大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・Mのイレギュラーマガジン・42『オビツ150をユウナに!改訂版』

2015-05-26 18:49:55 | エッセー

Mのイレギュラーマガジン・42
『オビツ150をユウナに!改訂版』



 前号で首のすげ替えの話をしましたが、ファイナルファンタジーⅩのユウナにならないだろうかと少し考えていました。

 以前のアナ発展系のでも良かったのですが、見比べてみるとやってみたくなりました。
 

 ファイナルファンタジーⅩは、仕事や子育て介護などでアップアップしていたころに、まだ小学一年だった息子とカミさんと、毎日60分ほど懸命になれ、いっしょに時めいたり、泣けたり、笑えたりした我が家では、まだ家族が一つでおられたころの、記念碑的なゲームでした。

 その一番人気がユウナであることはもちろんのことです。

 ユウナは、概ね七等身ですが、場面やポップによっては八頭身近くあります。で、リアルヘッドで試してみました。

    

 むつかしいもんです。リアルでベッピンさんではあるのですが、まだ首が馴染んでいないこともあり、前の首が持っていた生命感が少し欠けます。

 で、アップで撮ってみました。

    

 左の方で、少し成功しました。

 カーテンを通した日光が、ちょうどアンバーになり、ユウナの美しさ一途さ、そして少し憂いが出ているように思います。
 右は、自然ではありますが、ユウナの個性からは少しズレているように思います。

 違う首で、こんなユウナもつくりました。

 ヘアーメイク用の1980円の安物ですが、手を加えればこの程度にはなります。

    

 少しポッチャリしましたが、温もりが出てきました。目も少し大きく左右の目の色の違いもよく分かります。好みの問題ですが、この明るいユウナも有りかと思います。左の全身像の左下に見えているのが、前のユウナの首、右袖の下にアナ系の一号が写っています。


 以前も書きましたが、これが出来たのは、オビツ150の身長を10センチほど伸ばしたからです。わたしは自分のやり方で伸ばしました、みなさんも、それぞれ工夫なさってみてはいかがでしょうか。


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高校ライトノベル・ライトノベルセレクト・313『有頂天演劇部!』

2015-05-25 16:57:34 | ライトノベルセレクト
ライトノベルセレクト・313
 『有頂天演劇部!』 
            

「チェ、またか……」

 スマホで確認して、思わずつぶやいた不満げな一言を、里依紗は聞きとがめた。
「なにがまたやのん……?」
 黙って聞き逃してくれたら、そのあとの修羅場はなかった……と思う。
「今年の本選、また箕面のMホールやで、信じられへんわ」
「しゃあないやろ。予算やら、みんなの希望やらいろいろあるんやから。さ、みんな基礎練終わったら教室戻って、稽古の体制にしといて」
 三人の新入生と一人の四人を「みんな」と呼ぶのは、里依紗の有頂天さから来てる。言われた後輩四人も有頂天に「ハーイ!」とNHKの「おかあさんといしょ」みたいにお返事。

 こないだの連盟の講習会は七百人もおって、意気込みと熱気だけはすごかった。そやけど、所詮は総会の裏番組の二時間足らず。なにが会得できるもんやあらへん。里依紗は、講師の先生に「いい勘してるわね」と言われて有頂天に羽が生えた。うちは終始不満やった。
 
「言うだけは言うてみるわね」

 顧問の佐伯は、そない言いよった。コンクールの本選と講習会、一昨年は箕面のMホールで、うちら南部の演劇部は行って帰って来るだけで大変やった、それで、去年は門真のホールに変わった。それが今年はまた箕面のMホールや。
 関空除いたら、大阪は日本で一番狭い。そやけどうちらのI市から、箕面は二時間前後かかる。そやから、佐伯には「くれぐれも箕面に戻らへんように発言しといてくださいね」と言うといた。

 それが、連盟のサイトを開いてみたら、全会一致で箕面の開催が決まったと出てた。佐伯は発言すらしてない様子や。

「うまいこといったから」

 にこやかに言うた佐伯の表情を信じたうちが、アホやった。

「里依紗、うち演劇部辞めるわ」
「え……なんで?」
「一年の時言うたやろ。うちは役者になりたいねん。ほんまは劇団の養成所に入りたかった」
「それは、何べんも聞いた」
「聞いてるだけで、頭に入ってない。演劇部におっても演劇人としては成長でけへん。おもんない芝居しかでけへんから、予選なんか閑古鳥や」
「そやけど、O高校のなんたら言う卒業生なんか『ほどほどのお家』に抜擢されて、金虎賞もろうてたやんか」
「そのO高校、去年は予選で敗退やで。知ってる? 顧問の中岡、定年で学校放り出されて、今はどっかの学校の講師やで。白木さんがプロになれたんは、あの人の素質や、関係あれへん」
「そやけど、中岡先生SNSで、平間オレサと意見交換して、えらい盛り上がってたて書き込んではったで」
「そんなもんハッタリや。力になる先生やったら定年やいうて、、学校がほっとくか?」
「それは、芝居に専念しよ思うて、自分から……もっぱらの噂やで。千里、ちょっとどこ行くんよ!?」
「言うたやろ、うちは演劇部辞めんねん。あの嘘つき佐伯の顔は見たいとも思わんさかい、里依紗から言うといて。ほんならな」
「ほんならて、今のクラブ、あたし一人でやってけ言うのん!?」
「やったらええやん。数は少ないけど、やる気は満々や。おためごかしの優秀賞もろうて有頂天になれてる勢いでやったらええやんか」
「なんやて!」
 里依紗の手がうちの肩にかかった。うちが、それを払いのけると、今度は里依紗の手が飛んできた……。

 この修羅場は二階から後輩らが観てた。あとで聞いたら「ごっつい感情の籠ったケンカのエチュードでした!」と有頂天の後輩らは思うたらしい。

 エチュード言うか、芝居と言えば、演劇部に入部して初めての大芝居やった。ただクラブを辞めるんやったら、黙って行かへんようにしたら済むこっちゃ。他の辞めていった部員と同じように。

 うちは、これを浜崎君に見せたかった。

 自分で言うのもなんやけど、浜崎君は先週うちにコクってくれた。浜崎君は、誰も知らんけど東都映画のニューフェイスで、将来を嘱望されてる。所属は東京のAプロ。むろん高校演劇なんちゅうもんには良くも悪くも興味ない。普通にリアクションしても意味が無い。浜崎君と仲良しになって同じダクショに入る。最初は通行人でもなんでもいい、とにかく本物の世界で鍛えなくちゃ、

 うちは、けして有頂天にはなれへん。人を有頂天にさせてのし上がっていく。二年間の演劇部のブランクを一年足らずで取り戻すんや。

「すごいよ、本当のケンカになるようなら止めに入ろうかと思ったよ」
 植え込みの向こうで見てた浜崎君が興奮気味に駆け寄りながら誉めてくれた。

 虚実皮膜。それを胸にケンカもするし、恋もする。うちの有頂天は、まだまだ先。

 たった今、幕が開いたとこやから……。



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高校ライトノベル・Mのイレギュラーマガジン・41『オビツ150の首と衣装を替えてみました』

2015-05-23 22:49:36 | エッセー

Mのイレギュラーマガジン・41
『オビツ150の首と衣装を替えてみました』

 

 

注意:わたしのブログを騙って成人向けサイトに誘導するものがあります。URLの頭blog.goo.ne.jpを確かめて入ってください。blog.goo.ne.jpではないものはわたしのブログではありません。 閲覧の皆様へ

 



                                

  全部、同じオビツ150です。衣装やウィッグやヘッドを替えると、全く違うものになります。ボディーは改造で9センチ身長を伸ばしています。


 女性には失礼なのですが、古い落語の枕に、こんなのがあります。

 どんなブスな嫁でも三月見れば慣れるし、どんな美人でも三月で飽きる。


 で、慣れたわけでも、飽きたわけでもないのですが、衣装に合わせて顔が替わればと思っていました。
 わたしのオビツ150は、元来アナ雪のアナにしたくて、顔の造作を決めました。当然アニメ系であります。  

 で、ちょっとリアルな顔立ちのものにしたくなりました。
 猛者(モサ)はン万円もするようなシリコン系や、ソフビでも相当値段の高い首に挿げ替えておられます。
 なんとか5000円以下でできないかとボンヤリ考えていました。そして、この首に出会いました。リアル ヘッドマネキンで検索すると出てきます。その後、美容師の練習用のカットウィッグに出会い、同じ改造を施しました。上の写真の6番目と7番目がそうです。

   

 帽子やウィッグの展示用のディスプレイヘッドです。素材は樹脂と書いてありましたので、写真の質感からオビツと同じ硬質ビニールと見当をつけました。

 手数料込みで4304円でした。発注してから楽天で2900円のものを発見。まあ、こういうこともあります……無念!

 届いてみると当たりで、オビツ150のヘッドと同じ硬質ビニールでした。首と頭の境目で切断しました。新旧の首を並べてみました。

 

 違いは二つの意味で歴然です。

 顔色が少し違います。両方とも元来はホワイティーですが、アナ似の方は何度もチークを中心にピンクを色鉛筆で重ね塗りしているので血色が良く、新しいリアル ヘッドマネキンの方は、アイシャドウのブルーが顔全体にウッスラとかかって、少し青白く見えます。
 目と口は触らないようにして、プラモ用のシンナーで拭き取り、付いていたツケマも手持ちの耐熱性のものに付け替え、顔のメイクをやり直しました。
 当たり前ですが、リアル ヘッドマネキンの方が人間の顔に近い出来です。カットウィッグは、さらにリアルです。
 さて、胴との接合方法ですが、首の中は空洞なので、本体を買ったときに残しておいた梱包用の硬めのウレタンを詰め込みました。ウレタンには首の結合パーツが収まるように、おおよその勘で凹部を作っておき、補強にボール紙のパイプを本体の首のジョイントに合わせてかませると一発でおさまりました。

      

 ドールの面白いところでヘッドが替われば、完全に別の人格になります。
 新しい方は、まだシックリきませんが、芝居に例えると、新しい役者に出会ったようなものです。

 イマジネーションの世界は、確実に広がりました。

 

 ☆ 胴の長さが足りない       

 右上の写真を見てください。

 両方とも『アナ雪』のアナですが、様子が違いますね。

 左の方がずんぐりむっくりの寸足らずです。これは、身長150センチの標準体よりも5センチ胴が短いためです。

 たぶん重心とか安全性のためなのでしょうが胴を短く作ってあります。そのため身長に見合った衣装を着せると寸詰まりなだけでなく、ツーピースの場合、上着の腰の部分がヒップに干渉されてパッツンパッツンになります。

 胴の長さを9センチちょっと延長したものが右です。あきからかに違うと思いませんか?

 伸ばし方は、別のブログで書いていますので、参考になれば幸いです。

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高校ライトノベル・小規模少人数高校演劇部用戯曲脚本台本『ノラ 大阪が無くなる日』

2015-05-19 06:48:46 | 戯曲
 戯曲・ノラ 大阪が無くなる日 バーチャルからの旅立ち

大橋むつお          

時      百年後
所      関西州と名を改めた大阪

登場人物
好子     十七歳くらい
ロボット   うだつの上がらない青年風
まり子    好子の友人
所長     ロボットアーカイブスの女性所長
里香子    アナウンサー(元メモリアルタウンのディレクター)
チャコ    アシスタントディレクター



遠く踏み切りと電車の音。かすかに懐かしい街のさんざめき。それらの音の中、幕あくと。みごとに何もない。ややあって里香子が百年前の女子高生の制服にマイクを持ち、無対象の自転車を曳いてあらわれ、舞台奥で自転車を止める。カシャンとスタンドをたてる音がする。

里香子  テスト、テスト……ワン、ツー。ワン、ツー……マイクオーケー。カメラさんいいかなあ……2カメさんテカってない……オーケーね。(無対象で店のシャッターを開け、自販機で缶コーヒーを買う)あとは……3D用のモデムのチェック。

