大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル:連載戯曲:ユキとねねことルブランと…… 6

2019-08-29 05:57:56 | 戯曲
ユキとねねことルブランと…… 6
栄町犬猫騒動記
 
大橋むつお
 
※ 無料上演の場合上演料は頂きませんが上演許可はとるようにしてください  最終回に連絡先を記します
 
時  ある春の日のある時
所  栄町の公園
人物
ユキ    犬(犬塚まどかの姿)
ねねこ    猫(三田村麻衣と二役)
ルブラン   猫(貴井幸子と二役)
 

 
暗転。明るくなる。幸子を囲んで麻衣とユキ、「幸子さん」「幸子」と声をかけている。
 
幸子: わたし……わたし、もとにもどれた……もとの姿にもどれたんだ!
ユキ: 幸子さん、もどれたんですね!
麻衣:ルブランも、もとの猫にもどって逃げていったわ。
幸子: ありがとう、麻衣ちゃん、ユキちゃん。
ユキ: ユキでいいです。
幸子: ううん、ユキちゃんが気づいてくれなかったら、わたし死ぬまで携帯電話のままだった。
麻衣: 水鉄砲撃ったのは、あたしだからね。
幸子: ありがとう。
麻衣: でも、防水仕様には気づかなかった。これは、ユキのお手柄。しかし、ルブランてのは相当の悪だったわね。
幸子: ルブランがこうなったのも、わたしのせいだと思う。甘やかしたり、いじめたり。わたし自身、思いあがって、わがままのしほうだい。そんなわたしを、ルブランはじっと見ていたんだわ……
麻衣: あたしと、ねねこも……
幸子: わたし、ルブランを探しに行く。
麻衣: あたしも、ねねこを……
ユキ: それはよした方がいいわ。
幸子: え……?
麻衣: どうして?
ユキ: 今はまだ、あやまりに気づいたばかり。気づいただけだもん。もう少し時間と努力が必要だと思う。ちゃんとしたパートナーとしてつきあうために二人と二匹には……もう少し、もう少し、人と自分を見つめる時間と努力が……
幸子: そうよね……ユキちゃん、えらい!
麻衣: さすが、まどか御自慢の愛犬ユキだ!……ごめん、まどかはまだ見つかってないんだ……
ユキ: ううん、大丈夫。いずれは……(ユキの骨形の携帯電話が鳴る)もしもし……え、まどか!?
二人: え……!?
 
ストップモーション。ユキだけが動く。
 
ユキ: 電話は、わがあるじ犬塚まどかからでした。運よく犬の国へは行けたらしいのですが、見ると聞くとは大違い! たった半日で嫌になり、人間の世界にもどってくると言いました。わたしが、うっかりまどかの前で犬の友だちとなつかしそうにしゃべっていたことが災したようです。この点は、わたしも反省。そして、これで、わが栄町の犬猫騒動は終わりをつげました。どうです、この二人。まどかからの知らせがあった、その瞬間の表情です。麻衣ちゃんなんか、少し間が抜けて見えますが、二人とも、友の無事を知った、その一瞬の驚きと喜びがよくあらわれています……われわれペットは、こういう人間の表情を、実によく見ているものです……今のあなたたちと同じように……犬や猫が、天使になるか悪魔になるか。それはあなたたち次第。わたしは、明日まどかがもどってきたら、またもとの犬の姿にもどります。一歳ちょっとにしては小柄な、しっぽをキリリと巻き上げた、白い、一見紀州犬……もし、町で見かけたら、気軽に声をかけてください。もちろん人間の言葉で。そしてもちろんわたしは犬の言葉でお返しします。ワンワンワン、ワン! わかりました?「今日は、お元気?」ってな意味です。そのうちわかるようになりますよ、バウリンガルとかなしででも。それじゃあみなさん、ワォーン……これ、さよならって意味ね。ワォーン、ワンワンワン……
 
  これに和するように、大勢の犬の「ワォーン」重なって幕。
 
 
 
 上演される時はご連絡ください。上演料は入場料を取らない無料公演(文化祭・コンクールなど)の場合必要ありません。入場料を取る公演では一回上演につき5000円の上演料をいただきます。 
 
 《作者名》大橋むつお《住所》〒581-0866 大阪府八尾市東山本新町6-5-2  
 
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高校ライトノベル:連載戯曲:ユキとねねことルブランと…… 4

2019-08-27 06:01:25 | 戯曲
ユキとねねことルブランと…… 4

栄町犬猫騒動記
 
大橋むつお
 
※ 無料上演の場合上演料は頂きませんが上演許可はとるようにしてください  最終回に連絡先を記します
 
時  ある春の日のある時
所  栄町の公園
人物
ユキ    犬(犬塚まどかの姿)
ねねこ    猫(三田村麻衣と二役)
ルブラン   猫(貴井幸子と二役)
 
上手から、ユキを呼ばわる声がして、麻衣があらわれる。
 
麻衣: ユキ……ユキ……!
ユキ: ねねこ!?
麻衣: ちがう、ねねこじゃないよ。麻衣だよ麻衣!
ユキ: ……庭の木の下で骨になってるんじゃあ……
麻衣: それは、ねねこのハッタリよ。わたし、ねねこにブタの人形に変えられていたの。ほら、ねねこが首からぶら下げていた。
ユキ: あのブタの人形?
麻衣: ねこばけは、生きた人間を物に変えてそれを肌身離さず持っていることで、その人間になりかわれるの。化代(ばけしろ)っていうんだって。
ユキ: そうだったんだ……でも、よかった、生きていてよかった! 生きていてほんとうによかった!(抱きつく)犬の姿だったら、ちぎれるほど尻尾をふってるとこ!
麻衣: ハハハ、顔をペロペロなめたりすんのもカンベンね。
ユキ: うん、ほんとはペロペロしたいんだけどね。(今にもペロペロしそう)
麻衣: アハハ、あたしもちょっとハメをはずして、いいかげんな生活していたから……ねねこ、それを見て、うらやましくなったんだろうね。ねねこが、ねねこだけが悪いんじゃないんだ。
ユキ: でも、相当性格悪いよ、あの猫。
麻衣: うん、でも、子猫の時からいっしょだったからね。
ユキ: じゃ、一人と一匹で、いっしょに反省だ!
麻衣: はーい……で、そっちの方、まどかはまだ見つからないんだよね?
ユキ: うん……犬の国へ行っちゃったかな……
麻衣: あたしもいっしょに探すよ。まどか、方向オンチだから、きっとまだそのへんをウロウロしてるよ。
ユキ: ありがとう。
麻衣: あ、ルブラン!?(遠くに着替え終わったルブランを発見する)
ユキ: もう着替えたんだ……あいつ、全部知ってたよ。わたしたちがここにいることも、水鉄砲で撃っていたことも……あいつには、この水鉄砲の薬、効かないんだ……
麻衣: あたってなかったんじゃないの?
ユキ: あたってた。ここへ来て、自分でもそう言ってた。だから、服も着がえに行ったんだ。
麻衣: けたちがいの化け物なんだ……
ユキ: 遊んでるように見えてるけど、ああやって、猫たちの訓練してるんだ。
麻衣: 猫好きの女の子が遊んでいるようにしか見えないもんね……
ユキ: ねこばけを増やして、何かとんでもないことを企んでいるんだ……
麻衣: 革命とか、世界征服とかね……
ユキ: うん。 
麻衣: アハハ、あたし冗談で……
ユキ: ルブランならありえる。
麻衣: ……幸子はどこだろう……化代にして身につけてるはずだけど。その薬、ルブランには効かなくても、化代には効くって。男爵がそう言ってた。化代を幸子にもどせば、ルブランも化けていられなくなる。
ユキ: 持ち物もみんな薬でびしょぬれ、もう何も身につけていないよ。
麻衣: でも、なんかあるでしょ、ポケットの中とか……
ユキ: それはないよ。全身ビチョビチョだったから、隠して持っていても水びたしだよ。
麻衣: 携帯で、誰かとしゃべってる……
ユキ: 誰としゃべってるだろう?
麻衣: 意地悪な顔して笑ってる。あれは人をいたぶって喜んでる顔だよ。何をしゃべってるんだろう?……ねえユキ……ユキ……
ユキ: (目を開けたまま固まってる)
麻衣: ユキ、ちょっと……どうしちゃったのよ、ユキ! やだ、固まっちゃた……
ユキ: (麻衣が叩くと、金属音がする)
麻衣: ちょっと、ユキ! ユキ!
ユキ: ……大丈夫、ちょっと手ごろな奴に魂とばして、話を聞いてたの。
麻衣: そういうことは、ヒトコト言ってからやってくれる。びっくりするでしょ。で、誰とどんなことしゃべってたの?
ユキ: 幸子さんと話してたみたい……「あんたのふりしてんのも飽きてきた。そろそろ消えてもらおうか」とか言ってた。
麻衣: あいつは並のねこばけじゃない。RPGで言えば、ラストの大ボス! 特別に魔力が強いんだ……薬も効かないし、化代も身につけなくていいくらいに……幸子は、きっと、どこかに閉じ込められているんだ。
ユキ: 閉じ込めるって、どこへ?
麻衣: とりあえず、幸子の家。行ってみよう。
ユキ: 待って、何かがひっかかるの……
麻衣: ひっかかるって、何が?
ユキ: 何かが……
麻衣: 何かじゃしょうがないでしょ。早くしないと、幸子は消されちゃうよ!
ユキ: ……ねねこが言ってた、猫は携帯電話なんか持たないって……そうだよね?
麻衣: だから、あいつは並のねこばけじゃないって! 携帯使って世界の支配をたくらんでるんだ!
ユキ: ちょっと待ってて(水鉄砲を麻衣に渡し、下手に去る)
麻衣: ユキ……! ったく、何を考えてんだ……あ、携帯とった!
 
