ブログ 「ごまめの歯軋り」

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小林秀雄全集第7巻「作家の顔」よりトルストイの「芸術とは何か」

2006年12月11日 | 書評
トルストイの「芸術とは何か」

トルストイの「芸術とは何か」はこれまでのトルストイの主調子を全面否定し、全ての芸術分野を手当たりしだい破壊しようとするものであった。小林によると「結論が実践であるような人間は、このように振舞うほかはなく、それが精神で飽和した人々に野蛮な印象を与えたに過ぎない。」とこの書物の非凡さを指摘した。「つまり日本では人道主義と理解する人々の群れは何もトルストイの正体を見ていないのだ。これを理解するにはロシアの近代小説のリアリズムの本質を考えなければならない。ゴオゴリからチェホフまでロシアには近代リアリズムは西欧のそれとは異なり、問題小説、傾向小説しかなかった。ドストエフスキーのリアリズムもしかりでトルストイにも有ったのは素朴な内的なトルストイといおう個性であった。」
トルストイの自省録である「わが懺悔」によるとトルストイの改心といわれる「芸術とは何か」で言いたかったことは、「宗教上の意識が芸術の内容を決定する。人が経験した気持ちを誠実に表現できれば、必ずそれは独創的ならざるを得ず、人々に感染せざるを得ない。」このトルストイの考えは私にはさっぱり理解できないが、小林氏のトルストイの理解も論理的は納得できるものではない。小林氏独特の直感的理解によるものか。
ということで先の文学者の思想と実生活において期待したトルストイの思想らしきものは理解不能でした。あしからず。




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