大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・ライトノベルセレクト・『俺の従妹がこんなに可愛いわけがない・3』

2016-10-31 06:53:08 | ライトノベルセレクト
ライトノベルセレクト
『俺の従妹がこんなに可愛いわけがない・3』


 家に帰ると、もう由香里が来ていた。

 正確には、マネージャーやら放送局のスッタッフなんかを引き連れて俺のことを待ち受けていた
「ウワー、薫ねえちゃん、いっそうマニッシュ!」
 由香里が、家の前で叫ぶと、レポーターがスタッフを引き連れ、由香里といっしょになって、俺のことを撮り始めた。
「従姉の薫さんですね。いやあ、お話以上ですね。あ、手にしてらっしゃるのは原作の『はるか ワケあり転校生の7ヵ月』じゃありませんか! そうなんだ、今度の由香里さんの映画の初出演に合わせて、いっそうヤンチャナ女子高生って感じで迎えてくださったんですね!」
「薫ねえちゃん、ありがとうね。あたしが、こうして、この世界でやっていけるようになったのも、ガキンチョのころからの薫ねえちゃんのスパルタ教育のおかげ」
「ほんと、大したもんですね。録画の時も言ってたんですけど、由香里ちゃんは、まっすぐ人の顔も見て話もできない子だったとか!?」
「根は、いいもの持ってた子ですからね。自信さえ持てば、俺、いやボク、いやアタシが世話焼かなくっても、これくらいに……」

 そこで、由香里と目が合ってしまった。

 テレビで観たとはいえ、俺の頭の中の由香里は下ぶくれギョロ目の泣き虫に過ぎなかった。それが目の前で見ると、ビビッとくるような可愛いアイドルに成長している。なんだか胸がときめいてくる。俺って気づかないうちに女捨ててしまったのかなあ、と思ったぐらい。

 一つ疑問があった。

 なんで映画の撮影にH市みたいな地方都市に来るんだ。原作読んでも舞台は大阪と東京の南千住だ。こんなチンケな街のどこを写すんだろうと思ったら、訳が分かった。
 話の中で、二回劇場のシーンが出てくる。大きな街のホールは、この時期スケジュールが一杯で、とてもロケなんかには使えない。
 そこへいくと、このH市は、地元から有力国会議員が出ていることもあって、立派すぎる市民会館がある。それも大中小と三つも揃っている。で、今回、大と中のホールを使って、ロケとあいなったわけである。

「ねえ、薫ねえちゃん。今度の由香里は、可愛いんじゃなくて、いじめっ子なのね。だから、今の薫ねえちゃんみたいなツヨソーな、で、ちょっち斜に構えたような女の子やるわけよ。あとで、コツ教えてくれる」
「え……ああ、いいよ」
 十年ぶりぐらいで、二人で風呂に入って話がついた。祖父ちゃんの趣味で大きめに作った風呂だけど、さすがに二人はきつい……と、感じたけど、昔は平気で入っていた。それだけ、由香里との距離が遠くなってしまったということなのかと寂しく思い、そしてショックだった。
 由香里の裸はイケてた。プロポーションはもちろん肌のきめの細かさ、つややかさ……そういうものはアイドルなんだから当然磨きがかかって当たり前なんだろうけど、そういうもんじゃない……なんて言うんだろ、精神の確かさから来る美しさがあった。俺も元は……ハハ、言い訳になっちゃう。大事なのは今だ。不規則で荒れた毎日おくってるもんだから、肌の荒れなんかが由香里と一緒だと際だってしまう。そして心の荒みさえ体に表れているようで落ち込んでしまう。
「薫ねえちゃん、なんか落ち込んでる?」
「バーロー、由香里は、相変わらずネンネだなって、思ったんだ。由香里、まだオトコ知らないだろ?」
 なんて質問するんだと思いながら、つい意地悪なことを言ってしまう。我ながら根性が傾いている。
「だって、AKRは恋愛禁止だもん。あ、薫ねえちゃん経験済み!?」
「え、あ、それは……」
 うろたえる俺を、由香里はシゲシゲと見つめる。それも全然邪気のない無垢な目で……。裸の自分をこんなにハズイと思ったことはない。
「いや、薫ねえちゃんがミサオをささげるんだ。とってもドラマチックでビビットな恋だったんだろうね……」
「バカ、それ以上見ると拝観料とるぞ!」

 風呂から上がると、由香里は、いろんな姿勢を試していた。
「おい、行儀悪いってか、汚ねーよその姿」
「そっか、これなんだ!」
「え、なにが?」
「だよね、伯母ちゃん?」
「うん、薫そっくり」

 そう言われてゾッとしたが、ここで湿気っちゃ俺の値打ちが下がる。それから寝るまでワルの姿を伝授した。

 で、やや複雑な気持ちで二人で寝た。懐かしい由香里の匂いと一緒に昔の自分の思い出が蘇ってきた……。

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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評・79『WOWOWで新撰組』

2016-10-31 06:33:45 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評・79
『WOWOWで新撰組』


この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ


 これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に身内に流している映画評ですが、もったいないので転載したものです。


58年の東映「新撰組」を見ました。

 意外に歴史、政治史に忠実に描かれています。確かに、鞍馬天狗は出てくるし、近藤勇の視野は後の歴史を見越して、リベラルではありますが、それらを飲み込んだ上で男の生き様を様式美にのっとって描いてあります。必ずしも史実に忠実に、リアルにという要請には背を向けています。
 池田屋襲撃、史実として近藤は一番に斬り込んではいませんが、片岡知恵蔵演じる近藤は真っ先かけて斬り込むのです。近藤が斬り倒す勤皇の志士十名、当時池田屋に集った志士は三十数名、内1/3を近藤が叩っ斬る! それでええんです。この時、池田屋に集まった志士達は、京に放火せんとした馬鹿野郎共、新撰組が犯した間違いは、この時殺しすぎた事、1/3も生け捕れば違う局面も出たかもしれない。しかし、それは後の歴史を知る者の傲慢な見方です。
 
 いわゆる大御所芝居(片岡知恵蔵/大友柳太郎/東千代の介)で各キャストの見せ場を重ねてあるのですが、その周囲の歴史的経緯は正確です。現在作られるいかなる時代劇よりも現実の歴史に敬意が払われています。
 思うに、ロードショー当時の日本人の教養は幕末の状況を知悉していて、その上で映画の虚構を楽しんでいたのでしょう。そういう観客に向かって余りに荒唐無稽な作品は作れなかったのだと思います。
「仁義なき戦い」が空前絶後のヒットだったのも本当の話だったからです(作中の人物に存命中……例えば、門広組長や羽谷組長など……さわりが大きすぎるため描け無かった部分もありますが) 本当の話に勝るものはないのです。
 この「新撰組」は、薄い記憶の中では、史実ぐちゃぐちゃな作品という印象だったのですが、ほぼ50年振りに見返してみると、なんともリアルな作品で有りました。片岡知恵蔵さんが色っぽいのは毎度の事として、山形勲の土方や大友柳太郎の月形半平太も見応え有り……なんつっても判ってはいただけないですかね〓 旧作邦画の歴史エンタメ作品は見直す必要ありですね、私のような そろそ
ろ老年にさしかかる者は、無理としりつつも若い世代に、こういった作品の意味を伝える義務があるのかも知れませんねぇ〓

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高校ライトノベル・ライトノベルベスト『俺の従妹がこんなに可愛いわけがない・2』

2016-10-30 07:00:00 | ライトノベルベスト
ライトノベルベスト
『俺の従妹がこんなに可愛いわけがない・2』


 従妹の由香里はブサイクだった。

 だった……に力が籠もる。過去形なんだ。いや、過去完了だ。ベテランのMCに質問される由香里は、まっすぐにMCに顔を向け、笑顔を絶やさず、考えるときは少し首をかしげる。まったくもって可愛い。

 俺の知っている由香里は、下ぶくれの不細工な輪郭の中で目だけが大きく、その目は、いつも怯えて涙で潤んでいた。ちょっと失敗すると大泣きになり、涙の他に水ばなとヨダレがいっしょになり、俺は、いつもティッシュで拭いてやったもんだ。そして話をするときに人の顔が見られず、いつも俯いてばかりいた。
「いいか由香里、そんなんじゃ学校行っても友達もできないでいじめられっ子になっちまうよ。人と話すときは、キチンと相手の顔を見て、少しニッコリするぐらいでやるの。いい、こんなふうにね」
 俺は、そのころ好きだったMを想像し、Mに話しかけるように言った。

「お早う、どう、昨日の宿題できた? ボク、最後の問題がとけなくってさ。出来てるんだったら……あ、答を教えてほしいんじゃないの。ヒント聞かせてもらったら自分でやるから……あ、そう。どうもありがとう。そうか、これは距離から考えちゃダメなんだ。時間なんだね。うん考える!」

 てな感じで、Mをエアー友達にして、由香里に見せてやった。
「すごい、薫ねえちゃん、ほんとに人がいるみたいに話すんだ。由香里もやってみた~い!」
 で、由香里はやってみるんだけど、目の前に人がいると思っただけで、顔が真っ赤になり、声がしょぼくなってしまう。ま、そんな子だった。

「由香里さんは、子どもの頃はとてもはにかみやさんだったってうかがいましたけど」
 MCが聞く。
「はい。自分に自信のない子だったんで、あ、今も自信なんてないんですけどね」
「やっぱ、AKRできたえられたんですか?」
「はい、それもありますけど、従姉のお姉ちゃんに鍛えられたってか、憧れてて、真似してばかりいたんです。とってもマニッシュでかっこいい美人のお姉ちゃんで、あ、今度の撮影H県のホール使ってやるんで、久方ぶりにお姉ちゃんのところに泊まって、撮影の現場に通おうかと思ってるんです」

 ゲ……由香里のやつがうちに泊まるって!