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高校ライトノベル:連載戯曲:ユキとねねことルブランと…… 3

2019-08-26 06:11:51 | 戯曲
ユキとねねことルブランと…… 3

栄町犬猫騒動記
 
大橋むつお
 
※ 無料上演の場合上演料は頂きませんが上演許可はとるようにしてください  最終回に連絡先を記します
 
時  ある春の日のある時
所  栄町の公園
人物
ユキ    犬(犬塚まどかの姿)
ねねこ    猫(三田村麻衣と二役)
ルブラン   猫(貴井幸子と二役)
 
 
ユキ: ……子供が寄ってきた。
ねねこ: ちっ……子供は猫好きだからな。急いだ方がいいか……
ユキ: 子供たちがあぶないの?
ねねこ: いいや、子供に危害を加えることはないと思う……ただ、仕事がしにくくなる……
ユキ: 仕事?
ねねこ: お願いというのは(背中の水鉄砲をはずす)こいつで、あのルブランを撃ってほしいんだ。
ユキ: え……?
ねねこ: 見てのとおりの水鉄砲。ただし、中に薬が入ってる。
ユキ: 薬?
ねねこ: 猫の事務所からもらってきた「化猫を猫にもどす薬」
ユキ: え?
ねねこ: 天誅さ、天にかわって幸子の仇をうつ。同じ猫仲間として許せない。あたしは正義の味方猫ねねこ!(決めポーズ)
ユキ: ほんと?
ねねこ: ほんと。ね、お願いお願い、お願―い!
ユキ: でもでも、ルブランがもとの猫にもどって急に幸子さんがいなくなったら、幸子さんのお父さんやお母さん、きっと悲しむわよ。
ねねこ: 心配ない。今度は、あたしが幸子に化けるんだから。
ユキ: え、え……じゃあ、麻衣ちゃんの方は?
ねねこ: あたしの体は一つっきゃないのよ。
ユキ: じゃあ……
ねねこ: 二ヶ月もやったんだから、もうたくさんでしょ。
ユキ: でも、麻衣ちゃんのパパやママが……
ねねこ: まどかの魂は、探せばもどってくる。でも死んだ麻衣の魂がもどってくることはありえない、あたしが化け続けるのは、人の道にも、猫の道にもそむくことになる……むろん神様にも……(胸に十字を切る)家出したってことにする。ね、見かけもケバイねえちゃんになったから、家出くらいしたって、ちーっとも不思議じゃないでしょ。
ユキ: それって……
ねねこ: 死体を掘りおこして見せるよりましじゃん、でしょ……家出なら生きてるかもって……希望も持てるし……あたしの体は一つっきり! いろんな人をたすけようと思ったら、わりきらなきゃしょうがないでしょうが!
ユキ: あなたって人は……(ねねこの本心を見抜いている)
ねねこ: フフフ……思ったほどバカじゃないみたいね……そうよ。あたしは、なにも人だすけのためだけに化けてるんじゃない。楽がしたいの。おもしろおかしく生きていきたいの。それには、不自由な猫の体でいるよりも猫よりずっと気ままに生きてける人間の女の子になった方が……そうでしょ? そして、中産階級の三田村麻衣よりも、ブルジヨアの貴井幸子になった方が、何万倍もぜいたくできるじゃん! でしょ? だから鞍替えすんのよ鞍替え……待ちな……! どこへ行こうってのさ。ここまで聞いたら逃げらんないよ。もう、あんたはあたしの奴隷。妙な真似したら、あんたが犬だってバラすよ。体はまどかでも、頭はワンコ。さっき、電柱の横で思わず足が上がりかけたでしょ? 悲しむでしょうねえ……まどかのお父さんお母さん、娘が犬畜生だって知ったら……さ、早くこの水鉄砲を持って!
ユキ: 自分でやればいいでしょ!
ねねこ: できるくらいなら頼みはしないわよ。この薬は、猫が打ったんじゃ効き目がないの。さ、早く!(水鉄砲を渡す)
ユキ: だめよ、距離があるし、子供たちや他の猫たちもいるし……あ、鬼ごっこ。
ねねこ: ち……鬼ごっこなんかすんなよ、こんなところで……
ユキ: 無理だよ。
ねねこ: 悲しませる気か……自分を拾ってくれたお父さんやお母さんをををををを……よーくねらえ……今だ! どこをねらってる、左! いや、右!
ユキ: えい! はずれた……
ねねこ: 伏せろ! こっちを見てる……チャンス、今度はルブランが鬼だ!
ユキ: えい!
ねねこ: バカ、距離を見こんで撃たないか。銃口を上げて……上げすぎ!……右、左、遠すぎ! ちがう、そっちそっち、前だ! 前!(興奮しすぎたねねこが、ついユキの前に出てしまう)動いた、右、左、今だ! 
ユキ: えい!(あやまって、前に出すぎたねねこを撃ってしまう)
ねねこ: う……どこをねらってる……!?
ユキ: わざとじゃないよ、ねねこが前に出ちゃうから……
ねねこ: う……く、苦しい……猫の姿にもどってしまう……ユ、ユキのバカヤロー!(もがきつつ上手に去る)
ユキ: ごめん、だってねねこが……ねねこ……あ、猫にもどっちゃった……動かない……死んじゃったのかなあ……
 
いつの間にかルブランがラクロスのスティックを手にあらわれている。
 
ルブラン: 気絶しているだけよ。ほっとけばいい、あんな未熟者。そのうち目が覚めてどこかへ行くでしょう。
ユキ: ……
ルブラン: ルブランでいいわよ。知ってるんでしょ、わたしのこと? あなたの射撃、ねねこが言うほどには下手じゃなかったわよ。犬にしておくにはもったいないくらい。おかげで服も持ち物もびっしょびしょ。
ユキ: ……!?
ルブラン: 効かないのよ、わたしには。
ユキ: だって、ねねこは……
ルブラン: あんな下等な化猫といっしょにしないで。あいつは、ただ人に化けて、いい思いがしたいだけ……わたしは違うのよ。猫のエリートを育て、その子たちを人間に化けさせて……そこから先は、ヒ、ミ、ツ……ホホホ……じゃ、また町内の猫たちの訓練をしようっと。あなたたちには、ただの鬼ごっこにしか見えないでしょうけどね……おっと、その前に、濡れた服を着替えなくっちゃね。バキューン(ラクロスのスティックでライフルを撃つ真似をする)今度邪魔したら、許さないからね(去る)
ユキ: ……あいつ、全部知ってんだ……
 
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高校ライトノベル:連載戯曲:ユキとねねことルブランと…… 2

2019-08-25 06:07:48 | 戯曲
ユキとねねことルブランと…… 2

栄町犬猫騒動記
 
大橋むつお
 
※ 無料上演の場合上演料は頂きませんが上演許可はとるようにしてください  最終回に連絡先を記します
 
時  ある春の日のある時
所  栄町の公園
人物
ユキ    犬(犬塚まどかの姿)
ねねこ    猫(三田村麻衣と二役)
ルブラン   猫(貴井幸子と二役)
 
