大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

大阪府立真田山学院高校演劇部公式ブログ・Vol・21『坂東先輩からのダメ』 

2016-05-25 06:51:37 | ノベル2
大阪府立真田山学院高校演劇部公式ブログ・Vol・21
『坂東先輩からのダメ』 
 
         


☆音響係が決まりました

 放送部3年生の長曾我部さんが兼業部員で、やってくれはることになりました。
 実は、先月の半ばからやってもろてたんですけど、放送部の実務を2年生に引き継げたいうので、稽古にべた付きできるいうのんで入ってもらいました。
 原曲は、N音大さんがやらはったのをお借りしました。著作権についてはエーベックスに確認しました。
 高校生が既成の曲をコンクールで使う場合、著作権には触れません。ただし原曲に改編(編曲したり、歌詞をかえる)せえへんことが条件です。以前近畿大会でアニソンを替え歌にして、著作権に抵触するということで審査対象はら外された学校がありました。その審査員の先生は「ここまで来るのに二回コンクール通ってるんでしょ。地区と県大会。そこの審査員は何をしてたんだろうね?」と、言わはったそうです。
 うちらは編曲も、替え歌もしませんけど、一応ご挨拶の手紙は書いておきました。
 音響が決まったんで、我が真田山は万全の体制になりました。ちなみに照明は淀先生がやらはります。近畿大会まで行ったら、これも生徒がやらならあきません。ああ、どないしょ(´;ω;`)ウッ…今から考えて、まあオメデタイうちらです。

☆道は遠いです

 昨日テストが終わったんで、さっそく一本通して前1/3を動画でとって先輩の坂東はるかさんに送りました。

 すみれの花さくころ(宝塚に入りたい物語)
          
 大橋むつお

 時  ある年のすみれの花のさくころ
 所  春川町のあたり
  
 人物 
 すみれ  高校生                        
 かおる  すみれと同年輩の幽霊
 ユカ   高校生、すみれの友人
 看護師  ユカと二役でもよい
 赤ちゃん かおると二役


 人との出会いを思わせるようなテーマ曲が、うららかに聞こえる。すみれが一冊の本をかかえて、光の中にうかびあがる。

すみれ: こんちは。あたし畑中すみれです。
 これから始まるお話は、去年の春、あたしが体験した不思議な……ちょっとせつなく、ちょっとおかしな物語です。
 少しうつむいて歩くくせのあるあたしは、目の高さより上で咲く梅とか桜より。
 地面にちょこんと小さく咲いている、すみれとかれんげの花に目がいってしまいます。
 その日、あたしは春休みの宿題をやるぞ! というあっぱれな意気込みで図書館に行き、
 結局宿題なんかちっともやらないで、こんな本を一冊借りて帰っていくところでした。
 あーあ、机の前に座ってすぐに宿題はじめりゃよかったのに。
 つい、なにげに本たちの背中を見てしまったのが運のつき。
 だから、この日、うつむいて歩いていたのは、いつものくせというよりは、自己嫌悪。
 だから、いつもの大通りを避けて、久しぶりで図書館裏。
 春川の土手道をトボトボうつむいて歩いていたのです……ところが、
 そこは春! 泣く子も黙って笑っちゃう春! そのうららかな春の日ざしを浴び、
 土手のあちこちに咲きはじめた自分と同じ名前の花をながめていると、
 ふいに母親譲りの鼻歌などが口をついて出てくるのです。
 春川橋の手前三百メートルくらいに差しかかった時、保育所脇の道から土手道に上がってくる、
 あたしと同い年くらいの女の子が目に入りました。
 セーラー服に、だぶっとしたズボン……モンペとかいうのかな。
 胸には、なんだか大きな名札が縫い付けて、肩から斜めのズタブクロ。
 平和学習で見た映画の人物みたい、一見して変! 
 近づいてくると、もっと変!……あたしと同じ鼻歌を口ずさんでいる! 
 まるで学校の廊下でスケバンのキシモトに出くわした時みたいな気になり。
 目線をあわさぬよう、また、不自然にそらせすぎぬよう、なにげに通りすぎようとした、その時……。

