NHK「クローズアップ現代」が提起した二つの警告
国民のための「公共放送」であるはずのNHKが今や自民党、とりわけ安倍政権の翼賛放送になってしまっていることは、心ある人々にとって常識となり、嘆きと怒りの対象ではあるが、しかしだからと言って、NHK職員全員が一枚岩というわけではない。
そう思わせた報道があった。
一つは正確なタイトルは忘れたが「統計の詐術」がとんでもない結論を導かせることもできるという例を視聴者に提示するものだった。
高血圧・心筋梗塞・糖尿病に冒された患者の90パーセント以上がこの食べ物を摂取し、重大犯罪者のこれまた9割以上が犯罪を犯す直前にこの食品を食べていた。
こういう食べ物を食べることを禁止すべきかと問われると、6割以上の人が禁止すべきと答える。ではその食べ物とは?答えは「ごはん」だった。
この番組を見てすぐ思ったのは、「世論調査」として実施されて導かれる傾向にこうした巧妙な誘導が仕組まれているのではということだった。この番組を作ったスタッフにそういうことを視聴者に考えてもらおうという意図があるのではと思った。
それは今のNHKの主流の考え方とはおそらく違うのだろう。
安倍政権に関する世論調査ほど不思議で違和感を感じるものはない。
6年前その無能ぶりで政権を投げ出した男を信頼している人間はおそらく日本国民の中でもそう多くはないはずだ。
ところが「安倍政権を支持する」という回答が6割近くになる。だがその支持するはずの安倍政権による経済政策に期待をするかというとそれは5割ぐらいに下がる。
そしてさらに「景気の回復を実感しますか」という問いには8割もの回答が「実感しない」としているのだ。
こんな一貫性のない支離滅裂な結論が導き出される「世論調査」とは?
政治に関する世論調査に限らず、電話で行なわれるアンケート調査はあらかじめテープに吹き込まれた女性の声のものが多い。
四つから五つの回答の中から選ぶ形式になっている。中高年になると、そうでなくても集中して聞いていないと、何番がどういう回答なのかすぐ忘れてしまう。そういう場合聞きなおす仕組みもあるが、たいていは面倒くさいから適当に答える。
そうした相手の心理を見越して回答の順番を指定しているのではと思う。
無党派層と言われる多くの国民が情報を得る手段は何と言ってもテレビ報道だろう。そこが景気が回復しているという期待感があるといえば、そうなのかと思う。
民主党に期待したけど駄目だった。それなら自民党しかないだろう。他の中小政党に期待してもどうせ政権は取れないし・・・。
そこで「安倍政権を支持します」という回答が導き出される。しかし話が具体的になると、「経済政策?アベノミクスって何よ。よくわからん」。「景気回復の実感?」、「ない、ない。そんなもの」ということになる。
「世論調査」の本来のあり方は「対面調査」である。これには人手も時間も必要だ。今の時代家庭を訪問しての「対面調査」がむつかしい。
しかも頻繁に行なわれる「世論調査」。支配者側にいいように利用されているだけだ。
憲法改定も原発再稼働も国民の多数は望んでいないし、TPPもよく説明されれば「参加に賛成」はグローバル企業の経営者しかいない。
「ネズミ、イノシシ激増、福島の環境に何が」
今日11日の「クローズアップ現代」も衝撃的だった。
放射能汚染がひどくて立ち入りが制限されてきた原発立地の大熊町などでは民家が大量のネズミに食い荒らされ、野山ではイノシシが跋扈している。
放射能の濃度が下がったら帰宅したいと考えていた住民のかすかな希望を無残に打ち砕く現実で、この影響が今後どのような広がりを見せるのか予測がつかない事態だ。
イノシシもネズミも汚染された物を食べ、汚染された空気の中で生きてきたわけだ。
人間よりはるかに寿命が短い動物たちは汚染の影響が出る前に死んでしまうのかもしれないが、イノシシはそんなに山を越えたりできないかとも思うが、ネズミの移動が恐ろしい。
これまた「原発事故の予測できない影響の広がりの恐ろしさ」を警告し、「再稼働」をもくろむ連中に「一矢」を放った番組だと思った。