フランス大統領選、ギリシャ総選挙で示された民意。
EU体制の中で進められる「緊縮政策」では国民の生活は行き詰る。
経済成長(それは必ずしも今までどうりの拡大政策を意味しない)を促し、雇用を生み出す政策を政府が積極的に打ち出し、富裕層への優遇税制を改め、投機マネーに規制をかける、とごく常識的な主張をした社会党のオランド候補がサルコジを制した。
ヨーロッパのことはよくわからないが、この20年、世界はソ連とその影響下にあった社会主義圏の崩壊で、グローバル化の名のもとに「弱肉強食」の元祖資本主義に回帰し、社民主義や共産主義の強かったフランスやイタリアからそれらの勢力を駆逐した感があったのだが、人々がようやく正気を取り戻し、反撃に出た。
フランスとドイツが主導するEU体制に残るために厳しい緊縮策を取らされたギリシャでも「もうこれ以上耐えられない。EU離脱も辞さない」という主張の急進左派政党が第2党に進出した。
日本のマスコミの論調はおおむねこの両国の選挙結果に否定的であるが、厳しく指弾されなければならないのは「英米型の投機資本主義」、「グローバル資本主義」ではないだろうか。
IMF(国際通貨基金)の言うことを「神の託宣」のように考えるのはどうなのか。
99パーセントを餌食に延命をはかる「新自由主義」
新自由主義的資本主義は「国家的規制からの自由」を主張するとされているが、その実態は極度に国家に寄生している。
国家がその公的権限によって集めた租税を、その分配過程において私企業が入り込んで暴利をむさぼるという構図だ。
アメリカでは対テロ戦争に投じられてきたぼう大な戦費は、その多くが軍事関連業務の民営化によって生まれた市場に吸収されてきた。
この受益者達にとってイラクやアフガンに健全な民主主義が根付こうが根付くまいがどうでもいいことである。取るべきものは取ったのである。
これらの戦争はアメリカ国民に何の果実ももたらしていない、どころが「戦費」と言う形で、本来福祉に向けられるべき税金が奪われたのだ。
これら新自由主義・新帝国主義のプレイヤー達にとって、国家は徴税能力に利用価値があるだけで、運命を共にする祖国ではない。彼らは税金を巧みにあるいは強引に収奪することにのみ関心がある。
しかしこれは見方を変えると「新自由主義的資本主義」がその醜い姿を人々の前にさらし、断末魔の叫びを上げているということでもある。
最後のとどめの鉄槌を下さなければならない。でないと私たちの明日の命はない。(白井聡・多摩美大非常勤講師の「週刊金曜日」記事を参考)