(前回からの続き)
前回ご紹介した、1トロイオンス当たりの金(ゴールド)価格が1万ドルになればアメリカ・・・の中銀FRBは救われる、という超架空のお話ですが、これが成立するためにはいうまでもなく、アメリカ(FRB)が8千トン余りの金準備をちゃんと持っている必要があるわけです、が・・・
アメリカ(FRB)は、じつは公表している量(8133.5トン)ほども金を持ってはいないのではないか?―――このあたり、様々な憶測があるのはよく知られていることと思います。こちらの記事に書いた金キャリートレード等の結果、FRBは実物の金の多くを失っているはずだ、とか、だからこそFRBは金準備に対する外部からの監査を受け入れようとしないのだ、などなど・・・
・・・まあ真相を知る術はありませんが、このへんの関連で何とも疑わしいな~と感じられるのは、アメリカ(NY連銀?)が他国から預かっているはずの金準備の行方です。以前こちらの記事に記しましたが、世界第二の金準備量を誇るドイツが預けている自国の金の返還をアメリカに求めた際、アメリカはその一部しか返さない、としたうえで、即時にではなく長期間にわたってこれを少しずつ返す、と回答しています。ということはこれ、「ドイツから預かった金はいま、手元にナ~ッシング!」と言っているに等しいような気が・・・
もっともこの場合、相手がユーロ圏の盟主ドイツなので、アメリカは通貨戦略上、金を返そうとはしないのだ、といった見方もできるかもしれません。でもはたしてそうでしょうか? というのもアメリカは、数年前にベネズエラから同様の要求があったとき、金を返し終えるのに数か月もの期間を要しているからです。ドイツと比べてベネズエラは(失礼ながら)小国で、たった百数十トンの金を返したくらいでアメリカの覇権がどうなるものではないはず。にもかかわらず、それほどわずかな量をベネズエラに送るのにアメリカが手こずったのは・・・同国に返すべき金を、その価格が暴騰しないよう、長い時間をかけてちょっとずつ市場から買い集めるしかなかったから―――つまり、その程度の金の現物すら連銀の倉庫には無かった、と推測するのが自然でしょう(?)。
以上などからアメリカは、ドイツのみならず世界各国から(もちろん日本からも)預かった金塊の大半を散逸させてしまったのではないか、とも考えられるわけです。そのあたりから、ヨソ様の金を無くしておいて、自分の金は8千トン、しっかりキープしてある、なんてことがあるだろうか?という疑念が当然生じ、やはりアメリカ自身の金も同じように・・・ということに。この憶測が正しければ、前述のFRB復活プランは「絵に描いた餅」になってしまいますね・・・