(前回からの続き)
25日総務省は、7月の消費者物価指数(生鮮食品を除いたコアCPI)が前年同月比でプラス0.5%と、7か月連続で上昇したと発表しました。その最大の要因は賃上げの広がり(≒良いインフレ)・・・ではけっしてなく、原油価格の上昇(原油価格[WTI]は両7月ともに45ドル/バーレルあたりで大きな変化はないが、円/ドルが104円から112円強に円安ドル高になったことで上がったもの)です。これが電気代・ガス代・ガソリン代等を押し上げたことで同指数も上がったとのこと。実際、生鮮食品とエネルギーを除いた値では同0.1%のプラスにとどまっているから、今回の上昇が円建て原油価格の値上がりによってもたらされたことがよ~く分かるわけです。
これ、日本経済とか国民生活にとって良いことですか?そんなはずはありませんよね。なぜなら、今回のプラスが、同じ量の石油を外国から買うのによけいな円貨を費消するだけの悪質な物価上昇にほかならないためです。もっともアベノミクス的にはこれ、先述したとおり、じつに喜ばしいインフレといえるでしょう。そのせいか(?)当日、マーケット系メディアの一部はこの情報を株の取引時間中に「速報」と銘打って伝えていましたが・・・
・・・で、同日の株価ですが、日経平均(終値)は19452.61円で前日比98.84円高、TOPIXは1596.99pt.で同4.79pt.高。まあいずれも上昇したものの、上げ幅そのものは大したことはなく、小売や食品といった内需関連の株価は軟調に終わったことなどから、残念ながら(?)上記の発表はいまの株式市場にそれほど大きなインパクトを与えなかったようです。同日から始まったジャクソンホール会議(毎年この時期にアメリカで行われる主要中銀の首脳等が集う国際会議)における主要中銀総裁の発言等を見極めてから、といった模様眺めの空気がマーケットを支配したのかもしれません。
そのあたりを含め、ようやく日本のマーケットは、上記アベノミクスの質の良くないインフレが日本経済ばかりか株価にもけっしてポジティブではないことを織り込み始めたのかも(?)。「CPIが7か月連続でプラス・・・って、単に円建てエネルギーコストが上がっただけで、賃上げが進んでいるわけでも個人消費の中身が良くなっているわけでもないではないか」といったあたりです。これに加え、北朝鮮リスクやアメリカの国家分裂(!?)リスクの高まりなどもあって、どう楽観的に見ても「カブノミクス」(株のみ)は危険であり、ここは早めの手仕舞い(先述、年金基金等が超高値で掴んでしまった株や外債の利確など)で損害を最小限に食い止めていただきたいところですが(って、「くじら」には極めて難しいが)・・・