(前回からの続き)
「カブノミクス」(アベノミクスの私的造語:取り柄は「株のみ」)の期待とは裏腹に、わが国のミセス・ワタナベ(個人投資家)はじつはアベノミクス期間中の2013年あたりから昨年まで株式を売り越してきました。前述した日銀の初歩的な統計ミス(家計の投信保有額を30兆円も過大に誤計上!)はともかく、アベノミクスとしては、せっかく超低利に誘導してリスク投資に適した金融環境にしているのに本邦家計はなぜ株を売るのか、なかなか理解しがたいところでしょう・・・
・・・ってこのあたり、何度も指摘しているように、日本の個人投資家のこの売りスタンスは適切だと考えています。というのもこの期間は、世界的な資産バブルのピークだったと考えられるからです。おそらくそれは2014年の夏頃(米FRBのQE停止[2014年10月末]の前)だったでしょう(?)。まあその後も米株などはさらに高値を更新していますが、FRBが金融引き締めに(遅まきながら?)取り掛かっていることもあり、この時期以降は基本的にバブルのバースト期に入っているものと考えられます、長い目で見れば・・・(?)
となってくると、このタイミングよりも前からこれまでの間、リスク資産の筆頭である株を高値付近で延々と売ってきたミセス・ワタナベの多くは相当なプラスリターンを得た(?)のではないでしょうか。他方でこのとき日本株を買い上げていた代表選手は・・・外国人投資家、というわけで彼ら彼女らに高値掴みさせた(?)という点も合わせて、本邦投資家は上手だったよ、と思いたいところだし、そのような意味でアベノミクスは日本・・・の一部家計にとっては恩恵があったといえなくもありません・・・って、あくまでも「株のみ」ですが・・・(?)
もっとも、結果的に日本の株投資家をこうして儲けさせたのは外国人投資家ばかりではありません。わが国の公的年金基金や、金融政策の一環として毎年6兆円ものETF(日経平均やTOPIX等に連動するタイプの上場投資信託)の購入で実質的に株投資を進める日銀も同じような役回りを演じてきました。これらは、バブル崩壊局面のこの時期にしこたま日本株を買い入れてきたことになります。ということは・・・上記のとおり、せっかく家計は利益を得ても、同じ仲間内(日本)の年金やら日銀が含み評価損を抱えてしまっては何にもなりませんね・・・
・・・って、だからこそこちらの記事等に書いたように、わが国は国を挙げてリスク投資を手仕舞い、個人投資家や本邦企業の多くと同じように、円のキャッシュとともに「冬支度」に入るべき、と訴えているところですが・・・ほかならぬ日銀が「こんな感じ」だから、上記バブルが超危険なスケールになってしまった、といったあたりが現状かと思います。