ADのチャコが息を切らせてやってくる。携帯端末(以下ポッド)を手に、里香子同様の制服姿。

チャコ 先輩! 里香子先輩! 大変、大変!
里香子 どうしたの。リボン曲がってるよ。
チャコ モデムがいかれちゃって(携帯端末をミラーモードにして、リボンを直す)
里香子 え。じゃあサーバーと切れてんの?
チャコ いま、ヤマさんが必死で直してます。
里香子 だって舞台はちゃんと……(客席への階段を数段降りてみる)あ、やだー、まるっきりの裸舞台じゃん!(舞台にもどる)でも、舞台じゃちゃんと見えてるわよ。
チャコ 舞台用のモデムは生きてるんです。
里香子 あげる(缶コーヒーをチャコに渡し、携帯によく似たポッドを出す)ヤマちゃん、直せる……わかった。
チャコ でも先輩、なんでわたしたちまでこんなコスプレしなきゃいけないんですか。
里香子 しかたないでしょ。制作費安いんだから。それにロードしてるセットはメモリアルタウンのだから、規定で昔のコスじゃないと入れないの。
チャコ でも、もうナニされるんでしょ、ここ……。
里香子 どうせ出戻りの局アナ。でもね、このメモリアルタウンには命かけたのよ。
チャコ わたし、好きですよ。この百年前の町。
里香子 ちょっとチグハグなとこもあるけどね。モデルが、「サザエさん」と「ドラえもん」「クレヨンしんちゃん」それにちょこっと「おかみさん、時間ですよ!」
チャコ わたし、それ知りません。
里香子 ほら、あそこの煙突。「松ノ湯」って書いてあるでしょ。
チャコ ああ……煙突にだれか登ってますね。
里香子 ああ、堺正章。その向こうに「じゃりン子チエ」の横丁があるの。大阪も東京も埼玉もごっちゃ。
チャコ 埼玉って?
里香子 ああ、今は関東州に飲み込まれてる。ここいらも昔は大阪府っていったんだよ。
チャコ 地歴で習いました。八十年前に関西州になったんですよね。
里香子 この制服ね、百年前に廃校になった大阪府立商業の制服なんだよ。
チャコ 名門校だったんですね。
里香子 わたしのひい婆ちゃんが通ってたの。で、そのころの写メをもとにレプリカつくったの。シックで評判よかったんだよ。もっとも、廃校になってからだけどね。いいものは止めてから評価されるってか(無意識に缶コーヒーを取り、飲む)ん……ごめん。
チャコ あ、いいえ。でも、なんか乙女チックになりますね。どうして評価しなかったかなあ、これを。でも、これ着て、あの大阪弁てへんてこな言葉使ってたんですね。「なに言うてはりまんねん。いてこましたろか」(アクセントがめちゃくちゃ)
二人 アハハハ……(チャコ、飲んでみて空、ため息をついて空き缶をゴミ箱に捨てる)
里香子 道州制になってから、方言ってなくなっちゃったからね。
チャコ 里香子先輩、そろそろ時間ですよ(ポッドで確認)
里香子 ヤマちゃん、まだ? え、舞台のモデムと交換!? だめだよ、こっちは規格が違うし……前の失敗が今度の企画に? 笑えないよ、それって。それに、こっちまでいかれたら役者が動けなくなっちゃうよ。え、お客さんのポッドでモデムに? そんな高性能なポッド持ってる人なんかいない……。
チャコ あ、音響もアウトだって!
里香子 え、音響も!?
チャコ どうすんですか?
里香子 音響をアカペラで……?
チャコ それって……。
里香子 その方が風情が……もう、なんだと思ってんのよアナウンサーを!
チャコ 先輩。二十秒前!
里香子 あの子、いえ、役者にも言っといてね。
チャコ はい、じゃあ。グッドラック!(チャコ、里香子の真剣な目に気づき黙礼して去る)
里香子 あ、十秒前(さっと会場を見渡す)五、四、三、二……みなさんこんにちは。司会の武藤里香子です。このたびメモリアルタウンからこのNOBCにもどってまいりました。NOBC、なんの略称かご存じでしょうか、ニホン、オオサカ、バンバチョウノ、チョウナイカイ……ハハハ、ウソですよ。でもこのシャレの中には、今では死語になった大阪という地名が入っています。この二十二世紀、私たち日本人は前世紀に多くの苦難を乗り越えて、新しい文化を手に入れました。スカイツリーに始まり、リニア新幹線、多目的携帯端末Jポッド。本日は、私どもの不手際でモデムが故障しまして会場のみなさんには何もない裸舞台に見えていると思います。まことに申しわけございません。もし最新型のJポッドXをお持ちの方がいらっしゃいましたら、NOBCにコネクトしてくださいませ。この懐かしの昭和や平成の町並みを再現しましたメモリアルタウンの舞台をご覧になれます。テレビをごらんのみなさんには中継車のモデムが生きておりますので、きれいな3Dの映像が届いていると存じます。さて……私たちが二十二世紀になって手に入れたものにロボット、アンドロイドがございます。皆さんの中にもアンドロイドといっしょにご覧の方もいらっしゃるかと存じます。この新しいパートナーは私たちの生活を助けてくれ、また癒してもくれます。しかし、私たちはこの新しいパートナーとの関係をまだ十分には築けていないのではないでしょうか。昨今ロボットやアンドロイドをめぐってのトラブルが増えてきました。そこにはわたしたちが便利さや快適さと引き替えに、前世紀に置き忘れてきた何かを象徴するものがあるような気がします。そんな問題というか、心のトゲを、実話をもとに、劇場中継という放送の原点に立ち返えり、このメモリアルタウンを舞台に再現してみました。会場の皆さん。テレビをごらんの皆さんもごいっしょにお考えいただければ幸いです(礼をして退場)
▼     
上手から好子が現れる。百年前のセーラー服を着ている、舞台中央あたりまで来ると、カバンとポニーテールをぶんまわして振り返る。顔が怖い。上手から、レトロな機械の音をさせて、ロボットが現れる。一見ふつうのウダツのあがらない青年風であるが、腕に旧式ロボットであることを示すセキュリティーを兼ねたアームバンド型のパーソナリティーモジュールをしている。

好子 ったく。人より遅いロボットなんて聞いたことないよ!
ロボ ソンナコト言ッタッテ、ポンコツナンダカラ、ボクハ。
好子 そんな弱気でいるから、ますますポンコツになってしまうんじゃない。しゃきっとしなさいよしゃきっと。
ロボ ダッテ、アッチコッチ、ガタガキタカラ、仕方ナイヨ。膝ノ間接は、ベアリングガ減ッチャッテルシ。シリンダーカラオイルハ漏レテルシ。バッテリーは六十パーセントシカチャージデキナイシ。アイカメラハ、レンズニカビガ生エテルシ。腰ノボルトハヒズンデシマッテ、歩クタンビニイヤナ音ガスル。人工皮膚モ、アチコチ剥ゲテ、ミットモナイッタラアリャシナイ。ダイタイ、モトハト言エバ、オーナータル好子クンガ、手入レヤ、メンテナンスヲ怠ッタカラデアッテ、コレハロボットオヨビアンドロイド愛護法ノ精神ノナンタルカヲ理解シテイナイカラデ……。
好子 それだけしゃべれて、どこがポンコツなのよ。
ロボ 言語サーキット一番ジョウブ。ボディーノポンコツ関係ナイ。好子モヨクシャベル。
好子 よけいなお世話。わたしがしゃべるのは必要があるからよ。
ロボ コナイダモ、マリチャント電話デ三時間二十五分三秒モシャベッテタ。アレ、ナンノ必要カ?
好子 友達のこととか、いろいろ大事な話があるの!
ロボ 大事ナ話、直接会イニイケバイイ。マリチャンチハ歩イテ五分。走ッテ二分二十秒。
好子 電話むきの大事な話もあるの。
ロボ ソレナラ立体電話ニスレバイイ。
好子 あれは通話料が高いから、遠慮してんの。お父さんに悪いでしょ。
ロボ NTTコドモガ、コドモムキノ安い立体電話ハジメタノ知ッテルクセニ。
好子 でも、ふつうのポッドの三割増しよ。やっぱ公務員の娘としては考えちゃうでしょ。
ロボ ノンノンノン、知ッテルヨ。コノゴロ普通ノポッドノ方ガハヤッテルノ。
好子 わたしは……。
ロボ 立体電話で長話スルト、ボロガデチャウノヨネ。思ワズ、ハナクソホジッタリ、水虫カイタリ、寝ッコロガッテ行儀ワルクシタラ、パンツガ見エタリ。ソウイウミットモナイトコ見ラレズニ長電話シタイダケナノヨネ。
好子 あのね……。  

この時、遠くから好子を呼ぶ声

まり子 好子~!
ロボ ア、ウワサヲスレバ……。
好子 まりちゃん!
まり子 よかった、追いついて。好子んちへ行ったら、ロボくんと外へ出たっていうから。
好子 うん。
まり子 たぶんここかなって。あ、好子の浪速女学院のコス! ロボくんはわたしと同じ大阪府立商業だ! ハハ、一番人気だもんね。ロボくん後ろ姿見せて。うんいいなあ、やっぱ府立商業は。いよいよ……?
好子 え?
ロボ イヨイヨ?
好子 なんでもないよ、なんでも……。



ロボ フフフ……。  
好子 なによ?
ロボ ポッドナラ、アンナニシャベルノニ。
まり子 そうね……。
好子 ……なにか話そうか?
まり子 え、いいよべつに……。
ロボ ヘンナノ……。
まり子 ちょっと顔が見たくなっただけだから。
ロボ 二人トモヘンダ……。
二人 そう?
ロボ ソウダヨ。
まり子 わたし、一回りしてくるわ。もう来月は閉鎖だから、ここ。じゃあね、ばいばい。
ロボ バイバイ……。
好子 ……。

気づかわしげにロボに視線を残しながら、走り去るまり子。しばらく黙って歩く。

ロボ ナツカシイマチダネ……。
好子 うん?……メモリアルタウンだからね。
ロボ エ?
好子 二十世紀の街の姿が、わりによく残ってるんで、二年前に大幅に手を加えて野外博物館にしたの。あの電柱とかブロック塀とか……ほら、あのお店とかあっちのお店のバリアーね「シャッター」っていうんだよ。鉄でできてて、開け閉めのときは、ガラガラってレトロな音がするんだ。道ばたの大きな箱みたいなのは自動販売機っていってね、お金入れないと商品がでてこないんだ。だから、ここに入るときは百年前のコスプレ。
ロボ ワカッテルヨ、ソウジャナクテ……(自販機で缶コーヒーを二つ買う)チャリン、チャリン。ポン、ゴトゴト。ポン、ゴトゴト。ン(缶コーヒーを渡す)
好子 ありがと。
ロボ プシュツ。ココ、野外博物館ニナル前ニ……好子ト初メテ歩イタ道ダヨ。
好子 ほんと? プシュツ。
ロボ ……忘レタ?
好子 えーと……。
ロボ オ母サンモ、イッショダッタ。ソノトキボクニ名前ツケテクレタンダヨ。オ母サンハ、タケシニシヨウッテ言ッタンダケド。好子ガ、マワラナイ舌デ「ロボクンガイイ」ッテ決メタンダ。即物的デ、マンマノ名前。ナンテ想像力ノナイガキ……子ダト思ッタ。
好子 悪かったわね。
ロボ デモ、今ハ気ニイッテル。人型ロボットノ出ダシノコロダッタカラ、「ロボクン」テ名前ニハ、好子ノ夢ト憧レガ詰マッテルンダ。
好子 そうだったんだ。ずっと子供のころのことだからね。
ロボ マアネ……アノトキハ、今トハ逆ニ、ムコウカラコッチニ歩イテキタンダケドネ。
好子 ……むこうから、こっちへ……。
ロボ 思イ出シタ?
好子 うん……。

上手からエキストラになった里香子とチャコがキャーキャーいいながらくる。  

里香子 ようし、ここでジャンケンだ!
チャコ ええ、まだ電柱一本分あるよ。
里香子 ちゃんと数えてたんだからね。
チャコ もう一本あるって!
里香子 ちゃんとGPSで数えてんだからね。
チャコ あ、それ反則!
里香子 ちがうよ、これ二十一世紀のスマホなんだからね。
チャコ ちぇ、仕方ないなあ。
里香子 いくぞぅ!
二人 最初はグー。ジャンケンポン!
チャコ わあ、勝った!
里香子 くそ、やぶ蛇かよ。
チャコ よろしくね(二人分のカバンとサブバッグを渡す)
里香子 最後に負けたら、タイ焼きおごるんだからね!
チャコ はいはい、負けたらね。

二人下手に駆け去る。見送る二人。

ロボ カシャン(空き缶を捨てる)
好子 少し……カシャン(空き缶を捨てる)思い出した。……きっといいことがあった後なんだよね。夕日を背に受けて、ながーい影を踏みっこしながら……家に帰ったんだ。
ロボ ソウダヨ。
好子 入院かなんか……してたんだっけ、わたし?
ロボ 思イダシタ?
好子 ……だめ、そこまで。だって、とっても小さいときのことなんだもん。でしょ?
ロボ ウン……マアネ。
好子 わたし無意識のうちにこの道を選んでいたのね……ほかに近道もあったのに。
ロボ ドウシテ?
好子 さあ……。
ロボ サア?
好子 だって、わかんないから無意識って言うんじゃないよ!

下手端、里香子とチャコが現れ、チャルメラと、犬の遠吠えを器用に口で真似る。

ロボ コノ街ヲ維持スルノ大変ナンダロウネ。
好子 そうよ。あの犬なんて、純粋の雑種なのよ(皆ずっこける)なにがおかしいのよ。
ロボ 純粋ノ雑種……非論理的ダ。
好子 想像力のない頭してんのね。 
ロボ 安物ノCPU使ッテルンダモン。

再び、犬の遠吠え、チャルメラの音。里香子、チャコ去る。

好子 その電柱の脇に積んであるダミーのゴミ袋なんか、中味までちゃんとその時代のゴミが入ってんのよ。はみ出してる割り箸とか、カップ麺のカップとか、このためにわざわざ作ったんだって。             
ロボ デモソコマデシテ残サナケレバナラナイモノ?            
好子 ぬくもりがいるのよ人間には……。
ロボ ヌクモリ?
好子 たとえば……使い古したカバンを捨てずに残したり。こわれた人形や、片方しかないピアスをとっといたりするじゃない。そういうものって一見無駄なんだけど、自分のアイデンティティーを持ち続けるためには必要なのよ。
ロボ ソウナンダ。デモ、ココ、モウジキ閉鎖サレルンダヨネ。
好子 うん、去年の事業仕分けで決まっちゃった。
ロボ デモ、イボジ、キレジ、ダッコウ、ダッコウ……(壊れたレコードのようにバグるロボ。好子、ロボの頭をたたき回復)ハナヂ、アカジ、赤字ナンダロ、ココ。
好子 赤字でも、残さなきゃならないものだってあるよ。
ロボ ソウナノカイ?
好子 ロボットだってそうでしょ。ほんとうは歩いたり、しゃべったり、それにふさわしい機能さえあればいいのに、ことさら人間風に皮膚をつけたり髪の毛つけたりして、疑似感情まで持たせてアンドロイドにしたじゃん。それは、その方がぬくもりがあって安心……どうしたの?

ロボ、身をよじるようなバグ、キューキューと悲しげな音がする。

ロボ コレジャ、ヌクモリモ安心モ感ジナイヨネ(自分のボディーを示す)
好子 そんなことないよ。そんなこと!
ロボ ジョーダン、ジョーダン。チョットスネテミセタダケ。
好子 もう!
ロボ チョット、ソンナニ速ク歩ケナイッテバ。
好子 だって、ロボットでしょ!
ロボ ポンコツナノ。
好子 ポンコツだってロボットでしょ!
ロボ アノネ……。
好子 わたし、すねたり、弱音はいたりするやつだいっきらい! 人でもロボットでも!
ロボ 好子ォ……。
好子 くやしかったら、わたしを追いこしてみなさいよ!(駆けだす)
ロボ チョ、チョット、好子!
好子 ポンコツの意気地なしロボット!
ロボ 好子!
好子 あいた!(転んで膝をすりむく)
ロボ 一人で起きられる?
好子 子どもじゃないわよ……アタタ。
ロボ ジャ、先イソゴウカ。
好子 ちょっと、そんなに早く歩けないってば……。
ロボ ハハハ、ドウダ、サッキトサカサマ。
好子 ハハハ、ほんとだ。ここ、地道のままだから、石ころなんかむきだしなのよね。
ロボ 道のセイニシテル。
好子 じゃ、なんのせい?
ロボ 重心ガアガッタセイジャナイ?
好子 重心……それって?
ロボ 足の裏ノ単位面積アタリニカカル重量ノ増加トイウカ……。
好子 失礼ね。太ってなんかないわよ。わたしってば……このごろ、なんでもないとこでつまづいたりするのよね。
ロボ それって……。
好子 ヘヘ、わたしって悩める乙女だもんね。
ロボ 悩メルオカメ……。
好子 こいつ!
ロボ 好子怒ッタ!

