銀河太平記・299
ゴォォォォォォ…………
アナライザーで計測しなくても分かる振動が地面から響くっス。瀛台の地下を秘密の警邏車両が走るっス! それも、四方に全速力!
たぶんフェイント。
殿下を発見した自分が目の色を変えたんで、殿下の動向を眩ますために、警備責任者、おそらくは劉宏大統領自身が指令、いや、自分で操作してるっス!
大統領でありながら、その時その時、必要な対応ができるのは、本来が生涯現役軍人の元帥だからっス。見た目は、うちの船長より幼いっスけど、数々の戦争や事変を切り抜けてきた歴戦の将軍っス。油断はならないっス!
広場のほとんどは、いつもの賑わいに戻ってるっス。二十人余りのセキュリティーたちも、通行人や売り子に化け戻ってるっス。ちょっと動揺した人間も居たっスけど、人は雰囲気に呑まれるもんスッ。
最初こそは影を忍んで突き進んだっスけど、片付けるふりをして店の空き箱や梱包を集積場所に持って行くっス。小梅ネーサンがアレ?って顔っス。
たった今――これでお別れ――みたいなことを言っていたんすから、混乱もするっス。集積場所は瀛台の逆方向っスからね。
「ついでに弁当買ってくるっス(^▽^)/」
「あ、ええ?」
小梅ネーサンを煙に巻いて集積場からダッシュ! 外を周って、今度こそは影を拾って東通用門から中を探るっス。
瀛台から車が二台出て、中海の脇を通って北門。自転車に乗った職員がゆっくり西の通用門へ。
さっきの警邏車両といい、おそらく、これもフェイント。殿下の出入りをこのツナカンに掴ませないための欺瞞工作っス。
こういう時は、欺瞞工作に関わっていない人間を見るっス。
欺瞞工作に関わって居なくても異変を知ってしまえば人は動揺するっス……庭師のオッサンはいつものように庭木の手入れ、南棟の掃除係りもいつものように、キチンと窓を拭き、東棟の女子職員はテーブルを拭いてクロスを掛けてるっス……すでに殿下は瀛台の外に出てしまった?
瀛台の落ち着きぶりは、殿下の不在を示している……しかし、ほんの十秒ほどとは言え、自分は目の色を変えて殿下を追って、セキュリティーたちも色めき立ったっス。
少しは広場の方に気を取られるのが自然。
しかし……
さすがは劉宏大統領の側近たち、簡単には掴ませないっス。
ようし。
ほんとうに弁当を買って出店に戻るっス。
「え、ちょっとぉ」
「アハハ、まずは弁当っス」
「もう、分からない奴だなあ猫猫は(^_^;)」
「あ、お茶買ってくるっス」
混乱する小梅ネーサンを振り回して、飲茶の屋台に……陸遜のオッサンにお茶を頼んで「小梅ネーサンに」と言づけて西の通用門へ。
その間、視野の端に捉えた瀛台は、いつも通り。
ただ、さっき殿下のそばにいた女士官の姿が見えねえっス。
ツナカンの勘は、七分の確率で殿下は中南海を出たと言ってるっス。
「もう、いったい、何だったのよ!?」
小梅ネーサンに小言を言われ、広場のセキュリティーたちも煙に巻き、その夜、ツナカンは、もう一つの公邸、乾鎮に向かったっス。
☆彡主な登場人物
大石 一 (おおいし いち) 扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑科学研究所博士
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ) 将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶 小姓頭
児玉元帥(児玉隆三) 地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人) 児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー
テムジン モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人
森ノ宮茂仁親王 心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン(メアリ・アン・アルルカン) 銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
氷室(氷室 睦仁) 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平) 島守を称す(270から)
村長(マヌエリト) 西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平 西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん) 今上陛下の妹宮の娘
劉 宏 漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華 漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉 胡盛徳大佐の養女
栗 尊宅(りつそんたく) 輸送船の船長 大統領府参与
朱 元尚 少将 ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
※ 重要事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信 修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島 硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱 23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社 シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス 月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
奥の院 扶桑城啓林の奥にある祖廟
大石 一 (おおいし いち) 扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑科学研究所博士
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ) 将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶 小姓頭
児玉元帥(児玉隆三) 地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人) 児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー
テムジン モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人
森ノ宮茂仁親王 心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン(メアリ・アン・アルルカン) 銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
氷室(氷室 睦仁) 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平) 島守を称す(270から)
村長(マヌエリト) 西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平 西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん) 今上陛下の妹宮の娘
劉 宏 漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華 漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉 胡盛徳大佐の養女
栗 尊宅(りつそんたく) 輸送船の船長 大統領府参与
朱 元尚 少将 ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
※ 重要事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信 修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島 硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱 23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社 シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス 月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
奥の院 扶桑城啓林の奥にある祖廟