大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評『トランセンデンス/オール・ユー・ニード・イズ・キル』

2014-06-30 06:29:15 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評
『トランセンデンス/オール・ユー・ニード・イズ・キル』



 これは悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に身内に流している映画評ですが、もったいないので転載したものです。


さて、「トランセンデンス」であります。

 クリストファー・ノーラン監修(なんで監督じゃないの?)によるSF、ジョニデ主演、モーガン・フリーマン共演。鳴り物入りで公開されたが、全米トップ10から2週で脱落、興行収益2000万$を超えた??程度、早い話がコケとります。さぁて、なんでなんでしょうねぇ。とりあえず見てみましょう。
 おっと、その前に、時間の都合上仕方なく“吹き替え”を見ました。只今、自己嫌悪と共に大後悔、ずっと違和感持ったまま二時間座ってました。しかしまぁ、内容は判りました(当たり前)。本作がなんでコケたのかも、ハッキリ掴めました。
 主犯は脚本です。ストーリーがあまりにも表面的かつ単純かつ一方的なんです。
 最近流行りのキリスト教関連映画風に言うなら“アダムとイブの楽園追放物語”です。死にかけている夫の頭脳をコンピューターにアップロードしようとする妻の名前が“エブリン”……EVEの名前が含まれている。となると、神様は師に当たるモーガン・フリーマン、同僚であり友人でもあるポール・ベタニー(本作の語り部でもある)は、さしずめ「失楽園」著者のミルトンだろう。「フランケンシュタインの怪物」を書いたシェリー夫人でも良い。以上の比定はパンフにも書かれているが、これは簡単に想定できる、ちゅか、それしかない。
 設定があまりにも安易かつご都合主義です。いつものように、ストーリーを開いていく角度に例えると、映画が始まって30度、90度と開いて行くが、丁度180度になった所で物語は終わる。
 えっ? この先は無いの?……思いっきり欲求不満だけが残る。量子コンピューター“ピン”に向かって「お前に自我は在るのか?」と質問し、ピンシステムが応える「難しい質問です……あなたは自分の自我を証明出来ますか?」この質疑は二度繰り返され、二回目はアップロードされたジョニデに向けられる。

ジョニデの答えは「ピン」とまるっきり同じ。ここは重要ポイント!

 まぁ、この点はちょいと置いといて、本作の中で“人間の自我”とは一体何であるのか……一切考察されないし、当然“答”も明示されない。この点をすっ飛ばしていきなりアップロードされたジョニデは元のジョニデではないと短絡されてしまう。単に“人類以上”の存在に対する“恐怖・嫌悪”だけしか映画から読み取れない。
 ジョニデを愛するが故に、彼の頭脳をアップロードする妻にしても、ロード半ばでジョニデは死ぬのに、何の検証も無く作業を進める。ここでの拙速が、後の疑惑に繋がるのだから仕方ないとも言えるが……エデンにおいて人間が知恵の実を口にしてしまうのは、悪魔の誘惑でもあるが、その責任の大半はイブにあるとするのが一般的。本作は、そこから一歩も踏み出していない。
 人間が自我を持つに至った事が果たして“罪”なのか否か……この答が無いのが本作の致命傷です。
 アップロードされたジョニデは次々に新技術を繰り出す。最大の物はナノボット(ナノテクノロジー+ロボット=細菌サイズのロボット)、研究室で作られるのみならず、おそらく地中の硅素を原料として無数に発生し、天候すら左右する。ここまで来てしまえば、アップロードされたジョニデが人類の敵であろうが味方であろうが打つ手はない。銅が電磁波を遮るってんで、対ジョニデのバリヤー代わりに使われるが、そんなものナノボットに侵食させたら一発終わり。新しい量子コンピューターを止める為、地上のソーラーシステムを破壊しようとするが、小口径の大砲一門と迫撃砲が一つだけ? ミサイル(核)は無理としても“マザー・オブ・ボム”の一発で方が付く。軍隊(政府)を即座に動かせない言い訳はされているが、それにしても貧弱過ぎる。
 再生されたジョニデと、自らウィルスを体内に仕込んだ妻が触れ合っただけで、コンピューターもダウンするのも“????”妻の心を斟酌しての心中だと考えるしかないし、それが正解ではあるが、それにしても「え~~?」である。そうだとするとアップロードされたジョニデには、ちゃんと理性もあったんだという結論になる。ピンの答えとジョニデの答えが一緒だから「自我が無い」と判断されるが、ピンに自我が在るのか無いのかの考察が抜けているから、この結論にはブーイングです。何より、この脚本で良しとしたクリストファー・ノーランとウォーリー・フィスター監督(「インセプション」の撮影監督)の真意が解らない。これじゃ、まるで「環境派」のプロパガンダから一歩も出ない。セリフの中にもインターネット等デジタル技術に疑問を投げかける物が多数織り込まれている。この二人のコンビで、こんな平板な作品が出来上がるなんぞ、信じられない。ジョニデにしても「パブリック・エネミーズ」「ローン・レンジャー」に引き続いての三連続コケ
作品です。次回作は低予算コメディーらしい。
 本作が世界興行においても失敗に終わるとしても、それはジョニデ以下 出演者には何の責任も無いと考える。ひとえに、物語に力が無かったからです。

