『続清水港』も『森の石松鬼より恐い』もプロットはまったく同じだった。「森の石松」を舞台にかける新進の演出家(千恵蔵は石田、錦之助は石井という名前だった)が、夢の中で主役の石松になって金毘羅代参の珍道中を繰り広げ、奇抜なアイデアを得るという話である。タイム・スリップして現実から過去の世界に投げ込まれた主人公が戸惑い、あたふたするところが面白いわけである。
ただし、リメイク版ではストーリーを部分的変更し、新たに場面を付け加えたり、登場人物を何人か増やしたりしていた。たとえば、最初の現代劇の部分では、演出家の石井が繁華街に出て、バーで酒を飲んだり、暴走族のようにオートバイに乗ったりする場面がある。この辺は日活の映画を観ているようだったが、多分裕次郎の映画でも意識して、そのパロディのつもりで作ったのだろう。それと石井(錦之助)の格好は、沢島監督をモデルにしたらしい。映画で錦之助が現代人を演じるのは、1955年制作の『海の若人』以来五年ぶりで、その意味では非常に珍しかった。(錦之助が『武士道残酷物語』の第一話と第七話で現代人を演じるのは、さらにその三年後の1963年である。)
時代劇の部分で、オリジナル版と違うところは、千両箱を持って旅をする盗人(田中春男)と彼の相棒(板東簑助)を登場させ、石松とおふみの道中に加えたことである。ここは、三十石船の場面がないため、その差し替えのようになっていた。が、石松が千両箱を運ぶ部分は話をごちゃごちゃさせるだけで、あまり効果があるとは思えなかった。その点、オリジナル版の方がずっとすっきりしていたと思う。
最後になるが、ご参考までに主な配役について触れておこう。前者が『続清水港』、後者が『森の石松鬼より恐い』である。
演出助手と石松の恋人おふみは、前者が轟夕起子で、後者が丘さとみ。どちらもふっくらした女優であるが、轟夕起子(当時マキノ監督夫人だったと思う)は、しっかり者で気の強いオバタリアンといった感じ。丘さとみの方が可愛かったと思う。劇場支配人と小松村の七五郎は、前者は志村喬だった。志村喬の七五郎は、大変滑稽で面白かった。後者では、劇場支配人と都鳥の吉兵衛が進藤英太郎、すし屋の主人と七五郎が鶴田浩二だった。以前にも書いたが、鶴田の七五郎はわざとらしくて、志村喬の方が数段良かったと思う。七五郎の女房は、前者は美ち奴(当時人気のあった芸者の歌手)、後者は大川恵子だった。劇中劇の石松役者と石松の親友・六助は、沢村国太郎と千秋実。次郎長は、小川隆と山形勲(山形のもう一役は照明係だったが、前者ではこれを広澤虎造がやっていた)。それと、道中を共にする子供が、前者では長門裕之(沢村アキヲという名前で出演。ご存知のように、沢村国太郎とマキノ雅弘の姉との間の子で、津川雅彦は弟)だったが、映画初出演にしては、抜群にうまかったことを付け加えておく。
ただし、リメイク版ではストーリーを部分的変更し、新たに場面を付け加えたり、登場人物を何人か増やしたりしていた。たとえば、最初の現代劇の部分では、演出家の石井が繁華街に出て、バーで酒を飲んだり、暴走族のようにオートバイに乗ったりする場面がある。この辺は日活の映画を観ているようだったが、多分裕次郎の映画でも意識して、そのパロディのつもりで作ったのだろう。それと石井(錦之助)の格好は、沢島監督をモデルにしたらしい。映画で錦之助が現代人を演じるのは、1955年制作の『海の若人』以来五年ぶりで、その意味では非常に珍しかった。(錦之助が『武士道残酷物語』の第一話と第七話で現代人を演じるのは、さらにその三年後の1963年である。)
時代劇の部分で、オリジナル版と違うところは、千両箱を持って旅をする盗人(田中春男)と彼の相棒(板東簑助)を登場させ、石松とおふみの道中に加えたことである。ここは、三十石船の場面がないため、その差し替えのようになっていた。が、石松が千両箱を運ぶ部分は話をごちゃごちゃさせるだけで、あまり効果があるとは思えなかった。その点、オリジナル版の方がずっとすっきりしていたと思う。
最後になるが、ご参考までに主な配役について触れておこう。前者が『続清水港』、後者が『森の石松鬼より恐い』である。
演出助手と石松の恋人おふみは、前者が轟夕起子で、後者が丘さとみ。どちらもふっくらした女優であるが、轟夕起子(当時マキノ監督夫人だったと思う)は、しっかり者で気の強いオバタリアンといった感じ。丘さとみの方が可愛かったと思う。劇場支配人と小松村の七五郎は、前者は志村喬だった。志村喬の七五郎は、大変滑稽で面白かった。後者では、劇場支配人と都鳥の吉兵衛が進藤英太郎、すし屋の主人と七五郎が鶴田浩二だった。以前にも書いたが、鶴田の七五郎はわざとらしくて、志村喬の方が数段良かったと思う。七五郎の女房は、前者は美ち奴(当時人気のあった芸者の歌手)、後者は大川恵子だった。劇中劇の石松役者と石松の親友・六助は、沢村国太郎と千秋実。次郎長は、小川隆と山形勲(山形のもう一役は照明係だったが、前者ではこれを広澤虎造がやっていた)。それと、道中を共にする子供が、前者では長門裕之(沢村アキヲという名前で出演。ご存知のように、沢村国太郎とマキノ雅弘の姉との間の子で、津川雅彦は弟)だったが、映画初出演にしては、抜群にうまかったことを付け加えておく。