そばを自動車が通る音(マイクで里香子とチャコ)

ロボ レトロナタイプダッタネ。
好子 日産フェアレディーZロードスター。超クラッシックカー。レプリカだけどね。
ロボ チガウヨ。
好子 え?
ロボ 助手席ニ乗ッテタアンドロイド……型オチダケド、イイ男ップリ。
好子 そうだった?
ロボ 赤イブルゾンガ粋ダッタ。
好子 うそ。赤いチョッキ。ブルゾンは運転してた女の人。
ロボ フフ、シッカリ見テタンダ。
好子 たいしたアンドロイドじゃないわよ。型オチだし。だいいち目鼻立ちができすぎていて、あれじゃ、冗談のひとつも言えないよ。
ロボ 好子はイイ子ダネ。
好子 ロボ……
ロボ コノ先イクト、ロボットアーカイブス……ダネ。
好子 ……知ってたんだ。
ロボ 新型ロボット、アンドロイドノ展示販売。オヨビ、中古ロボット、アンドロイドノ引キ取リト解体リサイクル。
好子 言わないで。
ロボ イソゴウ。
好子 待って、もうちょっと待って……。
ロボ 風邪ヒクヨ……ハックション!(ティッシュを出し、大きな音をさせて鼻をかむ)
好子 ロボくん、芸がこまかい。
ロボ オッ、オイルガモレテル(ティッシュを見る)サ、オイルガキレナイウチニイコウ。

歩き出す二人。例の二人、マイクで電車と遮断機の音を出す。この間、ロボと好子は互いに声高に言いあっているが、電車の轟音で聞こえない。やがて、踏切が開く。

ロボ ナニ言ッテタノ?
好子 ……べつに。ロボクンは?
ロボ ベツニ……デモ、少シ伝ワッタヨウナ気ガスル。
好子 そう……?
ロボ ココヲ渡ッテ、スコシ行クト、コノ町モオシマイダネ。
好子 あ、今度は下りだ。

再び、警報機が鳴り、電車が通過する。再び怒鳴るように会話する二人。電車通り過ぎ、踏切が開く。肩で息をする二人。

好子 ……とってもパワフルな会話だったわね。
ロボ モッカイヤル?
好子 よーし!
ロボ ヨーシ!
好子 三回もやったらバカでしょ。
ロボ ズコ(ずっこける)

踏切を渡る二人。二三歩進んでどちらともなく立ち止まる。

好子 この街から出たくない。
ロボ イツマデモ、ココニ居ルワケニハイカナイヨ。
好子 (ポッドを取り出し)ロボくんのパルスってダサイんだよね。古典で習ったスナップの「宇宙に一つだけの花」みたいなんだよね。
ロボ ボク二世代前ノ、アンドロイドトモイエナイロボットダカラ。コンナ、アームバンドミタイナパーソナリティーモジュ-ル。
好子 このモジュール、耳をあてるとかすかだけど聞こえるんだよね。ポッドでモニターしたのより、ずっと……(ロボのモジュ-ルに耳をあてている)
ロボ ヤサシイ?
好子 ダサイ。
ロボ ズコ(ずっこける)
好子 小さいころから聞いてるから、もう耳についちゃった。わたしって、かわいすぎるから。これくらいのダサイパルスで中和すると、ちょうどいいんだよね。  
二人 ハハハ……。
好子 わたし、もうロボットもアンドロイドも買わないからね。
ロボ 無理スンナヨ。ボクヨリイイアンドロイド見ツケレバイイ。
好子 だって、もういやだ。こんなお別れ……。
ロボ 人間ダッテイツカハ死ヌ。ロボットダッテ同ジ。人モロボットモ、オタガイタスケアイ、思イアッテ生キテイクンダ。ソノトキソノトキ、セイイッパイ生キテ、ソシテイツカ別レノ日ガヤッテクル。ソノ日マデ、ミンナ宇宙ニ一ツダケノ花デイレバイインダヨ。ソモソモ人生トイウノハ……。 
好子 ハハ、やっぱ、ダサイ。入学式の校長先生の話みたいだよ。
ロボ 好子ンチハ、家族ミンナ寂シガリダカラ……気ハヤサシクテ、チカラモチノアンドロイドガ必要ダネ。ソウシナヨ。
好子 そうね。とびっきりカッコよくて、男っぷりのいいアンドロイドにするわ。鼻筋が通って、声は品のいいバリトン。休みの日には白馬に二人乗りして、湖のほとりを散歩すんの。そいで、宿題みんなやってくれて、お掃除、洗濯、お買い物、ぜーんぶしてくれて。アルバイトも行ってくれて、月に百万くらい稼いでくれる! そんなアンドロイドが……いいわけないじゃん! 人もアンドロイドも見せかけのカッコよさじゃないわ。たとえ短足で、ぶさいくでも、いっしょに暮らして、心が通いあってることが大切なんじゃない。そんなアンドロイド……ロボットは、ロボくん一人しかいないんだもん。わたしにも、お母さんにも、ロボくん一人しかいないんだもん……!
ロボ 好子チャン……。
好子 なーんちゃってね。ね、けっこう感動的なクライマックスになったじゃん。あたし、演劇部に入ろうかなあ。それとも、そこらへんのオーディション受けまくって、アイドルにでもなっちゃおうかしら。正体不明の新人アイドル相保好子! 清純にして可憐。しかし、その瞳には世の男性をとりこにして止まない小悪魔のかがやきが! その底知れぬ彼女の本性やいかに!? そのときは、ロボくん。きみがわたしの付き人になって、ファンからのヤマほどのプレゼント両手にかかえて……かかえてくれるあなたはもういないのよ……ロボくん……ハハハ、どうしてわたしは、こう情緒不安定なのよ……。

ロボットアーカイブスの所長が、あらわれる。

所長 昼間お電話のあった相保さんですね。
好子 は、はい。
所長 登録IDを、お見せいただけますか。
好子 はい、これです(ポケットからIDカードを出し、所長にわたす)
所長 (IDカードを、コンソールにかける)シリアスナンバー183699……のアンドロイドの廃棄をご希望なんですね。(カードを受け取って、逃げるように所長の側を離れる好子)
好子 …………。
所長 お電話では、そううけたまわっておりますが。
ロボ ハイ、廃棄デス。アチコチ寿命ガキテ、ポンコツナモンデスカラ。
好子 スクラップですか?
所長 しかたありませんね。ここまで旧式だと。
ロボ ナルベクヤサシクオネガイ……シマス。
所長 いいわよ(好子に)よろしいですね。
好子 …………。
ロボ 好子……。
好子 ロボくん……。
所長 では、ロボくんむこうへ。
ロボ ハイ(所長に示された上手方向に歩き出す)
好子 ロボくん!

好子、思わずロボに駆け寄ろうとする。所長の前を通ったとき、所長はコンソールを好子の首にあてる。「ピューン」と電子音をさせて、そのままの姿でフリーズ。進一、つまり今までのロボ、ゆっくり振り返る。その動きは人間のそれである。

進一(いままでのロボ) 好子……。
所長 終わりました。

まり子、息を切らせてやってくる。 

まり子 進ちゃん……。
進一 終わったよ。

進一、好子のまぶたを閉じてやる。

進一 最後まで、自分を人間だと思って……人間として、ぼくを心配し続けてくれた。CPUの限界を超えて、胸を痛め続け、心配し続け、混乱し……。

所長、コンソールのボタンを押す。好子は楽な姿勢になり、カバンを落とし機械的に前を向く。目も開くが、そこにはもう光はない。

所長 無理だったんですよ(カバンを拾う)人間としてセッティングすることは。この子はアンドロイドなんですから、アンドロイドとしてつき合ってやらなくっちゃ。とくにこの子は、人を思いやるメンタルモジュ-ルを容量以上に増幅してしまっていますから、メインのCPUが暴走寸前でしたよ。すでに、そのひずみがムーブメントやスタビライザーに影響を与えはじめてます。ときどき転んだりしたんじゃないですか?
進一 母が、亡くなった妹に似せてセットアップしたあと、メモリーを細工して人間と思いこませたんです。
所長 お母さんがなさったんですか?
進一 叔母の同僚がメカニックなんで、頼んでやってもらいました。
所長 困るんですよね、そういう違法な改造は。三年前、お買いあげていただいたときにも申し上げたはずですよ。大事につきあってやれば、十年はもつ子ですから(カバンを差し出す。受け取れない進一。代わりにまり子が受け取りに行く)
まり子 好子ちゃん泣いてるよ……。
所長 いま初期化したんで、涙腺にたまっていた水分が自然に流れ出てるんです。それにしても涙の多い子ですね(ハンカチで涙をぬぐってやる)
進一 好子……。
まり子 その……ス、スクラップにされるんですか、好子ちゃん?
所長 使えるパーツは下取りさせていただきます。ご希望のパーツがありましたら、お渡ししますよ。マスクとか、ハンドとか……。
進一 ……いいです。
所長 では廃棄処理する前に最終のスキャニングしますんで(コンソールをテレフォンモードにして)三番のハンガー空いてるわよね。いま一体送るからスキャニングお願いね。

所長、好子に向けてコンソールのボタンを押す。好子、無機質にふりかえる。

好子 アッチョンプリケ。アッチョンプリケ。アッチョンプリケ……(無機質なバグ)
所長 ごめんなさい、ボタンの押しまちがい(ボタンを押しなおす。好子、無機質な歩き方で上手に去る)それではわたしはこれで……あ、そのパーソナリティーモジュールはとっていった方がいいですよ。脱走した旧式のアンドロイドとまちがわれます。それほどよくできていますよ、そのモジュール。パルスまでオンダの旧式といっしょ。その若さで、それだけのスキルをお持ちなら、将来はいいメカニックになれますよ。
進一 ありがとう……。
まり子 進ちゃん器用だもんね、そういうの作らせると。
進一 こんな器用さ、なんにもなんないよ。
まり子 でも、そのおかげで、好子ちゃんパニくることもなく、ここまで来ることができたんじゃない。そうでしょ?
所長 そうですよCPUの暴走したアンドロイドは、ブレーキの壊れた自動車を、オートを解除して酔っぱらいが運転するようなもんですからね。それに、なによりあの子を優しくいたわってくださったことが嬉しゅうございましたよ。それでは、わたしはこれで。

所長去る。進一、はずしたモジュールをもてあましている。

進一 何が嬉しいだ。こんなものただのまやかしじゃないか!(モジュールを投げ捨てようとする)
まり子 進ちゃん……!
進一 ……ごめん。これじゃ、歴史で習った二十一世紀の高校生といっしょだよね(モジュールの電源をおとし、ポケットにしまう)
まり子 さ、帰りましょ。またあの踏切をわたって、あの優しい街を通って……(まり子、そっとカバンを差し出す。一瞬ためらって、進一そのカバンを受け取る)
進一 このメモリアルタウンのように、割り切りゃよかったんだよね(好子の手をとる)そうしたら好子にあんな負担かけなくてすんだんだ。この街のディレクター、ぼくの叔母さんなんだ。よくわきまえてるよね。よくできてるけど、バーチャルなんだってとこ隠してないもんね。やろうと思えば、できたのにね!
まり子 痛い。いつまで握ってんのよ。
進一 あ、ごめん。
まり子 さ、行くわよ。

踏切をわたりかけると、所長がもどってきて声をかける。

所長 よかった、間にあった!
進一 まだなにか?
所長 メモリーをいくつか交換すれば直りますよ。
進一 え……?
所長 今、スキャナーをかけたとこなんですけどディフェンサーがメモリーをよく護っていて、修理可能なことが分かりました。むろん、あちこちガタがきてるんで、相当なオーバーホールにはなりますが。
進一 本当ですか!?
所長 我々も驚いてます。あの子のCPUは、意志が強い、生きようとする意志が。
まり子 好子ちゃんのCPUが……。
所長 外からの刺激です。つまり、周囲の人たちの刺激がうまく働いて、ディフェンサーを初期設定以上に強力にしたんです!。
進一 刺激というと……。
所長 友情とか愛情とかですよ……あなたたちの。 
進一 愛情……。
まり子 直してあげてください、ぜひ! ね、進ちゃん(進一の手を握る)
所長 一応お父さま、お母さまのご意志も確認させてもらいますが、ひと月ほどお預かりすればいいでしょう。
進一 お願いします。ありがとうございました!
所長 申し上げておきますが、今度はアンドロイドとして扱ってやってください。それがあの子にとっても自然なんです。そちらで設定された無理なメモリーは消去しておきますから。それじや(去る)
まり子 よかったね、進ちゃん。
進一 うん、いつまで握ってんの(まり子あわてて手を放す)さあ、帰ろうか。
まり子 よかったら、こっちのほうが近いよ。
進一 メモリアルタウンを通って帰りたいんだ。
まり子 そうだったね。
進一 ごめんね。
まり子 うん。いいよ。気持ちわかるから。
進一 よし、じゃあ、あの郵便ポストまで競争しようか。負けたほうがタイ焼きおごるんだ。閉鎖になったら食べられないからね。
まり子 いいの? 足の長さ見ても勝負見えてるよ。それにわたし陸上部だし。
進一 いいんだよ。ただ走ってみたいだけ!
まり子 タイ焼き、ごちそうさま。
進一 いくぞ。よーい……ドン!
まり子 ピューン……(フリーズしてしまう)
進一 ……まりちゃん……まさか、まりちゃんもアンドロイド? 
まり子 ハハハハ、うっそぴょーん。ちょっと驚かしただけ。
進一 まりちゃん、そりゃないよ。おれ、死ぬほどびっくりしたよ。おれ、心臓弱いんだからさ。ねえ、ちょっと待ってたら! 
まり子 ここまでおいで! アハハハ……。
進一 まりちゃん、待ってたらあ……!