舞台全体が明るくなり、ちょうど通りすぎようとしている少女、かおるも現れる。すれ違った瞬間かおるが知り合いのように声をかける。

かおる: こんにちは……。
すみれ: え……。
かおる: こんにちは……!
すみれ: こ、こんちは……
かおる: 通じた!……あたしのことが分かるんだ!
すみれ: あ、あの……
かおる: ア、アハハ、ごめんなさいね。多分通じないだろうと思ったから。
 いつもそうなの……だから、いつもの調子でひょいと声をかけちゃって。ごめんなさい、驚かしちゃったわね。
すみれ: あ、あの……。
かおる: あたし、咲花かおると申します。よろしく。
 あたし、ずっとあなたみたいな人が現れるのを待っていたの。
 急にこんなこと言われたって信じられないかもしれないけど。あたし幽霊なんです。
すみれ: ゆ、ゆうれい!?


 で、冒頭の、この五分にもならんとこで大きな指摘をされました。

 台詞と動きに動機が無い……です。すみれの最初の長台詞は、いわば導入でナレーターでもあります。せやから半分はすみれやないんです。この長台詞でお客さんを引付ならあきません。
 そのためには、お気楽さ、自己嫌悪、かおるがやってきたときの興味半分の不気味さが出てんとあかんいうことです。
 うちらは、これを演るについては、You TubeでN音大やら、真田山、天王寺商業(なんでか見られます)の芝居を何べんも観ました。で、いっちゃんええ出来になったと自負してました。
 そやけど、プロの目から見たらまだまだなんですね……。

 あたしの「かおる」ものっけから言われました。「通じた!……あたしのことが分かるんだ!」が偽物やと言わはります。
「三好さん、通じることを分かってて言ってるでしょ?」

 う~ん、そんなつもりはないんですけどね。
 坂東先輩の指摘は鋭いです。
「いつものように通じないと思って声をかけたのなら、言い終わった後は、もう別な何かを見て聞いてるはずです。そこで手を抜いてはいけません」でした。
 何気ない演技と言うのが一番むつかしいです。蒼井優という女優さんが言うてます。
「一番難しいのは、人に呼ばれて振り返るシーン。だって、役者としては声を掛けられるの分かってるんですから」
 ムムム……まあ、蒼井優さんと同じことで悩んでるんやと、自分を慰めるあたしでした。


文責 大阪府立真田山学院高校演劇部部長 三好清海(みよしはるみ)  
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高校ライトノベル・ライトノベルセレクト№58『次の電柱まで』

2016-05-16 08:29:13 | ライトノベルセレクト
ライトノベルセレクト№58
『次の電柱まで』
      
   初出・2013-06-14 14:58:45

 今日も裕子と篤子が休んでいた……もう三日になる。

 二人の欠席はプチ家出だって、噂が流れてきた。

 うちは、都立でも、限りなく三流に近い二流半と言ったところ。二百四十人入学して、卒業するのは二百人そこそこ。つまり四十人近く、クラスにして一クラス分くらいは居なくなる。
 つまり続かなくなって退学していくのであって、けして……この世の中から消えて無くなるわけじゃない。

 この春の卒業式、いつものようにざわついた中で始まった。
 まあ、予想はしていたけど、来年あたしらの卒業式も、こうなるのかと思うと、気持ちはサゲサゲだった。
 ところが、在校生代表の送辞で、みんなシンとした。

「……ご卒業おめでとうございます(ここらへんまではザワっとしてた) 僕は、ここにいない三十九人の先輩にも想いをいたします。テストの成績、出席日数、家庭事情、様々な理由はあるでしょう。でも、三年前の春、ここに座ったときは、今日のこの日。みんなといっしょに卒業式に出ることを夢見ておられたと思います。後輩の身として僭越ではありますが、同じ中学の、同じクラブの、同じ職場のバイトとの後輩として、力になれなかったことが悔やまれます。少し人生を大回りされるかもしれませんが、たとえ周回遅れになっても、最後のゴールに到着されることを願って止みません。ここに卒業される二百一名の先輩の方々と同様に、この人生の門出を祝いたいと思います。在校生代表 市川宗司」