オール・ユー・ニード・イズ・キル
 こらぁ面白いです。久々にトム君、ミッション・インポシブル以外にヒット作品誕生です。SF原作はやっぱり日本人の独擅場ですねぇ。 異星人の侵略を受けている地球、広報担当士官のトム君、無理やり絶望的な戦場に放り込まれ、殆ど瞬殺で死亡する。しかし、ある条件を満たした為、彼は時間をループして、その1日を無限に繰り返す事となる。 いわゆる“無限地獄SF”で、結構多数の作品があります。もう新機軸は無いと思いますが、本作はプロットの積み上げ、サスペンスの盛り上げが巧い(原作未読) 但し、本作鑑賞についても注意点ありです。まず、タイムパラドクス(悲観的な現在を改変するため過去に戻っても、そこから別な時間軸が発生するだけである)と、トム君が この能力を得るに至った事情には目を瞑って下さい。もう一つもタイムパラドクス絡みですが、タイムループの能力は元々 異星人の持つ能力で、トム君が勝った所で、今度は異星人がループする。
 かくして、無限地獄は永遠に続いて行く……はぁい!こんな小理屈は引っ込めて下さいませ。本作は全米公開3週目、初登場一位とは行かなかったが好調に推移、今週6位で7400万$の稼ぎ。1億$は苦しいと思いますがスマッシュヒット成績(製作費が判らんとなんとも言えませんが)は上がってます。日本人はトム君大好きですから、相対的には大ヒットになるかも、今日も結構入ってました。  あっと、昨日今日は先行ロードですから、月曜日に行ってもやっていません。次は7月4日からですのでご注意下さい。本作、アクションがなんと言っても圧巻、あの重そうな(実際アホほど重いらしい)パワードスーツを身にまとい、重いばかりか身動きしにくそうで、みんながに股歩きで走り回っています。男共はまぁよろしい、エミリー・ブラント(プラダを着た悪魔)が、あのか細い身体で大奮闘……涙なくして見られまへんでっせ。撮影中 生傷が絶えなかったそうで、「ああ、ここで怪我したな」と思えるシーンが多々ございました。
 映像は、あり得ないSF設定の作品ながら隅々までリアルに仕上がっており、監督ダグ・ライマン(ボーン・アイデンティティ)の手腕もさることながら、主役の二人以下 全キャストの本気の賜物です。戦場に放り込まれる・戦う・死ぬ・目覚める……そして、また戦場へ。繰り返しのシーンの連続ながらスリリングに展開して行き、死ぬごとにスキルアップしていくトム君に自分を重ねる。カタルシスたっぷり、これは見るしかありません!