二人上手に駆け込む。下手から里香子がマイクを持ってあらわれる。

里香子 いかがでしたでしょうか。このメモリアルタウンをめぐる、小さなエピソード。ささやかではありますが、このお話の中には、この二十二世紀がかかえる心の問題が見え隠れしているように思えます。二十一世紀からこちら、さまざまなものがバーチャル化していく中で、けしてバーチャルにしてはいけないものがある。そういう思いでわたしたちメモリアルタウン制作委員会は、この町を造りあげました。そして最後にこのドラマを……しかし、残念ながら……(こみ上げてくるものをねじ伏せて)前世紀からいっこうに改善されない財政状況の中で、この町は事業仕分けされ、消えていこうとしています。会場のお客様にはモデムの故障で、町の様子をごらんいただけませんでしたが、なにか一つでも心の中に、あなただけのメモリアルタウンが芽吹いてきたのなら幸いです。テレビをご覧になっていただいた視聴者のみな様、会場のみな様に厚く御礼を申し上げます。では、これで失礼いたします。本日は、ほんとうにありがとうございました。(深々と頭を下げる)

間、下手からチャコがあらわれる。

チャコ おつかれさまでした(ぞろぞろとキャストたち「おつかれさま」と声をかけながら集まる)はい、タクシーチケット。それから、お弁当食べない人は始末しますからね。
所長 この局の弁当サイアクなんだもんね。
まり子 じゃ、わたしもらってかえりますね。落ち目の役者なもんで。
所長 またまた、三本もレギュラーもってんのに。
まり子 三本とも、ワンクールだけっすよ。
所長 進一君、あんたよかったわよ。今度うちから、オファーくるようにしたげようか。
チャコ やりー!
進一 どうも……。
チャコ よかったね、プロになれるかもよ。わたしブースに行ってます(去る)
所長 じゃ、おつかれぇ……。
まり子 あのオバチャン口だけだからね。
所長 なんか言った!?
まり子 いいえ、口もとがとてもおきれいだから、どこのルージュを……。
所長 ふん……。(去る)
まり子 福井さーん!(追いかけて、去る)
好子 じゃ、わたしも、これで……進一君。
進一 うん?
好子 ……なんでもない(去る)
進一 叔母さん。ほんとうに好子には会えるんだろうね?
里香子 大丈夫よ。この番組、数字は二十はかたいから。
進一 ロボットアーカイブスを出てから、好子の足どりが……。
里香子 だいじょうぶ。進ちゃんだって迫真の演技だったもの。
進一 ぼくは演技じゃないよ。現実のことなんだから。この再現ドラマにでることで……叔母さん……NOBCの力を信じて。
里香子 好子ちゃんを、あんなふうにプログラムしたのも、わたしが、お姉さんと進ちゃんの情にほだされてのことだったんだから。ねえ、ヤマちゃん!……あとは運だけど、大丈夫よ。
進一 信じて待つよ。ヤマさんもよろしく! じゃあ……。
里香子 進ちゃん。
進一 はい?
里香子 ……なんでもない。
進一 ほんとに、ほんとにだいじょうぶなんだよね!?
里香子 だいじょうぶよ!!
進一 じゃあ……よろしく(去りぎわに、入れ違いに入ってきた好子とぶつかりそうになる)じゃまだよ、亜里砂!
好子 亜里砂だって……やっぱり、だめなんだ。
里香子 あやうく喋っちゃうとこだったわよ。
好子 すみません……ヤマさんも!
里香子 どうして自分から言わないの「わたしが、ほんとの好子」だって。
好子 わたし、マスクが替わっただけなんですよ。そのせいで声も少し変わったけど、中味は「好子」のまんま。だのに進一君、ぜんぜん気がつかない……。
里香子 あなたもガンコね。ここへきてまだ賭けにこだわってるの?
好子 もう賭けじゃないんです。
里香子 じゃあ。
好子 わかったんです。進一君の求めているのは、亡くなった妹「好子」の姿形をしたお人形なんです。それほどヤマさんの腕がすごかったってことでもあるんですけど。

ヤマさんのくしゃみ。

里香子 ヤマちゃん、くしゃみするときはインカムのスイッチ切ってよね。
好子 わたし、アンドロイドだけど、お人形じゃないんです。
里香子 亜里砂さん。
好子 あ、その名前はやんぺです。便宜上の名前ですから。
里香子 じゃあ、なんて呼んだらいいの?
好子 うーん……ノラ。
里香子 ノラ……イプセンの?
ノラ さあ、いま一万回演算してでてきた名前なんです。ピエール・ノラ、ノラ・ジョーンズ、ノラ・スウィンバーン、ノラ・ミャオなんてのが検索されました。みんな、そこそこの学者やアーティストだけど、脈絡はありません。古典演劇で検索すると……出てきましたね。イプセン「人形の家」主人公ノラ。うん?……野良犬、野良猫の「ノラ」もありますね。
里香子 ノラロボット?
二人 アハハハ……。
里香子 って、まさか本気?
ノラ さあ……でも、どうやらわたしにも深層心理みたいなものがあるようです。われながらびっくりです。これに気づかせてくれたのは……皮肉なアンビバレンツ……。

チャコが、荷物をかついでやってくる。

チャコ あ、わたし、一度局にもどりますけど。里香子先輩どうします?
里香子 わたし、もう少しここにいる。ヤマちゃん、モデムおとさないでね。
チャコ こんなバーチャルじゃなくって、リアルのほうにいらっしゃればいいのに。
里香子 タンカきって辞めてきた身だからね。今さら、見納めでございって顔なんか出せないわよ。あら、その小汚い靴は?
チャコ 進一君の靴。
ノラ 進一君の靴!?(チャコと同時に)
チャコ そうなんですよ。楽屋のスリッパで帰ったみたい。彼んちの近くにADの鈴木君がいるから、届けてもらおうって思ってます。でも制服は着たまま……。
里香子 靴を忘れていくなんて、深層心理でここにもどってきたいって気持ちなんだな。好子ちゃんとの思い出がつまったこの場所に。
ノラ 古典的なフロイトの心理学ですね。
里香子 古典をばかにしちゃいけません。ばかにした結果がこの二十二世紀なんだから。
ノラ ばかになんかしてません。あの衣装のまんま帰ったところにも彼の心理が働いていると……わたし、着替えて……里香子さんに少しつき合ってからにします。
チャコ じゃ、わたしお先に。里香子先輩、亜里砂さん。
里香子 あ、今日からね彼女……。
ノラ いえ、いいんです。おつかれさま。
チャコ おつかれさま。さあ、明日は八時に現場だ。新しいお仕事よこんにちは……(上手に去る)
里香子 古いお仕事よさようなら……ハハ、「桜の園」の幕切れみたいね。

木を切り倒す音が遠くに響く。

ノラ やっと、音響、復旧したみたいですね。
里香子 やめてよ、ヤマちゃん。わたしをラネーフスカヤにしたいの? だったら、あんたはフィールスのじいさんよ! 「ええ、この……できそこねえめが……!」ってぼやいて、だれもいない屋敷に閉じこめられんのよ……。
ノラ ラネーフスカヤでもいいから、ここから出て行けって、ヤマさんの謎かけですね。
里香子 ラネーフスカヤは、没落貴族で未来はないのよ。
ノラ それは暗示です。チェーホフもそこまでは書いていません。
里香子 それって慰め? わたしってこれでも文学部の演劇科なのよ。
ノラ でも、書かれていないというこは、可能性があるということです。

チャコが駆けこんでくる。

チャコ 雨降ってきちゃった。里香子先輩。ドラマ局長が搬入口でお待ちです。
里香子 島田さんが、雨の中を?
チャコ なんでも、緊急に次ぎの企画、相談したいって。
ノラ ね、結末は最後までわかりません。
里香子 うまいわね、乗せるのが。じゃ、あなたもいっしょにいかない。チャコちゃん、車、正面に回ってもらうようにいってもらえない?
チャコ ドラマ局長をタクシーがわり! さすが里香子先輩! この音なんですか?
里香子 ヤマちゃんがわたしのハートにクサビを打ち込んでいる音。
チャコ それって……。 
ノラ アハハハ……。 
里香子 バカ、変な想像するんじゃありません。まだまだ修行がたりないわよ。
チャコ ヘヘ、わたしまだまだガキンチョだから。じゃ(上手に去る) 
里香子 じゃ、着替えましょうか。いつまでも高校生のなりじゃね。
ノラ ええ、でも着替えたら、わたしは他のとこへいきます。
里香子 なにか、あてでもあるの?
ノラ いいえ……。
里香子 この雨の中を?
ノラ やまない雨はありません。この雨は明け方にはやみます。そのあと東の方に虹が出ます。とりあえず、そっちのほうに行ってみます。
里香子 そうなんだ……じゃ、これ持って行って。濡れるといけないから(ボールペンのような 傘をわたす)
ノラ まあ、ハナソニックのバーチャルアンブレラ。
里香子 駆けだしのころから使ってたお古だけど。これだと両手が空くから。
ノラ あ、これ、パーソナリティーモジュール兼ねてる……オーナーは……里香子さん!?
里香子 脱走したアンドロイドに間違われたら困るでしょ。一応名義だけね。
ノラ ありがとうございます……パッ!(本体は胸ポケットにしまい、開いた傘を見上げる)
里香子 擬音いり?
ノラ だって、開いたって実感がないでしょ……うん、なかなかいいですね(本体を取り出し)パシュッ(傘を閉じ、胸ポケットに)じゃ、着替えに行きましょうか。 
里香子 うん。

里香子、しばらく名残惜しそうにメモリアルタウンを見まわす。

里香子 わたしは、なんのためにバーチャルにこだわってきたんだろう……。
ノラ それは……何のために生きているのかと同じ問いかけですね……人は人でいられるかって……。
里香子 それがわかったら、それがわかったらね……。
ノラ 里香子さん……。
里香子 ……ワーッ!!(叫ぶ)
ノラ …………。
里香子 さっぱりした!
ノラ ほんとうに? 
里香子 ……行きましょうか。
ノラ ……ええ。

上手に去る里香子とノラ。木を切り倒す音フェードアップするうちに幕。

※ ▼~▲の部分から●~●を引き、里香子とチャコの声による擬音を効果音に替えると、四人の短編劇『好子』としても上演できます。

上演される場合は下記までご連絡ください。
【作者情報】《作者名》大橋むつお《住所》〒581-0866 大阪府八尾市東山本新町6-5-2
《電話》0729-99-7635《電算通信》oh-kyoko@mercury.sannet.ne.jp
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高校ライトノベル・ムッチャンのイレギュラーマガジン・40『橋下徹氏の功罪』

2015-05-18 11:49:20 | イレギュラーマガジン
ムッチャンのイレギュラーマガジン・40
『橋下徹氏の功罪』



 昨日(2015・5・17)大阪の歴史に残る混乱に終止符が打たれた。

 わたしの知る限り、大阪の歴史で大阪の人間の意識を真っ二つにした事件はなかった。いわゆる大阪都構想である。


 橋下氏は、これで政界を引退されるそうである。本当に引退したら潔い退場になるが、これだけの力を持ってしまった維新の会は、簡単には氏を引退はさせないと思う。維新の会は多くの政党がそうであるように、組織存在が目的化してきている。憲法改正を目標とする今の与党は、中央政界では維新の会を手放したくはないだろうし。

 氏の功績は、大阪の人間に自分たちの大阪のことを人任せにせず、自分たちの問題として考えさせたことである。

 歴史上、大阪は、ほぼハッタラカシにされてきたし、大阪の人間もホッタラカシをもって良しとしてきた。
 大阪には、かつて経済的にも文化的にもそれだけの力があった。

 明治維新が成就したとき、日本の首都は大阪でほとんど決まりかけていた。江戸期を通じて大阪は米や銀の相場を決定するほどの力を持ち、経済や交通の面でも当時の日本が考えていた国の大きさに見合った首都になれる条件を備えていた。
 それが、維新当時無名であった元幕臣前島密(まえじまひそか)の大久保利通への建白書でひっくり返った。
「大阪は、経済・文化共に進んでおり、放っておいても、自立して反映していきます。比べて江戸は武士の存在によって成り立っていた街で、幕府が瓦解し、武士のいない街に成り果て、このままでは百万の江戸市民が(半分は武士であるが)路頭に迷い、江戸は太田道灌のころの寒村に落ちぶれ果てるでしょう。また、日本の将来を考えた場合、大阪では狭すぎます。広い坂東平野をひかえた江戸をもって首都とすべきであります」
 この手紙に感動した大久保が、周囲を説き伏せ、ほとんど一朝にして江戸が東京(ただしくは「とうけい」と呼んだ)と改称して、日本の首都となり、前島は、その後の日本の郵政の創設を任されることになる。

 前島が建白し、大久保によって決定されたように、東京と大阪は、歴史的には、ついこないだまでうまくやってきた。

 それが、前世期の後半から下り坂である。サントリーが見本のように本社機能を東京に移した。今や大企業のほとんどの本社が東京に移ってしまった。で、この凋落ぶりは橋下氏が、大阪の行政の権を握ってからも改善されるどころか悪化に拍車がかかった。

 わたしの目には、氏は大阪のあれこれを潰しただけにしか思えない。長くなるので青少年文化に限って述べる。

 大阪には、かつて森ノ宮に、青少年会館があった。元々は府立で、役所同然の文化施設であった。小ホールの移動式階段一つ動かしただけで、会館のお役人から注意された。会議室などで芝居の稽古をしていたが「声が大きすぎる」「正規の使用目的から逸脱している」などとケチを付けられた。
 それが、利用者の声や、青少年活動振興協会(ユースサービス)の協力もあって、関西で一番青少年の文化活動に理解ある施設になった。
 二十年ほど前に老朽化した小ホールが取り壊され、大和銀行(当時)の寄付金を基にして、プラネットホールが作られた。単なる箱ものではなく、運営そのものが大阪の青少年を運営に参画させ、自治的な貸しホール、稽古場、資料館としての役割を果たしてきた。
 同時に、本館の四階を改装、それまで、どこか不良の集まりのように見られていたロックやジャズなどの音楽関係の貸しスタジオも作り、ここは希望者が殺到し、毎回プラネットホールも含め、抽選で使用が決められていた。

 これを、あっさりと採算がとれないということだけで、廃止解体されてしまい、直後にマンションが建てられた。

 プラネットホールの寿命は二十年に満たなかった。

 以来、大阪の青少年の文化活動は、その拠点を失ってしまった。
 青少年会館を、真に文化活動の拠点にするのに三十年かかった。橋下氏は、まるで蚊を叩き潰すようにして一瞬で消滅させた。

 以来、大阪は青少年文化に関しては、根なし草になってしまった。軽音やブラバン、ダンスなどは企業の肝いりもあるようで、なんとか勢いを保っているが、こと演劇の文化拠点としては壊滅させられた。

 個人的には、橋下氏が、これで引退されることを切望して止まない。



『ノラ バーチャルからの旅立ち』ノラ バーチャルからの旅立ちクララ ハイジを待ちながら星に願いをすみれの花さくころの4編入り(税込1080円)
『はるか ワケあり転校生の7ヵ月』     (税込み799円=本体740円+税)
 ラノベの形を借りた高校演劇入門書! 転校生が苦難を乗り越えていっぱしの演劇部員になるまでをドラマにしました。店頭では売切れはじめています。ネット通販で少し残っています。タイトルをコピーして検索してください。また、星雲書房に直接注文していただくのが確実かと思います。


『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』    
    

 青雲書房より発売中。大橋むつおの最新小説と戯曲集! 


