嶋津隆文オフィシャルブログ

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共産主義の陰が漂う「ブダペストの朝」

2010年04月12日 | Weblog

写真:南雲栄一作「ブダペストの朝」

週末、新国立美術館の展覧会に友人の絵が展示されると聞き足を運びました。上の作品「ブダペストの朝」です。ドナウ川とその向こうに姿をみせる国会議事堂を流麗なタッチで描いたもので、こうした才能ある友人の存在は間違いなく私の一つの誇りです。

さてブダペストは古くからドナウの真珠とも称される美しい街です。が、ドナウ川にかかる鎖橋を挟んで1955年にソ連軍とハンガリー市民が衝突し、数万の人の血が流されました。私が訪れた1980年代末は、まだその傷跡を引きずっており、ウイーンから入国の際も銃を持った兵による厳しい検問を受けたものでした。

ハンガリー動乱と言い、あるいはプラハの春事件と言い、常に共産ソビエトの重さに苦い思いを味わわされてきたのが戦後世界です。しかしいつの間にか、共産主義の属性というものを忘れかけていた昨今でした。それが、友人の明るい「ブタペストの朝」作品を見ることで、思わずあの陰湿さを想起させられたのは皮肉と言う他ありません。

そんな昨晩、ポーランドの大統領たちの飛行機が墜落し、100人近い人々が死亡したとニュースが流れました。すわっ、ロシア軍の策略ではないか。思わず条件反射的のこう考えてしまいました。その遭難の森が、スターリンがポーランド将校2万人を虐殺したカチンの森の近くだということも頭をよぎりました。

血塗られた事件には、常に共産主義の影を感じてしまうのです。染みついたような共産主義への不信を、いつまでも歴史は私達に残しているようです。思想や人間のつくる組織の怖さを改めて思い出させる、花冷えの日曜でした。


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