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ブログ 「ごまめの歯軋り」

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世界史の構造

2021年03月04日 | 書評
京都市中京区木屋町通御池下がる  「高瀬川 押小路橋」

柄谷行人著 「世界史の構造」 岩波現代文庫(2015年)

第三部 近代世界システム (その3)

第1章 近代国家

④ マルクスの国家論
マルクス主義者は階級対立が解消されたなら、ブルジョワ階級の支配する国家はおのずと消滅すると考えた。しかし国家は自立的な存在であって、何らかの手段にはなりえない。社会主義革命は旧来の国家機構を廃棄したならば、直ちに外からの干渉を招くため、革命防衛のために旧来の軍・官僚機構に依存しなければならない。つまり国家を強化しなければならない。国家から見ると、ロシア革命は旧ロシア帝国が国民国家に分解することを阻止して、それを新たな世界=帝国として再建することになった。マルクスは経済分析は鋭かったが、国家に関しては不十分であった。リカードは「経済学よび課税の原理」で国家の税に基づく軍や官僚の国家機構を正しく認めたが、しかるにマルクスは「資本論」において国家機構を棄却した。フランスにおけるボナパルトや、プロイセンにおけるビスマルクの登場は、国家が自立的な存在であることを示している。

⑤ 近代官僚制
近代の国家を国民国家からではなく、絶対主義王制国家から始めなければならない。絶対主義国家においては、軍と官僚という国家機構が主権者である王の意志を執行していた。しかしブルジョワ革命以降、国家は主権者である国民の意志を代行する政府と同じものとみなされた。ブルジョワ革命と国民国家は、国家が交換様式Bにねざす主体であることを隠してきた。国民主権は虚構である。近代世界システムにおいて周辺にあった地域が独立と産業化(資本主義経済)を図ったとき、開発型独裁政権や独裁政権は、絶対王権と同じになるのである。ウェーバーは官僚制を「合法的支配」の一形態とみなした。近代官僚制は「目的合理的」である。近代官僚制は国家機構だけでなく、むしろ資本主義的経営に存在する。資本主義的発展とは同時に官僚制発展であったといえる。ホワイトカラーは企業における官僚である。今日の労働者階級とはブルーカラーや非正規社員に該当する。労働組合運動では旧来の階級闘争の概念は通用しない。キャピタリスト(リバタリアン)は警察や軍隊を含む官僚機構の民営化を説くが、国家がなくなることがない。彼らが目指すのは、たんに資本をネーション=ステートのくびきから解放することである。「新自由主義」とはそういう政策である。

(つづく)



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