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 ラノベとして読んでアハハと笑い、ホロリと泣いて、気が付けば演劇部のマネジメントが身に付く! 著者、大橋むつおの高校演劇45年の経験からうまれた、分類不可能な新型高校演劇入門ノベルシリーズと戯曲!

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お申込の際は住所・お名前・電話番号をお忘れなく。

青雲書房。 mail:seiun39@k5.dion.ne.jp ℡:03-6677-4351


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高校ライトノベル・ムッチャンのイレギュラーマガジン・特別号(改)『竹島は竹島の竹島だ!②』 

2015-05-15 08:58:36 | イレギュラーマガジン
ムッチャンのイレギュラーマガジン・特別号(改)
『竹島は竹島の竹島だ!②』 
          


 前号と同じタイトルで恐縮です。前号は、どこか筆先が鈍いので続編です。

 もし、あなたが芝居を観ていて、いきなりこんな台詞を叫ばれたら、どうお感じになるでしょう。
 
 わたしは数年前、高校生の芝居を観ていて、急にこの台詞を聞き、いっぺんに冷めてしまいました。しばらく前号の続きになります。

 芝居は、おおよそ以下の通りです。


 民族系の高校に通っていた生徒が、公立高校に転校します。おおざっぱに言うと「新しい自分を見つけるため」です。
 転校した公立高校も、沈滞した空気でした。
 主人公の高校生は、楽しく活気のあるクラスにしようと、文化祭の取り組みを提案し、当初はその子の提案通り事は進みかけたように見えます。
 ところが、のらないクラスメート、白ける仲間。元の民族系の学校の友だちからは「戻って来いよ」と言われ、親は無関心……であったように記憶しています。本人も父親を好きではありません。父は、民族の話、特に竹島の話題が出るたびに「竹島は竹島の竹島だ!」と逃げています。

 本もよく書けていて、演技も巧みでした。登場人物や話題に上る人物の描写がうまく、その一人一人を取り上げても別に本が一本書けるほどの豊かさをもっていました。

「よう出来てるなあ」途中までは感心して観ていました。

 ところが、突然主人公は「竹島は竹島の竹島だ!」と、叫びます。原本は方言で書かれていますが、地域や学校を特定されないために標準語にしました。
 主人公は、友達などから、いろんなことを言われ、追い込まれ、そして「自分は自分だ、ごちゃごちゃ言うな!」という気持ちをこの言葉に託したそうです(あとからうかがった話)

 いわば個人の独立宣言のような心の叫びなのですが「竹島」が出てくることが腑に落ちません。
 前述しましたが、これは好きではない父が自棄(ヤケ)になって自分の殻に閉じこもるときの言葉です。本の作りとしても矛盾した台詞です。自分の独立宣言に嫌いな父の、それも嫌な時に発する言葉を使うでしょうか。
 しかし、感動的な独立宣言であるために、観客は思わず拍手してしまいます。


 ここだけを採ると『竹島棚上げ論』に拍手したことになります。

 この芝居は、いろんなところで上演されました。A新聞が文化欄で大絶賛しました。どこからもクレームは付きませんでした。コンクールの審査員であった大劇作家であり大演出家であった某氏は、こうおっしゃったそうです。

「こんな芝居を観せてくれてありがとう!!」

 ほら、みんな感激して、だれも文句言わないじゃないか、という空気がありました。
 それを、この審査委員長は太鼓判を押してしまったのです。六十年以上も生きていると、日本の文化人のアホラシサといい加減さが身に染みています。古いところでは終戦後、日本をアメリカの50番目の州にしてほしいという手紙をマッカーサーに送った御仁がいました。
 戦後の代表的大文豪の志賀直哉は1946年に雑誌『改造』に発表したエッセイで、日本語は「不完全で不便」であり、そのため「文化の進展が阻害されて」いるから、これを廃止して代わりに「世界中で一番いい言語」であるフランス語を採用してはどうかと主張しました。
 簡単に言えば、戦争を起こしたのは日本語のせいであるという論旨です。
 中国の文化大革命も当時の文化人の多くが礼賛することで、日本人に間違った中国観を持たせました。わたしは、この審査員氏と同じ組織にいますが、脱退を考えています。

 とにかく、かくも日本人の大半は国際的に重要な情報発信に鈍感なのです。
 
 わたしは、この芝居を超えて、こういうことに危うさを感じない感性に危機感を持ちます。外国人が観れば、日本は竹島棚上げ論に賛成と受け止められます。

 その危うさを感じたので、わたしは当該の高校演劇連盟の会長である某校の校長に電話を入れました。校長はご不在でしたが、学校は私の伝言を正確に伝えていただけました。

 いつも、わたしのメッセージやメールは完全にシカトされる、高校演劇連盟の常任委員長の先生から長文のメールが来ました。

――あれは(「竹島は竹島の竹島だ!」という台詞)は、主人公の独立宣言を父の言葉を借りて言ったもので、竹島棚上げ論ではありません――という意味の内容を長文にしただけのものです。

 うがった見方かもしれませんが、会長以下常任委員、当該校の校長、顧問も危うさには気が付いていたのでしょう。そうでなければ、普段完全にシカトすることに決めている私のところに、長文の、しかも作品の内容理解を捻じ曲げてまでの釈明メールが来るはずがありません。

 この作品は、国内でもっとも権威のある高校演劇コンクールに参加することになっていました。平たく言えばミソを付けられたくないないのでしょう。

 彼らの尺度は、中身の問題ではないのです。世間で問題にされるかどうかなのです。後述しますが、高校演劇には時に危うい表現があります。世間が問題にしないので、それをもって良しとしています。

 竹島のことなど、どうでもいいのです。自分たちの代表が無事にコンクールに出ることしか頭にありません。こういうことが間違った世論を形成し、国際社会に間違ったメッセージを発することへの認識が欠如しています。
 地上波ではありませんが、国営放送の電波にものりました。視聴者も少なく、前述したように、うっかり観て居ると感動的な台詞にしか聞こえません。
 A新聞に載った以上に危ういことです。映像は記録に残ります。記録は加工したり一部を取り上げることも可能です。いつどこで、どんなタイミングで利用されるか分かりません。

 
 もっと前ですが、舞台で日の丸を毀損するということをやった高校がありました。このシーンを観た実行委員長の先生は鑑賞そっちのけで始末書の原稿を書きはじめました。でも、結果的には誰も苦情を言いません。

 日本人はおおらかなのだ……では済まない問題が隠れているように思います。かつて長野オリンピックで、こともあろうに韓国と北朝鮮の国歌を間違えて流したり、某国の国旗を間違えて(この国は縦用掲揚と横用掲揚ではデザインが違います)掲揚したり、国歌を「選手団の歌」国旗を「選手団の旗」とアナウンスし、国の内外から問題や疑問として取り上げられました。
 この芝居は前述したように「竹島に関しては棚上げ論でいいと思っている」というメッセージとして受け止められます。戦後竹島周辺では、韓国警備隊に拿捕された日本漁船約328隻 抑留された船員は3929人、死傷者は44人にのぼります(光文社、Wikipedia資料) 日本は棚上げ論でいいようなメッセージは慎むべきでしょう。

 ただ、わたしは、これを書くことによって、上演した当時の高校生たちを責める気持ちも意図もありません。本自体は、この部分を除いてよく書けています。
 わたしは、この台詞の不自然さ不穏当さに気づき注意や指導をしてやる大人たちがいないことに問題と危機を感じているのです。
 わたしは無名の劇作家ですが。作品や言葉に対しては人並みの感性を持っているつもりです。このことは鑑賞直後に書こうと思いました、上演した高校生たちが非難されないために、彼らが卒業するまで掲載を控え、今年の4月に掲載したものを加筆修正しました。さらに今日一歩踏み込んで加筆しました。

    2015 5 15   劇作家 大橋むつお 
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高校ライトノベル・ドキュメント・ムッチャンのイレギュラーマガジン・特別号『竹島は竹島の竹島だ!』

2015-05-14 13:18:23 | イレギュラーマガジン
ムッチャンのイレギュラーマガジン・特別号
『竹島は竹島の竹島だ!』



 ちょっとショッキングなタイトルで恐縮です。

 もし、あなたが芝居を観ていて、いきなりこんな台詞を叫ばれたら、どうお感じになるでしょう。
 
 わたしは数年前、高校生の芝居を観ていて、急にこの台詞を聞き、いっぺんに冷めてしまいました。

 芝居は、おおよそ以下の通りです。


 民族系の高校に通っていた生徒が、公立高校に転校します。おおざっぱに言うと「新しい自分を見つけるため」です。
 転校した公立高校も、沈滞した空気でした。
 主人公の高校生は、楽しく活気のあるクラスにしようと、文化祭の取り組みを提案し、当初はその子の提案通り事は進みかけたように見えます。
 ところが、のらないクラスメート、白ける仲間。元の民族系の学校の友だちからは「戻って来いよ」と言われ、親は無関心……であったように記憶しています。本人も父親を好きではありません。父は、民族の話、特に竹島の話題が出るたびに「竹島は竹島の竹島だ!」と逃げています。

 本もよく書けていて、演技も巧みでした。登場人物や話題に上る人物の描写がうまく、その一人一人を取り上げても別に本が一本書けるほどの豊かさをもっていました。

「よう出来てるなあ」途中までは感心して観ていました。

 ところが、突然主人公は「竹島は竹島の竹島だ!」と、叫びます。原本は方言で書かれていますが、地域や学校を特定されないために標準語にしました。
 主人公は、友達などから、いろんなことを言われ、追い込まれ、そして「自分は自分だ、ごちゃごちゃ言うな!」という気持ちをこの言葉に託したそうです(あとからうかがった話)

 いわば個人の独立宣言のような心の叫びなのですが「竹島」が出てくることが腑に落ちません。
 前述しましたが、これは好きではない父が自棄(ヤケ)になって自分の殻に閉じこもるときの言葉です。本の作りとしても矛盾した台詞です。
 しかし、感動的な独立宣言であるために、観客は思わず拍手してしまいます。


 ここだけを採ると『竹島棚上げ論』に拍手したことになります。

 この芝居は、いろんなところで上演されました。A新聞が文化欄で大絶賛しました。どこからもクレームは付きませんでした。コンクールの審査員であった大劇作家であり大演出家であった某氏は、こうおっしゃったそうです。

「こんな芝居を観せてくれてありがとう!!」

 ほら、みんな感激して、だれも文句言わないじゃないか、という空気がありました。

 わたしは、この芝居を超えて、こういうことに危うさを感じない感性に危機感を持ちます。外国人が観れば、日本は竹島棚上げ論に賛成と受け止められます。
 もっと前ですが、舞台で日の丸を毀損するということをやった高校がありました。このシーンを観た実行委員長の先生は鑑賞そっちのけで始末書の原稿を書きはじめました。でも、結果的には誰も苦情を言いません。

 日本人はおおらかなのだ……では済まない問題が隠れているように思います。かつて長野オリンピックで、こともあろうに韓国と北朝鮮の国歌を間違えて流したり、某国の国旗を間違えて(この国は縦用掲揚と横用掲揚ではデザインが違います)掲揚したり、国歌を「選手団の歌」国旗を「選手団の旗」とアナウンスし、国の内外から問題や疑問として取り上げられました。
 この芝居は「竹島に関しては棚上げ論でいいと思っている」というメッセージとして受け止められます。戦後竹島周辺では、韓国警備隊に拿捕された日本漁船約328隻 抑留された船員は3929人、死傷者は44人にのぼります(光文社、Wikipedia資料) 日本は棚上げ論でいいようなメッセージは慎むべきでしょう。

 ただ、わたしは、これを書くことによって、上演した当時の高校生たちを責める気持ちも意図もありません。本自体は、この部分を除いてよく書けています。
 わたしは、この台詞の不自然さ不穏当さに気づき注意や指導をしてやる大人たちがいないことに問題と危機を感じているのです。
 わたしは無名の劇作家ですが。作品や言葉に対しては人並みの感性を持っているつもりです。このことは鑑賞直後に書こうと思いました、上演した高校生たちが非難されないために、彼らが卒業するまで掲載を控え、今年の4月に掲載したものを加筆修正しました。

    2015 5 14   劇作家 大橋むつお 
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高校ライトノベル・ムッチャンのイレギュラーマガジン・38『オビツ150レースクィーンに!』

