ブログ 「ごまめの歯軋り」

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クラシック音楽   「バッハ 宗教曲カンタータ全集・選集」

2007年01月15日 | 音楽
文化遺産:レオンハルト/アーノンクールのカンタータ全集とリヒターのカンタータ選集

 グスタフ・レオンハルト/ニコラウス・アーノンクールのカンタータ全集が刊行されている。おそらく現在入手しうる唯一のバッハ宗教曲カンタータ全集であろう(バッハの宗教曲カンタータはBWV.1~200という範囲で番号が付けられているが、なぜかBWV.53,118,160,189.190,191,193,200が録音されていない。楽譜が存在しないためであろうか?  CDは60枚)。二人が指揮した楽団と合唱団は異なる。また独唱者も一部異なる。

レオンハルトとアーノンクールは戦後のオリジナル楽器演奏の草分け的盟友で、バッハカンタータ全集を完成させた。別々の楽団・合唱団を率いての演奏は当然二人の感性や考えが全く異なることに由来するものであるが、二人の役割はコインの裏表に喩えられる。チェンバロ奏者でもあるレオンハルトがバッハの知的な掘り起こしに精力を注ぎ、アーノンクールはバッハの美しさを追及したといわれる。レオンハルトのチェンバロ演奏会をつくばノバホールで聞いたことがあるが、物静かに入場し退場するまで一言も言葉を発しなかった。知的という言葉がぴったりの演奏家であった。知的ということではフルトヴェングラーもそうであるが、レオンハルトはロマン性とは無縁の学究肌である。

またカール・リヒターによる「バッハカンタータ選集」(80曲、CD24枚)も発行されている。カール・リヒターを天才と呼ぶ人が多い。そのとおりかもしれないと思うほど、彼の演奏の戦慄を覚えるほどの集中力と完成度の高さはもはや乗り越えられる人はいまい。そういう意味ではバッハ宗教曲演奏は完成したといえる。その伝統はバッハ以来のトーマスカントールの伝統であるそうだ。私がが持っているARCHIV「バッハカンタータ選集」は1959-1979年の演奏である。60年以降の演奏は鋭い名演奏が多いとされる。リヒターは前2者と違って古楽器は使用しない。これぞ人類の無形文化遺産に登録されるべきだ。




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