フランスと韓国の大統領選
フランスではマクロン候補がルペンを押さえて当選したが、マクロンの登場には既視感がある。イギリスの労働党出身の首相ブレアとアメリカの前大統領オバマとよく似ている。
ブレアは従来の労働党の政策より中道の第3の道を行くとしてさっそうとそれこそ若さを売り物に登場したが、アメリカのイラク戦争に無批判に追随したとしてその責任を問われ、ぶざまな末路をたどった。
オバマも初の黒人大統領として黒人層やヒスパニック系の期待を熱狂的に受けたが、その熱狂が強かったがゆえに、結局今までの金融業界や軍産複合体に羽交い絞めにされ、人々を落胆させ、それがトランプ大統領誕生の原動力にさえなってしまった。
金融業界から社会党オランド大統領の閣僚になったマクロンはオランド政権下で新自由主義的政策を遂行した張本人で、不人気な社会党から距離を置く位置に自らを置き、経済界によって大統領に仕立て上げられたが、フランス国民は比較的冷めているように思える。極右でEU離脱主張のルペンか、EU残留、移民に寛容のマクロンかと言われれば仕方なくマクロンに票を投じたというところだろうか。
だからマクロンに強調されるのは、その若さとスマートな外見と25才年上の高校時代の恩師への純愛を貫いて結婚までこぎつけたという話題ばかりだったという気がする。私もそこしか関心を持てなかった。
韓国大統領には不毛の9年間を経て、ようやく国民全体の事を考えて政策を遂行するという姿勢を持ったムン・ジェイン氏が当選を果たした。
韓国ではパク・チョンヒ大統領に対して日本の植民地支配とその後の朝鮮戦争によってアジアの最貧国にあえいでいた国をそのリーダーシップで経済成長に導いたという思いが高齢者層に強くて、それが娘であるパク・クネを大統領にまで押し上げたのだが、政治家パク・クネの背後には彼女を操るいかがわしい勢力があったということで、「パク・チョンヒの神話」はこれでようやく終った。象徴として担ぐべき候補はもういない。
韓国ではいわゆる保守層と言われるパク・チョンヒ礼賛、北朝鮮憎悪を叫ぶ人々や政治家は何らかの転換を迫られていくことになると思う。
中道勢力を結集しようとしたアン・チョルス氏は自身がエリート出身ではあるが、いわゆる「財閥支配」と言われる韓国の一部大企業のみが優遇される賄賂政治では韓国の将来はないと考えての政界進出だったと推測する。
韓国はようやく軍事独裁時代の悪しき政治のしっぽから決別の第一歩を踏み出したのでは・・・。
それに引き換え日本の政治は劣化するばかり。