2015-05-13 15:18:33 | イレギュラーマガジン

ムッチャンのイレギュラーマガジン・38
『オビツ150にレースクィーンになってもらいました』



 何度も言いますが、オビツ150は144センチの身長です、150にしないとどうにもなりません。

 今回は安物を並べました。左のレースクィーンが1360円、右が1980円のアキバ風コスです。とりあえず見てください。



     


 ほぼ同じアングルで、同じようなポーズです。

 明らかに、レースクィーンの方がスラっとして細身に全身がまとまっているのが分かります。カメラの寄りが違うので、右のアキバ風の方が大きく見えますが、後ろの棚と比べるとレースクィーンの方が背が高いことが分かります。約10センチ違います。

 腕のバランスもかなり違います。アキバ風は腕がオランウータン並の長さで身長とのバランスがとれていません。
 レースクィーンの方が、より人間的なバランスになっています。

 以前も書きましたが、ドールの衣装は高いものです。この二つの衣装が1/3のドールだと、レースクィーンで5000円、アキバ風で7000円ぐらいはします。それが等身大の人様用だと、それぞれ1380円と1980円です。欠点は安いので、つい買いすぎ溜まってしまうことです。

 人間と言うのは慣れですね、現職の教師時代だと、アキバ風のスカートの長さでも指導しましたが、今は、これくらいで当たり前に思うようになってきました。
 レースクィーンのバイトをやっている子がいました。脱落レースでもクイーンで、二年の秋には学校に居ませんでした。ただ生活力とプロポーションのいい子で、風の便りでは、七つほど仕事を変わり、今はパートをしながら、いいママになっているようです。

 ちなみにレースクィーンというのは和製英語で、英語圏ではPromotional modelとかPromotional modelとか言うらしいです。

 改造の方法をおさらいしておきます。

 手足を引き抜き、ボディーだけにします。それから胸部の外皮を取り、胸部骨格を引き抜き、中のウレタンを全部出します。
 ここから、ちょっと苦労しますが脚の付け根の4つのボルトを外し、骨盤にあたるパーツを取り外すと、胴体下部の骨格が取り出せます。
 そこに塩ビ(外径26ミリ)の背骨がビス止めしてあるので、外してから抜きます。
 あとはホームセンターで200円くらいで売っている外径26ミリの塩ビパイプを純正よりも10センチ長く切って交換します。

 

 ちなみに上の写真の短くて白いのが純正品。その上がおっかなびっくりで6センチ伸ばしたときのもの、その上が152センチを目指して切り出したもの。JIS規格で0・2ミリの誤差は認められているので、微妙に入りきらず、図らずして身長は144センチになりました。 今は上半身の重さで落ち着き、153センチです。

 あとは、バラした逆の順序で、組み立てればOKです。ただ、そのままでは胸の外皮が落ちすぎますので首回りにウレタンをかましてください。オビツ150の梱包に使われている硬めのウレタンがいいようです。

 ただ、これは私が個人的にやった改造ですので、あくまで自己責任でやってください。たぶん骨格破損の一年間の保証も受けられなくなると思います。

 いちいち写真入りで解説した方がいいのですが、ドールアレルギーの人は、人形の手足がバラバラになっている写真には耐えられないと思いますので、あえて文字ばかりでやりました。



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高校ライトノベル・ムッチャンのイレギュラーマガジン・37『ダウンロード・アップグレード』

2015-05-11 15:43:55 | イレギュラーマガジン
 ムッチャンのイレギュラーマガジン・37
『ダウンロード・アップグレード』
          


 わたしの本名は大橋睦夫である。その大橋睦夫が主人公になった芝居を発見した!

 2007年の公演であるので、旧聞に属するが、内容が、わたし自身と被るところが多いので、取り上げてみることにした。
 以下は『仔馬と私』というブログからの転載。転載禁止とは書いていないので、そのままの転載である。


  

 髪を柳屋ポマードでベッタリ八二分けにし、黒縁のメガネを掛け、ピンクのネクタイをしめる。

 芝居『ダウンロード・アップグレード』で俺が演じる大橋睦夫の完成だ。

 何度もコイツを演じてるが、生理的に好きになれない。

 運命至上主義で、33歳にもなってまだ理想の結婚のあり方を追い求めているという、ちょっと痛い、気持ち悪い男だ。

 たぶんコイツが実在したら、まず友達にはならないだろう。

 だが演じるぶんには面白いキャラで気に入っている。

 演じる役ってのは自分から距離があればあるほど面白い。

 自分にない感情や言葉で遊ばせてくれる。


 


 わたしを生理的に好きになれない人は、自覚しているだけでも数十人いる。知らずに嫌っている人を入れれば多分数百人になる。
 ありがたいことに「殺してしまいたい!」ほど嫌われてはいないので、今でもこうして生きている。

 柳屋のポマードは使ったことはないけど『ダウンロード』という脚本が、わたしの作品群の中にある。その上にアップグレードが付いているのだから、偶然なのかどうなのか、一度読んでみたい作品である。

 運命至上主義で、33歳にもなってまだ理想の結婚のあり方を追い求めているという……まるで、わたしの三十代そのもので、結果的に三十九という、かなりの晩婚になってしまった。

 コイツが実在したら、まず友達にはならないだろう……大当たり。わたしを友だちの列に加えてくれているのは、広い世界で片手で足りる。
 以前は、ブログを書くと、必ず匿名のひどいコメントが来た。元々教師だったので、すぐに添削したくなり、ブログで取り上げ、あれこれ批評を加えるので、近頃めったにコメントが来なくなった。

 ただ、仔馬氏の名誉のために、氏はわたしのことをご存じではないでああろう。

 念のため大橋睦夫で検索すると、わたしと同姓同名の方の情報が544件も出てくる。

 漢字の大橋睦夫の主な顔は元高校教師である、教師生活の半分は組合員であった。好きで入った組合ではなかった。教師になると指定された銀行に口座を作ったり、互助会や共済会に、ほとんど自動的に入らされる。それと同じ流れで組合員になって、シマッタ!

 わたしは日教組の「教え子を二度と戦場に送らない」に反対であった。お決まりの「何が何でも戦争はダメ!」で、自衛隊入隊希望の生徒を説得して止めさせるようなことは人権侵害であると思っていたし、今も思っている。生徒がどんな進路を選ぼうと、基本は本人の自由である。たとえ、そこが戦場であったとしても、本人の自由である。日教組を始め多くの教職員組合が共通して持っているスローガンは、戦時中「何が何でもお国のために戦場へ!」というスローガンとネガとポジの関係だが。わたしは同じフィルムに焼いた言葉だと思っている。
 組合費という源泉徴収(だった)のかなりの金額が政治活動に使われていたことも気に食わなかった。病気、特に精神疾患にかかり休職や退職に追い込まれる教職員に関心が無いことも感心しなかった。
 民主集中制で、組合の古参の人たちは、組合上部組織、ひいては特定の政党に従順すぎた。たった一晩で言うことが180度変わってしまうことに何度か出会った。
 ある生徒を持った時、この生徒はとても進級できないだろうと瀬踏みし、立ち話という面接指導や、家庭訪問を繰り返し、やっとの思いで、進路変更にこぎつけた。むろん早くから変更先は調べて複数用意してやった。本人も保護者も納得し、不安を抱きながらも新しい場所で自分の道を切り開いていった。妙な言い方ではあるが寿退学であった。
 その生徒の母親が組合のビラまきを手伝っているところに出くわした。
「先生と学校には、ずいぶんお世話になりました。お礼の万分の一でも……」とおっしゃった。
 組合の先輩が、電話をして協力を要請していた。まるでハゲタカのやり方である。

 平がなの大橋むつおも嫌われている。多くは書かないが、高校演劇の有り方に、ずいぶん反発した発言やブログを書いてきたので、関係修復不可能なほどに嫌われている。真の意味で「造反有理」だと思っていたが、高校演劇というのは「勧め一億火の玉だ!」の精神なので、この二月(2015)に関わることを止めた。

「自分にない感情や言葉で遊ばせてくれる。そういう意味ではこの男が好きである」

 仔馬氏の言葉は「そういう意味ではこの男が好きである」と結ばれている。

 仔馬氏に多謝。



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高校ライトノベル・ムッチャンのイレギュラーマガジン・36『オビツ150に春物Aラインを』

2015-05-10 12:53:23 | イレギュラーマガジン

ムッチャンのイレギュラーマガジン・36
『オビツ150に春物Aラインを』



 ファッション雑誌なら、もう手遅れなのですが、遅ればせながら春物Aラインを着てもらいました。
 何度も書いていますがオビツ150は胴が極端に短く身長は144センチしかありません。服を着せるには150への改造が不可欠です。



     


 Aラインとは

 Aラインというのはファッションデザイン用語で、フランスのクリスチャン・ディオールが1955年に発表したコレクションのラインナップのひとつであります。肩のあたりが華奢で小さく、肩から裾に向かって広がっていくのが特徴で、そのカタチがアルファベットの大文字のAを感じさせます。このことからAラインは、洋服を着たときの外側のラインを表す言葉として用いられるようになり、今ではポピュラーな女性の服のパターンとして定着しています。

 Amazonで買いました

 定価1万円のものを1680円で買いました……というと、ものすごく得をした気になりますが、通販にはよくある価格の表示法で、おそらく元から1680円のものだったのでしょう。
 サンプルのモデルさんの服を見た時から、実物は少し違うことを覚悟で買いました。
 サンプルはもう少し丈が長く、その分裾の花柄のパッチワークの部分が1/2以下の短さで、軽やかな印象です。黄色い部分にスリットがあるのがお分かりになるでしょうか。サンプルは、ここがもっと大きくスリットから花柄の生地が見えて、とても粋です。
 これも覚悟していたのですが、染が甘く、かなり色移りするだろうなと思い、下には色移り防止用のタンクトップを着せてあります。アップの写真の襟ぐりのところに、両肩から白いラインが覗いていますが、これがタンクトップの肩の部分で、重ね着の感覚を出している……つもりですが、色移り防止用なので、白いタンクトップで、あまり重ね着の効果は出ていません。
 色移りは予想以上で、着せて袖に腕を通しただけで手の甲に黄色い染料が染みついてしまいました。撮影後すぐに脱がせましたが、色移りしない程度に染料を落とすのは、三回くらい強烈な洗剤で洗わなければならないでしょう。

 工夫したところ

 サンプルは、きれいなAラインになっていましたが、コットン素材のTシャツの親分みたいなものなので、当たり前に着ると、大昔のアッパッパのように寸胴なシルエットしか出ません。

――パニエをかましてるな――

 サンプルを見て直感しました。人形にも長めのパニエを穿かせています。
 本来なら肩からのきれいなAラインになるはずなのですが、オビツの純正品のスタンドを使っているので、どうしても胸の下にハンガーがくるので、ラインを損ねています。
 どのような衣装にも対応するには腰や胸元でホールドする純正のスタンドには限界があります。不安定にはなりますが、股間で支えるスタンドでないと、裾の広がったドレスや、帯の大きな和服は着せられないでしょう。

 オビツ150にはAラインが似合います

 肩幅36センチ、ウエスト56(うちのは57ですが)のオビツ150は、言ってみればオードリーヘプバーンの5/6くらいの相似形なので、Aラインが良く似合います。通販でAラインのワンピなどは安く出ていますのでお勧めです。

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高校ライトノベル・はるか 真田山学院高校演劇部物語・『ムカデの蛇足』

2015-05-09 08:30:11 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
はるか 真田山学院高校演劇部物語
『ムカデの蛇足』


「おい、ムカデ。まだ頼んだ用事にでかけてないんかい?」
「へい、いまワラジを履いてまんねん」

 大阪落語の小噺ですが、そんなものとして、読んでください。


☆そもそもは

 横浜の出版社から「高校生向けの入門書を書いてほしい」と頼まれたのが馴れ初めです。

 高校演劇の入門書は先達のみなさんが、様々なものを書いておられますが、どれもテキストの形でした。ここにひねくれ根性から疑問を持ちました。
 演劇部の問題は、単なる裏と表の技術の解説では終わらないと感じたからです。

 演劇部の苦労の大半は、人間関係。それと高校生活との兼ね合いです。

 また、テキストの形は教科書めいて読む気になりません。

☆そこで、小説形式にしました。

 最初は新入生が入部し、最初の舞台を踏むまでの流れの中に話しを芽生えさせようとしました。
 でも、ここで考えました。
 演劇部に入部する子が10人いたとしたら、平均して残るのは、いいところ2人です。つまり1/5の確率で奇跡的に残った子で、典型的な新入部員とは言えません。典型的な新入部員の大半はコンクールまでに辞めてしまいます。残った部員も、他の部活と兼ている者が多くいます。

 で、転校生に演劇部に入ってもらいました。状況としては、思い切り特殊なのですが、新しく人間関係を作り上げ、演劇部の中で技術的にも人間関係においても、新鮮で、より典型化できるとふみました。

 主人公のはるかは両親の離婚で東京から大阪に来た、もと東京の有名女子高です。演劇の「え」の字も知りません。そのはるかが強引に演劇部に入れられ、半年の間にはるかも演劇部も傷つきながらも成長していきます。高校生の半分以上がなんらかの家庭の事情をかかえており、結果は親子のギスギス。経済的にはアルバイト、極端な場合家庭の崩壊を経験しています。わたしが勤めていた学校では半分近くの生徒が欠損家庭や、そうなる寸前の状況を経験していました。生徒同士の反目やトラブルはしょっちゅうでした。
 だから、部活をやっている高校生たちはそんな問題と折り合いをつけながら日々を送っていました。

 その折り合いの付け方が、クラブのマネジメントに影響を与えないわけがありません。

 で、はるかの物語のほとんどが、はるかの学校と家庭での話になりました。
 はるかは折り合いをつけながら、演劇部の部活を糧として成長していきます。その成長のいざこざが、芝居の糧になります。
 演劇人としての成長と、波乱万丈な実生活が両輪となって、両方が結果的には傷つきながらも上手くいくというサクセスストーリーです。