 もう一つ、今日の映画とは全く関係おまへんが、先日、うちの店のチーフにあるバイク雑誌を見せてもらいました。 ”マッド・マックス”の第一作に橋の上でマックスの車と暴走族が交錯するシーンがあります。スローモーション映像の中、転げ落ち滑って行く暴走族役スタントマンの頭に、これも倒れ滑って来たオートバイがまともに激突、彼の首は有り得ない角度に曲がってしまいます。当時、このスタントマンは死んでいると噂され、「地獄の黙示録」で、カーツ帝国の河原に並んだ死体の中に、本物があるってのと(これは嘘だと すぐ証明された)同じく、侃々諤々の言い争いになっとりました。まぁ、映画に本当に人間が死ぬシーンなど入る訳はないのですが、これだけは“本物だ!”って事になっとりました……そこで件の雑誌であります。記事には、その当のスタントマンが写真入りで登場、「ありゃあ俺だよ。これこのとおり生きてるぜ」と……実に35年ぶりにモヤモヤが晴れた一瞬でありました。



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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評・『攻殻機動隊 ARISE 3』

2014-06-28 18:14:34 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評
『攻殻機動隊 ARISE 3』



 これは悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に身内に流している映画評ですが、もったいないので転載したものです。


毎度 この作品の映画評を書くのは難しい。

 士郎正宗の原作をご存知無い方には、なかなかご理解いただけないからで、それだけ原作の世界観は緻密かつ広く、どこか一カ所をすっ飛ばしても置き去りにされてしまいます。
 何も考えず、そのまま受け入れて下さい……とは言いにくい作品なのです。

 従って、物語世界を知っている者同士のオタク語りになってしまいます。アニメ作品として、新しい試みや、多彩な表現など、見るべき点は多数ありますが、やはり世界観を共有できてこその楽しみです。こればかりは、ARISEシリーズ1から見るだけでは判りません。せめて、漫画原作“攻殻機動隊1”からのご参加をお願いします。(原作には「1.5」「2」の二冊が他にありますが、とりあえず、これは今の所無視で構いません)
 さぁて、原作世界に繋がるエピソードは本作でほぼ出揃いました。
 素子は未だに公安9課の外注コンサルタントですが、トグサを除くフルメンバーで攻勢部隊を結成(資金はどうしてるんでしょうねぇ)、逆に9課荒巻に売り込んでいる気配。荒巻からは「メンバーが一人足りない」と指摘されている(荒巻の指摘の根拠が解りにくい)
 水絡みのテロ(石油の次は水っていう掴みも、アニメの新視点ではなく、91年の原作世界に登場している)や刑事の爆殺、死んだ筈のテロリストの復活などなど、従来のハードボイルドミステリー仕立てには成っているが、本作のデッカい支柱は素子のロマンス。 原作においても、素子は様々な相手(女性相手も有る)と絡んでいるが、その行為は「たとえ義体であっても、自分は人間なのだ」と確認する為の偏執的行為に見えていた(実にさりげなく、当たり前に描かれてあるだけに、かえってそう感じる。幼児期からずっと義体である彼女~この辺はテレビアニメ「STAND ALONE COMPLEX ①」~には、この欲求は生身の人間以上に強迫観念的です。
 少女時代に淡い(しかし、忘れがたい)純愛経験が有るだけに、彼女が求めるものは「心の触れ合いと無条件の信頼関係」SEXの快感は生身の人間以上なので、水に飢える砂漠の旅人のように求めて止まない。本作では、その素子の恋が重要なファクターとして描かれている。義体であるが故の相手の肉体的(?)条件と共通の興味、心の触れあわせ方が語られる。
 本作の底にはもう一つ、「人魚姫」の設定が流れている。海の中から陸の世界にこがれ、本当に人間になる為には愛する王子の命を奪わねばならず、果たせずに海の泡と消えて行く。当然、人魚姫は素子、王子は恋人・ホセとしれるが、いかにして究極の選択を迫られるかは本作のストーリーテリングの見せどころです。ただ、この設定は二重に成っていて、ホセは素子の恋人ではあるが、同じように義体……と言う事は、彼も素子と同族であって「陸の王子」たりえない。 ならば、「陸の王子」は一体誰なのか? これが意外や、殆ど生身・既婚・子持ちの
あの人なんだと気付いて「ははぁ~ん」と納得が行きます。
 この点、士郎正宗の設定に元々あったものなのか、ウブカタトウのオリジナルなのかはちょっと判断しかねます。おそらくウブカタトウの読み込みなんだと思っています。
 この設定、バトーの恋愛経験なんかも見てみたいと思うのですが……思いっきりギャグ漫画にしないと、こりゃあ悲惨な話になりそうですね。バトーが同志愛を超えて、素子を想っているのは周知の事なので、出来ればこれを叶えてやりたい所ながら、物語の先では素子はNETの中に入ってしまう。バトーはどこまでもストイックに心を閉じるしかないんでしょうかねぇ。NET世界での素子の心理ってのは変化したのでしょうか? あくまでも「人間という存在」にこだわりがあってほしいとは思っています。