 
ねねこ: それにしても、うまく化け……(ぐるっと、ユキのまわりを一まわりして、おぞけをふるう)……その体はまどかそのもの……ユキ、おまえ、まどかに憑いたね……!?
ユキ: ちがう、それはちがう!
ねねこ: なにがちがう。人間の目はごまかせても、このあたしの目はごまかせないよ……
ユキ: ……だれ、あなた……そういうあなたこそ、三田村麻衣じゃないわね?
ねねこ: フフフ……にぶい犬だ、まだ気がつかないのかい?
ユキ: ……!?
ねねこ: ねねこよ、あたし。
ユキ: ねねこ……!
ねねこ: そんなバイ菌を見るような目で見ないでくれる。あたしは、コソドロみたいに人の体をのっとったりはしないわ。これは、わたしの磨き上げたテクニックで変化(へんげ)した、芸術品ののような三田村麻衣の姿よ。
ユキ: ねこばけ……
ねねこ: ありがとう。名誉ある称号をおぼえていてくれて。犬は間抜面して尻尾ふるしか能がないけど、あたしたち猫は、たとえ飼主であろうと媚をうらず、独立自尊の風を失わず。その化学(ばけがく)は、時に、狸や狐をもしのぎ、その変化(へんげ)の術は、人で申さば人間国宝、匠のきわみ。なかんずく、このねねこは遠く鍋島猫騒動のねこばけの嫡流。エスタブリッシュの頂点……なんて、むつかしい言葉を並べても、犬の頭じゃ理解できないわね。
ユキ: どうして、麻衣ちゃんに化けているのよ?
ねねこ: 言ったでしょ、バイ菌見るような目で見ないでって。ねこばけの値打のわからない下等動物とは口もききたくない……と他の犬なら、そう言って後足で砂をかけておしまいだけど。ほかならぬ、今は亡き主の親友の飼犬ちゃん……
ユキ: 今なんて言った……今は亡き……?
ねねこ: そう、今は亡き……麻衣ちゃん、死んじゃったのよ。
ユキ: うそ……
ねねこ: ふた月ほど前の夕暮れ時、コンビニに行こうと、急に家の前にとび出した麻衣ちゃんを、トラックが……即死だった……おり悪しく、ちょうどたばこ屋の角を曲がって、お母さんが帰ってくるのと同時……とっさに、あたしは麻衣ちゃんの亡骸を隠し、大あわてで麻衣ちゃんに化けたの……それからふた月、お父さんやお母さんの悲しみを思うと、もとのねねこの姿にもどることもできず、悲しい変化を続けているの……
ユキ: 麻衣ちゃんは……?
ねねこ: 庭の桜の木の下。猫の魔法で瞬間移動させて……今、静かに土に還りはじめている……
ユキ: そんな……麻衣ちゃんが……
ねねこ: 麻衣ちゃんが死んだって知ったら、麻衣ちゃんのパパとママは、どんなに悲しむことか……それを思うと夜も眠れず、変化のストレスも重なって……あたし、近ごろナーバスなの……
ユキ: なんてこと……ふた月も前から……だから、まどか、あんたのこと敬遠してたんだ……一番の親友だったのに……どうせ化けるんだったら、もう少し……性格とか、もっと麻衣ちゃんらしく……
ねねこ: 姿形はともかく性格まではね……ところで、ユキはどうして、まどかの体にとりついたりしてんのさ?
ユキ: ……
ねねこ: 言っちゃいなよ。あたしは全部ゲロしちゃったんだから、今度はユキの番だよ。
ユキ: 今朝……目が覚めたら、入れ替わっていたんだ……
ねねこ: 今朝?
ユキ: まどかって、時々、心ここにあらずって顔してる時があるでしょ。
ねねこ: うん、よくボーっとしてるよね。
ユキ: あれって、ほんとに心がないんだよ。
ねねこ: え?
ユキ: 体から、魂が抜けて、フワフワしてんの。そういう時、わたしも時々、まどかの体の中に入ったりしていたの。
ねねこ: え、ユキって、そんなことができるんだ!?
ユキ: うん、子犬のころから、「あ、この人って何考えてるんだろう……」そう思うと、ふうっと相手の中に入れたりしたんだ。
ねねこ: そうなんだ。
ユキ: もっとも、ほかの犬や人には嫌がられることが多くて……それで、犬の国を出てきちゃったんだけど……
ねねこ: え……ユキって、犬の国出身なんだ。
ユキ: うん、そうだよ。この妙な癖がなかったら、とっても住みやすいところ……でも他の犬には内緒だよ。この町の犬は、犬の国の出身てだけで白い目で見るんだから……
ねねこ: うん、わかった……そいで、どう。まどかの体に入って、どんな具合?
ユキ: うん、表面はいい子ぶってるけど、実際は不安と不満だらけの子なんだ。そのひずみが、体のあちこちに出ていて……今も、肩と腰にエレキバンはってんの……
ねねこ: ハハハ……
ユキ: 入試のことも気になってるみたいで……胃にもきてんの……ゲップ……ごめん。
ねねこ: で、まどかは、犬のユキの姿で町をうろついてるんだ……
ユキ: ひょっとして、犬の国へ行ってしまったのかも……昨日、携帯で犬の国の友だちとしゃべっていて……とてもなつかしくって……それを聞いて、行っちゃったのかも……まどかって、すぐに人のことうらやましく思っちゃうから……
ねねこ: 犬が携帯もってんのか!?
ユキ: もってるよ。犬は淋しがり屋で仲間意識が強いから。人間にはわからないように、骨の形とかしてるんだ(見せる)
ねねこ: ふーん……ほんとに骨にしか見えないね……
ユキ: 猫は携帯とか持たないの?
ねねこ: もたない。趣味じゃないのよ、そういう携帯とかでベタベタした関係……
ユキ: 猫って……
ねねこ: 性にあわないんだ。嫌いって言ってもいいよ。べつに好かれようなんて思ってないから。でも、ユキのことは友だちって思っているよ。だから、こんなにいろいろ話をするんだ。
ユキ: 友だち? わたしは思ってないけど。
ねねこ: でも、あたしは思ってんの!
ユキ: 猫って、勝手……きっと(下心が)……
ねねこ: で、友だちとして、一つお願いがあるんだけど……
ユキ: ほらきた。
ねねこ: ほら、あそこ。茂みのむこうのベンチに、幸子がいるでしょ、貴井幸子。
ユキ: え……うん。
ねねこ: 二年B組のタカビーちゃん。制服姿は、わたし達平民といっしょだけども、彼女、貴井建設の社長のお嬢さん。
ユキ: え、貴井建設って、テレビでコマーシャルとかやってるゼネコンの!?
ねねこ: そう、高速道路とか、空港とか、バンバンつくって儲けてる。
ユキ: でも、幸子さんの家って、普通の家だよ。失礼だけど、社長さんて感じじゃあ……
ねねこ: 本宅は、田園調布にあるんだよ。去年、親子げんかして、とび出してきたんだ。ほら、一年の秋ごろ転校してきたでしょ。
ユキ: ……でも、そんな高ビーのお嬢さんがこんな公園で日向ぼっこする?
ねねこ: 庶民をヘイゲイしてんのよヘイゲイ。わかる? 人を見下して喜んでんのよ。
ユキ: まさか……おだやかに半分目をつむって……まるで猫のお昼寝という感じだよ。
ねねこ: そう、猫のお昼寝なんだよ、猫の……
ユキ: ……!?
ねねこ: わかった?
ユキ: まさか……
ねねこ: そう、あいつも猫。幸子が飼ってたルブランて猫。卒業まぎわに、また転校するって噂。それでピンときて調べてみたら……ルブランに入れ替わっていたってわけ。あいつ、田園調布にもどって、あらんかぎりのぜいたくをしようって腹よ。
ユキ: ……悪い猫……で、本物の幸子さんは?
ねねこ: 殺されたか、食われたか……
ユキ: ええ!?
ねねこ: ……猫が寄ってきた……二匹……五匹……どんどん増える。
ユキ: みんな町内の飼猫だ……
ねねこ: 手なずけてんのよ。きっと田園調布まで連れてって、手下にするつもりでしょ……
 
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高校ライトノベル:連載戯曲:ユキとねねことルブランと…… 1

2019-08-24 06:06:30 | 戯曲
ユキとねねことルブランと……
栄町犬猫騒動記
 
大橋むつお
 
※ 無料上演の場合上演料は頂きませんが上演許可はとるようにしてください  最終回に連絡先を記します
 
時  ある春の日のある時
所  栄町の公園
 
人物
ユキ    犬(犬塚まどかの姿)
ねねこ    猫(三田村麻衣と二役)
ルブラン   猫(貴井幸子と二役)
 
