ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 五十嵐敬喜・小川昭雄著 「道路をどうするか」 岩波新書

2010年02月22日 | 書評
道路利権集団による日本国食いつぶしを阻止する 第11回

5)小泉改革の無残な失敗 (1) 

 この章では、小泉首相以下自民党内閣による「道路特定財源の一般財源化」の不履行と、「道路四公団民営化」の偽装改革について考える。小泉首相は2001年7月の参議院選挙で「一般財源化」を協調し、その後しばらくうやむやにされていたが、2005年12月「道路特定財源の見直しに関する基本方針」を決定した。しかし2006年度予算で一般財源化されたのは自動車重量税の一部472億円に過ぎなかった。阿部内閣も2006年12月に「道路特定財源の見直しに関する具体策」という閣議決定をしたが、内容的には後退していた。暫定税率が現状維持で、あまった特定財源のみを一般財源化するという趣旨では、官僚は全額使いきろうとするだけである。2007年11月には「道路の中期計画」を定め、5ヵ年計画を10ヵ年計画に延長し、事業総額を65兆円とするという破格の計画がぶち上げられた。毎年の約6兆円の特定財源10年分で約60兆円を全部使い切る挑発的な道路族の計画であった。さらに当年度に使い切れなかった予算は翌年度の予算に組み入れることができるという無茶苦茶な永久繰越使用権を主張するものだ。続く福田首相は2008年3月「道路特別財源は2008年度税制改正時に廃止し、2009年度から一般財源化する」と表明した。ところが5月のガソリン国会において「道路特別財源延長法案」を再可決して、福田首相の公約は破られた。それでも福田首相は5月13日「道路特定財源に関する基本方針」を閣議決定した。道路特定財源制度は2009年度から一般財源化する、中期計画は5年とするという国会通過法案とは違う決定をするなど全く混乱を呈して9月に辞任した。こうして小泉・阿部に続いて福田首相にも騙された。また麻生首相は一般財源化には黙ったままである。公約を無残にも違反し続けた歴代首相の力の無さと道路利権集団の力関係には、政権の根本を変えなければなかなか実現しないものだという感慨を強くする。
(つづく)



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