 今シリーズにも「意志を持つA.I.がたびたび登場します、後の「人形使い」登場の布石とも見えます。人間・全身義体・人工知能のせめぎ合いも、本攻殻ワールドの重要なファクターですね。
 本作に501部隊のクルツという女性が登場しますが、これがシリーズ②に出てきたA.I.に良く似ています。何か繋がりが在るんでしょうか。素子が引っ越して来た部屋の風景、新浜市の新旧市街の描き分けなど、画から読み取れる情報も多く、尋常ならざる作り込みを感じます。攻殻ワールドへの深い思い入れを全編に感じます。一回や二回見たからといって、到底全て汲み上げられないでしょう。

 てな訳で、作画には殆ど文句ないんですが、一点気になったのが目元の影の描き方、リアルに見える部分とやり過ぎに見える所がありました。影の在り無しで人物の性格が急変するように見える所がありました。 後、何故かサイトーが、よく居眠りしてるのは、なんでなんですかねぇ?
 さて、本シリーズも9月で終了、④の主要キャラらしき人物も本作に登場しています。さて、一体どんな結末を迎えるのでしょうか。一つの興味は、トグサをチームに加える最終決定がいかにして下されるかであります。

 少々寂しい気もしますが、たった今 続きを見たい欲求もあります。ファンなんてのは勝手なもんでありますなぁ。



『はるか ワケあり転校生の7ヵ月』  
 7月発売予定。出版社の都合で、また発売が延びました。もうしわけありません。(税込み799円=本体740円+税)
『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』    
    

 青雲書房より発売中。大橋むつおの最新小説! 

 ラノベとして読んでアハハと笑い、ホロリと泣いて、気が付けば演劇部のマネジメントが身に付く! 著者、大橋むつおの高校演劇45年の経験からうまれた、分類不可能な新型高校演劇入門ノベル!

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大橋むつお戯曲集『わたし 今日から魔女!?』
 高校演劇に適した少人数戯曲集です。神奈川など関東の高校で人気があります。
 60分劇5編入り 定価1404円(本体1300円+税)送料無料。

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青雲書房。 mail:seiun39@k5.dion.ne.jp ℡:03-6677-4351 
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大阪府立真田山学院高校演劇部公式ブログ・Vol・19『あたしらの思い』

2014-06-27 11:45:41 | 小説4
大阪府立真田山学院高校演劇部公式ブログ
Vol・19『あたしらの思い』
        


☆あたしらのブログがトップに
 あたしらのブログも、早いもんで、これで18号になります。前にも一回ありましたけど、Vol・14『加盟校活動報告・2・誠学園高校』が、今日6月27日連盟のサイトで事実上のトップになって、びっくりしてます。
 それだけ高い関心を持ってもろて嬉しい……というより複雑な気持ちです。
 共感してもろてるのか、怖いもんみたさなんか、うちらでも計り兼ねてます。共感してもろたんやったら「いいね」がもうちょっとあってもええと思うですけど、まあ、ネットの世界はよう分かりません。

☆LET IT GO!
 で、もう一歩踏み込んで、あたしらの思いをLET IT GO!しとこうと思うたわけです。誠学園の織田先生と話してて、あたしらは、時々シャッターを下ろされたような気分になりました。

「ま、一つの考え方やな」
「まあ、見解の相違やね」

 この言葉を何度も言いはりました(ブログは編集の都合でカットしてます) この二つの言葉は「そのことについては、聞く耳無い」いう拒絶の意思が表れてます。相手は先生で親ぐらいに歳の離れた大人です。あたしらにも遠慮がありました。

 そもそも、審査基準については去年、うちの先輩が地区総会で勇気出して提起しはったことです。去年のβ地区予選では、うちらの学校は納得のいかん落とされ方しました。三年前、坂東はるか先輩のときもそうでした。せやからいろんな形で問題があることを指摘してきました。で、なんにも通じひんさかい、先輩は勇気出して言わはりました。
「審査は、ほんまに公正平等が保障されてるんですか? やっぱり客観性が担保された審査基準を持つべきなんとちゃいますか?」