闇の中、猫たちの無秩序で無統制な声々しばらく続く。「おだまり!」とルブランの凛とした一声で、水を打ったように静かになる。同時に、舞台明るくなる。舞台は栄町の公園。中央に、この町の高校二年生、貴井幸子の姿をしたルブランが、舞い散る桜の花吹雪の中、猫達(姿は見えない)を睥睨している。
 
 
 
ルブラン: おまえたち、いいかげんにしないと、三味線の皮にしちゃうよ!(猫達のしょげた声)
 
ルブランの携帯が鳴る。手にしたラクロスのスティックを持ちかえ、腰につけた大そう立派なケースから、美しい携帯を出す。同時に猫達に「あっちにおいき」とあごでしゃくる。猫達の気配ほとんどなくなる。
 
ルブラン: ……いいこと、あなたはわがままだったのよ。どうしようもなくね。因果応報、むくいよ……だめ。今ごろ泣きごと言ったって。恨むんだったら、自分を恨みな。人のことをちっとも考えない。自分の気持ち、欲望だけ。最低だったわよ!! そんなあなたに、終止符を打ってあげたの。エンドマークを出してあげたの。反省……? しても遅いわよ。もう人間として生きていく資格なんかなし! 世界のためにも、これしかないの! これからは、わたしがやるわ。あなたに代わって……そう、泣けばいい、わめけばいい。もう誰にも聞こえやしない。そうやって、自分の愚かさとみじめさを思い知るがいい! ホホホ……じゃ、またお話しましょ。これからは何度でもいたぶってあげる。もう少しあなたの心をえぐってやりたいけど(人の気配を感じて)じゃ、またね……
 
携帯のスイッチを切り、上手方向に目線を残しながら下手に去る。二三匹居残った猫が「ニャー」と後を追う。いれかわりに、同じ高校二年生の犬塚まどかの姿をしたユキが、声をひそめ、まどかを探しながらあらわれる。
 
ユキ: まどか……まどか……まどかったら……どこ行っちゃったのよ。まどか……たまんないよ、ほんとに……まどか! たのむよまどか……どうすんのよ、こんなになっちゃって……まどか! 冗談じゃないわよ……お願いまどか。出てきてまどか……出てきてちょうだい、まどか……
 
同様に、同じ高校二年生の三田村麻衣の姿をしたねねこがあらわれる。背中に大きな水鉄砲を背負い、腰にチャラチャラとひかりもの、鞄を手に、首にブタの人形を下げている。
 
ユキ: まどか……まどか……(ねねこに気づき)ユキ、ユキ……どこにいるの、犬塚さんちのユキ……
ねねこ: なにやってんの?
ユキ: あ、麻衣……いつからそこに?
ねねこ: ついさっき。公園の前を通ったら、まどかの姿が見えて……何か探してんの? ひょっとして……
ユキ: ユキ。目が覚めたらいないの。庭の柵が開いていたから、一人で散歩に出かけちゃったんじゃないかと思うの。
ねねこ: それは心配ね。まだ子犬なんでしょ?
ユキ: うん、一才ちょっと……人間でいえば、わたしたちくらいかな。
ねねこ: へえ、もう一才過ぎたんだ。
ユキ: 小柄な子だから……でも、雑種のノラ犬、賢い子だからそう心配はないと思うんだけど……
ねねこ: へえ、ユキってノラだったんだ。
ユキ: お母さん、動物嫌いのくせに見栄っ張りだから、紀州犬だって言ってるけど。ほんとは、お父さんが酔った勢いで、この公園で拾ってきたの。
ねねこ: そうなんだ。
ユキ: で、けっきょく、わたしがユキの世話係ちゅうわけよ……おーい、ユキ……
ねねこ: まどか、今日は、ちょっと久しぶりだよね?
ユキ: そう……?
ねねこ: このふた月ほどは、ろくに顔もあわせてないよ。
ユキ: そう? だったらごめん。
ねねこ: ひょっとして、麻衣のこと敬遠とかしてる?
ユキ: ううん……たまたま。
ねねこ: たまたま?……はっきり言いなさいよ。そういうずるい言い方嫌いだし、あたし。ほら、また目線が逃げる。何か思ってる証拠。かまわないから、はっきり言って。
ユキ: えと……このごろ麻衣、変わっちゃったりしてない?
ねねこ: あたしが?
ユキ: うん……派手になったつうか、お化粧とかもしてるし、ジャラジャラひかりもんとかぶら下げてるし……それはいいんだけど、学校でも、よく居眠りとか、ちょっと気むつかしくなった感じ……?
ねねこ: ふーん……
ユキ: はっきり言えっていうから……気ィ悪くしたらごめんね。
ねねこ: ううんいいよ、気にしてないから。あたしもいっしょに探してあげようか?
ユキ: いいよ、そんな……
ねねこ: いいよ、探してあげるよ、行方不明のまどかのこと……
ユキ: え……!?
ねねこ: 実は、ずっとさっきから、あんたのことはわかっていたのさ。あんたの探しているのは、犬のユキなんかじゃない。人間のまどかだ! どうだい、違うかい? 犬塚まどかさんちの飼犬のユキさん……
ユキ: キャイーン……!
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高校ライトノベル・連載戯曲:サクラ・ウメ大戦・3

2019-08-23 06:16:51 | 戯曲
連載戯曲:サクラ・ウメ大戦・3
 
  大橋むつお
 
 
※ 無料上演の場合上演料は頂きませんが上演許可はとるようにしてください  下段に連絡先を記します
 
 
 
 
時 ある日ある時
所 桜梅公園
人物 
(やさぐれ白梅隊)   (はみだし八重桜隊)
 ゆき(園城寺ゆき)    さくら(長船さくら)  (ITVスタッフ)
 咲江           百江           リポーター
 ルミ           純子           カメラ
 春奈           ねね           音声
 千恵           やや
 その他いっぱいいれば なお良し 
 
 
 
 
 
 カメラ、ゆきとさくらの鍔のアップからひいて、舞台を上手から下手へ、ゆっくりなめる。(平行移動しながら撮る)、舞台が狭い時は、カメラ、音声共に舞台下に降りて撮っても良い。しかし、ここ一番撮ってますっていうカメラマンの気迫は示してほしい。カメラ下手までまわりきったところで、リポーターのOKサイン。
 
リポーター: オッケー!
カメラ: よかった、バッテリーちょうどいっぱいでした。
やや: 一分無かったよ……
カメラ: アップとロングくりかえすと、早くあがっちゃうのよバッテリー。
やや: そうなんだ。
さくら: みんなありがとう。
ゆき: ギャラは出ないけど……
リポーター: テレホンカードあげるわ、人数分、カメラさん、くばってあげて、
一同: ワーイ!
 
   テレホンカードが配られている間、レポーター、爪をかんで考えていたが……
 
 
リポーター: 音声さんはまだバッテリーいけたわよね。
音声: はい、まだ大丈夫です。
リポーター: みんなね、絵は撮れないけど、音声が生きてるの、あの婆ちゃん(なるべく古く、でも観客のみんながのりそうな歌、例「青い山脈」「上を向いて歩こう」等々)の歌が好きだから、どうだろ、大先輩のために、アカペラだけど歌ってもらえるかな番組のBGMに使いたいの、お婆ちゃん、きっとよろこぶよ。
 
   「わたし知ってる!」「賛成賛成!」「やろうやろう!」「全部は知らない」「知ってるところだけでいいよ」「アアアアアー(発声練習)」などなどあって……
 
レポーター: じゃいきます……オオ?!(カラオケが鳴り出す、文化祭などなら、カラオケという設定でピアノなどの生演奏の方がいい)
音声: ちょうどカラオケテープがあったんで……
リポーター: さすがITV(田舎テレビの略)の音声さん! さあ、観客のみなさんもごいっしょに! せえの!……
 
 
   舞台全員、そして観客席もまきこんだ大合唱になり、のり方により曲の途中でワンコーラスで、ツーコーラスで、幕。
 
 
【作者情報】《作者名》大橋むつお《住所》〒581-0866大阪府八尾市東山本新町6-5-2
 
 上演される時はご連絡ください。上演料は入場料を取らない無料公演(文化祭・コンクールなど)の場合必要ありません。入場料を取る公演では一回上演につき5000円の上演料をいただきます。 
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高校ライトノベル・連載戯曲:サクラ・ウメ大戦・2