「で、今度は初の映画出演で張り切ってるのよね?」
「ええ、まだ研究生に毛の生えたようなものなんですけど、プロディユーさんが『由香里クンみたいなのが、ひねくれたら、どんな感じになるか。そのイメチェンぶりに期待』とおっしゃって。あたしも芸の幅をひろげるためにアタックです!」

 と、いうわけで、由香里が家に泊まることになった。

「すごい。由香里ちゃんが来るんだ!」
 オカンは舞い上がって叔母さんちに電話。

 俺は悩んだ。いったいどんな風に接したらいいんだ!?

 とりあえず由香里が出る映画が『はるか ワケあり転校生の7ヵ月』というタイトルで、由香里の役は、ラスト寸前まで主人公のはるかをいじめる東亜美という役ということを知り、駅前の書店に原作本を買いにいった……。

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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評・78『2GUNS』

2016-10-30 06:34:33 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評・78
『2GUNS』


この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ

これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に流している映画評ですが、もったいないので転載したものです。


本来 昨日、これと“42”を見る予定でしたが、朝っぱらから大頭痛、今日に延ばして“42”は堪忍してもらいました。
 体調万全とは行かないものの、これ以上ワガママ(本来、この2本プラス“パーシー・ジャクソン2”“SPEC”をオファーされとりましたが、どちらも蹴ってますもんで)は、なんぼなんでも言えません〓

 重い頭を支えながら映画館に入ったのですが……ゲンキンなもんです、映画が面白かったので重い頭も軽くなって、現状 頭痛の再発も無し……いやはや、我ながら……〓
 さて、今作 ド派手なクライム・アクションです。原作小説があるかと思っていたのですが、またもやグラフィック・ノベル(漫画)が原作でした。
 アメコミと言えば派手なコスチュームヒーロー物しか無いイメージが強いのですが、現在 極少数ながら純然たる犯罪スリラーも存在するようです。
 元々、20世紀初頭から50年代に猖獗を極めたパルプフィクション(安物の探偵小説やSF、ポルノ)の影響下で誕生していますから、かつては様々なジャンルの作品が有りました。第二次大戦後 一気に広がったのですが、60年代に入る直前、「子供に悪影響を与える」ってんで焚書され、以降 勧善懲悪以外のコミックは一掃されてしまいました。
 これは、当のアメリカ人も認めていますが、アメリカンの単純お馬鹿の証明です。なんせ、中世ヨーロッパで焼かれた魔女容疑者よりも近代から現在に至るアメリカで魔女狩りに会った犠牲者の方が圧倒的に多いのですから、何をか言わんやであります。
 それはさておき、現在のアメコミに復活し始めたサスペンス/スリラー物は、かなり上質な作品が多いらしく(全く読んでません、なんせ1冊 高いっすから)同種の小説に引けを取らないそうであります。本作も小学館から2千円ほどで発刊されてるそうですから、興味のある向きはお手にしてみて下さい……尚、購入されたら是非ご一報を、貸してね〓

 漸く映画です。本作の目玉は、入り組んだ人間/組織関係の クンズホズレツストーリーですが、デンゼル・ワシントンがこの所定期的に取り組む悪役(トレーニングデイ/デンジャラスラン)と マーク・ウォールバークが取り組むコメディタッチ(アザーガイズ/テッド)が組み合わさっているってのが最大目玉です。面白い映画ってのは、脚本の出来、編集の巧みさなんかと同じように 何らかの“化学変化”が起きています。本作の化学変化は、まさに主役の二人が引き起こしているのです。  フリーランスの悪党ボビー(ワシントン)とスティグ(ウォールバーク)は最近コンビを組んだ。メキシコの麻薬ディーラー/パピ(E・J・オルモス/ブレードランナーでデッカードを連れにくる刑事……あの時はスリムだったのに)に偽造パスポートと引き換えにコークを貰う予定が現金を渡される、しかも もう一人組んでいた悪党は殺されて首に成っている。腹いせに(?)パピの貸金庫の300万$を狙って銀行強盗、犯行は見事に成功するが、金庫にあったのはなんと4300万$!! この金を巡ってDEA/CIA/NAVY/マフィアが絡んで二転三転、一体誰の金なのか、信じられるのは誰? 元々ボビーもスティグも何者? 謎は少しずつ明かされていくが、誰が信頼出来るのか、全貌を知る者は誰なのか、こいつが全く解らない。解らなきゃ全部集めてガラガラポンてなもんで大乱闘になる訳ですが、はて 誰が生き残って大金を手にするのか。
 ラスト、さすがの大迫力なのですが……これって、どこかで見たような……と思ったら「マチェーテ/R・ロドリゲス監督、来年2がある)」のラストにムードがそっくり。まぁ、本作の方がスマートですがね。
 他の共演者も多彩で、P・パットン(Mi:I)B・パクストン(楽しそうに悪役やってます)分かりにくいのがジェームス・マースデン、この人「Xメン」でサイクロップスをやっていた俳優さん、準主役なのにサングラスをしているか目をつぶっているか、さもなきゃ目から光線を発しているかで素顔が判らなかった、漸くメジャー作品で素顔オープン、なかなかのハンドサムであります。
 なかなか容赦の無い殺人シーンの連続で 「カタルシス」ってのとはちがいますが、これもアメリカ映画の一つのスタイル、子供に悪影響……なんぞと思うなら、大人だけで見に行って、くれぐれもスクリーンに放火などなさいませんように。お願い申し上げます。

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高校ライトノベル・ライトノベルベスト『俺の従妹がこんなに可愛いわけがない・1』

2016-10-29 12:48:24 | ライトノベルベスト

ライトノベルベスト
『俺の従妹がこんなに可愛いわけがない・1』

 


 気が付くと連休だった。

 

 今年こそ、がんばるぞ! と決心して三週間ちょっと。
 最初の一週こそは遅刻もせずに、授業中もちゃんとノートをとり、先生の話も聞いていた。
 それが、先週になって遅刻はするは、授業中は居眠りはするは、ノートは数Ⅱだけでも、三時間。全教科一週間分は取り遅れている。選択教科を入れて10教科。もう友達のノートを借りて写そうという気持ちにもならない。
 もっとも友達の大半が似たり寄ったり。ラインで連絡取り合うだけ無力感にさいなまれるだけ。

 

 没落の予感。

 

 ま、こう言っちゃなんだけど、学校がショボイ。我が県立H高校は、偏差値42。県内でも有数のダメダメ高校。
 俺の人生は中学三年で狂ったと言っていい。いろいろ理由というかワケはある。例えば数学。
 二年までは、公式は「成り立ちを理解してから使え」だったけど、「とりあえず覚えろ、使って暗記しろ!」に変わった。俺は、物事の因果関係がはっきりしないと落ち着かない人間だ。

 

 例えば、中一のとき「日本はニッポンとニホン、どちらが正しいのか?」で、悩んだことがある。

 

 先生は明確に答えてくれた。
「ニッポンが正しい」
 理由は分かり易かった。昔の日本人は「H」の発音ができなかった!
「なんで、そんなことが分かるんですか?」
 俺は、すかさずに聞いた。
「平安時代のナゾナゾにこんなのがある『父には一度もあわず、母には二度あうものはなにか?』で、答は『唇』なんだ。つまり『母』は『ファファ』と発音していた」
 そう言われて唇をつけて発音すると……なるほど『ファファ』に、ぶきっちょにやると『パパ』になる。
「そうなんだ、江戸時代ぐらいまでは『H』の発音ができなかったんだ。だから『ニホン』とは発音できずに『ニッポン』と言っていた。ただ時代が進んで『H』の発音が出来るようになると使い分けるようになった『ニホンギンコウ』とは言うけど、サッカーの応援なんかの時は『ニッポン』だろ」
「そうか、ここ一番力をこめる時は『ニッポン』なんだ!」

 

 そういう理解をする子だった。

 

 ただ分かっていても、ことの本質が理解できなければ、分かった気にもならないし、学習意欲も湧かない子だった。
 それが、やみくもに「覚えろ、とにかく公式を使え!」は受け付けなかった。

 

 で、結局は三年生はつまらなくて、よく学校をサボったし、授業も不真面目、あっというまに成績は下がり、高校は県内でも最低のH高校しか行けなかった。ここだけの話だけど、家出もした。高校に入ったときは、いろんな意味で、もう子どもじゃなかった。

 

