木洩れ日通信

政治・社会・文学等への自分の想いを綴る日記です。

低線量被曝と被曝労働こそ原発の本質

2012年05月06日 | Weblog

独占と過当競争の行き着く果て。
ゴールデンウィークの初日、金沢から東京に向かっていた高速バスが防護壁に衝突し、7名もの死者と重軽傷者を出した。
運転手の居眠りが原因だ。実態を知れば知るほどひどい状況が明らかになっていって、こんな状態で運転されていると知っていたら、おそらく乗車する人はいなかっただろう。
背景には2000年以降の小泉・竹中コンビの「規制緩和政策」により、それまでの免許制から一定の条件を満たすことによる届出制になり、
バス会社以外からの参入が可能になって、競争が激化したことから、低価格を競い、安全がおろそかになったことがある。
新聞広告にも東京までの高速バスの宣伝がよく掲載されているが、新幹線の半分ぐらいの料金である。
短時間で行きたいのと、発着時間が合わないので利用したことはないが、今の時代「安さ」でこちらを選ぶ人は多いだろう。
周囲の人達と話をすると「安い」ということがすぐ話題になる。私は何もわざわざ高いものを選ぶつもりはないが「適正価格」というものがあるだろうといつも思う。
特に旅行代金や食べ物などは注意した方がいいと思っている。みんな世の中を信じすぎる。とはいえ中・下流の一般の人達の所得が減っているので、安さに飛びつくのもやむを得ないのだろう。
安さの理由は人件費の削減と安全軽視だ。激安を求める風潮は事業者及び労働者、そして消費者両方の首を絞める。
2007年、大阪の吹田市で、スキーバスの事故があり、一人が死亡した。過労運転による居眠りが原因だ。これを受けて、国交省は670キロ、9時間を越える運転には運転者を二人用意するよう指針を出した。
しかし、それまでバス会社は労組との協定で、500キロを目安にすると自主的に決めていた。それが国交省通達で崩れてしまったのである。
ましてや後発参入組は労組もない零細事業者や無権利で人を働かせるブラック企業も含まれている。
現場の感覚で決めていた500キロ。国交省の基準は机上のデータから割り出した数字だ。
運転手は言う。夜と昼、天候、体調、渋滞があるかないかでも違うので、国交省の基準はギリギリ何とかという最高値の数字だと。
役人はすぐ数値を持ち出す。しかも自分で実体験したわけではない。
それを押し付ける傲慢な、現場の人の意見に耳を傾けないタイプの人間が上の地位にのぼっていくシステムになっている。

過当競争が悲劇を生むのと裏表で、「独占」もまた腐敗の果てに破局を招く。独占なだけにその影響力もまた甚大だ。
それが東京電力福島第一原発事故となって、日本国の住人、とりわけ福島の人達を襲っている。
北海道電力泊原発3号機が定期点検に入り、すべての商業用原発が停止した。
これだけの事故を起こし、終息の目途も立たないのだから「再稼働」はあり得ない。
原発事故でこれから起こりうる深刻な事態は「低線量被曝」の被害だ。
それとこれは事故前からある問題だが「被曝労働」。定期点検などで原子炉のある建屋に入って手作業で点検・保守する労働者の存在無しに原発稼働はあり得ない。
この被曝労働により健康を犯された無数の人々がいる。
「低線量被曝」の実態を人々に知らせ、そういう事態になってしまった時代をどう生き抜くのかを語るのが、自らも広島で被爆しながら患者の治療に当たった95歳の医師肥田舜太郎氏。
そして70年代から被曝労働のため健康を冒された労働者を取材し、写真と文章で社会にその存在を知らせる活動を続けてきた樋口健二氏。
この二人の行動と言葉ほど「核と原発」の反人間性を考えさせてくれるものはないが、詳しくは別の機会に。

コメント (2)
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