 終わりの方では、シンとして、いつになく真面目な式になったと、先生たちは喜び、あたしたちは、シンミリ。

 この送辞は、むろん市川のボンクラが考えたんじゃない。生徒会顧問のヤッキーの手が入っている。

「ヤッキー、うまいこと考えたじゃん。あれなら、みんな大人しくなっちゃうよ」
「でもなあ、日本中一年で十万近い人が行方不明になってんだぞ。そのうち身元不明の仏さんは千体ちょっとなんだぜ。わかるだろ」
「じゃあ、ほとんど見つからないってことじゃん!?」
「さっき言ってた中退者も、五人……もう行方不明だ」
「そうなんだ……」

 だから、裕子と篤子の欠席が気になった。プチ家出ならいいんだけど……。

 学校の帰り道、小四ぐらいのガキンチョが七人ほどで遊んで帰るのに出くわした。
 どんな遊びかというと、電柱のとこでジャンケンし、負けた者が次の電柱まで全員のランドセルをしょったり持ったりして運ぶやつで、あたしにも思い出深い遊びだ。
 その時は、中肉中背の特徴のない子が七つのランドセルを運んでいた。顔を真っ赤にし、それでも「負けるもんか!」という勢いで、小走りで次の電柱へいく。で、みんなが囃し立てる。

――おかしい――

 そう思ったのは、二つ目の電柱だった。あいかわらずその子がジャンケンに負けて、もう顔なんか赤黒くしながら歯を食いしばっていた。
 あたしはイジメじゃないかと思った。中肉君はジャンケンに弱く、それを承知で、やらせてるんだ。
 もう少し続くようなら、一発カマしてやろうかと思った。高校生相手ならともかく、こんな小学生ぐらいなら、怖いオネエサンにはなれそうだ。

 でも、もう一つの異変に気づいた。

 数がおかしいのだ。最初は背中に二つ、お腹に二つ両手に一個ずつ、器用に頭の上に一個載せていたように思った。でも、今は、背中の一個と頭の上のランドセルが無い。すなわち、全部で五個っきゃ無い。
 そして、ガキンチョの人数も五人に減っている。

――数え間違えたかな――

 そう思った。
 ジャンケンを観察した。あの子は、さっきと同じパーを出して負けていた。他の四人はいかにも「こいつバカ」というような笑い方をしている。
 でも、次の瞬間、その子がランドセルをかついだ拍子に、一人消えた。だれが消えたかは分からないが、確かに一人消えて、ランドセルは四つに減った。この道は住宅街だけど、誰も家に入っていったところは見ていない。わたしは怖くなってきたが、目が離せなかった。

 そして……最後の電柱になった。

 やはり、その子はパーで負け、勝ち誇った子のと自分のランドセルを振り分けにして担いだ。
 とたんに、最後の一人も消えて、その子だけになった。

 その子は、自分のランドセルだけになると立ち止まり、ため息一つついて笑い出した。
「アハハハ、見ろ、ボクの勝ちだ!」

 そして、その子は笑いながら、あたしの方を向いた。

「オネエチャン、ずっと見てたんだろ。もう誰も居なくなっちゃったから、いっしょにやろうよ……」
 そういうと、ガキンチョとは思えないスピードであたしを追いかけてきた。あたしは声も出なかった。

「なんだ、今日は刺原も休みか」
 
 担任が、そうぼやく姿がリアルに、あたしの頭をよぎった。ガキンチョの手が届きそうになった……。

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高校ライトノベル・ライトノベルセレクト・226〔ゴジラのため息・2〕

2016-05-04 07:21:47 | ライトノベルセレクト
ライトノベルセレクト・226
〔ゴジラのため息・2〕
        


 ゴジラはため息をついた。

 女の子らしい、ホワっとした吐息になった。一言主(ひとことぬし)のお蔭で、女の子の姿も板についたようだ。
「でも、これじゃ朝ごはんがつくれない」
 ちょっと気合いを入れて息を吐くと、程よい火が出た。その火で敦子のゴジラは、朝ごはんを作った。ご飯炊いて、ベーコンとスクランブルエッグ。匂いにつられて高校生たちが起きてきて、仲良く朝ごはんを食べた。
「あっちゃん、またね!」
 高校生たちは、スマホでアドレスの交換をしたがったが、「スマホはお父さんの所に置いてきた」と言って残念そうな顔をしておいた。
 スマホぐらい、そこらへんの葉っぱを使えば作れるんだけど、本性はゴジラ。友達になってはいけないと思った。