2019-08-22 06:09:32 | 戯曲
連載戯曲:サクラ・ウメ大戦・2
 
  大橋むつお
 
 
※ 無料上演の場合上演料は頂きませんが上演許可はとるようにしてください  最終回に連絡先を記します
 
 
 
時 ある日ある時
所 桜梅公園
人物 
(やさぐれ白梅隊)   (はみだし八重桜隊)
 ゆき(園城寺ゆき)    さくら(長船さくら)  (ITVスタッフ)
 咲江           百江           リポーター
 ルミ           純子           カメラ
 春奈           ねね           音声
 千恵           やや
 その他いっぱいいれば なお良し 
 
 
リポーター: おつかれさまあ。
ゆき: なんだ、そんなところから撮っていたんですか?
リポーター: いい絵がとれたわよ。
さくら: すみません、本当は、二人とも千鳥(前に進みながらザコを打ち倒すこと)の末に、とりまきをバックに太刀打ちってことになっていたんですけど……
 
   カメラが舞台に上がると、そろりそろりと、双方の生き残り数名が、ある者は、はにかみ、ある者はニコニコとカメラを意識して舞台に上がってくる
 
リポーター: 大丈夫、クライマックスはローアングルのバストアップで撮ったから、大丈夫よ。
咲江: ローアングルって、下から撮ること?
ルミ: パンツ写っちゃうんじゃない。
ゆき: 大丈夫スパッツ穿いてっから。
リポーター: 大丈夫よ、バストアップで撮ってから。
百江: さくらってペチャパイだからね。
純子: 下から撮ったら胸も大きく写るんじゃない?
さくら: うっさいよ、あんたたち!
リポーター: バストアップって、胸から上しか撮ってないってこと、ほんとはカメラ二台使って交互にカットバックでいきたかったんだけどね。編集で、なんとかするわ。
ゆき: ちょっと後からギューギュー寄ってくるんじゃないわよ!
さくら: 今ごろになって、出てくるんだもんなあ!
ねね: だって、あたしたちも写りたいしィ。
やや: そうだよ二人だけ目立っちゃって。
リポーター: 今、カメラ回ってないよ、ね、沢田さん。
カメラ: はい、バッテリーもったいないですから。
春奈: ええ?! じゃ、どうしてカメラ構えてんのよ。
リポーター: いつシャッターチャンスがきても撮れるように構えてるのよ、プロの常識。
春奈: ええ、せっかくファンデやり直したのに。
千恵: あたしずっとカメラ目線でいたんだよ。
百江: 放送局のケチ!
音声: 音声は生きてるんだけど……
百江: え! 音声さん美人よ! ねえ!
純子: ねえ、マイクの棒持つ手なんかスラッとしちゃって。
咲江: ア・エ・イ・ウ・エ・オ・ア・オ……
ルミ: 今頃発声練習してどうすんのよ。
ゆき: あんたたちねえ! あ、入ってんだ。
音声: いま切った。
さくら: ほんとに、あんたたち、さくらも満足にできないのね。
春奈: だって、あなたたち桜女子と違うしィ
さくら: その他多勢、エキストラって意味だよ!
一同: だって……!
やや: ねえ……
ねね: わけわかんないうちに連れてこられて百均の刀渡されて。
千恵: こっちも似たようなものよ、
ゆき: ちゃんと説明したろ。
さくら: 聞いてないんだろ。
百江: やっぱマニュアルとかさ……
リポーター: これはね、老人ホームに入ってる婆ちゃんたちが、取材に行ったらね。旧制女学校のころ、白梅と、八重桜の二校でよく果し合いしたって、なつかしい話になってね。それで急きょ後輩のあなた達に頼んで、模擬果しあいをしてもらったってわけよ。
ルミ: そういや、ゆきが老人ホームがどうとかって……
春奈: ああ、食堂でラーメンすすってた時。
純子: そう言や、さくらも、昼休みに、おにぎりかぶりつきながら話してた。
さくら: 飯時でなきゃ、みんあ集まらないだろうが!
ゆき: 先生達の気持ちがわかるよ……
咲江: だって……
リポーター: わかった。見せ場だけ、もっかい撮ろう!
 
 
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高校ライトノベル・連載戯曲:サクラ・ウメ大戦・1

2019-08-21 05:37:28 | 戯曲
連載戯曲:サクラ・ウメ大戦・1
          
※ 無料上演の場合上演料は頂きませんが上演許可はとるようにしてください  最終回に連絡先を記します
 
大橋むつお
 
 
時 ある日ある時
 
所 桜梅公園
 
人物 
(やさぐれ白梅隊)   (はみだし八重桜隊)
ゆき(園城寺ゆき)    さくら(長船さくら)  (ITVスタッフ)
咲江           百江           リポーター
ルミ           純子           カメラ
春奈           ねね           音声
千恵           やや
その他いっぱいいれば なお良し 
 
 
 荒野の決闘を思わせるような曲が流れるうちに幕があがる。そろいのセーラー服に、それぞれ寸をつめたり、スカートの丈をかえたり、リボンの結び方が違ったり、それぞれ制服でありながら微妙に個性を主張するいでたちの十数名の集団が、スケバンのゆきを中心に、ドスをきかせながら(本物のワルになりきれない可愛さを残すこと)客席奥を睨んでいる。睨んだその先には(客席後方)違う制服の集団が似たような人数、いでたちで、舞台上の集団を睨んでいる。こちらのスケバンはさくらという。双方手に、百均のビニールの刀、ビニールのバット、水鉄砲など、いかにもチープな得物(武器)を構えている。
 前者を白梅学園女子中等部やさぐれ白梅隊と言い、後者を八重桜女学院中等部はみだし八重桜隊と言い、戦前の女学校時代からの宿敵同志である。この年、とある理由から何十年ぶりに、両校の中ほどに位置する桜梅ケ原と昔は言った、桜梅公園の東西にわかれ、果し合いの寸前である。
 
ゆき: おう、八重桜女学院中等部の諸君! 本日は白梅学園中等部の我々が、高等部のお姉様連になりかわり、宿怨のうらみを果たしにこの桜梅ケ原、現桜梅公園に打ちそろった。すぐる大正三年の創立以来の雌雄をここに決する覚悟、かく言うあたしは白梅学園中等部三年一組、出席番号四番、やさぐれ白梅隊隊長園城寺ゆき! 尋常に勝負しろい! それとも、このゆき姉さんの啖呵に恐れ入ってしっぽを巻いて逃げ出してもいいんだぜ……
さくら: なにぬかしゃあがる。昔の夏休みみてえに長げえ御託並べやがって、こちとら気が短えんだ。おめえたちみてえに高えところに登らなきゃあ、威勢の出ねえ弱虫は一人もいねえんだ。負ける前にこれだけは覚えておきな。あたいたちは八重桜女学院中等部、はみ出し八重桜隊! そしてこのあたいが総長の長船さくらだ! 逃げたい奴は、今のうちだ、こちとら気が短え、三つ読む間にそこを降りなきゃ、引き摺り下ろして、三つにたたんでやらあ!……ひとおっつ……ふたあっつ……みっつ……女郎ども、たたんじまえ! 
   
 この掛け声をきっかけに、大昔のチャンバラのBGМ、客席で黄色い声をあげながら、双方二十秒ばかり戦う。数組が舞台で戦っていたが、それも三十秒も立つ間に、ゆきとさくらだけになってしまう。二人つばぜり合いをしながら……
 
ゆき: ちょ、ちょっと、あたしたちだけになっちまってるよ。
さくら: え、ええ!?
ゆき: どうする?
さくら: だってカメラまわってんだろ、どっかで!?
ゆき: 声が大きい、マイクに入っちゃうよ。
さくら: だって……
ゆき: 一応、決めたとおりに……
さくら: 相打ちってことで……
ゆき: 山形三回(上段の構えで三回打ち合うこと)
さくら: ぐるっとまわって、場所入れ替わって天地(上段と下段の打ち合い)三回、さっと離れて、あたしが胴を。
ゆき: 胴抜きはあたし、さくらは面打ち!
さくら: 声が大きい!
ゆき: あんたに言われたかないわよ。
さくら: じゃ、いくよ!
 
