大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校演劇ー基礎練習・(3)

2011-06-29 17:06:43 | 基礎練習

本の書き方『となりのトコロ』を見本にして

今回は、戯曲(本)の書き方について、少しだけお教えしようと思います。とりあえず、下記の本の冒頭を読んで下さい。

そぼ降る雨のなか、バス停の前に貧相な少女ユキが傘をさし、たたずんでいる。手にはもう一本。大きめの古い男物の傘。背中には、小さな子どもを背負っているように見える。
バス停の下手よりに古ぼけた街灯。それがささやかにバス停の周囲を照らしている。背後には鎮守の森。雨音しきり。ときにカエルの鳴き声。ややあって、下手から、のり子がボストンバッグを持ち、スケッチブックを頭にかざし、雨をしのぎながらやってくる。バス停の時刻表と携帯の時間を見比べ、わずかでも雨のしのげそうなところをさがす。二三度場所を変えるが、どこも大して変わりはない。
この間ユキは無関心。やがて……

のり子 ……バスが来るまで一本傘貸してくれないかなあ……
ユキ ……(一瞬ドキリと身じろぎするが、聞こえないふりをする)
のり子 ええと……バス……来るまででいいんだけどね……
ユキ ……
のり子 あなたも、バス……待ってんでしょ?
ユキ ……
のり子 次のバスまで四十分もあるのよね……
ユキ ……
のり子 ここのバスって……遅れるのよね、よく……
ユキ ……
のり子 二本持ってんでしょ。今さしてんのと、手に持ってんのと!
ユキ ……(黙って、さしていた傘をのり子にさしかけて、渡してやる)
のり子 え……ありがとう。
ユキ ……(傘を渡すと、またもとのところへもどり、もう一本の傘はささずに大事そうに持ち、黙ってぬれている)
のり子 どうしたの……ささないの、その傘。
ユキ ……
のり子 怒った?
ユキ ……(かぶりをふる)
のり子 じゃあ、さしなよその傘。あたし一人さしてちゃバツがわるいよ。
ユキ いいんです。
のり子 よかないよ。
ユキ いいんです。
のり子 なんだか、これじゃ、あたしがむりやり傘とりあげて、いじめてるみたいじゃないよ……返すよ。
ユキ いいの、それはあなたに貸したんだから。
のり子 返すよ(傘の押し付けあいになる。ユキの背中の子どもの異常に気づく)あんた、その背中の……ブタ?
ユキ 人形、ぬいぐるみの人形……
のり子 うそよ。今あたしのことギロってにらんで、牙むいてうなったわよ。ガルル……


芝居は最初の三分間が勝負です。ここで観客の興味をひいておかないと、あと取り戻すのはたいへんです。本についても同じことが言えます。
最初の三ページほどで、読者の興味をひいておかないと、最後まで読んでもらえません。要件は二つ。

①状況を「おもしろい!」と思ってもらえること。
②全体の芝居に関わる伏線を張っておくこと。この芝居はユキが傘を二本持っていて、一本をのり子に貸して、自分は黙って雨にうたれているという状況。そして、ユキの背中の人形です。観客、読者は、「あれ、どうなってるんだろう!?」と思います。大事なことは、それが芝居の流れや、テーマと関わっていることです。ただのハッタリではいけません。この芝居の冒頭の状況と伏線はテーマに大きく関わっていて、ドラマの最後のところで「なるほど!」とカタルシス(心的浄化)に結実します。結末を知りたい人は、青雲書房の「新鮮いちご脚本集 1」の、『となりのトコロ』 または、この初夏に門土社から出される『モンド ドラマパケット』でご覧下さい。