 あ、ここで誤解を解いておく。一人称は「俺」だけど、俺は女だ。中一までは世間並みに「あたし」と言っていた。ときどき「ボク」という言い方もしていた。世間でいう「ボク少女」だった。
「ボク」と「俺」の間には大きな開きがある。「ボク」は年下の子なんかに「自分は世間の女の子とは違うんだ」という感じで使ってた。それが中三の時に好きだった男子に使うときは、ちょっとした媚びがあった。その男子も「ボク」を可愛いと思い、いろいろフライングしてくれた。

 

 けっきょく、そいつは最低な男子だったんだけど。

 

 それから一人称は「俺」に変わってしまった。

 

 H高校の一年生も最低だった。俺は、これでも高校に入ったらやり直そうと思っていた。一人称を変えてもいいと思った。でもダメだった。

 

 予感は、入学式の時に気づいた学校の塀。

 

 塀には忍び返しって、鉄条網付きの金具が付いている。普通、これは外側に俯いている。外からの侵入を防ぐために。
 しかしH高校のそれは、内向きに俯いている。つまり、中から外への脱走を防ぐため……。

 

 授業は、どれもこれもひどいものだった。33人で始まったクラスで進級した者は20人しかいなかった。かろうじて俺は進級組に入っていた。だから、なけなしのやる気を振り絞った。最初のホームルームの自己紹介で「あたし」と言おうと思ったが、先生やクラスの人間の顔をみていると「俺、一ノ瀬薫。よ・ろ・し・く!」とやらかしてしまった。ケンカも二度ほどやって、一目置かれるようになったけど、群れることはしなかった。

 

 そんなこんなで、連休初日。昼前に起きてリビングに行くとオカンが叫んだ。

 

「同姓同名だ!」
 テレビは、日曜の朝によくある、その道の有望新人のインタビュー番組だった。
 オカンは、こういう些細なことに驚きを発する。
 このモノ驚きというかモノ喜びが、オカンの長所なのかもしれないが、子どもとしてはちょっちウザイ。
 だけど無視すると機嫌が悪くなるので、ほどよく付き合ってやる。俺は家庭の平和については保守的なんだ。

 


 画面には清楚系美少女が、きちんと膝を揃えた夏物ワンピで、恥じらい気味の微笑みを絶やさずにベテランMCと話している。
 ま、爽やかっちゃ爽やか。オレには縁のない鑑賞用の女だ。
 その清楚系美少女が従妹と同じ名前なので、オカンは感動している。

 

 同姓同名の従妹は気弱なブスだ。
 色黒で、目ばかりギョロギョロした下半身デブの運動音痴。
 たまの法事なんかで会うと、周囲の大人たちに怯えて、よく俺にくっついていた。上から目線みたいだけど、そういう由香里が哀れで、よく遊んでやった。
 人並みにキャッチボールと逆上がりできるのは、俺がスパルタで教えてやったからだ。表情の薄い奴だったけど、逆上がりが出来た時は隙間の空いた前歯を剥き出しにして感動していた。
「由香里は笑顔がいいぞ」
 誉めてやった。特段かわいい笑顔だとは思わなかったけど、仏頂面ばかりの由香里にしては一番いい表情だ。だから、俺は誉めたんだ。他人と比べるんじゃない、由香里に中で一番良ければ褒めてやるべきだとな。

 

「はい、初めて逆上がりが出来て、ええ、従姉に死ぬかってくらいしごかれて、その感動が子ども時代の宝物です!」

 

 え……?

 

 MCに子ども時代の思い出を聞かれて清楚系が答えた。

 

「感動的なお話ですね、では、これが、そのころの由香里ちゃんです!」

 

 MCが示すと画面が切り替わり、仏頂面の隙歯(すきっぱ)が大写しになった。

 

 そして、そこに映っていたのは従妹の由香里だった!?

 

 え……これが? こうなる?

 

 驚愕のビフォーアフター!

 

 そんな……俺の従妹がこんなに可愛いわけがない!

 

 大波乱の連休の始まりだった……。

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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評・77『グランドイリュージョン』

2016-10-29 06:08:04 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評・77
『グランドイリュージョン』


この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ


これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に身内に流している映画評ですが、もったいないので転載したものです。


なんも考えんと、考えるのは客席で見ながら。とにかく、今の仕事が終わり次第 映画館にダッシュ!

 以下、できるだけネタ割らんように気をつけますが、出来れば白紙で見て下さい。
 マジシャンの映画ってのは有りそうで案外少ない。比較的新しい所だと「プレステージ/C・ノーラン監督、H・ジャックマン他」とか「幻影師アイゼンハイム」とか……大体が20世紀初頭が舞台でゴシックファンタジー風でトリックは科学~的な物が多かった(プレステージはお薦め) 第二次大戦で、街のイリュージョンを作ってドイツ軍の夜間空襲を避ける……なんてな実話作品もありました。
 本作にもゴシックな味付けは有りますが、単にマジックにとどまらず、強盗・アクション・カースタント・推理~etc. 極上のアクションサスペンスに仕上がっています。
 主役は4人のストリートマジシャン、謎の人物に集められて“4HORSEMEN”としてデビューする。アメリカのショービズ界の仕組みが垣間見える。どんなマジックかは見てのお楽しみ、総てに多額の現金強奪が絡む。
 4HORSEMEN~てのは「黙示録の四騎士」でしょう、ということは 彼らの犯行は天罰なのか はたまた単なる泥棒なのか。
 マジックのネタは、直後に明かされる、但し、これは映像マジックではなく、実際にマジックネタを作って撮影されたのだという事です。多数のマジシャンが技術指導等で協力しています。キャストは自分の持ちネタマジックの指導を受けているそうであります。マジックシーンが極めてリアルなのは そういう努力の結果なんですねぇ。
 彼らのイリュージョンに絡めた大金強奪には何か裏がありそうです。社会正義なのか私怨なのか……ストーリーは重層化されています。このメールの読者には“耳にたこ”でしょうが、アメリカは自警国家です。「自分の身は自分で守る」の裏にあるのは「自分の恨みは自ら晴らす」という事です。さて、本作のイリュージョンは「社会正義(法秩序に拠らない)」なのか「私怨に
よる報復なのか」…これが見ながら推理する一点。 もう一点、4人を集めた黒幕(?)は一体誰なのか、これは真のターゲットが誰なのかと裏表のテーマです、もう怪しい奴だらけですが、後から思うと二つ目のイリュージョンで二人にまで絞り込めます……さて、貴方には見抜けたでしょうか?

 いやぁ、ドッと疲れました。絶対見抜いてやる積もりで画面の隅々まで凝視しとりました。お陰様で、製作サイドの仕掛けた罠に嵌められる事三度(何気に一瞬 画面上を横切る人物、「こいつや!」とガッツポーズするも……関係なし、やられたぁ) ある種のトリックが自分の考え通りだった、その直後に落とし穴があるので、これは私の思い過ごしではなく製作が意図的に挟んだ罠です。絶対!間違いない!………4人のマジシャンを演じたキャストの素晴らしさは目を見張りますが、中でもJ・アイゼンバーグ(ソーシャル・ネットワーク)W・ハレルソン(ラリー・フリント)に大注目!
日本じゃまだまだ無名ながらFBIディラン/マーク・ラファロ、IPOアルマ/メラニー・ロランにも今後目が離せない。 今作の見所が、M・フリーマンとM・ケインのぶつかり合い、両者一歩も引かずのど突き合い・蹴り合いであります。
 とにかく、冒頭からラストまで瞬きすらする間無し、さて どこまで集中できますやら。
 忘れちゃいけないのが、監督、脚本、編集、撮影の見事さです。久方振りに「これがハリウッドサスペンスじゃい!」と言える一本。隅から隅まで、ご堪能下さいませ~~~〓

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高校ライトノベル・あすかのマンダラ池奮戦記・10『マンダラ池への帰還』

2016-10-28 06:28:55 | 小説5
あすかのマンダラ池奮戦記・10
『マンダラ池への帰還』
        


 あすかは、懸命に戦った。十七年の人生で、ここまで真剣になったことは初めてだ。

 側で、イケスミ、フチスミの神さまも戦っているんだろうけど、意識にはなかった。必死でトドロキの攻撃をかわし、わずかな隙を見つけては攻勢に転ずる。いつしか満身創痍になり、しだいに意識が遠くなっていった……。
 やがて、ダンプや工事の機械の音で目が覚める。傷みは傷と共に無くなっていた……そして、そこは、振り出しのマンダラ池であった……。

「……ん……マンダラ池……埋立て工事が始まってる……夢おち?(桔梗に気づく)フチスミさん!? フチスミさん、しっかりしてフチスミさん!」
「ん……あすかさん……ここは?」
「マンダラ池、正式名称万代池、イケスミさんが住んでいたところ。大丈夫? 大丈夫だよね、神さまなんだからフチスミさんは」
「わたし、桔梗だよ」
「桔梗さん? どうして?」

 ガードマンのオバサンの姿をしたイケスミがホイッスルをふきながらやってくる。

「ダンプは北から、そう、むこうね! ユンボこっち。土ゆるいからそこで停めといて。(二人に)そこあぶないから、こっちの方で話してくれる。ごめんなさいね。今日から工事始まっちゃうから……」
「すみません」
「ども……」