 よう言わはったと思いました。

 案の定、会場は険悪な空気になりました。連盟の先生は俯いて腕組まはるし(人前で腕組むのんは、無意識の拒絶の心理の表れです)一等賞とった学校は「あたしらの芝居を認めへんいうことか」と気色ばむし、先輩は過呼吸になって泣いてしまわはりました。よその学校の先生らが間を取り持ってくれはって、連盟の先生は「ほんなら運営委員会で諮ってみます」と約束しはりました。

 正直期待はしてませんでした。三年間、かたくなに審査基準を問題にもしてけえへんかった連盟です。そんな簡単に変わるとは思うてません。

 せやけど「やっぱり審査基準はもてません」の答えは返ってくると思うてました。総会でも、地区総会でも「審査基準を持ってほしいという要望がありました」の一言もありません。先輩が精一杯の勇気振り絞って言うたことが、全く無かったみたいにスルーされてしもたんです。
 もう、うちらは絶望してます。連盟は有ったことも無かったことにしてしまう組織です。お願いです。生徒を人間として扱うてください。
見解の相違で逃げんといてください。

 うちらは、こんなことまで知ってます。

「貴重なご意見ありがとうございました」学校の外からクレームの電話があったとき、おだやかに話を打ち切るための常套句です。
 そんな常套句さえ、うちらにはかけてもらえませんでした。

「%&$#””~|\\&&!!?!:*+;‘@@##=|\\|||%%%$$$###!!」

 気持ちを正直に書いたら文字化けになってしまいました。やっぱりうちらの心の中は「先生は先生であってほしい」いう最後の気持ちがあります。

 今年の本選の審査員は三年前に真田山を落とした人が、また審査員です。何回も言いますが、この人は「作品に血が通っていない、思考回路、行動原理が高校生ではない」という講評で落としました。分かります、この講評?
 ほんで、うっとこを落としながら、合評会では、その審査を撤回した人です。再起用するんやったら、なんか説明と審査の改善がされんと納得できません。

 うちらは、三年前と同じ『すみれの花さくころ』を上演します。

 念のために言うときますけど、別にリベンジとか挑発とはちゃうんです。審査員が発表される前に、もうレパは決まってましたから。

 せめて「貴重なご意見ありがとう」ぐらいは言うて欲しいもんです。

文責 大阪府立真田山学院高校演劇部部長 三好清海(みよしはるみ) 
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大阪府立真田山学院高校演劇部公式ブログ・Vol・18『加盟校活動報告・4・大阪府立○○高校』

2014-06-26 08:44:38 | 小説4
大阪府立真田山学院高校演劇部公式ブログ 
Vol・18『加盟校活動報告・4・大阪府立○○高校』

      

 今日は府立○○高校にお邪魔しました。
 ○○高校は、戦後○○市に府立高校が一つもないことを地元の人らが心配しはってできた、府立高校としては戦後できた学校です。
 ○○高校は、連盟が、まだ研究会というてたころに、副会長さんが出た学校でもあります。

 ※:浪速高等学校演劇研究会=連盟の前身で、運営は全て生徒でやっていて、会長は酒呑童子高校の校長さんでしたが、実際に組織を動かしていたのは、生徒だけで行われる総会の選挙で選ばれる副会長以下の生徒の役員でした。加盟校は50校ほどでしたが、当時の大阪の高校は今の半分ほどしかなかったんで、組織率そのものはあんまりかわりません。

「先生は、地区の役員校やってはるんですね?」
「はい、ちょっとでもお役にたてたらと思いまして。また、勉強にもなりますからね」
「失礼なこと言うようですけど、建前やのうて本音のとこ聞かしてほしいんですけど」
「本音いうと?」
「先生とこ、三年前から部員ゼロでしょ。せやのに連盟に加盟してはるのはなんでかなあと、不躾ですけど思うんです」
「噂には聞いてたけど、真田山は直球やなあ……」