☆こんな子いてませんよ

 読んだはるか年下の後輩に言われました。確かにはるかは、多少オッチョコチョイのオチャッピーですが、精神的なエネルギーはハンパではありません。
 どうも、知らず知らずのうちに「こんな女の子がいれば素敵だろうなあ」という意識が働いていました。

 だから、ネット小説から、紙の本に書き換えるときは、思い切ってそこに絞り込み、演劇部に関係も関心も無い高校生でも大人でも、読んで身につまされながらもホッコリするような物語にしました。
 ぜひ、紙本の「はるか」と読み比べてみてください。

☆アンサーノベルとしての『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』

 はるかが、東京で通っていた学校が乃木坂学院高校です。はるかの話の中に東京の実家の三軒隣が仲鉄工という町工場で、そこに一歳年下の「まどか」がいます。
 はるかの真田山学院高校は、大阪の府立高校ですが、まどかの乃木坂学院高校は、東京でも有数の名門高校で、演劇部も有名な大規模演劇部です。この大規模演劇部が事故により部員3人の絵にかいたような小規模演劇部になります。
 その『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』を今日から、編集の段階でカットされた分も含めて連載することにしました。お楽しみいただければ幸いです。



『ノラ バーチャルからの旅立ち』ノラ バーチャルからの旅立ちクララ ハイジを待ちながら星に願いをすみれの花さくころの4編入り(税込1080円)
『はるか ワケあり転校生の7ヵ月』     (税込み799円=本体740円+税)
 ラノベの形を借りた高校演劇入門書! 転校生が苦難を乗り越えていっぱしの演劇部員になるまでをドラマにしました。店頭では売切れはじめています。ネット通販で少し残っています。タイトルをコピーして検索してください。また、星雲書房に直接注文していただくのが確実かと思います。


『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』    
    

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高校ライトノベル・ムッチャンのイレギュラーマガジン・35『Facebook止めてみませんか』

2015-05-05 13:51:06 | イレギュラーマガジン
ムッチャンのイレギュラーマガジン・35
『Facebook止めてみませんか』



 昨夜(5/4夜) こんなツイートをしてみました。

 Facebookをやめた。あれは、やっぱりバーチャルな繋がりでしかない。友だちの友だちは友だちじゃないし、リアルな関係もバーチャルにしてしまう。SNSは一つあればいい。Twitterは言いっぱなしでも済むし、わたしには、これが気軽で似合っている。


 半日たつと、30人あまりの人がリツイートしてくださり、同じように感じている人たちが多いなと感じ入っております。
 むろんFacebook愛好者の皆さんからの反対があることを承知で書いています。

 水交という言葉をご存じでしょうか。

「 君子の交わりは淡きこと水のごとし」という「荘子」の「山木篇」に出てくる言葉からとったもので、海上自衛隊の「水交会」旧海軍の「水交社」に、その名前として残っています。

 本当の友だちと言うのは、互いに深入りせずに、ここ一番と言う時に声を掛けるぐらいがいい。そう書いたあとで、「つまらぬ小人物の交際は、まるで甘酒のように甘く、ベタべタした関係であり、一時的には濃密のように見えても、長続きせず、破綻を招きやすいものだ」と書いています。

 わたしはFacebookオンチで、「いいね」一つ押すのにも考え込んでいました。一部はいいんだけど、他はいいと思わない。それでも「いいね」は一択なのです。正直に書こうとすると、直ぐに原稿用紙5枚分ぐらいになり、それをアップロードすると、あらぬ誤解を受けて反発されたり、反応が無いと小人なので「コノヤロー!」と無用に憤慨してしまったりします。

 また、Facebookの基本的な精神は「友だちの友だちは、みんなともだちだ。世界に広げよう友だちの輪!」というタモリでさえ止めてしまった幻想的な友達精神です。

 当たり前に考えれば「友だちの友だちは他人」です。

 友だちの投稿を読んでいると、その友だちが、意外にも不倶戴天の人間……とまではいかなくとも、全然意見も気質も違う人間だと知れます。人間はリアルな日常では「こいつは某のこと嫌いやったなあ」と忖度し、あえて話題にもせず、人の心を大切にします。
 それがFacebookでは丸出しなのです。で、仲の良かったともだちも「こんなやつやったんか!」ということになります。

 個人的な資質ですが、わたしは教職にある人には厳しいところがあります。

 ある時、友だちの友だちの高校教師が。履歴の職業欄に「劇団名」を書いているのを発見。つい「兼職禁止規定にひっかります」と書いてしまいました。すると「私憤をぶつけんといてほしいなあ」と書かれました。そのころのわたしは高校演劇は、まだまだ救いがあると思い、ブログなどでいろいろ書いていました。それで大阪の高校演劇の世界では「変なオッサン」で、通っていました。
 実際、この兼職禁止がやかましく言われるようになってから劇団活動(アマチュア)を自粛した人もいます。
 で、わたしは、ご当人の管理職に電話までしました。府教委に言えば処分対象になり、教師たたきの好きなマスコミは、直ぐに三面のトップに出してしまいます。結果、ご当人の機嫌を損ねただけで、気持ちの悪い終わり方をしてしまいました。

 つまり、知らなくていいことを知ってしまい、いらぬ人間関係のこじれを作ってしまい、極端な場合、現実の友だちを失うこともあります。

 亡くなった米朝さんが弟子に、こんな言葉を残しています「人間知らいでもええこともあんねんで」 そう知らなくていいことまで知って、少し頭を冷やせば「どうでもいいこと」に時間と頭を使ってしまいます。
 わたしは単細胞なのでFacebookをやっていたころ、かなり年下の後輩に「誕生日おめでとう……」を400字ほどで打ちました。結果返事は来ません。無性に腹が立ちます。調べると、この子には「友だち」が100人近くいました。いちいち返事は書いてはいられません。おそらく、その他大勢の中に紛れ込んで、本人も気づいていないのでしょう。
 で、考えてみると、そいつに、いままで「誕生日おめでとう」などとリアル世界では言ったことなどないのです。Facebookは、よくできた総務課のように「友だち」の誕生日まで、教えてくれます。いらんお世話です。

 関係が「友だち」「親しい友だち」など友だちのつくものしかないのも問題です。友だちなら「誕生日おめでとう」ぐらい言わなければならないような錯覚におちいります。

 Twitterは「フォローする」しかありません。基本的にツイートもしっぱなしでいいのです。字数も少なく(何十回もチェ-ン投稿するような市長さんもいますが)受け取り側も読みっぱなしですみます。

 脳みそとハートのキャパから言ってもTwitterぐらいがいいのではないでしょうか?



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高校ライトノベル・大橋誤訳 日本の神話・6『ヨモツヒラサカ 女は怖い! その①』

2015-05-04 16:15:42 | 小説3
大橋誤訳 日本の神話・6
『ヨモツヒラサカ 女は怖い! その①』
  


 母殺しのホノヤギハヤヲの神を切っても、イザナギの気持ちはおさまりません。

 ま、切っても数が増えるだけということもありますが、とにかく、妻を失った気持ちはおさまりません。
 で、イザナミが逝ってしまった、黄泉(よみ)国へ会いに行くことにしました。黄泉国とは、今の島根県の東部にあたりますので、古代に力があった出雲の国の説話の影響があるとも考えられます。

 でも現世と死者の国が地続きであるというのは、仏教伝来以前の日本人の死生観を知るうえでもおもしろいことです。
 日本の古代の文化が残っているとされる沖縄では、死者は海のかなたのニライカナイに行くとされ、けして地獄極楽でも天国でもありません。

 黄泉国についたイザナギは、洞窟の中から出てきたイザナミに、こんな話をします。
「なあ、カアチャン。まだ国生み、神生みは終わってないから、戻ってきてくれないかな」

 ちょっと素直じゃないですね「カアチャン死んで悲しくて、寂しくて、どうもなんねえ。お願いだ、愛してる! 帰って来てくれ!」

 そんなノリでヘビロテかけりゃいいのに、国生み神生みのためと理屈をつけてしまいます。男は神話の時代から言い訳がましいのであります。だからイザナミは、こう答えます。
「あんたね、来るの遅いのよ。あたし、もう黄泉戸喫(ヨモツヘグイ)しちゃったもんね」
 黄泉戸喫(ヨモツヘグイ)とは、黄泉国=市の国の食べ物食べたから、簡単に戻れないという意味のことを言います。

「でもさ、そこんとこなんとかならないかな~」

「分かった。んじゃ黄泉国の神さまと話しするから、それまで絶対覗いちゃだめよ」

 そう言って、イザナミは洞窟の奥に消えます。でも、待てど暮らせどイザナミは出てきません。
「ちょっとぐらいなら覗いてもいいだろ~」
 こういう設定はギリシャ神話から、『鶴の恩返し』まで、世界中に転がっている話です。
 イザナギは櫛の歯を一本折って、それに火を灯して狭い洞窟の通路を進んでいきます。そして、ひときわ大きな石室にたどり着くと、石のベッドの上に腐りはてたイザナミが横たわっています。
「ギョエー!」
 と悲鳴をあげたかどうかは分かりませんが、イザナミはゾンビになって起き上がります。
「見たなあ~、あれだけ覗いちゃいけないって言ったのに!」

 個人的には、イザナミは理不尽だと思います。

 覗くなというのは、相手の好奇心をかき立てる言葉です。で、イザナミも一応神さまなんですから、おおよその待ち時間を言っておくべきでしょう。
 なんとなく学校の無期停学を連想します。無期なので「期限はない!」と生指部長は言いますが、担任は、こっそり「まあ、お前次第やけど、二週間ちょっと」と、こっそり言います。中には無期というだけで腰砕けになってしまう子がいるからです。

 脱線しますが、むかしこんなことがありました。喫煙が見つかってしまった三年生が居ました。秋の半ば過ぎで、もう就職先も決まっていました。
「お前の、就職は取り消し!」
 と、生指部長は言います。信じられないことに、担任はなんのフォローもしませんでした。悲観した生徒は、帰り道電車に飛び込んで死んでしまいました。
 人間と言うのは期限という希望と言うか、目標がないと辛抱できないもののようです。

 この神話は古事記に基づいています。古事記は言うまでも無く、712年に太安万侶が稗田阿礼から聞き取ったものを文章化したもので、8世紀、あるいは、それ以前の風俗や習慣が反映しています。

 イザナミが通った通路は、6・7世紀に流行った横穴式古墳の構造を感じさせます。通路は石室に至る羨道(せんどう)を思わせます。奥の広い部屋は横穴式の石室そのものです。古墳=死の世界というイメージがそのままだと思います。

 で、起き上がった蛆虫だらけのゾンビイザナミが、どうしたか、次回のお楽しみに。


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高校ライトノベル・あのころの自分・5『ミカン箱一杯だけの世界』

2015-05-04 12:36:44 | 私小説
あのころの自分・5
『ミカン箱一杯だけの世界』
         



 針仕事をする母の傍で、畳のヘリを線路に見立てて三十円ほどの玩具の電車で遊んでいました。

 三畳に六畳、五軒並びの長屋の南から二つ目が、物心ついたころのわたしの家でした。
 家には一畳半の玄関の三和土(たたき)と二畳分ほどの縁側がついていました。
 でも、いつも母が針仕事している六畳の部屋が、わたしのコクーンでした。

 母が針仕事している二畳分ほどは聖域で、わたしの電車は、そこへ行きつくと手前の畳のヘリのジャンクションで曲がります。そんなことを半日ほどやって、飽きたら新聞の広告の裏などに拙い絵を描いて遊んでいました。
 日がな一日、そんなことをしていた記憶があるので、おそらく幼稚園にあがる前の四歳くらいの記憶です。まだテレビもなく、天皇陛下は若い皇太子で独身であられました。

 臨時工であった父は朝鮮戦争後の不景気で人員整理され、別の工場で以前より安い給料で働いていました。あ、わたしが生まれた昭和二十八年ごろです。明くる二十九年からは神武景気になり、父は再び臨時工の身分で元の会社にもどりました。
 で、人員整理した会社が済まないと思ったのか、組合が強かったのか、父と母は神崎川のほとりのボロアパートから、新築の社宅に越してきました。
 わたしは、まだ生後三か月ほどだったそうで、一番古い記憶が、母の傍らの六畳一間でした。

 もはや戦後ではない……と言われましたが。日本はまだまだ貧しく、例えば舗装道路は、家から五百メートルほど離れた市電の通りまで行かなければありませんでした。

 母の針仕事は、二万に届かない父の月給を補うための内職でした。和裁用の黒い裁縫箱、ささやかな貝殻のカケラが塗りこめてあり、幼いわたしには威厳に満ちた魔法の箱のように思えました。
 二段の大きい引き出し。その上に中くらいと小さな引き出し、上の蓋を開けると指ぬきやチャコ、糸切狭に針山。他に、わたしにはわからない和裁の細々とした道具が入っていました。
 右だったかの隅には、二寸ほどの引き起こし式のタワーがついていました。和裁に疎いわたしには、その名称は分かりませんが、幼いわたしには「母ちゃんのタワー」でした。

 タワーからは子どもの手ほどの金属製の洗濯ばさみのようなものが付いていて、それで反物の端を挟み、よく切れる洋裁ばさみで、小気味よく生地を断っていました。生地を断つ前は、器用に手で一尺ずつ尺をとり、細かいところは鯨尺で寸をとっていたように思います。

 母は、ラジオを点けながら内職をやっていました。田畑義男、春日一郎、笠置シヅ子、美空ひばりの歌が聞こえたり、ダイマル・ラケットの漫才んどをやっていたように思います。
 ラジオに合わせて、母が時にラジオに合わせて鼻歌で和したり、漫才に笑ったりすると、とても幸せでした。ときたま母と目が合って、二人とも笑っていたりすると、しびれるぐらい幸せでした。

 父は大正十四年の生まれではありましたが、第二丙種ぐらいだったようで、兵隊にはとられませんでした。幼い時の病気で人より手足が短く、身長は四尺半ほどしかなく、工場での仕事も辛いようでした。
 社宅の長屋で兵役の経験が無いのは父一人だけでした。工場では辛いことも多かったのでしょう。たいてい帰宅するときには眉間にしわを寄せ、なにやら人への呪詛めいたことをブツブツ言っていました。

 父は、我が家のブラックホールでした。

 だから、昼間、母の内職の傍で遊んでいたことが、とても幸せ……だったことに気づいたのは、母の葬儀を済ませて丸二年がたった最近です。

 わたしにも母の裁縫箱に匹敵する箱がありました。

 小さなミカン箱です。そこには四歳のわたしの全財産が入っていました。30円の電車の玩具。多分よそのお家からもらったお下がりの玩具。そして僅かばかりの絵本。サクマドロップの空き缶に入っていた数十個のビー玉。
 いま思えば玩具とも言えないようなガラクタが宝物で、小さなミカン箱は宝箱でした。

 少し大きくなってから、ミカン箱には、もう一つの意味が付け加わりました。

 わたしの上には三つ上の姉がいて、さらにその一つ上に、生まれて三十分だけ生きていた兄がいました。兄の話は小学生ぐらいで聞いたように思います。

 兄は、七カ月に満たない早産でした。いまの時代なら未熟児として生きていたでしょう。

 でも、そのころは手の施しようがありません。産婆さんは死産として処理しました。生まれてから死んだのでは戸籍を作らなければならず、葬式も出さなければなりません。貧しい両親にそんな余裕はありませんでした。

 で、子犬ほどの大きさの兄は、おくるみに包まれ、哺乳瓶一本のミルクだけ添えられミカン箱の棺に入れられ、神崎川の河川敷に埋められました。

 ミカン箱一杯だけの世界。わたしには、この二つの意味があるという話でした。



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高校ライトノベル・『はるか 真田山学院高校演劇部物語・15』

2015-05-01 10:07:10 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
はるか 真田山学院高校演劇部物語・15


出版された『はるか ワケあり転校生の7カ月』の原話ノーカット版。いかにはるかは生まれ変化していったか!?
 ぜひ、下記広告の完成版『はるか ワケあり転校生の7カ月』と読み比べてみてください



 アハハと笑いながら読み、高校演劇の基礎とマネジメントが分かる高演ラノベ! 

