大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

やくもあやかし物語・102『鬼の手・2』

2021-09-25 14:12:54 | ライトノベルセレクト

やく物語・102

『鬼の手・2』   

 

 

 鬼の手を前に考えている。

 

 願いが叶うラッキーアイテムなんだけど、ちょっと考えものなんだ。

 中秋の名月の夜、ピザが食べたいって思ったのよ。

 するとね、お婆ちゃんがピザを注文してくれていて、お願いが叶った……。

 ちょっとね、簡単すぎて気味が悪い。

 例えばよ、ネットニュースなんか見てて「こんな奴死ねばいいのに」って思うことあるじゃない。

 殺人とか、子どもの虐待だとか、女の人を騙したとか。

 そういう呟きを拾って実行されたら怖いじゃない。

 子どものころね「死ね」が口癖だった時期がある。

 今は言わない、いや、言ってないと思う……自信ない。独り言で言ってるかもしれないよ(;'∀')。

 そんな独り言で実行されたらかなわない。

「考えすぎだよ」

 チカコが言う。

 チカコの言うこともアテにならない。

 

 でも、集中力が続かなくって、お風呂に入るころには忘れてしまう。

 髪の毛を拭きながら部屋に戻ると、開け放ったドアの前にゴキブリが歩いている。

 死ね!

 悲鳴の代わりに言ってしまった。

 ポテ

 一瞬で、ゴキブリは動かなくなってしまった。

 すぐに、机の上の鬼の手に目が行く。

 ゴキブリの死骸を始末して、わたしは鬼の手を机の奥にしまい込んだ。

 

 そのあくる日、鬼の手をどうしてやろうかと思いながら学校から帰る。

 

 引き出しに仕舞いっぱなしというのは、なんだか負けたような気がする。

 そうだ、あいつは見かけは孫の手なんだ。

 だったら、孫の手として扱ってやれば『自分の本来の仕事は孫の手なんだ』と自覚するかもしれない。

 思ったら実行。

 孫の手の鬼の手を出して、襟首から突っ込んで背中を掻いてみる。

 ゾク(#゚Д゚#)

 痒くもないのに、孫の手が触れるとゾクっとする。

 プツン

 抜こうとしたら、ブラの後ろに引っかかってホックが外れてしまった(#^_^#)。

 クソ、やっぱりおちょくられてる。

 こういう時は、一人で思い悩んでもろくなことがない。

「ちょっと出かけてくる、お風呂掃除までには帰るから」

 リビングに声を掛けて、玄関にいそいだ。

『なんだ、やくも……』

『孫の手握ってましたねえ……』

 お爺ちゃんお婆ちゃんの声を背中で聞いて、わたしは二丁目地蔵のところに急いだ……。

 

☆ 主な登場人物

  • やくも       一丁目に越してきて三丁目の学校に通う中学二年生
  • お母さん      やくもとは血の繋がりは無い 陽子
  • お爺ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い 昭介
  • お婆ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い
  • 教頭先生
  • 小出先生      図書部の先生
  • 杉野君        図書委員仲間 やくものことが好き
  • 小桜さん       図書委員仲間
  • あやかしたち    交換手さん メイドお化け ペコリお化け えりかちゃん 四毛猫 愛さん(愛の銅像) 染井さん(校門脇の桜) お守り石 光ファイバーのお化け 土の道のお化け 満開梅 春一番お化け 二丁目断層 親子(チカコ) 俊徳丸 鬼の孫の手
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魔法少女マヂカ・235『本命は野次馬の中に』

2021-09-25 09:17:27 | 小説

魔法少女マヂカ・235

『本命は野次馬の中に語り手:マヂカ  

 

 

 なんちゃら勇士!  怪力なんとか!  無双闘士なになに!  剛力なにがし!  なんとか烈女!  ブゥオイナ~  デストロイヤーなんとか!

 勇ましくも怪しげなリングネームがひしめいていたが、公園でデモンストレーションをやっている連中は浅草の見世物小屋の看板みたいな奴ばかりだ。昭和のプロレスのヒール役めいたコスやメイクは威嚇のためというよりは人目を引いて客を引き付けようという感じだ。

「こいつらは、ただのニギヤカシだな」

 ブリンダの言う通り、猛々しい出で立ちや掛け声のわりに、観衆はにこやかで面白がっている。

 トリャーー!