 この間、先生は怒りもせんと、静かに言葉を選んではりました。

「難しい言葉で言うとアイデンティティーかな」
「あ、レーゾンデートルのことですね」
「あは、君らの方がむつかしい言葉知ってるねえ(笑)」

 ここで、また先生は黙った。思慮深い印象が強まる。

「むかし、高校野球の大阪大会で、応援賞もろたことがあるねん。野球部そのものはボロボロの一回戦負けやったけど、応援に来る生徒の数やら、底抜けに明るい応援が評価されてね。うちの生徒は、そういう可能性を持ってると思うねん。もちろんホッタラカシでは出てけえへん。衝動としては持ってると思うねん。その衝動に形と方向つけてやるのが僕の仕事やと思うてる」
「で、生徒がいてへんまま連盟に入ってて、その衝動に形と方向つける道はみつかりました?」
「こんなこと言うたら、年よりくさい思われるかもしれへんけど、こういうことは、直ぐに成果が出てくるもんとちゃうと思うねん。何年かやってるうちに身についてくることもあると思う。じっさい連盟の会議やらコンクールの仕事してて、アドバイスしてもらえることもあるしね」
「先生とこはθ地区やから、御手毬高校とか、京橋学院高校が実力校やと思うんですけど、そういう学校から得られることがある言うことですか?」
「そういうとこからもあるし、他の学校見て参考になることもあるよ」
「失礼ですけど、具体的には、どんなとこですか?」
「……地区は違うけど、連盟の運営委員長の先生の不屈の精神は見習うとこがあると思うた。うちと一緒で部員ゼロからの出発やったけど、夏の間に東京まで生徒連れてワークショップ受けに行って、そこのメソードで、そこそこの芝居作ってコンクールに出てはった。僕は面白い芝居やと思うたけど」
「あ、あれあたしらも観ました。感想は先生とはちがいますけど」
「どんな感想持ったんかな?」

 ちょっと言葉に詰まったけど、言いかけたことなんできちんと言うのが礼儀やと思うた。

「あたしらは、あれは芝居やないと思います。あれは、役者に一定の条件だけ与えといて即興で反応させるエチュ-ド、あるいは、エクササイズです。野球の試合でピッチングやら守備練習見せてるようなもんで、あれは観客に失礼やと思いました。ほんで、舞台に立った子らも、兼業部員……最初は、それでもええと思うんですけど、あの子らコンクール終わったら、さっさと演劇部辞めてしもて、実質は、現在部員ゼロやと聞いてます」
「手厳しいなあ(笑)」
「ちょっと話題は変わりますけど、先生は夏の講習会行かはるんですか?」
「一応は、そのつもりやけど」
「あれ、役にたつと思います?」
「なんか、いちいち引っかかってんねんな」

 先生真顔になってきたけど、あたしは続けました。

「一日だけ運転の講習受けた人の運転する車に乗る気持ちになります?」
「ちょっと、問題のすり替えのように思う」
「先生は、社会科ですよね」
「うん、いま日本史Aと現代社会やってる」
「日本史の授業一年分を一日でやれ言われたら、どないです?」
「いや、せやから、そういうのと講習会はちゃうて」
「どないちゃいますのん?」
「一つは、大勢みんなでやることに意義がある。普段はしょぼいクラブでも大勢でやったら、目に見えへんエモーションを感じられる」
「それて、ほとんど宗教団体ちゃいます? 演技やら劇作は、ほとんどマンツーマン指導でやらんと身に付かへん言うのが、常識です」
「それはやな……」
「ひところ、日本中の学校で『宿泊学習』が流行りました。いま高校でやってるとこほとんどありません。時間と労力だけとられ、結局は一年の学年はじめの大事な時間を無理して、普段の生徒指導が疎かになって、宿泊学習で皮肉なことに生徒に乗り越えられて、手におえんようになるからです。連盟の講習会は連盟が連盟として機能してることを見せるパフォーマンスです。本気で育てよ思うたら、週に一遍でも集めて一年通して指導することです。連盟の中には気ぃついてる人もいてます。せやけど口に出しては言いません。自分で猫の首に鈴を付けるのは嫌ですから」
「君なあ……」

 もう止まらへん。

「それに、ホンマのとこは、連盟にそんな指導ができる先生が居てないからです。本選の芝居の出来見たら分かります」
「ほんまに、なんにも得るもんは無いと思うてんのん?」
「一つだけあります」
「なにや?」
「反面教師……です」

