嶋津隆文オフィシャルブログ

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藤沢周平の時代小説の秀作映画『山桜』に泣く

2010年04月05日 | Weblog

写真:映画『山桜』

4月3日は松蔭大学の入学式。厚木の森の里の桜も満開で、絵にかいたような初々しい入学式の風景に、心浮き立つものがありました。どうやら加齢とともに、若者のどんなしぐさにも感動するようになるのは情けないものです。

その小さな興奮に乗って、改めて満開の桜の花の物語に泣いて見たいと思い立ち、藤沢周平の時代小説を映画化した『山桜』をDVD店で借りてきました。そして案の定、思い切り涙させられる日曜を過ごしました。

主演は東山紀之と田中麗奈。藤沢周平ワールドたる海坂藩を舞台に、藩の正義のために命をかける一人の男と、それを慕う他家から出戻った娘との交情を描いた作品です。
山桜を手折って渡す二人の僅かな出逢いの場面を軸に、極端な程に会話を抑制し、しかし溢れる感情を表現していくのです。そのしたたかな演出ぶりに舌を巻かされました。

藤沢周平の映画には常に強烈な清冽感があります。『蝉しぐれ』、『武士の一分』、『たそがれ清平衛』など一連の作品に共通する醍醐味です。

それだけに藤沢作品は、今日の私たちが忘れかけようとしている日本人の「心」というものを、残酷なほどに伝えるものと言われます。そうした大上段に構えた指摘も、『山桜』を見終えた余韻に中にあると、素直を受け止められることは間違いありません。

コメント (1)
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