リニアと原発の関係
JR東海が進める「リニア新幹線」。長野県の南部を通るとあって、南信と呼ばれる地域の一部の人達は、名古屋、東京という大都市と直結することで、この地域が活性化するのではと、相も変わらない期待でこの計画を歓迎しているが、実はリニアは従来の新幹線とくらべても、ものすごく電気を食うしろもので、これは「原発再稼働」なくしてはあり得ない計画であると、「反原発」の預言者広瀬隆氏が言っている。
そのため広瀬氏は長野県内を講演して回って、「リニア」を安易に歓迎する主張に警告を発している。
リニアの計画は「福島の原発事故」以前からあるものだが、これは原発の増設を計算に入れたプロジェクトなのだ。
リニアを推進する地域の人達はどれだけそのことがわかっているのか。
「原発をゼロにする」世の中を望むならリニアなど望んではならない。
10月24日、「必要か、リニア新幹線」(岩波書店)の著者橋山礼治郎・千葉商科大大学院客員教授が、日本記者クラブの招きで都内で講演したという記事が、地元信濃毎日新聞に小さく掲載されていた。
橋山氏は「リニア中央新幹線をJR東海の民間計画事業として捉えるのでなく、多くの国民に影響を与える公共的な大規模事業として、安全性や採算性などの観点から再検討するよう提案した。
今後の人口減少や格安航空会社便の拡大などからリニアの経営環境は厳しくなると予想。
中央新幹線のあり方について、北陸新幹線などを含めた総合交通体系の観点から見直す必要性を指摘。高コストや強い磁界といった問題がある超伝導リニア方式に固執するのではなく、鉄輪新幹線方式の採用も勧めた。
JR東海と国が充分な情報開示をして、その上で国民の同意を得ながら計画を進めるよう注文、国会での慎重な審議も求めたとあった。
原子力発電所建設にあたって欠けていた問題点がそのまま「リニア新幹線」に持ち込まれている。
その上、南アルプスの山ろくをトンネルでぶち抜く線路計画は、「そんなことをしていいのか」という思いがある。
名古屋ー東京間を1時間ほどで走り抜けるというリニア。きっと南信地方の人達の「交通が便利になる」という期待など吹き飛ばして走り抜けるだけのような気がする。
「黒部の太陽」という映画を見た。この映画を企画・製作し自らも出演した石原裕次郎が、「劇場の大画面で見て欲しい」と、ビデオ化を許可しなかったという映画だ。
関西電力による、こちらは北アルプスにトンネルを掘っての大水力発電ダムの工事の困難を描いた映画である。
出水に悩まされた工事を描くシーンでは、水の量が予定より超えてしまい、「あわや事故!」という迫力満点の映像ができあがったという伝説を持つ映画だったが素直には見れなかった。
福島の原発事故以前だったら、疑問も持たずに見れたのかもしれないが、本当に「黒部ダム」は必要だったのか、とそんなことを考えた。
昭和30年代、高度経済成長期に入った日本の電力需要をまかなうための一大プロジェクト。崇高な使命感が支えた難工事。
そんな物語が色あせて見えた。
原子力規制委員会が福島事故と同レベルの苛酷事故の際の放射性物質拡散予測を公表した。
これによれば「原子力災害対策重点区域」の目安は原発の半径30キロ(現行は10キロ)。
立地自治体だけの同意で原発を稼働するのは事実上困難だ。
「原発は絶対事故を起こさない。そういう二重、三重、いやそれ以上の安全システムのもとに運転されている」と言われ、人々はそれを信じ、原発から5キロぐらいのところで暮していたのだ。
しかし実際は「安全システム」どころか、苛酷事故に対する備えも覚悟も電力会社になかったことが、明らかになった。
中間貯蔵施設の容量の8倍もの量になっている使用済み核燃料の問題の上に、この拡散予測だ。
これでどうやって原発を再稼働できるというのか。「原発廃炉」の道しか残されていない。