 ガードマンのイケスミと二人、交差するが、二人はイケスミに気づかない。

「オオガミさまももどられたし、フチスミさん、あそこを離れられないと思うの……」
「そうか。ミズホノサトは廃村というか……沈んだまんまだし。桔梗さん、あそこに住むわけにもいかないんだ」
「万代池も、ひどいことになってしまってるのね……」
「時代の流れというのかね。あたしも長年……と言っても十数年だけど、万代池だなんて由来知らなかったからさ、マンダラ池だと思って、昨日なんか、ウンコふんづけちゃって、靴洗ってたりしてたんだ」
「靴洗っちゃたの、神さまの池で!?」
「知らなかったんだもん……でも、それでひらき直っちゃいけないんだよね。ごめんなさいって気持ち……持ってたんだけどね、ちゃんと謝ったんだよ……言っちゃあなんだけど、やっぱイケスミさんて、すねた神さまだったよね、それで、あたしをひっかけて依代にしちゃうんだから……今ごろはオオガミさまのスネしゃぶりつくしてんだろうね。ま、いいか、頭もよくしてもらったことだし……」
「どっちもどっち、二人ともたくましい都会の神さまと人間」
「桔梗さん。しばらくあたしの家にいなよ。三LDKだけど、三人家族だからもぐりこめるよ」
「そんなの悪いよ。わたしも子供じゃないんだから……」
「そうしなって、ここへそろって送ってこられたのも、そういうおぼしめしだと思うの」
「だって……」
「だってもあさってもなーい!」
「え……!?」

 驚く二人。イケスミは、ユルユルとヘルメットを脱ぐ。

「まだ気がつかない?」
「……?」
「あ・た・し」
「イケスミさん!」
「どうかしたんですか!?」
「てっきりスネかじってると思ってたのに……その姿?」
「神さま廃業ですか?」
「だったらお父さんに頼んでもっと時給のいいパート紹介してもらったのに」
「おいたわしい……」
「勝手にしゃべるな!」
「だって……」
「その姿……」
「これは、池の最後を見届けるための方便だよ」
「ホーベン?」
「ということは、まだ神さまでいらっしゃるんですね」
「あれから、オオガミさまに叱られてな」
「キャッチセールスみたいなことするからだろ?」
「それもあるけど、ここを見捨てたことな……あすかも言ってただろ?」
「あれ、売り言葉に買い言葉。気にしないでくれる?」
「池があろうとなかろうと、そこに人が住んでいるかぎり逃げてきちゃいけないって」
「でも、人がいたって信者がいなきゃ」
「いるよ。あすかが信者一号、桔梗が信者二号だ、よろしくな」
「アハハ……でもフチスミさんは……」
「あたしが兼任、元をたどればオオガミさまにたどりつくんだから、どっちの信者になっても同じさ。フチスミさんは、しばらくはオオガミさまと地元の復興……それから、あんたたちも、たどっていけば同じ一族なんだよ」
「え、親類!? あたしたちが!?」
「あすかの元宮というのは、元宮司って意味で、天児一族の分家、三百年前にあたしといっしょにやってきた家系さ」
「でも、一族とは思いませんでした」
「さすがの桔梗にもわからなかったか?」
「でも、親類だと思うとなんか嬉しいね」
「はい……でもお世話になるのは……」
「硬いこと言うなよ」
「あんたたちは双子の姉妹、二卵性の。そういうことにしといた」
「ええ!?」
「役所の書類もそうしといたし、親も友だちも、みんなそういうふうに思ってる」
「ええ、そんな……」
「ミズホノサトは必ず人がもどってくる。水も少しずつひいて、もとの生活がね……でも、それには何十年もかかるだろう。それまで桔梗を天涯孤独の身の上にしておくのはかわいそうだ……これはオオガミさまのおぼしめしでもある……それとも、桔梗が姉妹じゃ、何か不足でもあるのかい?」
「ないない。ねえ?」
「え、ええ」
「そうと決まれば、やることは一つだけ」
「え、なんかすんの?」
「双子でも、姉と妹の区別がいる」
「そりゃ、誕生日の早いほうが……」
「バカ、双子の誕生日はいっしょにきまってるじゃないか」
「何をするんですか?」
「ここから、自分の家まで、ヨーイドンで走る。先についた方がお姉さんだ。いいね」
「ようし、足には自信が……」
「わたしだって!」
「それじゃ……(競技用のピストルを出す)ヨーイ……」
「っと、その前に一つ聞いていい?」
「なんだい、ずっこけちまうじゃないか!」
「オオガミさまたちの出雲会議がさ……あんなに長引いた理由ってのは? よっぽど大事な議題なんでしょ?」
「ああ、人と自然の将来に関わる大切な話をされていたのさ、ずいぶんもめたみたいだけどね」
「で、結論は?」
「結論は……?」
「こうして、あんたたちとわたしがいる。それが結論……と、いうことで納得しろ」
「こうして、あたしたちがいることが……」
「それじゃいくよ、ヨーイ……っとその前に」
「なによ、ずっこけてしまうじゃないよ!?」
「アハハハ……」
「なによ!?」
「実は、あのオール五の成績票ね」
「そうそう、ごほうびの……(ポケットに手をやる)ない……ポケットのどこにもない!?」
「戦いの最中に、おっことしたんだよ」

「え?」

「フチスミさんが拾ってくれた。そうだよね?」
「え、ええ」
「それをあずかったのがこれ……」
「ありが……とうに破れてるじゃん!?」
「戦いの最中だもん……」
「じゃ、もとのあたしにもどったってわけ!? せっかく真田コーチと同じ学校いけると思ったのに……」
「いいじゃない、受験までにはまだ間がある。今度は自分の力で。わたしも応援するから」
「じゃ、今度こそいくぞ。待ったなし……ヨーイ……ドン」

 家までの道をを本気で駆ける二人、見送るイケスミ。

「……どっちが勝つにしろ、着いたころには、本当の姉妹と思い込んでいるはず、そういう魔法がかけてあるんだから……さあ、おまたせ、埋め立てるよ、ユンボはむこうから、ブルドーザーこっち、ダンプも前に進んで……」

 イケスミ、まるで現場監督のようにホイッスルを吹き、埋め立ての指揮をとる。かくしてマンダラ池の奮戦は幕を閉じていった……。

 
 あすかのマンダラ池奮戦記  完

※このお話は、もともと戯曲です。実演の動画は下記のURLをコピーして貼り付けてユーチューブでご覧ください。

 http://youtu.be/b7_aVzYIZ7I

※戯曲は、下記のアドレスで、どうぞ。

 前半: blog.goo.ne.jp/ryonryon_001/.../2bd8f1bd52aa0113d74dd35562492d7d‎

 後半: blog.goo.ne.jp/ryonryon_001/e/5229ae2fb5774ee8842297c52079c1dd‎
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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評・76『先週末日本公開ランキング』

2016-10-28 06:10:32 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評・76
『先週末日本公開ランキング』


この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ

これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に身内に流している映画ランキングですが、もったいないので転載しました


10月に入って大作公開が無くランキングは横ばい傾向が続いています。

①陽だまりの彼女
 2W連続1位、今週3作品が新たにランキング入りしているが、実質ライバルは“そして、父になる”“謝罪の王様”の二本。とはいえジャニーズは強い。

②そして、父になる
 4W 目 ながら恐らく動員数10万人以上、“陽だまり~”が1W目21万人、今週15万人だから、次週上下入れ替わる可能性あり。硬派テーマの本作が ここまで高位を維持しているのは、一人福山の人気だけではない。これは作品の持つ力量が並外れている事の証です。

③謝罪の王様
 これも4W目、宮藤官九郎作品は趣味じゃないけど、阿部サダヲと組むと途端に面白くなる。大人計画からの名コンビ、息はピッタリなんですなぁ。しかし、クドカンの確信犯的露悪趣味とギャグセンスには多少辟易する。おそらく、私が、パンク/メタルに耽溺できないのと同じ根っこがあるんだと思います。同じくメタル的芝居の新感線は大好きなんですが、こっちは半分ハードロックですから。

④人類資金
 初登場 260スクリーン 土日8万人。役者は気になる配役ながら…なんせ福井(亡国のイージス)の原作/脚本、先般も“ハーロック”をボロボロにしてくれたので「意地でも見に行くかい!」と無視……なんですが、意外に入ってませんねぇ。“謝罪の王様”くらいには勝ってると思ったんですが。宣伝不足?