 内容を鑑みて、今回は学校名を伏せさせていただきました。

 文責 大阪府立真田山学院高校演劇部部長 三好清海(みよしはるみ) 
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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ劇評『チンチン電車と女学生』

2014-06-23 10:52:19 | 評論
タキさんの押しつけ劇評
『チンチン電車と女学生』



 これは悪友の映画評論家・滝川浩一が身内に流している劇評ですが、もったいないので転載したものです。


映画ではありません。大阪の劇団・往来の舞台です。

 ベースは戦時下の実話、男達が次々徴兵される中、広島電鉄の車掌(後に運転手)の役目を担うべく、一日の半分を女学校、残り半分を勤労に当てる目的で集められた少女達の物語。
 今日が最終日だったので、しばらく再演は無いと思いますが、もし、今後“劇団往来/チンチン電車~”と見かけたら、絶対観劇にお出かけ下さい。おわかりの通り、反戦芝居ではありますが、一切の政治・イデオロギーを超えて、普遍的な、極自然な人間模様を描いた芝居です。
 私、演出の鈴木氏が「若いキャストが戦時下の様子が解らず、今一、リアルにならない」なんぞとこぼすもんで、うちの店で飲みながらウーダラカーダラ喋っておりましたら「今のそれをみんなの前で喋ってくれ」との無茶振り。「アホか」と言いつつ、結局、ウダウダみんなの前で喋ったのが公演の一週間前、そんな縁で本日ようやく見てまいりました。

 2幕 全19場、途中インターミッションを挟んで3時間弱の音楽芝居(ミュージカルとは違います)
感想一言で見事。私のウダウダ講演なんぞ全く必要なかったと、芝居を見ながら勝手に赤面していました。みんな、戦時下の若い男女として、厳然として舞台上に顕在し……こんなもん、公演一週間前にちょっと話を聞いたから出来るものではありません。
 この芝居の初演は4年前、当時のメンバーが今回どの位残っているかは知りませんが、誠に見事な舞台でした。
 私、今回が初見でしたから、講演するについて脚本を読ませてもらいました。 本読みの段階で、すでにウルウル来る程、良く出来た台本でしたが、舞台はさらに上を行きました。 予め本読みしていましたから耐えられましたが、これがなんの予備知識なしに見ていたら、冒頭一曲目の歌でボロボロに泣いていたはずです。事実、私の周りのお客さんは、その一曲目でハートを鷲掴みにされていました。
 なんのストーリーも始まっていない、まさに冒頭の一曲目です。歌う彼女たちの内実が現れていなければあり得る反応ではありません。これはある種の奇跡であります。
 講演させてもらった縁で打ち上げにも参加、キャスト以外の人達と話しましたが、皆さん同じ感想でした。芝居は“ナマモノ”ですから、一回一回出来は違います。公演最終回とあって、最高の舞台に立ち会ったのかもしれません。それはそれで、得難い経験をしたと思います。戦時下の若者たちの苦悩と、厳しいながらに抱く希望。国の情勢は日増しに落ち込んでいく日常、それでも懸命に前を向いて生きぬこうとする姿は問答無用に感動的です。