 チャンバラのBGM、急速にフェードアップ、クライマックスを暗示する。テキストどおり山形と天地を打ち合った後、気合とともに相打ちとなり、二人とも、あらかじめ仕込んでおいた血の紙ふぶきを派手に撒きあげて、見栄をきる。大向こう(客席後方)から「よっ、ゆきちゃん!」「ゆき、かっくいい!」「ゆっきちゃーん!」「さくらや!」「千両桜!」などと掛け声がかかる。上手寄りの客席からカメラとリポーターが上がってくる。
 
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高校ライトノベル・連載戯曲『たぬきつね物語・9』

2019-08-20 06:03:11 | 戯曲
連載戯曲 たぬきつね物語・9
 大橋むつお
 
※ 無料上演の場合上演料は頂きませんが上演許可はとるようにしてください  下段に連絡先を記します
 
時   ある日ある時
所   動物の国の森のなか
人物
  たぬき  外見は十六才くらいの少年  
  きつね  外見は十六才くらいの少女 
  ライオン 中年の高校の先生
 
 
 
ねこまた: ライオン丸くん……
ライオン: ねこまた女史……
ねこまた: にくい男よね(ライオンと同時)
ライオン: にくい女だぜ(ねこまたと同時)
 
いつしか寄りそい、見つめあう二人。トレンディードラマの最終回のような曲がたかまる(にくい男と女の歌とダンスになってもいい)
 
二人: なーんてね。
 
明転のまま、ライオンは去り、ねこまたはセンターに。コンパクトで化粧をととのえながら、ライオンがあらわれる。
 
ライオン: この森を出たことが、あの子たちにはプラスになったようです。人間も動物も、甘えを捨てて、一人で生きてみることが大切なようです。これも、わたしの医者としての判断が正しかったと……
ねこまた: ちょっと……
ライオン: 今日は、ひさかたぶりに医師会に……そいで慣れない化粧が……のらないわね……
ねこまた: あんた、今ライオン丸なのよ、ちょっと!
ライオン: え……!?
ねこまた: コンパクト見てて、わからないの!
ライオン: やだ、ほんと!? て、ことは、あんたライオン丸?
ねこまた: わたしは、わたしよ、ねこまたの……
ライオン: ねこまたは、あたし……
ねこまた: じゃ、わたし、おれ、ライオン?
ライオン: ……おれ、あたしたち……やばい?
ねこまた: 互いの立場が、ちょっぴりうらやましく……
ライオン: あの子たちの残していった化け葉っぱで、ほんのできごころで化けてみたんです。
ねこまた: 化けてみると、そっちもなかなか大変で……
ライオン: こっちもなかなか大変で、化け直して、化け直して、何度も化け直しているうちに……おれ、いえ、あたし、いえ……
ねこまた: あたし、いえ、おれ……
二人: わからなくなってしまった!
ねこまた: かくなるうえは、ライオン丸を刺して、けだものに(ナイフを出す)
ライオン: ちょっと待った。ライオン丸は、あんたかも(ナイフを出す)
ねこまた: じゃ、自分で自分を……
ライオン: それは痛いから、やっぱり……
ねこまた: あんたを……
ライオン: いや、あんたを……
二人: いくぞ! 待てエ!
ライオン: 待てエ、ねこまたの、ライオン丸のねこまたの……
ねこまた: ライオン丸のねこまたのライオン丸の……
舞台上、二人追っかけあい。たぬきときつねが現れ、四人で歌とダンスになる。
 
全員: たぬき、きつね、ねこまた、ライオン。たぬき、きつね、ねこまた、ライオン。
どっちがどっちか分からない。分かっているのか、いないのか。分からない、分からない。分からない。
たぬき、きつね、ねこまた、ライオン。たぬき、きつね、ねこまた、ライオン。どうして、なぜだか分からない。
だれのせいなのか、そうじゃないか。分からない、分からない、分からない。
 
 
【作者の言葉】
 
 むつかしくとると、人間のアイデンティティー(自分はこう思い、こう生きるから自分なんだ)が、いかにちっちゃいものかという、シニカル(皮肉)な芝居。ただそれだけになってしまいます。たぬきときつね、どっちがどっちかわからなくなってしまった。アハハ、おもしろいや。それだけでよいと思います。そして、どっちかわからなくなってしまう登場人物を「かわいい」ぐらいの愛情をもって接してくだされば、ふくらんだユーモアのある芝居になると思います。下手な詩を付けておきましたが、こんな具合に歌で終われたらいいなということなので、みなさんのスタイルでやってもらえればと思います。
 
【作者情報】《作者名》大橋むつお《住所》〒581-0866大阪府八尾市東山本新町6-5-2
 
 上演される時はご連絡ください。上演料は入場料を取らない無料公演(文化祭・コンクールなど)の場合必要ありません。入場料を取る公演では一回上演につき5000円の上演料をいただきます。 
 
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高校ライトノベル・連載戯曲『たぬきつね物語・8』

2019-08-19 06:23:52 | 戯曲
連載戯曲 たぬきつね物語・8
 大橋むつお
 
※ 無料上演の場合上演料は頂きませんが上演許可はとるようにしてください  最終回に連絡先を記します
 
時   ある日ある時
所   動物の国の森のなか
人物
  たぬき  外見は十六才くらいの少年  
  きつね  外見は十六才くらいの少女 
  ライオン 中年の高校の先生
 
 
ねこまた: 行っちゃった……
ライオン: いいねえ……
ねこまた: 若いってことはね……やり直しがきく。
ライオン: 君のことだよ。
ねこまた: あたし!?
ライオン: 医者はいいよ。治れば感謝されるし、失敗すれば手遅れだって言えばすむ。
ねこまた: なによ、それ?
ライオン: じゃ、この旅立ちに責任が持てるのかい?
ねこまた: 治すのは、あの子たちの力。医者は、その手伝いをするだけ。
ライオン: なるほど。
ねこまた: もとはといえば、あんたの御立派な指導が原因でしょうが!
ライオン: おれの責任か?
ねこまた: そうよ。
ライオン: どこが!?
ねこまた: 「互いの身になって」じゃなく、「きつねとはどうあるべきか、たぬきとはどうあるべきか」そこんとこをきちんと教えなっくっちゃいけないのよ。
ライオン: そんなこと教えたら、マスコミから袋だたきの目にあう。
ねこまた: 組合もだろ?
ライオン: 森の動物教組なんてどうってことないけど、このごろの教師なんて左にならえだからな。
ねこまた: 右へならえじゃないの?
ライオン: 森の広場で集会やると正面が南なんだ。
ねこまた: それが?
ライオン: 勤務時間内の組合活動はできないから、集会とかやるの夕方になるんだ。で、そこで右にならって並んじゃうと西日がきつくってさ。で、六十年以降は「左にならえ!」って、ことになってる。
ねこまた: うらやましいもんね。今度のことも……
ライオン: うらやましいと思ってんの、おれのこと?
ねこまた: そーよ。世のため人のため子供のためって、適当にやってりゃ、身分は安定、退職金はガッポリ。世間じゃそう思ってるわよ。そこいきゃ、今日びの医者は客商売みたいなもんだから……
ライオン: 教師だってね、ちょっと本気でやれば、やれセクハラだ、暴力教師だって言われるし、モンスターピアレントの相手はしなくちゃならないし……ストレス多いんだぜ。オレも肝臓いためちゃってよ……長生きはできねえなあ……
ねこまた: だめだめ、そんな弱ぶって見せても。あんたのことはお見通し……
ライオン: こっちこそ……あんたの言葉の裏の裏まで……
ねこまた: 古いつきあいだものね……
ライオン: お互い……
 
     間
 
 
 
 
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高校ライトノベル・連載戯曲『たぬきつね物語・7』

2019-08-18 05:55:15 | 戯曲
連載戯曲 たぬつね物語・7
 
 大橋むつお
 
※ 無料上演の場合上演料は頂きませんが上演許可はとるようにしてください  最終回に連絡先を記します
 
時   ある日ある時
所   動物の国の森のなか
人物
  たぬき  外見は十六才くらいの少年  
  きつね  外見は十六才くらいの少女 
  ライオン 中年の高校の先生
 
 
ねこまた: たぬきとかきつねとか、そんなケチな区別でうろうろせずにすむ。自分の思いのままに、噛み付き、殺し、食らい。自分以外の何も恐れる者のいない、けだものになれるわ。昔、ライオン丸の御先祖がそうだったように……
ライオン: おれのご先祖が?
ねこまた: 今のライオン丸は無駄に図体の大きいねこみたいだけども。あんたの御先祖は、動物とかアニマルとか、そんな生やさしい呼び方でくくれる存在ではなかった。さあ、刺しなさい、けだものの末裔を。そして、今度はあなたたちがおなりなさい。新たなけだものの源流に、新たなけだものの伝説に。
たぬき: けだものの源流に……
きつね: けだものの伝説に……
ねこまた: ただし、深い孤独とひきかえにね。けだものになったら、もう誰もうちとけてはくれない。誰も手をつないではくれないし、寄ってさえくれない。どこへ行くにも、何をするにも一人ぼっち。たとえ草原で一人淋しく死んでも、誰もその死を悲しんではくれず、みんな安堵に枕を高くし、胸をなでおろす。そして、ほんのちょっぴり「世の中つまらなくなったなあ……」と、安心とも、つまらなさともつかない溜息をもらす。そして、何十年もたってから、世の中がのびきったラーメンのように味気なくなった時。自分のついた溜息とともに、けだものを思い出す。甘くて苦くて、そして、とりかえしのつかない思い出として……
三人: ……
ねこまた: さあ、そういうけだものになりたいなら、そのライオン先生を刺しなさい。深々と、そのナイフの切っ先が、そいつの脂肪まみれの肝臓に届くまで!
 
