木洩れ日通信

政治・社会・文学等への自分の想いを綴る日記です。

五味川純平の小説「人間の条件」と「戦争と人間」

2021年03月05日 | Weblog

五味川純平の『人間の条件』と『戦争と人間』
日本の中国大陸侵略を描いて世に問うた。
『人間の条件』は昭和30年代前半、『戦争と人間』はそれに引き続いた小説。
五味川氏は1916年(大正5年)生まれ。東京外語大の英語科を出て当時の中国大陸満洲で就職するも応召。戦中を生き抜く。
「ノモンハン事件」と言われるソ連軍との戦闘で中隊158名中たった4名の生き残りである。
この時ソ連軍は戦車と機関銃、対する日本軍の部隊は旧式の日露戦争以来の銃。結果は明らかである。
しかしこの時関東軍の指揮官達はこの悲惨な結果を本部に伝えず、この時から日本軍は姑息かつ誇大妄想の戦闘を繰り返しみすみす兵士の犠牲を増やし、かつ中国大陸で無辜の中国人の殺戮を繰り返すのである。
生き残った五味川氏が戦後することはこのような戦争の実相を小説化することだった。
ノンフィクションではなくて小説として。そこには戦争に抗う気持ちを持ちながらどうしようもなく巻き込まれていく個人の姿、しかし読者の共感を呼ぶ主人公が設定される。
『人間の条件』では梶。『戦争と人間』ではストーリーが大河小説的なのでその都度主人公的人物が入れ代わる。
どちらも映画化され、どちらも私は見ている。
忘れてはならない作家である。

コメント
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