ブログ 「ごまめの歯軋り」

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厚生労働省特殊法人の保険食いつぶし 今度は地方自治体の公金投入か

2007年05月04日 | 時事問題
asahi.com 2007年05月04日08時00分
グリーンピア、再開の全9施設赤字 公金投入も8億円超 
巨額の年金資金がつぎ込まれ、国内13カ所につくられた大型保養施設「グリーンピア」の跡地で、ホテル事業などが再開された9カ所は初年度の収支がすべて採算割れの状態だったことがわかった。各施設が昨年度までに出した損失は公表分だけで約7億円にのぼっている。跡地を所有する地元自治体からは、赤字穴埋めや施設改修などで新たに8億円以上の公費が投入された。経営難で全廃された施設の再生が新たな公費補填(ほてん)を招き、再び国民の側にツケが回されている構図が浮かんだ。
グリーンピアは13施設の多くが経営不振に陥り05年中に全廃された。運営主体の年金資金運用基金(06年3月解散)は高知、鹿児島県の2施設を民間に売却し、残る11施設を所在地の県市町村へ計35億円余りで払い下げた。うち南紀と恵那(岐阜県恵那市)以外の9施設は04年2月から昨年7月にかけて、自治体直営や民間が経営を請け負う形でホテルやレジャー事業を再開させた。

厚生労働省の特殊法人の解体のつけが地方自治体へ 何の責任を感じない官僚の無神経
厚生労働省には1:年金保険(厚生、国民、共済)、2:失業保険(能力開発事業、雇用福祉事業、雇用安定事業)3:健康保険(事業者、国民)の三大保険事業があり、労働者の安心して働ける環境作りのために戦後営々と運営されてきた国民的財産であった。

その事業の運営は厚生労働省管轄の特殊法人に委ねられてきたが、その悉くが保険金の運用をめぐる官僚によって食いつぶされていることが判明した。そのため社会保険庁の解体、雇用能力開発機構の廃止など特殊法人の見直しが不十分ながら進んできた。1980年代中曽根元首相のリゾート法の音頭とりの下、社会保険庁はグリーンピアというリゾート施設、雇用能力開発機構の国民宿舎型レフレッシュ施設や会館など約700施設、勤労者体育施設1000箇所など箱物を保険金から運用して作った。民業の旅館業との競争の結果、これらの施設が悉く放漫経営の赤字運営を指摘されると、数百億円で建設したホテルを2足三文の値段で地方自治体や民間に売り払った。官僚は数兆円の損失について何の責任も感じていないようだ。これによって失業保険の半分近くが消え去った。これらの施設を買い取った地方自治体の思惑は知らない。黒字に出来ると思って買い取ったのか、因果を含められて国から押し付けられたのかは知らないが、結局運営の赤字は地方自治体がかぶることになった。

岩瀬達哉著「年金の悲劇」(2004年4月 講談社)からグリーンピア関連の損失を記す。
「年金掛け金納付率がここまで下るともはや年金制度を維持できないことは火を見るより明らかだ。とすれば当然掛け金を集めて制度を運営する現行の社会保険制度をやめ、税金で給付財源を賄う税方式に切り替えるべきという議論が出てくる。なんとそれに対して厚生労働官僚は税方式には反対で取り立てやのまねをしても現年金制度の枠内で納付率を上げたいようだ。それはなぜか。答えは簡単だ。税方式になったら給付財源は財務省に移るので、厚生官僚の年金掛け金の管理運用権がなくなる。官僚のこだわりはこの年金管理運用権にあり、これが打ち出の小鼓だったのだ。すなわち我々の年金掛け金は官僚の甘い汁になっていた。事実と金の流れを丹念に積み上げてゆくことから次のような年金官僚の失態と腐敗が明るみに出た。これは多くの人たちの怒りと努力の結果である。事実の積み上げはこのページではできないので、表題の本を読んでいただくとして結果だけをしたの表に纏めた。またこのような官僚の利権構造は年金官僚に限ったことではなく、国土交通省の道路建設公団利権、旧郵政省の貯金・簡保基金運用利権(これが最大派閥橋本派の権力維持につながっている)、経済産業省の石油税を吸い上げるNEDO、農水省米利権などなど挙げだしたら切が無い。

1961年~2004年の間、厚生労働官僚はなんと9兆円の年金をすでに食いつぶしていたのだ。これを「掛け金の中抜き」というらしい。預けたつもりがなんと管理元でくすねていたというものだ。我々が納付した掛け金と年金支給金の差額を積立金というが、現在144兆円ある。この積立金に官僚は昆虫のように群がっていたのだ。その中抜きの規模の順に列記すると、

年金資金運用基金(運用による損金と年金住宅融資事業の焦げ付き) 5兆円
年金福祉施設の建設・整備維持費(厚生年金病院・年金会館・老人ホーム・グリーンピアなど) 1兆5820億円
福祉施設費として事務費に流用(オンラインシステム費・出張費・庁費など) 1兆5811億円 

断突一番は年金資金運用基金という外郭団体による損失である。十分な経験も無い官僚による金儲けは危険すぎる。通常は国内債券運用で止めておくべきものを、やってはいけない株運用によるハイリスク運用に手を染めたようだ。外国では考えられないような危険な運用策で大穴をあけてなお平然とし、無能官僚どのは責任を取るどころか出世して甘い汁を吸い続けている。こんな危ない連中から基金を取り上げなければ我々の積立金が霧散してしまう。二番目は軒並み赤字経営の病院・国民休暇村・年金会館などなど、そして最近取り潰しの趨勢になったグリーンピア保養施設(超豪華ホテル並み保養施設)の杜撰経営などなど、官僚による経営とは赤字は無限にある積立金を流し込めばいいという感覚らしい。そしてほぼ同額2位といっていい事務費への流用である。ここに高給腐敗官僚の甘い汁が隠されていたのだ。」