本を書くのには、平均的に言って、季節が一つ変わるくらいの期間がいります。ざっと三ヶ月でしょうか。むろん作家によってその差はまちまちで、わたしの言っているのは、あくまで標準です。故井上ひさしさんなどは、一年かかられることもありました。ここで紹介したわたしの『となりのトコロ』は、今のかたちに収まるまで、二十年近くかかっています。二十年前大阪の府大会で上演して以来五十あまりの中高の演劇部、劇団で演っていただき、改稿を重ねてこのカタチになりました。初稿でコンクールに臨んだときにも、四回ほど手を加えています。戯曲は作家の頭の中でできますが、役者によって肉体化する過程でどんどん変わっていくものです。また、そうでないと、なかなか生きた本にはなりません。今から創作にかかり、初稿の上がりが九月の頭頃でしょう。これをヒントに、そろそろ書き始めてください。もう時間はそれほどありません。戯曲は、建物に例えると基礎にあたります。基礎のしっかりしていない建物は、その上に立派な家を造ってもモロイものしかできません。建物でも、しっかりしたものは基礎工事に時間がかかります。演劇の三大要素は「観客・戯曲・役者」の三つです。 良い本を書いてください。

本の書き方は、こんな短い、パンフレットのようなもので分かるものではありません。これは、あくまでもヒントです。回を改めて本の書き方に、もう一歩踏み込んでお話したいと思います。

本編をアップロ-ドしておきました小規模演劇部用戯曲で検索してください。                                                          

          劇作家  大橋むつお

『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』          青雲書房より発売中。大橋むつおの最新小説!  お申込は、最寄書店などでお取り寄せいただくか、下記の出版社に直接ご連絡いただくのが、一番早いようです。ネット通販ではアマゾンや楽天があります。青雲に直接ご注文頂ければ下記の定価でお求めいただけます。 青雲書房直接お申し込みは、定価本体1200円+税=1260円。送料無料。 送金は着荷後、同封の〒振替え用紙をご利用ください。 大橋むつお戯曲集『わたし 今日から魔女!?』  高校演劇に適した少人数戯曲集です。神奈川など関東の高校で人気があります。  60分劇5編入り 定価1365円(本体1300円+税)送料無料。 お申込の際は住所・お名前・電話番号をお忘れなく。 青雲書房。 mail:seiun39@k5.dion.ne.jp ℡:03-6677-4351 大橋むつお戯曲集『自由の翼』戯曲5本入り 1050円(税込み)  門土社 横浜市南区宮元町3-44 ℡045-714-1471   
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高校演劇ー基礎練習(4)

2011-05-07 09:52:25 | 基礎練習
大阪府高校演劇連盟が、まだ大阪府高校演劇研究会といっていたころからの関わりで、数知れない基礎練習を試してきました。スタニスラフスキーの『俳優修業』千田是也の『近代俳優術』リー・ストラスバーグの『メソード演技』などなど……しかしほとんど身に付きませんでした。というより、私自身は、これらの本によって得るところがあったつもりではありますが、これをもとにして高校生を指導しても成果が上がらない。生徒の大半が基礎練習は、その時間だけやればいいと思っているようで、自分でなかなか独習しようとはしない。わたしは高校ではさっぱり勉強せずに(おかげで高校は落第して、二年生を二回やった)朝の七時から学校にいき『近代俳優術』の実践などをやっていた。いま思い返しても、こと芝居に関しては、かなりストイックな生徒でありました。

