錦之助ざんまい

時代劇のスーパースター中村錦之助(萬屋錦之介)の出演した映画について、感想や監督・共演者のことなどを書いていきます。

浅草名画座で『宮本武蔵』を観る

2012-06-05 22:14:03 | 錦之助ファン、雑記
 昨日は映画ざんまいの一日だった。午前10時半よりラピュタ阿佐ヶ谷の「桜町弘子特集」で『胡蝶かげろう剣』を観て、それから浅草名画座へ行き、三本立てを全部観た。『博徒外人部隊』『抱かれた花嫁』『宮本武蔵』。プログラムを見ないで浅草へ行ったらちょうど『宮本武蔵』が終ったところだったのでついでに全部観てしまった。『抱かれた花嫁』(番匠義彰監督、有馬稲子、高橋貞二、高千穂ひづる他)は、松竹初のカラーシネスコ作品で、私の好きな映画で、観るのは三度目。浅草の鮨屋を舞台にした面白いヒューマン・コメディだ。有馬稲子と高橋貞二のペアがなかなか良い。
 『宮本武蔵』(内田吐夢監督)第一部は、スクリーンで観るのは二年ぶりくらいか。京都Tジョイで「内田吐夢&月形龍之介特集」をやった時だが、あれはいつだったか?物覚えが悪くなって、何年前といった勘定が出来なくなっている。一昨年の秋だったと思う。
 『宮本武蔵』は何度も観ているが、いつ観ても新鮮な感じで観られる映画だ。細かい所に注意しながら見直すと、いつも新たな発見がある。昨日観て、気づいた点を二、三、書いておきたい。
 クレジットタイトルの出演者で、最後は三人並んで、三国連太郎(一行空いて)、入江若葉(新人)、丘さとみの順になっている。つまり、大トリは丘さとみで、これは非常珍しく、どうしてなのかと思った。朱美役の丘さんは、最初の三分の一くらいで消えて、それから一度も出て来ないのだが……。出番で言えば、沢庵の三国連太郎とお通の若葉さんとは比較にならないほど少ない。 
 タケゾウが村に帰って来て逃げ回り、山道で炭焼きの村人に姉の居場所を尋ねる場面がある。その村人が石丸勝也だったことを確認。この村人からタケゾウが弁当箱を奪って、中を開けると空っぽで、箱を放り投げるところだ。
 移動長回しのワンカットに注意して観た。まず、タケゾウが縛られて沢庵に連れられ、村に戻ってくるところから、本堂の柱に結わえ付けられ、村人の合議が始まるまでの長いことに驚く。もう一箇所、ラスト近く、タケゾウが岩山の上から、下にある砦まで降りて来るシーン。この場面は、助監督の山下耕作が内田吐夢に音楽を入れないようにと進言したことで有名である。つまり、音楽を入れると、点のように小さなタケゾウの人影が目立たなくなってしまうというわけで、しばらく無音で続く。タケゾウが下に降りて来てやっと静かに音楽が入るのだが、山の上から駆け下りて来て、姉が閉じ込められているはずの砦が空っぽだということに気づくまでを、スタントマンを使わずに錦之助自身をずっと動かして撮影している。内田吐夢に明らかに演出意図があってのことだが、どう考えればいいのか。自然の大きさに対するタケゾウのちっぽけさを強調したかったのだろうか。
 沢庵がタケゾウを白鷺城へ連れて行く前後の場面で、沢庵があちこちに出没するのが不自然に思えた。
 最後に赤松家の幽霊が三人(その一人が汐路章)登場して、血が湧き出すシーンは、今もってよく分らない。