「どうだった、夕べは楽しかったかい?」
 一言主が聞いた。
「うん、楽しかった。でも、やっぱため息って出ちゃうのよね」
「出たっていいさ。もうカッとしたりしなきゃ火を吐いたりはしないから」
「これから、どうするんだい?」
「うん、ちょっとキングコングのとこでも行ってみる。あの人とも長いこと会ってないから」
「じゃ、これ使っていけよ」
 一言主は、倒木をクーペに変えてプレゼントしてくれた。

 敦子のゴジラは、高速をかっとばして街まで出た。

 キングコングは、もう引退したも同然で、南森町というところで志忠屋というコジャレた多国籍料理の店をやっていた。
「おう、珍しいじゃねえか。アイドル風のゴジラも、なかなかなもんだぜ」
 絵に描いたようなオッサンのなりをして、キングコングはカウンターの中から声を掛けた。一発で正体を見破られたことが、残念でもあり、嬉しくもあった。
「バレたんなら、気取ることもないわね。なんか元気の出るの一杯ちょうだい」
「あいよ」
 滝川浩一と偽名を使ってるといいながら、キングコングは50年もののプルトニウムをなみなみと注いでくれた。

 敦子のゴジラは、一口飲んで、ホッと吐息をついた。

「なんだ、まるで女の子みたいな吐息ついて。ゴジラらしく火は吐かねえのかよ」
 言われて、ゴジラは小さく火を吐いた。
「なんだ、チンケな火だな」
「本気で吐いたら、店丸焼けになっちゃう。それよりもさ……」
「なんだい?」
「あたしのため息ってなんだったんだろう……?」
 アンニュイに頬杖つきながら、ゴジラは呟くように言った。
「それはさ……キザなこと言うようだけど、受け手の気持ちだと思うぜ……悲しみ……怒り……孤独……取りようしだいさ」
 キングコングの滝川は、二杯目には、ウランの炭酸割りを出してくれた。
「昔は、もっとはっきりした意志ってか、気持ちがあったような気がするんだけどね……」
「しかたないさ、お前さんは、元来拡散していく運命なんだ。名前だってゴジラって、複数形だもんな」
「アハハ、座布団一枚!」
 ゴジラはキングコングと、バカ話ばかりして、店を出ようとした。
「すまん、ライターがきれちまった。タバコに火ぃ点けてってくれよ」
 敦子のゴジラは、フッと息を吹いてやった。タバコに程よい火が点いた。

 帰り道、敦子のゴジラは少し歩いてから、駐車場のクーペに向かった。その間に、消えかかった若い夫婦の心に、職業意識を失いかけている教師の心に火を点け、絡みかけてきたチンピラ4人を焼き殺したことは自覚していなかった。

 クーペのキーを開けながら「やっぱ、ゴジラに戻ろうか……」そう思ったが、一言主の魔法が強いのか、長く敦子になりすぎたせいか、もとには戻れなかった。

「ホ……」

 夜空に吐息一つついて、敦子になりきってクーペを発進させた。クーペは自動車の波の中に飲み込まれ、すぐに見えなくなった。


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高校ライトノベル・ライトノベルセレクト・225〔ゴジラのため息・1〕

2016-05-03 07:06:06 | ライトノベルセレクト
ライトノベルセレクト・225
〔ゴジラのため息・1〕
         


 ゴジラはため息をついた。

 不可抗力とはいえ、山が一つ丸焼けになってしまった。
「集中豪雨で湿気ってなかったら、ここいらみんな焼いちまうとこだったな……」
 反省したゴジラは、熊ほどの大きさになって隣の山に引っ越した。
 すると、山の主である熊ほどの大きさの一言主(ひとことぬし)が憐れむように言った。ちなみに一言主は猪のなりをしている。
「気にすんなよ。あの山は来月中国の金持ちに売られるところだったんだ。これで商談もなくなるだろ」
「ありがとう、ちょっとは用心するよ」
「一人でいるから気鬱になってしまうんだ。名前は複数形なのに、おまえさんは孤独主義なんだからな……どうだい、オレの山に高校生たちがキャンプに来てるんだ。気晴らしにいっしょに遊んでみたら」
「いいのかい?」
「小さくなったとはいえ、そのナリじゃこまるけど、なんか適当に化けちまえよ」