⑤怪盗グルー~
 5W目 強いにゃ強いが、アメリカ程の大ヒットにはならなかったですね。国の持っている事情が違うからですが、スーパーマンの不入りと並んで、日本人の映画に求める物に変化が表れているのと、観客層そのものの変化も感じられます。

⑥ダイアナ
初登場 331スクリーン 4万人 悲劇の英王女ダイアナの映画であります。内容からして上映館数が異様に多いのですが「日本人はダイアナが好きだから」程度の思い入れやったんでしょうね。結果、惨敗です。

⑦ゴーストエージェントRIPD
 初登場 348スクリーン 土日4万人弱…まぁ、こんなもんだっしゃろ。殆ど宣伝もしとりまへん。配給に売る気無し~ 嗚呼

⑧おしん
 先週末初登場5位 6万人、来週はおらんかも……なんで今更“おしん”なんですかねぇ。韓流が未だにマダム達に人気だから“おしん”も当たると勘違いしましたかねぇ。韓流ドラマは日本のドラマの3-40年前をトレースしていると言われますが、確かにそれはあるにしても、古い日本ドラマとは決定的に違う顔も持っている。ここを見落とすと大失敗。例えば今“細腕繁盛記”やら“横堀川”なんかをリメイクしても客は来ないですよね。見たい?

⑨ATARU
 強いなぁ~、なんで? 中居の力? テレビドラマの人気? 6W目ですよ!

⑩風立ちぬ
 驚異の14W目、そろそろ終わりそうではありますが。宮崎監督作品でここまで賛否の割れた映画もありませんでした。ただ、否定的意見が余りにも情けないのが多かった……「主人公がタバコ吸いすぎ」 「武器を作っている事に対する懊悩が無い」 「東北地震があったのに関東大震災の映像を流すのは許せない」etc~ ゴメンね……あんたらアホか? 「物語に起伏がない」だの「主人公の声が気になった」だのは 真っ当な感想に聞こえる。こういうのがホンマに多い、こいつばかりは上から目線で言わしてもらいます「少しは勉強しなはれ」。

※今週消えたのが3作品
“エリジウム”“あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない”“R100”
 エリジウム5W目、R100が3W目に対して“あの日見た~”が8W目!単にアニメ人気とは言えない、本作上映館なんと全国でたったの64館、それでこの成績、これは、ワンピ/ヱヴァとは違う奇跡的ヒットです。
 かっこさて、今週のランキングを見ていて、しみじみ想うのは映像観客層が広くなったなぁと言う事です。改めてトップ10と圏外落ち3本のタイトルを見ると、どれ一つ メイン観客層が被っていない。この事が今後の日本映画界(洋画配給も含めて)にマイナスの影響を与えなければええんですが……アメリカなんかはマーケットリサーチで当たりそうな映画ばっかり作って業界が沈みかけましたからねぇ。杞憂であれかしと願うばかりです。

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高校ライトノベル・あすかのマンダラ池奮戦記・9『決戦ミズホノサト!』

2016-10-27 06:14:26 | 小説5
あすかのマンダラ池奮戦記・9
『決戦ミズホノサト!』
       



 決戦を前に、イケスミの体は、もう半分近く実体が無くなっていた……。

 と、この時、上手の藪から、あすかが飛び出してくる。
 手には件のメモリーカードとコントローラーを握って! 

「言ったじゃないか、神を信じろって!」 
「あすか!?」
「あすかさん!?」
「今の攻撃は威力偵察なんかじゃない。本格的な攻撃の陽動作戦に過ぎない。主力は南よ! 南に何か途方もなく禍々しい化け物が潜んでここを狙っている。南東の獣道を通っても、ひしひしと感じた!」
「ほんとうか!?」
「言うとおりよ。北に気をとられすぎていた……南に化け物が……今、動き始めた!」

 南の山々が、生き物のように蠢動する。

「話は聞いた。消えかかっているんでしょ、イケスミさん。もっかいやろうよ。ほら、コントローラーとメモリーカード!」
「いいのあすか? 今度は命にかかわるぞ……?」
「あたし賢くなったの。二人を見殺しにしても、あの南の化け物は、あたしを認識している。ここをあっさりかたずけたあと、きっとあたしを殺しに来る。知りすぎてしまったかから。そのためには、もっかい依代になって戦ったほうが生き残れる可能性が高い。そう計算できるほどにね……って理屈つけたら納得してくれる?」
「アスカさん……」
「さあ、コントローラーを持って! あたしはメモリーカードを……え!?」
「どうかしたのか?」
「これ、ドラクエⅧ「空と海と呪われし姫君」のメモリーカード……鞄の中でごちゃになったんだ……これは、ラチェットアンドクランクⅢ……ファイナルファンタジー……メタルギアソリッドスリー
……おっかしいなあ……」
「おまえ、度はずれたゲーマーだな……」
「だめ、もう、間に合わない!」

 ゴジラの咆哮のような禍つ神の叫び声がこだまする。

「あれ、あいつよ南側に潜んでいた奴!」
「並みの禍つ神ではない……いずれの荒ぶる神か?」
「……あれ、轟八幡だよ。ほら、あの頭の鳥居」
「え、この国の二ノ宮の……(神の咆哮)なんとあさましいお姿に……」
「人間が、よってたかっておもちゃにしちまったんだ。駐車場の経営から、貸しビル、株の売買にスーパーの経営、観光会社に、このごろじゃ専門学校から塾の経営まで手を出しているって話だよ」
「あ、お母さんの言ってた轟塾!?」
「この国の人間は、思いやるって心を失ってしまったんだ。人に対しても、神さまに対しても、自然や、何に対しても……祖先から受け継いだ夢も誇りも恐れも忘れ果てた、アホンダラに!」
「感想言ってる場合じゃないわよ」
「ね、あたしにも何かやらせて! こう持つの?」

 百連発の大筒を両脇に抱える。まるで土管を抱えたのび太のようなあすか。

「だめ、普通の人間が持っていたって、ただの竹筒……」
「そんなのやってみなきゃ……」

 引き金を引いた気持ちになった瞬間。両脇から百発ずつの鬼の殺気のミサイルが飛び出す。反動でニ回転半ほどひっくりかえったあすか。

「あすか……おまえって……」
「動きが止まった……」
「ちょっと驚いただけさ、じきに……ほら動き出した」

 禍つ神の咆哮と地響きに、あすかは立っているのが精一杯。

「くそ!」
「撃つしかないわ、最後まで!」
「撃て撃て撃て! 撃って撃って撃ちまくれ!」

 三人しばらく撃ちまくる、地響きしだいに近くなる!

「弾が少なくなってきた……」
「そろそろ桔梗とあすかちゃんを解放してあげたほうが……」
「やだ! ここで逃げんのはやだ!」
「あたしたちは踏まれても死なないけど、あんたたちは死ぬんだよ!」
「桔梗も離れようとしない!」
「やだ! もうわけわかんないけど、やだ!!」

 この時、大きな白い矢がとんできて、轟八幡の胸板を射抜く。大音響とともに轟八幡が倒れる。

「オオガミさまだ! オオガミさまがもどられた!」
「まぶしい!」
「笠松山の向こうから矢を射られたんだ!」
「まぶしくて……」
「間もなく、笠松山を越えられる。それまでに、とどめをさそう!」
「ああ、残った雑魚の禍つ神どももな」
「いくよ!」
「おお!」  
「あ、ちょっと待って、あたしも……!」

 あすかと、二柱の神は、ミズホノサトを目指した……!

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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評・75『ヘンゼルとグレーテル』

2016-10-27 06:00:46 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評・75
『ヘンゼルとグレーテル』


この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ

これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に身内に流している映画評ですが、もったいないので、転載したものです。

公開時、見逃してました、star chでやってたので漸く見れました。

 グリム童話「ヘンゼルとグレーテル」の15年後、お菓子の家の魔女を焼き殺してから、兄と妹は魔女専門の殺し屋に成りましたとさ…チャンチャン〓
“ブラザーズ・グリム”なんかを見ていても、ここまでやってええんかい? と思ったものですが、本作に至っては もうタガがはずれとります。ブラザーズ・グリムでは一応時代設定や、ドイツの黒い森のイメージなど、細かく気配りしてありましたが、この映画は一切斟酌しとりまへん。

 大体が いつの時代のどこの話なのやら、飛び道具がボウガン(しかも連発)にとどまらずライフルもどきが出てくるわ、弾丸無限に撃てるみたいだし、果てはガトリングガンまで登場、“ウ゛ァン・ヘルシング”でもそこまでやらんかったのに……まぁ、そんなこんな含めて楽しめる映画でしたけど。スピード感があって、こだわってる暇がないってのが主因でしょうね。ヘンゼル役のジェレミー・レナーが、まるっきりスパイアクションのノリで走り回っております。妙にリアルで引き込んでいきます。お見事!
 兄妹の父母の設定にも一捻り、最近流行りの白と黒の対立も盛り込んで、道具建ては仰山であります。
 もう ここまで並んだら、ただただ受け入れて 片っ端から食い散らかす以外にありません。  
 アメリカじゃ5000万$位の稼ぎで、まぁ スマッシュヒット、最近 ダークファンタジーに当たりがなかったので、この類はあまり作っていなかったのですが、全く無い訳でもなく、久し振りだから当たったという事でもありません。
 実は、本作の製作陣そのものがヒットの理由が解らないと漏らしています。そんな事もあったので是非とも見たいと思うとりました。結論は、ジェレミー・レナーに惹かれて見に行ったら、結構スピード感があって面白かったって事なんだと思います。何より製作者の本気が伝わってきます。
 妥協の無い製作姿勢がヒットを産む…これが総てじゃありませんが、最低必要条件なのですね、改めてそう感じた次第です。