二人、ポロリとナイフを落とす。ライオン、安堵の溜息をもらす。その溜息には、ほんのわずか、本人も意識しない失望が交じっているかもしれない。
 
たぬき: ……刺せません。
きつね: ……わたしも。
たぬき: でも、どうしたらいいんですか?
きつね: やっぱり、このままでいるしかないんですか?
ねこまた: 二人とも、この森を出て旅に出なさい。
二人: 旅に?
ねこまた: 西と東に別々に、何年かかけて、この国を一周し、またこの森にもどってきなさい。
きつね: そうすれば、またしっぽが見えてきますか?
ねこまた: いろんなところに行き、いろんな人に会い、いろんな経験をして。そうしたら、見えないしっぽが見えてくるかもしれない……そのくらいの勇気は持っているわね。
二人: ……
ねこまた: さあ、これが旅立ちの荷物(ふた組の荷物を渡す)必要なものは全て入ってる。
たぬき: はい……
きつね: でも……
ねこまた: これしかないのよ。
二人: ……はい。
ねこまた: じゃ、ただいま、この場から出発!
たぬき: あの……化け葉っぱは?
ねこまた: 帰ってくるまで、あずかっておく。
きつね: お願いします。
ねこまた: ……もう少し早く、うちに来ていれば、こんな苦しい旅立ちをしなくてすんだのにね。
きつね: 手遅れじゃないんですよね……
ねこまた: それは、あなたたちしだいよ……
たぬき: じゃ、ねこまた先生、ライオン先生……
きつね: 行ってきます!
たぬき: 行ってきます!
 
それぞれ、東と西に旅立つ二人。手を振って見送るねこまたとライオン。
 
 
 
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高校ライトノベル・連載戯曲『たぬきつね物語・6』

2019-08-17 06:21:27 | 戯曲
連載戯曲 たぬきつね物語・6
 大橋むつお
 
※ 無料上演の場合上演料は頂きませんが上演許可はとるようにしてください  最終回に連絡先を記します
 
時   ある日ある時
所   動物の国の森のなか
人物
  たぬき  外見は十六才くらいの少年  
  きつね  外見は十六才くらいの少女 
  ライオン 中年の高校の先生
  ねこまた 中年の小粋な女医
 
たぬき: あ、ライオン先生!
きつね: 先生、どうしてくれるんですか!
たぬき: 先生の言うとうり、お互いの身になったら、このざまですよ!
きつね: どっちがどっちか、わかんなくなっちゃって!
ライオン: それは、おまえたちがちゃんと聞いていないからだ。どこの世界に、相手の身になって考えることと、化けることをとりちがえるばかがいるんだ!?
きつね: だって!
たぬき: ねえ!
ねこまた: あなたたち、何のために走ってきたのよ!
たぬき: あ、そうだ。
きつね: 何のために走ったんですか?
たぬき: 走って正体がわかるのは、「うさぎとかめ」のかめか、「走れメロス」のメロスぐらいのもんじゃないですか?
きつね: たぬきときつねが走ったって話はあんまり聞きませんけど?
ねこまた: あんたたち、お互い自分の尻を見てごらん。
二人: え……?
ねこまた: それだけ走ってくたびれりゃ、しっぽが出てくるんだけど……
たぬき: ……いいえ。
きつね: ……別に。
ねこまた: そう、おしいわね。さっきかけこんできた時は、しっぽの先がチラチラしているように見えたんだけど……ひっこんじまったのね。
きつね: え、そうなんですか!? わたし気がつかなかった……
たぬき: 最初から言ってくれたら気をつけたのに……
ねこまた: 最初から言ったら、しっぽなんか出てこないわよ。
きつね: も、もう一回走ってきます!
たぬき: ぼ、ぼくも!
ライオン: そうだ、くりかえし努力することが大切だからな。もう一度走ってこい!
ねこまた: 無駄な努力はしないの。一度ひっこんだしっぽは二度と出てこないわよ。
きつね: ええ……!
たぬき: じゃ、どうすれば……
きつね: いいんですか……?
ねこまた: じゃ、最後のテスト。
三人: 最後のテスト?
ねこまた: ここに二本のナイフがある……さあ、一本ずつ持って。
たぬき: ……まさか、これで決闘とかして、勝った方がどうとかこうとか……
ねこまた: 誰が二人で刺しあいしろって言った。
二人: じゃ……
ねこまた: 刺すのは、そこのライオン先生よ。
二人: なーんだ。
ライオン: え!?
ねこまた: 覚悟してね、ライオン丸。
ライオン: なんでこのおれが!?
ねこまた: かわいい教え子のため。少し痛いかもしれないけど、がまんしてね。
ライオン: かもじゃないよ、ぜったい痛い! 必ず痛い! 下手すりゃ死ぬぞ!
きつね: 先生、ごめんなさい……
たぬき: 先生には恩もうらみも……
ライオン: ないだろ!?
きつね: ある!
たぬき: ぼくたちがこうなったのは先生のせいなんだから!
ライオン: そんな……
ねこまた: ね、だからさっき逃げときゃよかったでしょ。
きつね: いくよ。
たぬき: うん。
きつね: いち、にの……
ねこまた: さん!
二人: こう……までに聞きたいんですけど(ねこまたとライオン、ずっこける)
たぬき: 刺したらどうなるんですか?
きつね: 刺せなかったらどうなるんですか?
ねこまた: 刺せなかったら、今のまま。自分が何者かもわからずウロウロしてるたぬきかきつね。
二人: 刺せたら?!
ねこまた: けだものよ。
三人: けだもの……!
二人とライオン、「けだもの」という言葉のひびきに驚く。
 
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高校ライトノベル・連載戯曲『たぬきつね物語・5』

2019-08-16 05:51:33 | 戯曲
連載戯曲 たぬきつね物語・5
 大橋むつお
 
※ 無料上演の場合上演料は頂きませんが上演許可はとるようにしてください  最終回に連絡先を記します
 
時   ある日ある時
所   動物の国の森のなか
人物
  たぬき  外見は十六才くらいの少年  
  きつね  外見は十六才くらいの少女 
  ライオン 中年の高校の先生
  ねこまた 中年の小粋な女医
 
 
ライオン: むかえ酒かい?
ねこまた: お、ライオン丸! あんたねえ、生徒にハンパな指導するのやめてくれない。余計なとばっちりで、はた迷惑よ!
ライオン: なんの話?
ねこまた: たぬきときつねに変なこと言ったでしょ。お互いの身になって考えろとかなんとか。
ライオン: え、ああ。いやあ、けんかばっかりしとるんでね。一発がつんと……
ねこまた: あの子たち、お互いの姿に化けあいして、どっちがどっちかわからなくなってしまているのよ。
ライオン: え?
ねこまた: 「お互いの身になって」ってところを文字どおり受け止めちゃったのよ。
ライオン: でも、たかが子だぬきと子ぎつね、化けたと言ってもたかのしれた……
ねこまた: これ、ソフトマップの最新型の化け葉っぱ。遺伝子レベルまでデジタル変換できるすぐれもの。親も教師も、もっと子供の持ち物には気をつけなくちゃ。
ライオン: それで、二人は?
ねこまた: いろいろテストしてもらちがあかないから、森の周回道路を走らせてんの。
ライオン: 走って、なおる……っていうか効き目は?
ねこまた: あるわけないでしょ! 走ってくたびれりゃ、あきらめて、納得するんじゃないかって、それくらいよ。わたし、ゆうべの酒が残って、頭いたくって……
ライオン: そんな無責任な。
ねこまた: 無責任はそっち! 指導がはんぱ! 根性がはんぱ! すべてがはんぱ! ゆうべだって、なに? あの口びるのおもちゃ。あれでウサギ先生にキスしようとしたでしょ。
ライオン: しゃれだよあれは。ふんいきもりあげようと思ってさ。
ねこまた: セクハラだよ。そんなことだから四十を超えて、いまだに独身なのよ。
ライオン: あのな……
ねこまた: もう顔も見たくない、あっち行って!
ライオン: お、おれなあ……
ねこまた: まだいたの? 気が弱いくせにしつこいんだから。
ライオン: お、おれは……男としても教師としても、責任を持って……
ねこまた: 責任なんていいの。実際責任なんてカケラも思ってないんだから。あのね、わたしの言った言葉をきっかけに「失礼な!」とかなんとか言って、いなくなっちまえばいいのよ。そのきっかけをつくってあげてるの、わからない?
ライオン: そ、そんなことは嫌いだ!
ねこまた: そんなら、勝手にしなさい。あの子たち帰ってきたら、きっと許さないわよあんたのこと。
 