 ゴジラも、還暦である。化けることぐらい朝飯前だ。いろいろ化けて見せて、女の子のナリになった。一言主がアイドルファンだったので、まるでAKBの選抜を足して人数で割ったようなかわいい子になった。

「だめだ、木が湿気って火がつかないや……」
 炊事担当の女の子は、嫌気がさした。
「あたしが、やってあげようか?」
 ゴジラはサロペットにTシャツという気楽さで声をかけた。マユユのような笑顔に女の子は親近感を一方的に感じてゴジラに任せた。
「コツがあるのよね……」
 適当なことを言って、そろりと息を吹きつけて、あっという間にご飯もカレーも炊き上げてしまった。
「すごいのね、あなたって。このへんにキャンプに来てるの?」
「うん、家族で。林ひとつ向こう側」
 一言主が気を利かして、父親の姿で現れた。
「なんだ敦子。こんなところにいたのか」
 一言主が適当な名前で声を掛けた。
「あ、そういや、あなたあっちゃんに似てる!」
「大島優子にも似てる!」
 もう一人が言った。

 で、ワイワイ言っているうちに、ゴジラ……いや、敦子は 高校生たちといっしょになることになった。

「キャンディーを、ブレスケアになる」
 一言主は、そう言って、こっそりとキャンディーを敦子の口の中に放り込んだ。
 高校生たちは、半端にまじめで、ノンアルコールのビールもどきで、けっこうハイになった。
「ねえ、あっちゃん、なんか歌ってよ!」
 ゴジラの敦子は困った。話すのはともかく、本気で歌ったら、ゴジラの「ガオ~ン!」になってしまう。
 仕方なく、ゴジラは抑え気味に胸に手を当て、そろりとAKBのヒットソングを歌ってみた。
「キャー、キンタローより似てる!」
 緊張していたので、なんだか前田敦子風になって、みんなにウケた。そして遅くまでみんなといっしょに歌ったりフォーチュンクッキーで盛り上がったりした。一言主がくれたキャンディーは、どうやら歌がうまく歌える魔法のキャンディーのようだった。

 ゴジラの敦子は、本当は、みんなと語りたかったが、楽しくノッテいる空気を壊してはいけないと、調子を合わせて騒ぎまくった。

 気が付いたら深夜になってしまっていたので、高校生たちのキャンプに混ぜてもらって、眠れぬ夜を過ごした。
「あたしの思いは、この子たちには分からないもんね……」
 流れ星を10個数えて、ゴジラの敦子は寝たふりをした……。

 つづく 

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高校ライトノベル・ライトノベルセレクト・209『切れる音・2』

2016-05-01 07:25:12 | ライトノベルセレクト
ライトノベルセレクト・209
 『切れる音・2』
          


 人間とは可愛いものである。

 一度線が切れても、たいていの人間は、あくる日には元に戻っていて、また何かのきっかけでプツンと切れる。そうやって切れては繕いして心の平衡を保っているのが並の人間である。

 堪忍袋の緒が切れる。という言葉がある。

 切れる音が聞こえるようになってから、その意味が実感として分かる。実際堪忍袋の緒が切れる音も聞こえる。
 社会科のある教師が、こともあろうに授業の中身をメモリーカードに取り込み、小型のアンプとスピーカーでそれを再生し授業にした。板書はパソコンで打ち出したものを学校の大型プリンターで、模造紙にプリントアウトしたもので間に合わせ、自分は廊下でボンヤリとしている。普段から教師に期待などしていない生徒たちだが、これには切れた。むろん堪忍袋の緒である。