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高校ライトノベル・あすかのマンダラ池奮戦記・8『イケスミ消滅の危機』

2016-10-26 06:40:00 | 小説5
あすかのマンダラ池奮戦記・8
『イケスミ消滅の危機』
        



 フチスミがあすかを逃したあと、アヤカシの色濃くなる中、イケスミ一人残る。

「心配すんな、まかしとけ!……あいつ初めて正しくイケスミって言ったな……神さまは死なねえよ……ただ変にひねくれちまって(北の方角をにらむ)ああいう禍つ神になっちまう奴がいるけどな……」

 北の彼方で禍つ神達の気配。イケスミ、そこに一瞥をくれると藪を探る。

「なるほど、さすがフチスミ、どう見ても竹や、枝の切れ端だけど、みんな鋭い殺気がこもっている。ロケット弾、重機関銃並のものまであるじゃないか……このへんが手ごろ……」

 ふりむきざまに、手ごろな小枝をとり意外に近くの北の空をめがけて撃つ。機関銃のような音と手応え。奇声を発して、鳥のように禍つ神の眷属が落ちる。
「けっ……意外に近くにやってきている……」

 続いて撃ちまくる。フチスミが、上手から転がり出るように駆けもどり、たった一人の戦闘に加わる。手ごろな武器を持ち撃ちまくる二柱の神。

「以外に近くに来ているようね!」
「あすかは無事に!?」
「ええ、無事に道を見つけた。向こうはまだ安全だった!」
「それはよかった。でも、その分、こっちに集中しまくってるみたいよ!」
「数が多い……」
「でも、よく用意しといてくれたよ。これだけの禍つ神にいちいち手づくりの気を飛ばしていたら、体がもたないよ!」
「鬼岩に封じ込めてあった鬼の気を、枝や竹の切れ端にこめておいたの!」
「それで鬼岩の気が弱くなっていたのか!」
「その奇数番号の太い竹を撃ってみて。オートの百連発だから……!」
「よっしゃ!」
   
 三番のオートを撃ちまくるイケスミ、花火大会のクライマックスのように盛大に盛り上がり、急速に静寂がおとずれる。二人とも、ざんばら髪に制服姿も痛々しげに乱れている。やがて、イケスミが腰を抑えてくずおれる。

「なんとか、やっつけたみたいね……」
「でも、この百連発は腰にくるよ……」
「うん、だからイケスミさんにまかせたの」
「あのなあ……」
「わたしの華奢な体じゃ、扱えないもの」
「だって、依代についてんでしょ。多少の無理は……」
「桔梗に負担はかけたくないの」
「あたしたちはね、そのために依代についてんのよ。依代につくから、このサトから出ることもできるし、サト中じゃ依代につくことで何十倍もの力を発揮できるんだよ」
「でも、依代にも負担がかかるんだよ」
「だから、そこはギブアンドテイク。あすかだって……」
「桔梗は、今度の地震で、お父さんを亡くして天涯孤独の身なのよ……それに桔梗って、おとなしそうに見えて、けっこう戦闘的な子なの、そんなの持たせたら、どこまでやるかわからない。奇数番号のオート持てるだけ持って自爆さえしかねない子よ。ほら、もうわたしの支配から離れて、勝手に動こうとしている……ウ、このぉ」

 フチスミの中で桔梗が覚醒する。それを封じ込めるようとして身もだえするフチスミ。

「あすかの半分も要領かませればねえ、もっと気楽に世の中渡っていけるのにねえ……」
「わたし、桔梗も好きだけど。あすかのハッキリしたところも好きよ」
「ハハ、イケメンコーチと同じ大学うけられてルンルンだろうね。でも、頭はともかく、あの器量だから、いずれふられちゃうだろうけどね。でも、あすかはそうやって成長……!?」

 小太い木の枝を撃ちながら、自分の手を見て愕然とする。

「……どうしたの?」
「手が……体が透けてきた。結界がほころび始めているんだ。今日一日もたない……二、三時間で消えてしまうかもしれない……!」
「気を強くもって!」 
「もう少し……」
「もう少し?」
「もう少し、あすかを足止めしておくべきだった、依代さえいれば……そうだ、ふんぱつして惚れ薬で彼氏の心をとりこにするぐらいのことを……」
「バカ!」

 イケスミをはりたおすフチスミ。しかし、その手は水を叩いたほどの抵抗がするのみで、イケスミの顔をすり抜けてしまう。

「イケスミさん……!」
「だめだわね、ここまで存在感が無くなってきている……」
「あなたに欠けているのは信じる心よ。必ずオオガミさまはおもどりになる! けして、この里をトヨアシハラミズホノサトをお見すてになったりしない!」
「だって、これじゃねえ……」
「霜月を過ぎて、まだたったの三週間あまり……きっとおもどりになる。あなたもさっきそう言ってたじゃない。だから、あの禍つ神達も恐れてる。一気に力攻めにはしてこない、ゲリラのように小攻めに……」
「今のが小攻め?」
「……中攻め、威力偵察ね。ちょっと強めにあたって、相手の強さを知る」
「思い知っただろうね、ほぼ全滅にしてやったから」
「だから、しばらくは攻めてこないわよ」
「そうだね。そして今度攻めてこられたら、今度はこっちが思い知る番ね。わるいけど、やっぱ一時間……良くて二時間だな……」
「イケスミさん……」

 気弱になったイケスミの体は、もう半分近く実体が無くなっていた……。

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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評・74『R.I.P.D.ゴースト・エージェント』

2016-10-26 06:24:03 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評・74
『R.I.P.D.ゴースト・エージェント』


この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ

これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に流している映画評ですが、もったいないので転載したものです。


お薦めって程の映画じゃないけど、そこそこ楽しめる作りにはなっています。

 例によって一切“禁理屈”であります。M・I・Bのゴースト版+ゴースト・バスターズの「魔神降臨呪い」……であります。
 成仏(アメリカだから昇天か)しない死者が年月を経ると怪物化し、それを捕まえるゴースト・ポリスの組織がある。なんせ一度死んでいるから、どんなショックを与えても怪我すらしない、“オダブツ弾”ちゅう弾丸(一回しか名乗らなかったので英語でなんと言ったか聞き漏らしました)で頭を撃たれると消滅する。人間の姿だと、人間並みにしか動けないが、正体を表すと怪力を発揮する……とはいえ、物理的法則には従わざるを得ないetc~てな設定です。
 原作はグラフィックノベル(要するにフルカラー・デラックス・コミック)で、ダークホース・コミックス社の出版、この会社はマーベル/DCに次ぐアメリカ3番手の会社で“300”“シン・
シティ”“ヘル・ボーイ”“マスク”“エイリアンVSプレデター”なんかを出しています。いかにもアメリカンコミック的ご都合ストーリーですが、始めにお断りしたようにそこはグッと飲み込んで楽しみましょう。過去のゴースト・ファンタジーやウェスタンのパロディも山盛り、結構笑わしてくれるサービスもあります。
 前にどこかで書いたかもしれませんが、ジェフ・ブリッジスって割と大男のイメージがあるのですが、さほどじゃないんですねぇ。共演のライアン・レーノルズ(デンジヤラス・ラン)がデカいのかと思いきや、ケウ゛ィン・ベーコンと同じ位なので……拠って、ジェフ・ブリッジスもそんなに大男じゃないとなる。 若い頃は、ジョン・ウェイン張りに見えたんですけどねぇ、共演が小さい人ばっかりやったんですかねぇ。
 まぁ、そらええとして、本作キャストはコミック映画に慣れたメンバーが揃っていて、演技の勘所をキチンと押さえています。この演技が大ご都合主義ストーリーにリアリズムを与えています。なんと言われようが「ご都合主義ストーリー」は駄目だって方以外、案外楽しめると思いますゾ〓

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高校ライトノベル・あすかのマンダラ池奮戦記・7『あすか賢くなる!』

