もどかしい伝言ゲーム
プルル~ プルル~ と、電話がなった。とある放送局の総合案内の電話である。
係りの女性職員の人が電話口に出た。
「はい、○○放送局、総合案内、担当のAでございます」
「あ、わたし、今日そちらの○○という番組に出演いたしますBです……ええ、そうXプロ所属のBです」
Aさんは、驚いた。総合案内には、一般の人からの番組などの問い合わせや、たまに苦情などが来るが。それは、その都度内線を繋ぎ担当の者に替わる。
幸か不幸かAさんはBさんの大ファンである。
日頃から、冷静沈着、たとえ言いがかりに近い苦情電話にも(見えないが)笑顔をもって接し、けして相手の機嫌を損ねぬよう、また、下手に同調しすぎ言質など取られぬように心がけ、入社以来八年間、間違いは一つも無かった。
Bさんは焦っていた。
「すみません、高速で渋滞に巻き込まれちゃって、約束の時間に間に合いません」
「あ、いま担当にお繋ぎいたしますので……」
「いま公衆電話……あ、車が……Aさん、あんたから伝えて……」
ガチャン……そこで電話は切れてしまった。
Bさんは、高速を降りた、一般道の道路脇の公衆電話からかけていた。
その一般道も、高速の渋滞を嫌った車で埋まっていた。埋まっていても、車列は少しずつは動く。
電話の最中に、車列が動き出し、後続の車からクラクションを鳴らされた。
で、慌てたBさんは、用件だけ言うと電話を切って、後続の車に片手拝みの詫びを入れて運転席に戻った。
Aさんは、憧れのBさんと、たとえ二十秒といえ、お話できた。そのことで少しトキメイタ心のまま、担当に内線電話をかけた。
「もしもし、総合案内です。たった今、そちらに出演されるBさんから電話があって……ええ、Bさん。なんだかジュウタイで、高速で、だからイチジカンほど遅れますって、そういうことでした」
この内線を受けたのはADのC君であった。C君は、Aさんの話をトキメキという興奮状態とともに聞いてシマッタ。
C君は、サブディレクターのDさんに伝えた。
「Bさん、高速でジュウタイでヒチジカン遅れるそうです!」
Aさんのトキメキは興奮として、その内容と共に伝えられた。
Dさんは、興奮という情緒にアクセントを感じて受け止めてしまった。
「七時間というなら、怪我してんだろ。重態だって言ってたな。高速で突っ込んだのなら、間にあわねえなあ」
かくて、この情報はチーフプロディユーサーの耳には、こう伝わった。
「Bさんは高速で大事故、七十キロオーバーの高速で突っ込んだんで、意識不明の重態!」
芸能記者たちは、さっそくスクープとして各社に電話。その日のトップ記事を差し替えるところまで出た。
むろん番組の収録は中止になった。
そして一時間後、Bさんはやっと放送局に到着。スタジオに入ると全員の注目が集まった!
「Bさん、あんた死んだんじゃないの!?」
Bさんは、思わず自分の足が付いていることを確かめた。
「おれ、幽霊……じゃ、ないよな」
これは、前世紀にあった笑い話というか都市伝説の一つです。
携帯が普及した現代ではあり得ない、牧歌的なファンタジーと言えるかもしれません。
プルル~ プルル~ と、電話がなった。とある放送局の総合案内の電話である。
係りの女性職員の人が電話口に出た。
「はい、○○放送局、総合案内、担当のAでございます」
「あ、わたし、今日そちらの○○という番組に出演いたしますBです……ええ、そうXプロ所属のBです」
Aさんは、驚いた。総合案内には、一般の人からの番組などの問い合わせや、たまに苦情などが来るが。それは、その都度内線を繋ぎ担当の者に替わる。
幸か不幸かAさんはBさんの大ファンである。
日頃から、冷静沈着、たとえ言いがかりに近い苦情電話にも(見えないが)笑顔をもって接し、けして相手の機嫌を損ねぬよう、また、下手に同調しすぎ言質など取られぬように心がけ、入社以来八年間、間違いは一つも無かった。
Bさんは焦っていた。
「すみません、高速で渋滞に巻き込まれちゃって、約束の時間に間に合いません」
「あ、いま担当にお繋ぎいたしますので……」
「いま公衆電話……あ、車が……Aさん、あんたから伝えて……」
ガチャン……そこで電話は切れてしまった。
Bさんは、高速を降りた、一般道の道路脇の公衆電話からかけていた。
その一般道も、高速の渋滞を嫌った車で埋まっていた。埋まっていても、車列は少しずつは動く。
電話の最中に、車列が動き出し、後続の車からクラクションを鳴らされた。
で、慌てたBさんは、用件だけ言うと電話を切って、後続の車に片手拝みの詫びを入れて運転席に戻った。
Aさんは、憧れのBさんと、たとえ二十秒といえ、お話できた。そのことで少しトキメイタ心のまま、担当に内線電話をかけた。
「もしもし、総合案内です。たった今、そちらに出演されるBさんから電話があって……ええ、Bさん。なんだかジュウタイで、高速で、だからイチジカンほど遅れますって、そういうことでした」
この内線を受けたのはADのC君であった。C君は、Aさんの話をトキメキという興奮状態とともに聞いてシマッタ。
C君は、サブディレクターのDさんに伝えた。
「Bさん、高速でジュウタイでヒチジカン遅れるそうです!」
Aさんのトキメキは興奮として、その内容と共に伝えられた。
Dさんは、興奮という情緒にアクセントを感じて受け止めてしまった。
「七時間というなら、怪我してんだろ。重態だって言ってたな。高速で突っ込んだのなら、間にあわねえなあ」
かくて、この情報はチーフプロディユーサーの耳には、こう伝わった。
「Bさんは高速で大事故、七十キロオーバーの高速で突っ込んだんで、意識不明の重態!」
芸能記者たちは、さっそくスクープとして各社に電話。その日のトップ記事を差し替えるところまで出た。
むろん番組の収録は中止になった。
そして一時間後、Bさんはやっと放送局に到着。スタジオに入ると全員の注目が集まった!
「Bさん、あんた死んだんじゃないの!?」
Bさんは、思わず自分の足が付いていることを確かめた。
「おれ、幽霊……じゃ、ないよな」
これは、前世紀にあった笑い話というか都市伝説の一つです。
携帯が普及した現代ではあり得ない、牧歌的なファンタジーと言えるかもしれません。