 ブツンという音がした。興味が切れた音よりも凄味がある。

 朽木は、最初は興味が切れた音の一種だと思ったが、違った。生徒の一部が保護者に言い、保護者は府教委に連絡、校長からの訓告処分になった。
 諦める音もある。フッっとため息をついたような音がする。
「佐伯君とは、いい友達でいようよ」
 中庭で、悦子という女子にコクった男子が体よく断られたときに、初めて、その音を聞き、珍しくホノボノした気持ちになった。

「佐伯君、エッチャンにフラれてしもた」
 その昼休みに真子が秘密めかしく言ってきたのはおかしかった。でも、そのとき、真子と話が弾んで文芸部を作らされ、それ以来顧問と部員の関係である。真子は高校生にしては古典の素養もあり、また、流行りの小説もよく読んでいて、学校で話していて唯一楽しいと思える人間になった。文芸部の活動は気まぐれで、互いに気の向いたときに相談室などを使って本の感想や世間話に花を咲かせた。

 むろん教師にも切れる音がする。職員会議などでは切れる音の連続であった。前の校長も、よく切れていた。興味の時も堪忍袋のときもあった。

 それが、去年やってきた民間校長には感じたことがない。元金融関係の中間管理職であった校長は、しごく穏やかで、感情に走るということが無く、それが徴であろうか、この民間人校長から切れた音は聞こえたことが無かった。しかし評判が良いというわけではない。何事も自分で決済し、運営委員などは、あからさまにイエスマンでまとめていて、完全な自分の諮問機関にしてしまった。
 この春の人事異動では、自分に反対するものは全員転勤させてしまい、常勤講師である菅原先生などは三月の末に継続任用しないことを言い渡した。もう、どこの学校でも人事は確定しており、本校での再任用がないということは、生活の道を断たれたことに等しく、菅原先生は府の人事委員会に不服申し立てをし、係争中である。

 朽木は、やっと気づいた。この校長は、民間に居た時にすでに切れ果てていた。だから府の民間人校長募集に応募し、それまで持てなかった権力を持ち、それを十二分に発揮しているのである。
「先生、やっと気ぃついたん?」
「うん、あんな人やとは思わなかったな」
 真子はコロコロと笑ったあと、一瞬真顔になり、こう言った。
「菅原先生は、あたしの遠い親類やねん」
「ほんとかよ!?」
「まあ、あとは本人の努力次第。完璧なパワハラやから、職場で何人かが協力したげたら、なんとかなるんとちがう……」
「ああ、そうだよな」

 と言いながら、もう六月も半ばになってしまった。朽木は無為に、この二か月半を過ごした。佐伯が不登校になっていることにも気づかなかった。
「佐伯、このごろ見かけないけど、どうかしたのか?」
 授業の頭で聞いてみた。
「佐伯は、先月末で退学しましたよ」
 名前も憶えていない学級委員長の生徒が言った。顔には「もう何度も言った」という表情が浮かんでいた。悦子は俯き、真子はプイと窓から外を見ていた。真子が、こんな態度をとるのも初めてだ。

 その放課後である。まるで綱引きの太いロープが何百人の力に耐えかねてブチ切れるような音がした。それは衝撃を伴って校舎を地震のように揺らした。朽木は慌てて廊下に出た。

 不思議だった。全てのものが止まり、動いているのは朽木一人……と。思ったら、渡り廊下を渡って、こちらに歩いてくる者がいる。

「真子……」
「先生、もう手遅れ。今のは学校の線が切れた音。学校の線は切れたら戻らへんよ……先生には期待してたんやけど」
「真子、お前……」
「あたしは、三年前の遠足から、先生に付いてきた。朽木先生には可能性があると思うて……不思議に思えへんかった、なんで、あたしが三年連続で三年生やってるか?」
「三年連続で三年生……?」
「あたしは、菅原真子。父は道真です……もう、どないなとおなりやす」

 そのとき、フッと音もなく切れる感覚がした。音はしなかったが胸の奥で痛みがした。大切なものを失った痛みが。

 それ以来、真子は姿を現さない。朽木以外の人間から真子の記憶も記録も無くなってしまった。校長はパワハラを新聞にすっぱ抜かれクビになった。学校は坂道を転げ落ちるように悪くなり、伝統困難校とよばれるように成り果てた……。

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