2016-10-25 07:00:49 | 小説5
あすかのマンダラ池奮戦記・7
『あすか賢くなる!』
         



「で、名前は? 依代をしながら意識が醒めているなんて、ただ者じゃないわ」

 意地悪そうな笑みを浮かべて、フチスミ……いや依代を見つめるイケスミであった……。

「桔梗、天児桔梗(あまがつききょう)」
「天児……!」
「ア、アマガツ……?」
「天国の天に鹿児島の児と書くんだ。伴部村の神社の子だね?」
「社は二十年前の台風で倒れて、それっきりだけど、この子のお父さんが、映画のセットみたいな代用品を建てて細々とやっていた。でも……そのお父さんの神主さんも、今度の地震で……」
「他に家族は……?」
「天涯孤独……一人ぼっちって意味さ」
「どうして、イケスミさんにわかるの?」
「その桔梗って子、身を投げにきたんだね、フチスミさんの花ケ淵に……」
「よくわかったわね……二人だけの秘密だったのに」
「イケスミだよあたしは。意識が起きてさえいりゃあ、なんだってお見通し。依代になりながら起きているなんて、天児の子とは言え、本当は強くて賢い子なんだね」
「……繊細で賢い子。だから、新しい町や学校にもなじまず、死のうと思った」
「あの……繊細で賢い子だと、どうして、なじめずに死のうと思っちゃったりするわけ?」
「だって、あんたはなじんでるでしょ、町にも学校にも?」
「うん、あたしは バカでガサツで弱虫なわりにお調子者で……」
「でしょ。万代池が無くなるのに死のうなんて思わないしさ……」
「ちょ、ちょっと!」
「ごめん、ちょっとひがんでみただけ……」
「桔梗は、このあたりでただ一人わたしの依代になれる素質を持った子だった」
「ソフトとハードの関係だね。あたしとイカスミさんみたいに」
「イケスミだっつーの」
「その桔梗が、廃村の二日後、たった一人でわたしのところへやってきた。これは運命だと思った。この子もね……二人でそう感じた時、わたしは溺れているこの子にのり移っていた……その時……」
「その時?」
「かすかにオオガミさまの声が聞こえたような気がした……」
「はるか出雲から、オオガミさまの声が……」
「見とどけよ……とおっしゃった」
「何を見とどけよと?」
「おもどりになるまでのこと、それしかないわ」
「でも、もう十一月も末だよ」
「どういう意味だ?」
「……もう帰ってこないんじゃ……だって何もかも水の中に沈んでしまって、変な不良の神さまたちもここをねらってるみたいだし……」

 バサバサっと鳥たちが怯えて飛び去ったあと、ドドーンと彼方で崩れる音。怯えるあすか。

「神さまは嘘は言わない」
「でも、もどってくるとは言ってないんでしょ。出雲に行ってくるとだけ、そしてかすかに、見とどけよと、そう言っただけでしょ?」
「神無月を過ぎて、神々がもどられなかったことなどない!」
「だって、まだもどってこないじゃないか!」
「それは……」
 答えに窮するイケスミ。
「先生だって、トイレにたったきり職員会議にもどらない人がいる。生徒の大事な進路を決める職員会議にだよ!」
「教師ごときと神さまをいっしょにするな! 神さまを信じろ!」
「だって、イカスミさんだって、マンダラ池を見捨てたじゃないか、二度ともどってきやしないんじゃないか!」
「勝手なことを申すな!!」

 両手をつかって気をとばすイケスミ、数メートルふっとび、地面に体を打ちつけられるあすか。

「……イカスミ!」
「あたしの名はイケスミだ、二度とまちがえるな」
「この子は恐ろしいんだ、いろんなことが……もうもどしてやった方がいい。そんな顔してると禍つ神になってしまうわよ」
「……そうだ、そうだったな。ここまで連れてくるだけの約束を、ついひっぱり過ぎたな。すまんあすか……ほら、約束の成績票」
「あ、ありがとう……!?」
「どうかした?」
「オ、オール5だ……あたし、こんなには賢くないよ」
「あすかの頭も、それにあわせてよくなっているわよ」
「ほんと?」
「フチスミさん、なんか問題言ってやって」
「うーん……じゃ、微分方程式ってなーんだ?」
「未知関数の導関数を含んだ方程式。未知関数が一変数のとき、常微分方程式といい、多変数のとき偏微分方程式という……え?」
「和文英訳『日本語のおはようは、英語のグッドモーニングと同じです』くりかえそうか?」
「ううん『オハヨウ イズ ジャパニーズイクォリティー トウ ジイングリッシュグッドモーニング』……おお!?」
「古文法、推量の「ら」を用いた著名な和歌は?」
「春すぎて~夏きたるらし白妙の~衣干したり~天の香具山……万葉集巻一、持統天皇の御製。ちなみに持統天皇、名はタマノハラノヒメ、またはウノノサララ、天智天皇の第二皇女で天武天皇の皇后、草壁皇子没後即位、第四十一代の女帝。ちなみに神田うのの「うの」は、このウノノサララからきている……すっげえ!」
「な、賢くなったろう」
「ありがとう、頭の中に百万個電気がついたみたい」
「ちょっと甘すぎない?」
「同じ学校受けられる水準にはしといてやらないとな、真田ってイケメンと」
「ああ、それないしょ、ないしょ!」
「アハハハ……そうだったわね」
「え……?」
「神さまに内緒は通じないからな」
「がんばってね」
「もう……!」
「それから、その成績票、破いたり傷つけたりするなよ」
「うん!」
「元のバカにもどっちまうからな」
「元のあすかちゃんも悪くないわよ」
「もう、フチスミさんたら」
「……南東のケモノ道はまだ無事。まだ日が高いから、少し教えてあげれば一時間で轟って街につく」
「トドロキ……」
「このへんにしては大きな街だからすぐに、駅が見つかる。特急に乗れば一時間ちょっとで東京。ほれ、電車賃……バカ透かすんじゃない本物。木の葉なんかじゃないからね」
「南の方はまだ息をひそめているけど、北の禍つ神達が雑魚のように群れはじめている。その藪の中に武器が隠してある。間に合わないときは、それで始めといて。さ行こうあすか、こっちよ」
「うん、ありがとう、じゃ、イケスミさんも無事でね! 死んじゃやだよ……!」

 あすか、フチスミにいざなわれトドロキへの道へ、強まるアヤカシの気配……。



※このお話は、もともと戯曲です。実演の動画は下記のURLをコピーして貼り付けてユーチューブでご覧ください。

 http://youtu.be/b7_aVzYIZ7I

※戯曲は、下記のアドレスで、どうぞ。

 前半: blog.goo.ne.jp/ryonryon_001/.../2bd8f1bd52aa0113d74dd35562492d7d‎

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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評・73『モック・バスター……?』

2016-10-25 06:46:45 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評・73
『モック・バスター……?』


この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ

今週は映画無しデス。

 それで“モック・バスター……一体何の事だとお思いでしょうか(ウ゛ァイオリン弾きの森繁風に…)
 MOCK(模倣する)+BLOCK BUSTER(超大作映画)=MOCK BUSTER……要するにパクリ映画の事です。
 レンタルビデオ屋で、こんな経験ありませんか?「アバター」の隣に「アバター オブ マーズ」、「トランスフォーマー」の隣に「トランスモーファー」、続編は無いはずなのに「タイタニックⅡ」~~なぁんてな限りなく怪しいタイトルを発見した事はありませんか? これらは総て“ASYLUM”(精神科病院)という会社の作った低予算SF作品、どこかで闇製作してるのかと思いきや、立派にハリウッドのディズニースタジオの北東に鎮座しています。
 MOCK BUSTERはASYLUMの専売特許ではなく、インディーズ系には、この類いの映画を作っている所が幾つか有ります(ツインヘッドジョーズとか砂浜を移動するジョーズやら)

 昔から、B・C・D・F級映画ってのは沢山有りました。「デスペラード」なんてな映画も、元はR・ロドリゲスが7000$で作った「エル・マリアッチ」のハリウッド・リメークです。B級の帝王 R・コーマンは確信犯的低予算、早撮り、二番煎じ。エド・ウッドなんてな怪人監督もいました。
 インディーズに限らず、パクリはメジャー系でも花盛り、企画の盗り合いなんてな日常チャメシです。「アルマゲドン」の企画を先取りして低予算、早撮りで作ったのが「ディープインパクト」なぁんてな有名な例もございます。
 アメリカは知的財産権にうるさい国ですから、企画のパクリには厳しいんじゃないか…と思っていたのですが、ところが意外や、殆ど笑ってスルーするみたいです。過去には訴訟もあったようですが、立証が難しく、必ずしも勝訴出来ない事例が多くて、訴訟するよりは逆手にとってCMに使ってしまえ……位の感覚のようです。
 ASYLUMの設立メンバーも、元はインディーズでアート作品を撮っていたようですが、大手ビデオチェーンとの出会いから、徹底的マーケティングによる「売れる企画」の低予算(スタートは一本3万$、大体10-20万$、メジャーは1000万$)早撮り(2-3週間撮影、月1本製作、95年設立後15年で100本製作、メジャーは年2-3本)企画から製作から配給まで自社内で完結させる…というスタイルに変更、会社経営維持の不安定なハリウッドにあって低レベルではありながら(年間売上高600万$)安定した経営をしているようです。
 パチモンと知りながら、怖いモノ見たさで、ついつい手に取る……結構こういう人が多いようで、こんな人間心理にもはまるようです。バカにしつつも、ツボにはまると、つい見込んでしまう作品もたま~にあったりして、こういうのがカルトムービーに成ってしまったりするのです。
 ASYLUMの成功(?)で、インディーズに同様の会社が増えたのは事実ですが、映画界のニッチ産業という立場と共に、映画人の初期養成所としての役割も果たしているようです、全社一丸で早撮り、スピード製作のタフな現場ですから、VFXなんてな専門職以外はなんでもやらされる、ものの2-3ヵ月もしたら一丁前の職人に見える(?)ようにはなるらしい。思えばR・コーマンの足下からコッポラやキャメロンなんてな監督や、J・ニコルソン、P・フォンダなんかが育っている。メガ・シャーク vs ジャイアントオクトパス(ゴールデンゲートブリッジを噛み砕くほどデカいサメ)なんてな映画のネット予告編は、かの「アバター」の予告編に次ぐ再生回数だそうです。安っぽい作品ながら勢いで見せきる! チープ作品の系譜は決して無くならず、今後も映画界に居座り続ける事でしょう。中には、あまりにも馬鹿馬鹿しく、時間の無駄に思える作品も有るでしょう(その方が多いやろね) でもまぁ、そうと知りつつ、怖いモノ見たさで選んだのなら「馬鹿だね~、こんなん作ってええんかい?」てな、おおらかなる気持ちで笑い飛ばしてやって下さい。
 世の中には、Aクラスを名乗りながら、見ていて怒りに震える作品もあります。本物の詐欺作品(?)ってのはそういう映画です。そういう映画に当たったら、それこそ大声で「金返せ~!!」と叫びましょう。
 誰しも過去に1-2本はB級カルトがあるでしょう。あなたのカルトは何ですか。まさか…ディバイン(アメリカのデラックスマツコ的オカマ、徹底的グロ・ゲロ)などと答えるあなた……B級ファンと言うより、変態でっせ!!〓