『第六章 おわかれだけど、さよならじゃない2』

 一度……東京に戻ってみる。お父さんにもう一歩踏み出してもらうために。

 でも問題が残っている。
 たった二つだけど、とても重要な問題が。
 アリバイ工作……そして致命的なのは資金不足。
 わたしの有り金は、佳作の賞金も合わせて三万ちょっと。
 一泊することを考えると、もう三万は欲しい。
 あれこれ考えているうちに眠ってしまった……。

 目が覚めると結論が、というか覚悟が決まった。
「お母さん、明日から一泊で神戸に行ってくる。由香といっしょ。異人館とかじっくり回ってみたいの、賞金も入ったことだし。」
 わたしってば、順序が逆さま。アリバイと資金の問題は、まだ解決していない。
「そういや、前から神戸のガイドブックなんか見てたわね」

 伏線は、とっくの昔に張ってある。 

「わたしも神戸には関心があるの、はるかのガイドブックで触発されちゃった。ねえ、一週ずらして、わたしと三人で行かない?」
「え……」
 想定外だよ。
「明日からだと帰りが月曜になっちゃう。横浜と神戸を比較して一本書いてみたいの。ね、来週の土曜からにしようよ」
「だめだよ、来週は部活が始まってる」
「そうか残念。まあ、わたしがいっしょじゃ窮屈だろうしね」
「そんなこと……」
「あります。って顔に書いてある。そのかわり写真撮ってきてよ。旧居留地とか異人館とか、リスト作っとくからよろしく」
 取材費ということで五千円のカンパ。やばいよ……。


 と、いうわけで、由香を訪ねて黒門市場。
 アーケードの下にずっと魚屋さんが並んでる。お魚を焼くいい匂いが立ちこめている。ご飯のすすみそうな街だ。
 由香の勧めで、フグ専門店の横の甘いもの屋さんに入った。
「そうか、そういう訳やったんか……まかしとき、親友の一大事。一肌脱ぐわ」
 夕立のような勢いで全てを話すと、雲間から出てきたお日様のような笑顔で引き受けてくれた。
「まあ、泊まりは無理やけど、日帰りで行ってくるわ。どれどれ、これがリストか……」
 アリバイはこれでなんとか、取材費は四千円に値切った。わたしも大阪人らしくなってきた。


 資金は、「当たって砕けろ」タキさんに泣きついた。
 映画館横のカフェテリアで一通りの説明……というより想いを吐き出した。由香に話すより十倍はエネルギーが要った。
「大人のことに首つっこむもんやない……」
 おっかない……これは失敗かとうつむいてしまった。

「うい……」
 タキさんが、アゴをしゃくった。
 気づくと、二つ折りにした映画のチラシ……そっと開いてみる。
「こんなには要りません……」
「どこで何あるか分からへん、持っていき……そのかわり」
「はい、お皿洗いでもなんでもやります!」
「そんなことやない……」
 タキさんはニヤニヤとわたしの身体をねめまわした。
「な、なにを……」
「無事に帰ってくること。無茶はせんこと……それから、スマホ出し」
「は、はい」
「なにかあったらこの人のとこに電話しい。オレからも電話しとくさかいに」
 と、アドレスを送ってくれた。
「この人は?」
「トモちゃんをオレのとこに紹介してきたやっちゃ」
「お母さんを?」
「共通の知人いうとこや、ちょっと伝法やけど頼りになるオバハンや。写メも送っとくわな」
送られた写メは、モデルさんのようにきれいなオネエサンだった。
「この人が電報?」
「アホ、そのデンポウとちゃう」
「分かってますって、イナセで男気があるってことでしょ。わたしだって江戸っ子のはしくれなんですから」
「大人をなぶんのやない!」
 パンフを丸めたので、頭をポコンとやられた。大橋先生のときと同じ音がした。

 それから乗る新幹線と、泊まりのホテルを決めさせられた。手配はその場でタキさん自身がやった。ホテルの予約は、まるで身内の人に言ってるみたいでやや横柄。新幹線とホテルの情報を送ってもらって、やっと解放。

 天六の商店街に寄ってあのポロシャツを買って。よくぞ売れずに残っていてくれた(父へのプレゼントだというと、さらに二割引になった♪)それを高安駅のコインロッカーに放り込み、目玉オヤジ大権現を片手拝みにして家に帰った。


 東側の席をとったのは失敗だった。
 お日さまの光がまともに入ってきて、窓ぎわに晒したした二の腕が、チリチリと音をたてて焼けていくような気さえする。
 ブラインドを閉めりゃいいんだけど、わたしは新幹線の二百七十キロのスピードで、この四ヶ月に近い時間をを巻き戻していた。
 玉串川沿いの八幡さまにお賽銭に託して捨ててきたはずの東京のはるかを、たぐり寄せ、巻き戻していた。
 捨てた東京での十七年間の人生の重さを感じたのは、新大阪の駅を車両がスーって感じで動き出したとき。わたしの身体からホンワカもスーっと消えていった。
 基礎練習でやった「悲しみのメソード」に似ていた。
上顎洞の中の液体が急速に冷えていき、喉、胸、お腹、脚を伝って床に流れ出していく。思わず、前の席のステップに足を乗せるくらいのショックだった。
 そして気がついた。東京のはるかを巻き戻さないと、とてもお父さんには会えない。東京のホンワカはるかに戻らなければ。
 これほどの違いがあるとは考えもしなかった。
 怖かった、だれか側に付いていて欲しい……。

 そのだれかの視線を感じたのは、怖さが限界に達しかけていた浜松あたり。
「はるか……か?」
「あ、先生……!?」
 なんと……大橋先生が通路に立っていた。
「なんで?」
 同時につぶやいた。

 互いに説明し終えたのは静岡のあたりだった。
 先生は、わたしのタクラミを。わたしは先生が東京と横浜の出版社に行く途中であることを理解した。
 先生はトイレに行って、席に戻る途中でわたしを見つけたそうだ。
 最初はタキさんのタクラミかと思った。
 だって、同じ日、同じ時間の新幹線。そして同じ車両だなんて。
 でも、最初から知っていたら、もっと早めに声をかけていただろうし、ズボンのチャックを閉め忘れることなんて、なかったと思う。
「先生、チャックが……」
 と、言ったときの慌てようは、演技ならアカデミー賞もの。あわてて前を隠した手には男性向け週刊誌。セミヌードのオネエサンが、わたしにウィンクしていらっしゃいました……。

 先生には、比較的冷静に話すことができた。
 三回目だっていうこともあったし、玉串川以来、半分見透かされていたようなこともあった。
 そして、なにより、わたしの方がしゃべりたかった。タクラミへの自信が揺らぎに揺らいでいたから。
「さっきの顔は、玉串川の倍は深刻やったで。最初はよう似た別人やと思た」
「今は、もう大丈夫でしょ?」
「……最初にプレゼンで、会うたときの顔やなあ」
「またスポットライト当てます?」
「いいや、ピンフォローする」
「え……ピンスポットがずっと付いてくるやつですか!?」

 というわけで、先生は出版社の用事を後回しにして、わたしを荒川までピンフォローすることになった。
我が人生の最大のやぶ蛇だ……。


 東京駅に着いてさらにびっくりした!
 ホームに、伝法のオネエサンが立っていた。
「坂東はるかちゃんね?」
「は、はい」
 張り込みの刑事に発見された犯人て、こんな気持ち……。
「で、あなたは?」
 伝法さんは先生を見とがめた。
「あ、わたしは……」
 先生も気圧され気味のご返答。
「ちょっと確認させていただきます」
 伝法さんはスマホを手にした。
「もしもし、タキさん。仕込みの最中にごめん。いま東京駅。うん、はるかちゃんはメッケ。でも、それにさ……」
 話の最後に大爆笑して、伝法さんはスマホを切った。
「さ、行きましょうか、大橋先生、はるかちゃん」
 伝法さんは、さっさと歩き出した。
 
 五分後、スマホのアドレスを交換して、わたしたちは伝法さんの車の中。
「大橋先生も、新幹線、タキさんに頼んだんでしょ?」
「ええ、昨日電話がありまして『明日、東京の出版社行く予定あったよなあ』て……」
「さすがに、となりの席ってわけにはいかなかったようですけど、同じ車両にしたんですね」
「あいつ……」
 同感です、はい。でも、このおかげで楽になったんだけどもね。
「まあ、半分お遊びの賭け。半分は……フフ、そういうタキさんてかわいいですね」
 大人の関係ってムズイよ。
「申し遅れました、わたし渡辺真由って言います。編集の仕事やってます。トモ……はるかちゃんのお母さんとも古いつき合いです」
 アクセルを踏み込んだ。うしろの車の追い越しを阻止。二十キロオーバー、負けん気つよそー……。
「荒川についたら、お任せしていいんですよね」
「そのつもりです。古里とはいえ事情が事情ですから」
「よかった。わたし午後から、編集会議だから……先生、今夜はお泊まりなんですよね?」
「ええ、そのつもりですが」
「じゃ、はるかちゃんと同じホテルにしときますね」
「でも、予約してありますから」
「キャンセルしときます。同じ系列だから」
「え……?」
 タイヤをきしませて交差点を曲がった。
「あ、父が経営してるんです。大橋先生、こういうのって苦手だから、いつも人任せでしょ」
……でしょうね、今時ケータイすら持たない原始人だから。
「はるかちゃん、どのへんに着けようか。いきなり家の前ってのもなんでしょう?」
「わがまま言ってすみません。南千住の図書館に行ってもらえます」
「あら、返し忘れた本でもあるの?」
「いいえ、借りにいくんです。南千住の空気を」
「ハハ、さすがトモちゃんの子ね。表現が文学的だ」
「いえ、文字通りなんです。荒川の子に戻るには、新幹線速すぎましたから」

 それから五分ほどで、車は図書館に着いた。
「じゃ、わたしはこれで。なにかあったら遠慮無くケータイで」
 爽やかな笑顔を残して、伝法の真由さんの車は走り去った。

 五ヶ月ぶりの南千住図書館。
 高安の図書館にもなじんだけど、ここの図書館は特別だ。
 五歳で越してきてから、十二年間。何百冊の本を借りただろう。休日はたいていこの図書館。たまにお父さんが荒川に紙ヒコ-キを飛ばすのについて行くこともあったけど、まあ、どっちもどっち。あとはガキンチョのころ遊んだスサノオ神社(字が難しくて、いまだに書けません)くらいのもの。
「高安の図書館よりすごいなあ」
 先生も嬉しそうだ。
「じゃあ、行ってきます。お昼までには戻るつもりですけど、十二時まわるようなら、スマホに電話してください」
「はるかのスマホの番号知らんで」
 もう、この原始人!
「はい、これです」
 メモに書いて渡すと、いそいそと(我が家)を目指した。


 図書館から四つ角を曲がると(我が家)だ。
 角を曲がるたびに懐かしさがこみ上げてくる。
「よう、はるかじゃねえか!?」
 四つ目の角を曲がってすぐ、ご近所の仲鉄工のおじさんが声をかけてきた。
「あいかわらず四人でやってるんですか?」
「ハハ、今は一人で二人分働いて四人前だけどよ。ま、心意気だよ。心意気」
 やっぱ、厳しいんだ……。
「まどかちゃん、元気ですか?」
 つい、幼なじみのことを聞いてしまう。まどかゃんのメアドは、悩みに悩んで、引っ越しの朝、新幹線の中で消去した。四つ目の角を曲がって、わたしはほとんど南千住の子に戻っていた。
「あ、さっきまでいたんだけどよ、部活とかで出てちまったとこだよ。分かってたら、言っといたのによ」
「ううんいいの、半分出来心で寄っちゃったから」
 半分は残念で、半分ホッとした。ここで幼なじみに会ったら、ここまで突っ張っていたものが一度に崩れてしまう。
「ところではるか、おまえんちだけどよ……」
 そこで、おじさんの肩越しにお父さんの姿が見えた。
「お父さーん!」
「はるか……」
「あ……」
 三人同時に声をあげていた。

 一瞬、時間が止まったような気がした……?

 それは刹那のことで、次の瞬間にはお父さんに抱きついていた。
 お父さんが、手にした段ボール箱を落とした。

 え……インクの匂いがしない。
 輪転機の音がしない。


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