良い季節になってきたが、今日は特別に佳き日。
私は最近BSの歌番組をよく視聴している。
低音の魅力で人々を魅了したフランク永井の特集を見た。
子供の頃彼の歌う『有楽町で逢いましょう』はよくラジオから流れてきた。
フランクの代表曲はこうした都会調の歌だと思っていたが、戦前のヒット曲をアレンジして歌った『君恋し』がやはり代表曲ではないかと思う。というのも原曲というか三村某の歌う「君恋し」と聞き比べるとフランクのアレンジがいかに素晴らしいかがわかったから。メロディーの基本は同じだが歌の雰囲気が全然違う。
佐々紅華という人が1922年(大正11年)に作曲し、作詞は時雨音羽。昭和4年生まれのフランクは子供の頃この歌を聞いていたと思われる。時代はまだ本格的に戦争には向かっていないが、切ない恋の歌のなかにやるせない頽廃の匂いがする。
愛し合う男女がやがて離れ離れに別れて、そして二度と会えない運命に沈む予感がこの歌の歌詞にはある。
<宵闇迫れば悩みははてなし、乱るる心に映るは誰が影。君恋し唇褪せねど・・・>と続く。
ついでに言うなら『夜のプラットホーム』というやはり戦争に向かう時代の男女の別れの歌がある。歌の結びは<君いつ帰る>と歌う。永遠の別れの予感だ。
もう一つついでに戦後大ヒットしたラジオドラマ『君の名は』の挿入歌を歌った織井茂子という歌手がいたが、この人の歌唱も心惹かれる。