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高校ライトノベル・あすかのマンダラ池奮戦記・6『フチスミの依代・2』

2016-10-24 06:54:25 | 小説5
あすかのマンダラ池奮戦記・6
『フチスミの依代・2』
        


 イケスミの心に怖気が走った。マンダラ池と同じではないか……。

「残っている山を見て……」
「……きれいな杉山」
「へ、木の名前知ってんだ!?」
「松と桜と杉しかわかんないけどね。小学校の時なんかに記念植樹とかするでしょ」
「わかった?」
「うん……杉山すぎる」
「え、だめなの杉山じゃ?」 
「杉は、根が浅くって、大雨が降ると根っこごと土が崩れてくるんだ」
「昔は、山崩れを防ぐため、山の稜線付近は……」
「リョーセン?」
「あすか、ほんとバカだな」
「アハハ……てっぺんあたりのことかな? 家で言えば、屋根のてっぺん。ドラえもんとミーちゃんがデートするような」
「フフ、勘はいいようね。さすが元宮さん」
「テヘヘ、さんづけの苗字で呼ばれると照れるわね……で、稜線いっぱい杉山にすると……崩れやすいの?」
「だから、昔はわざと深い根を張るクヌギなんかの雑木を残しておいたの。そういう稜線をクヌギ尾って言って、山崩れを防ぐ自然の知恵だったの」
「昔の人は偉い!」
「今の人もバカじゃない。戦中や終戦直後は、国策で杉ばっかりだったけど……こないだまでは、やっていたのよ。少しずつだけど……」
「でも、人もカネも足らんということか……」
「そうね……でも、今度のことでは、みんながんばったのよ。この水を抜いて、もとにもどそうって」
「あきらめちゃったの?」
「うん、三日前。この水を抜くために、山崩れでできた自然ダムを破壊すると下流の村や町に迷惑をかける。断腸の思いで廃村と決めたの」
「団長が一人で決めた!? そんなの許せないよ! いったいどこの団長!? 青年団? 消防団? 少年探偵団?」
「ハハハ……何ヶ月ぶりかしら、こんなに笑えるの……」

 二柱の神、初めて、のどかに笑う。

「な、なによ、違うんだったらおせーてよ!」
「腸がちぎれるくらいに痛くて辛い決心ということよ。なんなら体験してみる?」
「いいよ、自分の腸でつくったソーセージ想像しちゃった」
「ごめんね、へんなの連れてきちゃって」
「ううん、とっても心がなごむわ。ここしばらくは、一人でふんばらなきゃと思っていたから」
「で、オオガミさまは? 気を飛ばしても、どこのお旅所にも気配を感じない……もうここには在わさぬのか?」
「出雲においでになる」
「出雲? 今は霜月十一月、それも霜月会(しもつきえ)とうに終り、霜月粥が大師講で湯気をたてておるころぞ」
「今年はまだ神無月が続いておる。だから、今年は霜月も晦日近いと申すにこの暖かさ」
「あ、あのさ、その時代劇みたいな言い回し、あたしちっとも……国語欠点だから」
「国語だけか?」
「それは……」
「ごめんなさい。つい昔のノリになっちゃって。つまりね、オオガミさまは、年に一度の神さまの会議に、出雲に出張なさってるの。それが十月って決まっていて、出雲以外のところから神さまが居なくなるから十月を神無し月と書いて神無月というの。それが霜月、十一月になってもお戻りにならない」
「職員会議の延長みたいなもんだね。いや、毎年あるんだ、三月ごろ、あすかみたいなバカを進級させるかどうか、この日ばかりは遅くまで点いてる職員室の明かりに手を合わせているのよ……ってそういう話?」
「神無月が十一月まで食い込んだのは初めてだ。よほど重要な話をなさっているのだろう……」
「ひょっとして、イカスミさんを落第させる話題だったり……ごめん、冗談の雰囲気じゃないんだよね」

 フチスミは、出雲の方角に例の神の挨拶をしている。イケスミもそれにならいながら挨拶をする。あすかもつりこまれ、不器用にそれにならう。あたりに静もりの気が満つる。

「下手をして師走にもつれこむと、鬼が出始めるぞ」
「いや、もう出始めている。時々地震もおこらないのに、土が崩れるような音がするだろう?(彼方で音)ほら……水没したとはいえ、ここはトヨアシハラミズホノオオガミさまの住まわれる聖地、しかも留守とあっては禍つ神どもにとって、鍵の開いた金庫も同然。あの音は結界に禍つ神が触れる音」

 静もりの気、邪悪なそれに変わる。

「結界が破られているのか?」
「今のところは無事、でも、時間の問題、北と南に集まり始めている。一人で二正面の戦いは苦しかった」
「あたし……でもどりが親のスネカジリにもどってきたつもりなんだけど……」
「それはないでしょ!?」
「だってね……」
「だってもへちまもないわよ。いいこと、このミズホノサトを奪われたら、わたしたち住むところないのよ。イケスミさん、あなた、東京の万代池もほっぽらかしてきたんでしょ!?」
「だって、あそこはもう埋め立てられっちまうんだよ! 池の神が池を失ったら、もう存在理由ないでしょ? アイデンテイテイ、レーゾンデートルの問題よ」
「だからがんばるのよ! わたしなんか依代の方が元気で、どっちがとりつかれてんのか……」
「ね、あそこ、学校があったんじゃない?」
「え?」
 イケスミは話を中断されたようで、少し機嫌が悪い。
「よくわかったわね。ポールが突き出ているだけなのに」
「あのポール、卒業記念に、中学に残してきたやつといっしょみたいだから。あたしが選んだんだよ。生徒会の役員やってたから」
「へえ、あすかちゃんて偉いんだ」
「東京の中学の生徒会役員なんて、手ェあげたらだれでもなれんの」
「もう、ちゃんと対立候補を大差でやぶって当選したんだかんね」
「村立伴部小中学校、この依代の子が通っていた学校。この子も卒業記念品の選定委員やってたんだよ。
あすか そうなんだ! あのポール、特注品で高いんだよね頭のところに校章がついていて、夜になると、太陽電池の明かりが照らすようにできてんの。校章とポールの間に発光ダイオードとか入ってて……」
「日によって色が変わるんだよね」
「うん、うちは月曜が赤「ファイトオッ一発がんばるぞ!」ってんで、ヘヘ、学校にゴマスリのハッタリだけどね」
「ここは田舎だから、日めくりの色どおりに日曜が赤、あとはアンケートとって多い順」
「あら民主的……うちは、あたし一人で全部きめちゃった」
「すごいのね……」
「誰も興味ないんだよ、あすかの学校じゃそういうことにはさ」
「そういうこと言う?」
「でも、そうなんだろ?」
「……そりゃ、そうだけどさ」
「あのポールの校章、今でも光るんだよ……フフフ、今日はオレンジ。給食にミカンのつく日だったから、一番に決まったの」
「あなた……名前はなんて言うの?」
「え……?」

 不思議そうに二人の顔を見る、あすか。

「依代、あんたのことよ。普通神さまがとりつくと、依代の意識は眠っちまうんだ。な、そうだろあすか、ここへ来るまでのことちっとも憶えてないだろ?」
「……うん、「ミッションスタート!」でとぎれて……」
「スカートめくって太ももあらわにして、長距離トラックのりついだことなんか憶えてないよな?」
「え……そんなことしたの!?」
「フフフ、そうよ、この子の意識は起きている。だから、スカートめくってヒッチハイクなんて、とてもやらせてはもらえないけど」
「で、名前は? 依代をしながら意識が醒めているなんて、ただ者じゃないわ」

 意地悪そうな笑みを浮かべて、フチスミ……いや依代を見つめるイケスミであった……。



※このお話は、もともと戯曲です。実演の動画は下記のURLをコピーして貼り付けて検索してください。

 http://youtu.be/b7_aVzYIZ7I

※戯曲は、下記のアドレスで、どうぞ。

 前半: blog.goo.ne.jp/ryonryon_001/.../2bd8f1bd52aa0113d74dd35562492d7d‎

 後半: blog.goo.ne.jp/ryonryon_001/e/5229ae2fb5774ee8842297c52079c1dd‎
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