この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

現代においても通ずる教訓を与えてくれる『最後の決闘裁判』。

2021-10-16 21:38:34 | 新作映画
 リドリー・スコット監督、マット・デイモン主演、『最後の決闘裁判』、10/16、イオンシネマ筑紫野にて鑑賞。2021年48本目。

 リドリー・スコット監督、御年83歳!
 80歳を超えてなおこれほどパワフルで緻密な歴史劇を作り出すとはまずそのことに驚きです。
 しかもすでに次回作『ハウス・オブ・リッチ』の日本での公開が年明けに控えているという、まさに不死身かよ、と言いたくなるクリエイターぶり。
 年を取ったことを言い訳にするのも控えなければ、と自戒せずにはいられません。

 本作は14世紀のフランスで起きた暴行事件と、その決着をつけるための決闘裁判を描いた作品です。
 物語は主人公である騎士ジャン・ド・カルージュと、その妻であり、暴行事件の被害者であるマグリット、そしてジャンの旧友であり、暴行事件の加害者であるジャック・ル・クリの三人の視点で語られます。
 複数の視点で物語が語られることから、黒澤明の『羅生門』を思い出す人が多いようですが、「羅生門」では各登場人物の言い分がまったく違っていたのに対し、本作では基本的に(細かな差異はあるものの)三人の証言に矛盾はありません。
 ただ印象や捉え方が違うように描かれているのです。
 ジャックの視点では彼の行いは合意の上のものであり、彼に非はないように描かれ、一方マグリットの視点ではジャックの行いは強姦以外の何物でもなく、彼女は哀れな被害者のように見えます。
 一見するとマグリットの述べていることが真実のように思えます。
 しかし、マグリットは夜中に仕事をしているジャックの元を訪れ、関係を持っているんですよね。
 それが事実であるとすると、ジャックは悪辣な強姦男ではなく、むしろ嵌められた、と見ることも出来ます。
 正直自分にはどちらが正しいのかはわかりません。
 夜中にマグリットがジャックの元を訪れている以上、ジャックは無実なのではないか、と思うのですが、そう断言出来るほどの自信はないのです。

 ただ、最終的にどちらが正しいのかは「決闘裁判」という特殊な裁判によって決められます。
 命を賭した決闘で勝利を収めた方が正義の称号を与えられるのです。
 恐ろしいことだと思いましたが、それは今でも継承されていますよね。
 正しい方が勝利するのではなく、勝利した方が正しい。
 まず戦争がそうだし、小さな争いごともそういう面があることは否定出来ないのではないでしょうか。
 本作は歴史劇ですが、現代においても通ずる教訓を与えてくれると思います。

 お気に入り度★★★★、お薦め度★★★★(★は五つで満点、☆は★の半分)です。
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