たぬきときつねがもどってくる。
 
 
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高校ライトノベル・連載戯曲『たぬきつね物語・4』

2019-08-15 06:18:10 | 戯曲
連載戯曲 たぬきつね物語・4
 大橋むつお
 
※ 無料上演の場合上演料は頂きませんが上演許可はとるようにしてください  最終回に連絡先を記します
 
時   ある日ある時
所   動物の国の森のなか
人物
  たぬき  外見は十六才くらいの少年  
  きつね  外見は十六才くらいの少女 
  ライオン 中年の高校の先生
  ねこまた 中年の小粋な女医
 
 
ねこまた: そうね……テストその一。

二人: その一!

ねこまた: ここに一個のミカンがある。ミカンをどうやって食べる?

きつね: えと、皮をむいて……ね。

たぬき: うん、中の皮は、そのまんま食べることもある。

ねこまた: そう、ミカンは、むいて食べる。

二人: はい。

ねこまた: じゃ、問題。ミカン一個は食べられる。三個でも、四個でも、五個でも食べられる。そうだね?

二人: はい。

ねこまた: では、二個のミカンは食べることができない。どうしてだ?

きつね: え……どうして?

たぬき: わたし……ぼく、わからない。 

ねこまた: ようく考えて!

きつね: これってテストなんですよね?

ねこまた: テスト!

たぬき: 答えられたら、どっちなんですか?

ねこまた: そんなの言ったらテストにならないだろうが。

きつね: えと……えと……

たぬき: ううん……

ねこまた: ブー、時間切れ! いいか、ミカンが二つでムカン。ミとミ、つまり三と三で六。つまりム。でムカン。むかんではミカンは食えない。

二人: え……?

ねこまた: むかないミカンは食えないだろうが。

たぬき: で……

きつね: ね、ムカンでは食べることができない……

三人: ばんざーい! ばんざーい! ばんざーい!

きつね: それがテストなんですか?

ねこまた: そうさ。きつねとたぬきでは、きつねの方がかしこい。イソップの童話とか日本昔話とか、みんなそうだ。だから、このクイズで、正解を出した方がきつね……だったんだけどねえ……

二人: ……

ねこまた: よし、次にテスト。ここに酒びんがある。

たぬき: お、猫じゃら酒の大吟醸!

きつね: 飲みのこしですね。

ねこまた: いい酒だからチビチビやって、かえって悪酔いしちゃって……んなことはいいの。この半分のお酒を、言葉で表現して欲しいの……待った、口にするんじゃなくそこのメモ帳に書く(二人書く)書けたらかして……なんだこりゃ。「酒びんの中の二分の一の酒」「二分の一の酒の入った酒びん」

きつね: あの……

たぬき: 違いました?

ねこまた: 数学の答えじゃないんだから。半分という事実の前か後につく言葉があるでしょ。

きつね: と、いうと?

ねこまた: まだ半分残ってるとか、もう半分しか残ってないとか。

たぬき: で、これは……

きつね: どういうテストなんですか?

ねこまた: たぬきなら、楽天的だから「お、まだ半分残ってる。一杯やろうぜ!」になる。冷静なきつねなら「もう半分しか残ってない、いそいで買いに行こう!」と……一昔前なら、こういう答えがかえってくるんだがなあ……

二人: ……

ねこまた: よし、じゃあ次のテスト! 森の中の周回道路を、それぞれ反対側に走る。グルーっとまわって、また、ここで出会う!

たぬき: それって、早くついた方がどうとかあるんですか?

ねこまた: そんなこと言ったらテストにならないだろうが。いくぞ、ヨーイ……

きつね: 一周三キロもあるんですよ。

ねこまた: 全力疾走! と、その前に。化け葉っぱをよこしな。走ってる間に、また化けたら、ややっこしくってかなわないからね(二人、葉っぱを渡す)いいの持ってるね、ソフトマップの最新型だ。

たぬき: なくさないで……

きつね: くださいね……

ねこまた: さあ、いくよ。ヨーイ……ドン!
 
二人、上手と下手に去る。ねこまた、ため息ついてコップ酒をあおる。ライオンがやってくる。
 
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高校ライトノベル・連載戯曲『たぬきつね物語・3』

2019-08-14 05:42:03 | 戯曲
連載戯曲 たぬきつね物語・3
 大橋むつお
 
※ 無料上演の場合上演料は頂きませんが上演許可はとるようにしてください  最終回に連絡先を記します
 
時   ある日ある時
所   動物の国の森のなか
人物
  たぬき  外見は十六才くらいの少年  
  きつね  外見は十六才くらいの少女 
  ライオン 中年の高校の先生
  ねこまた 中年の小粋な女医
 
 
 
ねこまた: しかし、きみたちね。ライオン先生の言葉をそのまんまやるか?
きつね: だって、先生は、お互いの身になれって……
たぬき: と、いうことは化けることでしょ?
ねこまた: 互いの気持ちをおしはかれってことよ! 今はしんどいかな、とか。気持ちがのらないのかな、とか。そうしたら、そこから人への思いやりがうまれるって、そういう意味よ。ライオン丸が、いえ、ライオン先生が言ったことは。
たぬき: そうなんだ……でも……
きつね: 先生とか学校は、いつもカタチが大事だって。服装とか髪がたとか……
ねこまた: バカか!?
たぬき: バ、バカだなんて……
きつね: そんな……
ねこまた: バカだからバカだって言ってんのよ!
きつね: だって、ぼく、いえわたし……
たぬき: ぼく……(きつねと共に泣く)
ねこまた: 泣いたって、もとにはもどらないんだからね。
二人: うわーん!
ねこまた: 泣くな!
二人: はい……
ねこまた: とにかく、治すことを考えよう。二人とも手ェ出して……(二人のカルテを手と見くらべる)指紋まで化けてんだね、きつねはきつね、たぬきはたぬきの指紋だちょいと血をもらうよ(二人の耳たぶをひっかき、プレパラートに血をとる。二人少し痛がる。虫めがねで血を調べる)うーん……
たぬき: なにを調べてるんですか?
ねこまた: 遺伝子(ずっこける二人)
きつね: そんなもんで遺伝子がわかるんですか?
ねこまた: ねこまた先生だよ、あたしは。
たぬき: で、どうなんですか?
ねこまた: ……だめ。
たぬき: やっぱりね。
きつね: そんな虫めがねで、遺伝子なんか……
ねこまた: わかったのよ遺伝子は……でもね遺伝子まで、完全に化けてんの。
きつね: やったあ!
たぬき: ぼくたち、デジタル変化ですからね。なんべん化け直しても百パーセント完ぺきなんです!
ねこまた: 昔は、アナログだったからさ、どんなにうまく化けても、もとのらしさが残ったもんだけどねえ……百パーセント完ぺきねえ……
二人: えっへん!
ねこまた: 自慢してどうすんのよ。その完ぺきのために、どっちがどっちかわかんなくなってんでしょうが!
二人: はい……(しょげる) 
ねこまた: よし、テストをしよう!
二人: テスト?
ねこまた: いろんなテストをして、二人の本当の性格を洗いだしてみるの。たぬきときつねは、同じ犬科の動物だけど、性格は、いろいろ違うからね。それをはっきりさせれば、どっちがどっちか、はっきりするわ。
たぬき: ぜひ!
きつね: やってください!
 
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