憲兵報告・公判狀況 4 『 磯部淺一 』

磯部淺一
・・・憲兵報告・公判状況 3 『 村中孝次、對馬勝雄、渋川善助、磯部浅一 』 の続き

第五回公判公判狀況
一、日時
 五月五日 午前九時開廷、午前十一時三十四分---午后一時五分休憩
午後三時十分---午後三時五十分休憩
午後五時二十五分閉廷
二、場所
 代々木練兵場仮兵舎内第一公判廷
三、進捗狀況
磯部淺一ニ對スル事實竝證據調 ( 二月二十六日ノ行動迄 )

四、審理ノ内容
1、劈頭、澁川善助ヨリ公判ノ進行ニ附発言ヲ求メタルモ、手記ヲ以テ申出デ、
 必要ト認ムレバ發言ヲ許スベキニ附 先ヅ手記ヲ提出スベシト命ジ、發言ヲ許サズ

2、磯部淺一ニ對シ前回ニ引續キ訊問ヲ開始シ、
 國家革新ノ思想ヲ抱クニ至リタル時期、其ノ後ノ經過、合法的手段ニ愬ヘタル事實、
非合法手段ニ愬ヘザルベカラザルニ至リタル事情、今回ノ事件ノ計畫、
同志トノ會合、聯絡ノ狀況、豫備實行ノ爲ノ行動ニ及ビ、二月二十六日ノ行動ヲ以テ打切リタリ

3、磯部ノ陳述中重ナル點次ノ如シ
(イ)  陳述中ノアラユル機會ヲ捉ヘテ、
 兵馬大權干犯シタル者ヲ斬テ大權ヲ奉還シタル義軍ナルコト、
下士官以下ノ意識ガ濃厚ニシテ國體顯現ノ爲立ツモノナリトノ主義ニ徹シアリシコト、
ヲ鞏調セリ

(ロ)  陸軍大臣官邸ニ到リタルトキ同官邸ニ在リシ私服憲兵ノ行動ニ關シ、
 豫審ニ於て讀ミ聞カサレタル同憲兵ニ對スル調書ノ内容ハ全然事實ト相違スル旨ヲ述ベ、
尚ホ 憲兵ガ誤りタル考ヲ以テ我々ノ運動ヲ壓迫セル爲十分合法運動ヲ爲ス能ハザリシコト  ヲ述ベ、
憲兵ノ將來ノ爲、國體観念ニ徹シ理解アル視察取締ヲ爲サレンコトヲ希望ス  トノ附言セリ。

(ハ)  參謀本部幕僚ノ一部ノ者ノ抱持スル皇族内閣奉戴ノ思想ハ 我ガ國體ト全然相容レザルモノナリ
  トテ、 之ガ排撃ヲ鞏調力説ス

(ホ) 靑年將校ノ國家革新運動ヲ以テ天保ト無天トノ爭ノ如ク表スル者アルモ、
 我々ハ決シテソンナケチナ考ヲ以テ運動ヲ爲スモノニアラズ、
要スルニ維新思想ト現狀維持思想、國體観念ト反國體観念ノ爭ナリ  ト鞏調ス

(ヘ)  山口一太郎大尉ニハ事件直前自分ヨリ計畫ノ内容ヲ打明ケタル処、
 同大尉ニハ止メルコトモ出來ズ、勧メル譯ニモ行カズ、非常ニ困ツタ様子デアッタ
ト述ベ、同人ノ立場ヲ弁護セリ

(ト)  荒木大將ハ公演向ノ人、眞崎大將ハ斷行ノ人ナリ  ト評ス
( 以上 )

憲兵報告・公判状況 5 『 磯部浅一、香田清貞 』 に続く
二 ・二六事件秘録 ( 三 ) から