 犬の仮面をつけたやつが空中二回転、空中で決めポーズしたあとに蹴りの姿勢になる。

「試合でやったら、飛び上がった瞬間に蹴り倒されておしまいだ」

 旋風鬼女という女闘士は広げた腕を丸く抱えたかと思うと、コマのように旋回し始めた。

 勢いがあるので、落ち葉や埃を舞いあげて、竜巻のように勇ましい。

「コスの端を掴まれただけで転倒して一巻の終わりだね」

「あいつは、たぶん火を噴くぞ」

 ブリンダが嬉しそうに指さした男は、連続バク転のあと、見栄を切ってゴジラのように火を噴いた。

「すごい、あっちは、ゴリラそっくりだ!」

 大北京原人と名札をぶら下げた奴は、ウホウホと胸を叩くと、ゴリラそっくりに「ガオーー!」と吠えた。

「いや、あれは本物のゴリラだろ(^_^;)」

 公園の管理官のような男が出てきて、付き添いに注意している。

「公園に動物は入れるなと言ってるね」

「試合というよりは見世物という感じか……」

「こいつらは、ほとんど前座のパフォーマーでしょ……本気のやつらは野次馬の人垣の中にいる」

「だな……」

 

 ピーーーーーン

 

 意識を野次馬に向けたとたん、あちこちから殺気が返ってきた。

 五人……それ以上いるかもしれない。

 あるものは物売りのハゲチャビン、あるものは眼鏡の書生風、またある者はチャイナツインに髪を結った少女、船員風、中には一瞬のうちに殺気と姿を消した奴もいる。

「キャア、こわいい~」

 ブリンダがブリッコをかますが、ちょっと遅かった。

 同じ女学校の制服を着たアジア系とゲルマン系の少女が近づいてきた。

「あなたたち、魔法少女ね」

「「…………」」

 どストライクに突っ込まれて言葉が出ない。

「それも、21世紀からやってきた」

「でしょ?」

 逃げようと思ったが、ブリンダが前に出てしまった。

「だったら、どーよ?」

「フン」

「やっぱり」

「!」

「相手になっちゃダメ!」

「その声は……日本特務のマヂカだね」

 

 ゾワゾワア!

 

 四人の真ん中に旋風が巻き上がる。

 実力の伯仲した魔法少女が対峙すると、空間が張り詰めて局所的な竜巻や嵐を起こしてしまうのだ。

「おまえたちは!?」

 ブリンダの髪が逆立つ。

「プロイセン魔法少女のメルケルよ!」

「満州魔法少女の剣旋嬢!」

 くそ、こんなところで戦うわけにはいかないんだけど……。

 周囲の野次馬たちも、あまりの殺気に注目し始めている。

 仕方ない、公園の外にダッシュして、なるべく短時間で勝負をつけるか……

 

 ちょっと、あんたたち!

 

 人垣の向こうから声がした。

 

 

※ 主な登場人物

  • 渡辺真智香(マヂカ)   魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 要海友里(ユリ)     魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 藤本清美(キヨミ)    魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員 
  • 野々村典子(ノンコ)   魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 安倍晴美         日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長
  • 来栖種次         陸上自衛隊特務師団司令
  • 渡辺綾香(ケルベロス)  魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
  • ブリンダ・マクギャバン  魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
  • ガーゴイル        ブリンダの使い魔

※ この章の登場人物

  • 高坂霧子       原宿にある高坂侯爵家の娘 
  • 春日         高坂家のメイド長
  • 田中         高坂家の執事長
  • 虎沢クマ       霧子お付きのメイド
  • 松本         高坂家の運転手 
  • 新畑         インバネスの男
  • 箕作健人       請願巡査

 

  

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ライトノベルベスト・『男子高校生とポケティッシュ』

2021-09-25 05:54:14 | ライトノベルベスト

イトノベルベスト

 『男子高校生とポケティッシュ』 

 




 ボクは街頭で配っているポケティッシュを必ず受け取る。

 正確に言うと、無視ができない。

 ポケティッシュを配っているのは駅の入り口(出口でもある)商店街の入り口や、交差点。それも人の流れを掴んだ絶妙な場所に立っている。受け取らないようにしようとすると、かなり意図的にコースを外れなければならない。なんだか、それって露骨に避けているようで「あ、避けられた」と思われるのではないかと、つい前を流れのままに通って受け取ってしまう。友達なんかは、すごく自然にスルーする。まるで、そこにティッシュを配っている人間が居ないかのように。それも、とても非人間的な行為に思えてできない。

 子どもの頃は、ポケティッシュをもらっても家に帰ってお婆ちゃんにあげると喜んでくれた。お婆ちゃんは、家のあちこちに小箱に入れたポケティッシュを置いていて、みんなが使うものだから自然に無くなり、ボクがもらってくるのと、無くなるのが同じペースだった。