今の高校生にこれを求めるのは無理であります。昨年は偏差値六十に近い演劇部の指導を一年余やってみたが、基礎練習についての結果は同じであった。結論から言うと実際に舞台に立つ芝居の稽古が一番であります。笑う芝居があったとする。でも笑えない。そこで、本人は笑えない自分に気づいて笑いの基礎練習をやる。ちなみに笑いとは横隔膜のケイレンで、横隔膜は半随意筋……ちょっと説明。筋肉には手足の筋肉のように、意志のままに動かせる随意筋と、心臓や内臓の筋肉のように意志では動かせない不随意筋がある。分からない人は心臓を止めてみう……できませんねえ。ウィンクできますか? たいていの子ができません。アメリカ人はたいていできます。生活習慣にウィンクがあるからです。日本人にとっては目のまわりを含めて、顔の表情筋は半随意筋です。あ、半随意筋とは、訓練次第によっては意志で動かせるようになる筋肉のことです。ウィンクがそうですし、あ、耳動かせますか? 耳は動くんです。勝新太朗が座頭市を演るとき鍛錬してできるようになりました。
で、横隔膜です。横隔膜は一応随意筋なのですが、完全には意志のままには動きません。自分で息を止めて自殺した人はいませんし、サッカーの観戦に夢中になって呼吸することを忘れて死んでしまった人もいません。役者は横隔膜のケイレンができなければいけません。横隔膜のケイレンはクシャミ、しゃっくり、泣きじゃくったとき、そして……笑ったときにケイレンするのです。笑いは呼吸のトレモロです。リコーダーやドラムのトレモロができなくて、ちょっぴり困った人いませんか? ちょっと訓練すればできるようになりますね。横隔膜はちょっと努力がいります。「ハッ」と一回はできますね。これをくり返して早くします「ハッ、ハッ……」としだいに早くしていきます。ある瞬間を超えると、自然な笑いになります。で、「ハ、ヒ、フ、ヘ、ホ」で笑えるようにします。と、言葉では簡単ですが、かなりストイックにやらないと身に付きません。去年指導した生徒は、一年で四回の舞台に立つことでやっと、なんとか笑えるようになりました。ことほどさように基礎練習は継続してやることが難しいのです。

今春から、新しい基礎練習を始めました。基礎練習というよりは、一見遊びです。「だるまさんが転んだ」と「いすとりゲーム」をやっています。集中力と自己解放、笑いの練習が無意識のうちにできます。あと以前にも述べましたが無対象の大縄跳びも有効です。一つ大事なのは、やる前に「基礎練習だ!」と構えないことです。そしてやったあと「どういう効果があったのか」ということを難しく言うと検証、簡単に言えば、楽しかったところと、楽しくなかったところを話しあいます。楽しくないところはズルをやったり、大縄跳びでは、ミスを見逃したところです。
もう一つ新しい試みで、全員でAKB48の「会いたかった」をやらせています。ガキンチョのアイドルごっこなどと侮ってはいけません。彼女たちの集中力、笑顔、意外にきついアクション。にもかかわらず、息も乱さず、笑顔も絶やさず唄い踊りきるのは生半可なものではありません。
ユーチュ-ブなどで、素人さんがやっているのと彼女たちを比較すれば違いは歴然です。本物も、本番が終わり、カメラが止まったあとのメイキングなどを見てみると、OKが出たあと大きく息を整えているのがわかります。わたしが指導している子も初日虫歯が痛いのを堪えているような笑顔しか出来なかったのですが、二日目動きと歌をマスターするととびきりの笑顔になっていました。一度おためしになってみてください。また、詳しい基礎練習のメソードは『女子高生HB』を検索してください。青春ドラマのかたちで、アハハと笑って読んでいるうちに「なるほど」と思えるように書いております。   大橋むつお


『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』        

 青雲書房より発売中。大橋むつおの最新小説! 

お申込は、最寄書店などでお取り寄せいただくか、下記の出版社に直接ご連絡いただくのが、一番早いようです。ネット通販ではアマゾンや楽天があります。青雲に直接ご注文頂ければ下記の定価でお求めいただけます。

青雲書房直接お申し込みは、定価本体1200円+税=1260円。送料無料。
送金は着荷後、同封の〒振替え用紙をご利用ください。

大橋むつお戯曲集『わたし 今日から魔女!?』
 高校演劇に適した少人数戯曲集です。神奈川など関東の高校で人気があります。
 60分劇5編入り 定価1365円(本体1300円+税)送料無料。

お申込の際は住所・お名前・電話番号をお忘れなく。

青雲書房。 mail:seiun39@k5.dion.ne.jp ℡:03-6677-4351

大橋むつお戯曲集『自由の翼』戯曲5本入り 1050円(税込み) 
門土社 横浜市南区宮元町3-44 
℡045-714-1471   
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