[なぜ『が』には『`』が一つ多いのか?]
濁音の平仮名を頭に思い浮かべていただきたい。
がぎぐげご、ばびぶべぼ、だぢづでど、と並べてみて『が』だけが、肩の`が一つ多い。
片仮名はすなおである。ガギグゲゴ、バビブベボ、ダヂヅデド、みな仲良く肩の`は二つである。
実は、小学一年生のとき、これにひっかかった。
先生は説明なんかしてくれない。ただ「おぼえなさい」だけであった。
先生に質問する勇気がなかったわたしは、クラスで勉強のできる女の子に聞いてみた「なんで『が』は`が一つ多いのん?」
今でも覚えている。
「アホとちゃう?」
言葉にはしなかったが、取り巻きのカシコイ女の子といっしょにそういう目で見られた。
「先生が、そない言うてはるんやから、そうなんや。書き取りの見本にも、そないなってるやろ(このアホが)」
そんな言葉でかわされた。
「カタカナの『ガ』と区別するためやで」
バカな口げんかになりそうなのを、勉強のできる男の友だちがとりなしてくれて、その場はいったん納得したが、学校の帰り道、また気になりだした。
『が』は肩のところが女性的な優しさがある。『ガ』は肩がいかつい。`の数とは関係がないのではないかと。
現に平仮名の『へ』と片仮名の『へ』はパソコンで打つと全く同じであるが、字で書くと山のところが、柔らかくて優しい。良心的に仲裁してくれた友人には、申し訳ないが、出まかせとしか思えなかった。
大学に入って分かった。
『が』は『か』に濁点を打ったものだから、そうなる。ほかの濁音の肩には、`が無い。
多分教えてもらったのは教科教育方の講義であったように記憶する。人にものを教えるときには、教えることの成り立ちや因果関係をしっかり言わなければ、知識は生きたものにならないというようなことを言われたような気がする。
ことほど左様にひっかっかる難儀な児童生徒であったので、分かったものの理解は早くて堅牢だが、ひっかっかっても、ただ「覚えろ」という教えられ方では頭に入ってこなかった。
英文は、書くと、いまだに筆記体になる。これは中学一年で筆記体を教えられ、書いているうちに元のアルファベットから急いで書くと、こうなることが実感できたからである。だから息子が書く英文は昔の丸文字のように「おちょくっとんのか!?」という感性になってしまう。
東日本大震災の年に、震災をネタにした演劇部が近畿大会まで進んだ。わたしは、これを観てひっかかった。学校が特定されないように、どこにひっかかったかを述べる……ちょっとむつかしい。
要点だけ言うと、震災で死んだ子も、都会で交通事故で死んだ子も「死」においては同じである。だから悲しむことなんかないよ。という芝居であった。
観ていてムカついた。震災と、震災による「死」の意味が、まるで分かっていない。よくこんなものが近畿大会まで出てきたもんだと、この芝居をここまで進ませた審査員に怒りを覚えた。
で、幕間交流で手を上げてブチマケテしまった。感情のまま言ったので細部は忘れたが、「現在進行形の大震災をこんな取り上げ方をしていいのか?」「二つの死の意味は違う。最初から和解とカタルシスを描きたいために材料としてだけ震災をもってきている。これは犠牲者への冒涜だ!」「フィールドワークはしたの?」などを怒りを抑えながら言った記憶がある。
その日、わたしのブログは炎上した。
「あんたのせいで、空気が壊れた」
「場をわきまえなさい、いい歳をして!」
「しょせん、あんたに芝居なんか分かるか!」
「あんたが、こんな人だとは思わなかった!」
「生徒に言うのは、お門違い!」
まあ、いろんなコメントが来た。
で、その全てが匿名であった。
わたしが高校演劇について書いていたころ、さまざまなコメントをいただいたが、そのほとんどが匿名であった。高校演劇と縁を切る直前にきたものなど、ふざけたことに、ハンドルネームが「大橋むつお」であった。生真面目に「大橋むつお(本物)」で返したが、さらに「大橋むつお」さんからの攻勢は続いた。
読者の中には混乱して「大橋さん、なに一人芝居して遊んでんのん」と言う人まで出てきた。そして「大橋むつお」さんは書きすぎた。ある日、ある場所に居なければ書けない内容が含まれていた。したがって、読む人によっては個人が特定できてしまうような内容で、わたしは「大橋むつお」さんの名誉のために、そのコメントは削除した。
話が横道にいってしまった。ことほど左様に、ひっかかると前に進めないたちで、そのくせ粘着力が弱いため、ウジウジとして投げ出してしまうことが多い。
残り二十年あるかないかの人生。気楽にパスすることも覚えなければと思う今日この頃。
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