく(?)。これは・・・次のQEは、アメリカとFRBにはドル信認の維持つまり長期金利のコントロールができないことを世界に向けて知らしめる出来事となるでしょう・・・(?)
・・・となると、どうなるか?ですが・・・間違いなく為替の円高ドル安が進むでしょう、それも比較的短期間で(?)。このあたりは当面のラインとしてアベノミクス前のレート1ドル80円が意識されるのではないかと・・・(っても、購買力平価などの観点からすれば、そのくらいでも円安気味だと思われますが)・・・
で、このとき、わが国のドル建てGDPは・・・アベノミクス前あたりまで回復する期待が出てきます。たとえば2018年の円建てGDP値は約549兆円ですが、これを同レートで計算すると6.8兆ドルあまりとなり、2012年の戦後最高値6.2兆ドルを上回ってきます。この場合、日本のGDP成長率は約33%(=6.8兆ドル/2018年のGDP値5.1兆ドル)にもなり、これとGDP増額幅とを合わせると数字上は世界最高の経済成長を達成することになるでしょう。これ上述した「アベノミクス日本」の世界ワーストの裏返しの現象になりますね。
じつは個人的には、アメリカの次のQE発動後は、上記理由(米長期金利の制御不能)からドル円レートはさらに円高ドル安に向かうとみています。で、かりに1ドル50円になったとすると、2018年の本邦GDPは約11兆ドルとなり、以前こちらの記事で日本がめざすべき当面のGDP目標値として掲げた「10兆ドル」を優に上回る水準に達するほか、同年の中国のGDP約13.2兆ドルに接近します。
さらに・・・将来は、同30円くらいの線も考えられるでしょう(?)。これ日本が成長する・・・面もありますが、むしろそれくらいドルが減価する(アメリカそして世界[≒中国のような実質ドル圏]でインフレが進む)以外にないだろう、との見通しによるものです。この際の円建てGDPが600兆円ならばドル建てでは20兆ドルとなり、2018年の米GDP(20.5兆ドル)にほぼ並びます・・・
もちろん為替レートが無限に円高に進むわけではありません。理屈の上では、円高ドル安の進行で日本の経常収支(貿易収支や所得収支等の合計)の黒字が減少し、ついに「ゼロ」に至るレートが円高の限界点となるでしょう。その具体的な値がいくらなのか、計算は難しいですが、円高になれば円換算の輸出売り上げや利益は目減りするものの、いっぽうで原油等の円建て輸入額も減少するから、差し引きの貿易黒字は相当な円高にならなければゼロにはならないだろうし、所得収支黒字も同様でしょう。よって現時点でも1ドル50円に十分なり得るし、少し未来なら同30円前後も想定内と考えるものです。
他方、アメリカ、そして中国などの国々は、激しいインフレとこれがもたらす治安の悪化等によって経済成長が停滞、場合によっては大幅なマイナスに陥るだろうと予想しています。こうして世界経済が大転落、そして「日本」経済が急回復・急成長するという、「アベノミクス日本」が演出する現在とは真逆の構図が立ち上がって・・・わが国は世界最大のGDP大国になる―――というのが、個人的な「令和予想図」になります。