 だから、なんの問題もなかった。

 二年前にお婆ちゃんが亡くなってからは、そのサイクルが狂いだした。お婆ちゃんが亡くなってからは、ボクはポケティッシュを誰にも渡さなくなった。正確には忘れてしまう。お婆ちゃんのニコニコ顔が、ボクの脳みそに「ポケティッシュを渡せ」という信号を送っていたようだ。

 ボクがもらったポケティッシュは、カバンやポケットの中でグシャグシャになり、使い物にならなくなってしまう。

「もういい加減、この習慣やめたら」
 と、お母さんは言う。
「だって……」
「だって、あんた、時々ガールズバーとかのもらってくるんだもん」
「しかたないよ、渋谷通ってりゃ、必ずいるもん」
 お婆ちゃんは、こういうことは言わなかった。

 で、この治らない習慣のために『男子高校生とポケティッシュ』なんてモッサリしたショートラノベを書かれるハメになってしまった。
 ラノベと言えば、タイトルの頭に来るのは女子高生という普通名詞か、可愛い固有名詞に決まっている。「ボク」とか「俺の」とかはあるが、むき出しの「男子高校生」というのはあり得ない。

 そんなボクが、いつものように渋谷の駅前でポケティッシュをもらったところから話が始まる。

「おまえ、またそんなものもらってんのかよ」
「なんだか、オバハンみたいでかわいいな」
「てか、それガールズバーじゃんか」
「アハハ」

 そうからかって、友達三人は、ボクの先を歩き出した。ボクは、一瞬ポケティッシュをくれた女の子に困惑した顔を向けてしまった。コンマ何秒か、その子と目があってニコッと彼女が笑った……ような気がした。

 ドスン

 後ろで、衝撃音がした。

 振り返ると、友達三人が、バイクに跳ねられて転がっていた。ボクはスマホを取りだして、救急車を呼んだ。もしポケティッシュをもらわずに、三人といっしょに歩いていたら、運動神経の鈍いボクは、真っ先に跳ねられていただろう。

 警察の事情聴取も終わり、病院の廊下で、ボクは友達が治療され、家の人が来るのを待っていた。

 気づくと、ズボンに血が付いていた。「あ」と思って手を見ると、左手の甲から血が流れている。事故の時、小石かバイクの小さな部品が飛んできて当たったのに気が付かなかったみたいだ。リュックからポケティッシュを出して傷を拭おうとした。慌てていたんだろう、ティッシュの袋の反対側を開けてしまい、数枚のティッシュが、中の広告といっしょに出てしまった。我ながらドンクサイ。

 取りあえず血を拭って、廊下に散らばったティッシュと広告を拾った。

――当たり――

 と、広告の裏には書いてあった。

 三人とも入院だったけど、家族の人が来たので、ボクは家に帰ることにした。
 帰ると、お母さんが事情を聞くので、疲れていたけど、細かく説明した。ぞんざいな説明だと、必ずあとで山ほど繰り返し説明しなければならないので、お父さんや妹、ご近所に吹聴するには十分な情報を伝えておいた。ボクは、何事も、物事が穏やかに済む方向に気を遣う。

 部屋に入ってビックリした。

 女の子が一人ベッドに腰掛けていた。
「お帰りなさい」
 百年の付き合いのような気楽さで、その子が言った。
「ただいま……て、君は?」
「当たりって、書いてあったでしょ?」
「え、ああ、うん……」
「あたし、当たりの賞品」
「え……」
「長年ポケティッシュを大事にしていただいてありがとう。ささやかなお礼です」
 そう言うと、彼女は服を脱ぎだした。
「ちょ、ちょっと」
「大丈夫、部屋の外にには聞こえないようになってるわ。時間も止まってるし、気にしなくていいのよ」
 そう言いながら、その子は裸になって、ベッドに潜り込んだ。
「あ……そういうの」
「ダメなの……?」
「あ、ごめん……」
「フフ、君ってかわいい……いい人なんだね」
「どうも……」
「じゃ、三択にしましょう。①・一晩限りの恋人。当然Hつき。②・一年限定のオトモダチ。ときどきいっしょに遊びにいくの。➂・取りあえず、一生の知り合い。さあ、選んで」

 こういうときは、ボクは、一番消極的なものを選ぶ。

「じゃ、取りあえず知り合いってことで……」
「わかったわ」
 そういうと、脱いだ服をベッドの中で器用に着て、部屋を出て行った。

「じゃ、またね」
 それが最後の言葉だった。

 明くる日、電車の中で気分の悪くなった女子高生を助けた……というか、気分が良くなるまで付き合った。
 それがきっかけで、ボクは彼女と付き合い始め、五年後には結婚することになった。

 誓いの言葉を交わし、エンゲージリングをはめてやって気が付いた。

「ね、一生の知り合いよ。なにもかも知り尽くそうね」と、彼女が言った……。

 

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