 そんな日常、昭和20年8月6日 午前8時15分……セミの声がうるさい、良く晴れた広島の青空に、いきなり、もう一つの太陽が現れるのです。
 人々のいかなる想いも営みも……一発の原爆で蒸発し、吹き飛んでしまう。
 絵空事ではなく、その現実が舞台上に再現されていました。
 私達日本人は、未だに先次大戦を総括していません。総括したからええっちゅうもんでもありませんが、例えばアメリカなんぞは勝った立場で実に都合の良い総括をしています。しかし、今の日本人のように思考停止しているのは論外です。物事を相対化するつもりはありませんが、“絶対的評価”なんぞ有る訳も無く、時代の要請、民族としての要請その他、時と立場で結論は違うでしょう。しかし、この事を考え続ける姿勢は持ち続けるべきだと思います。
 偉そうにブッとりますが、私だって人様に言えた義理ではありません。そんな自分の無様を思い知らされる芝居でも有りました。 本作、中心は広島電鉄の作った女学校に通いながら働く少女たちの日常がメインではありますが、その家族、学校の先生たち、市井の人々、これら総てが世界を形作っています。今回、ヒロインの淡い恋心を向けられる兵士の役を演じる加藤義宗(加藤健一の息子さん)が、オーバーに叫ぶ事なく、かつ、全くブレない演技で好感。父ちゃんに似ず、顔が小さく、足の長い今時の若者。おおよそ戦時下の日本男児にはあるまじきスタイルながら、そんな事は全く感じない。それを言い出せば女の子たちもみんな今時の可愛い女性たちながら、戦時下の少女以外に見えない。
 久方振りに「下手の横好き」の芝居心をくすぐられました。もし、可能なら、戦時下 物資横流しで儲けるオッサン(そんな役は登場しない)の役ででも参加したいものであります。 現実、そんな贅沢な時間の持ち合わせは有馬線が、その前に瞬殺で演出・鈴木氏に拒否されるでしょう。 キャスト70人(ワオ!!!)スタッフ合わせて100人以上の大所帯、スポンサーが付かなければなかなか再演は難しいでしょう。これまで大阪と広島だけでの公演ですが、心から日本中で見て欲しい作品です。どなたかスポンサーに心当たりがおありでしたら、紹介してあげて下さい。



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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評『300Ⅱ』

2014-06-23 10:38:07 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評
『300Ⅱ』



 これは悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に身内に流している映画評ですが、もったいないので転載したものです。


早朝 1回目上映だったせいもあるだろうが、正直眠たい。

 全く人間がいない。ほぼ全体CG画面なのは前作と一緒なのだけど、今作は、「ああ、CGや」という風に見えてしまう。
 前作は、フランク・ミューラーのグラフィック・ノベル(要するに漫画)を映画化するスタイルなので、よりCG合成を意識して良さそうなのだけど(実際そう思ったけど)、現実には今作の方がしらける位CGアニメに見えてしまう。
 今作には、ミューラーの原画がなく、構想(後に脚本になる)のみがあり、モデルが無かったので画面は完全に映画のオリジナル。 前作は原画の決定的シーンを忠実に切り取ってあったのだが、それが何らかの化学変化を受けてリアルに歴史(神話とも言える)を見せていた。この場合の化学変化とは、役者の成りきりと人物が丁寧に描かれていた事に拠るものです。

 前作テルモピュライの100万対300の戦いは多分に神話的要素が強いのですが、本作に描かれるテルモピュライに先立つ事10年前のマラトンの戦い(第1回ギリシャ対ペルシャの戦い、ギリシャ側の勝利に終わり、戦勝報告を兵士が走ってアテネに届けた。このマラトン~アテネ間の距離が42.195㎞で、現代のマラソンの起源に成っている)とテルモピュライと同時期にあったサラミスの海戦を描いています。ヘロドトスの「歴史」にも描かれ、人物の背景も解説されている。ギリシャの将軍テミストクレスも、元はギリシャ人でありながらペルシャ艦隊の一翼に属するアルテミシアも、勿論クセルクセス王も実在の人物である(マラトンの指揮官は別な将軍だったが、本作ではテミストクレスになっている) 」
 テミストクレスは貧しい家から這い上がるようにして市民政治家になった人で、スパルタのレオニダス王のような専制君主ではない。彼は、いかに動くかを市民議会の決定に委ねざるを得ない。ここにテミストクレスの苦悩とドラマが在るはずなのですが、映画は非戦・開戦の対立をちらっと見せるだけで踏み込まない。テミストクレスの周囲の人物にも説明がない。 だからギリシャ側の人間が誰一人浮かび上がってこない。
 逆にアルテミシアは、非常に勇猛な女性であったようだが、本作ではまるで魔女で、クセルクセスは彼女の操り人形のように描かれている。
 ドラマの深度が浅くなっているばかりか、クセルクセスの人物像までが浅はかになってしまっている。画面はスプラッタホラーかと思わせる程 血みどろではあるが、人物が見えにくい為、まるでゾンビ対ゾンビの殺し合いの雰囲気、感情移入する対象が存在しない。
 歴史とはいえ、紀元前480年のお話、半分神話の世界ではあるので、映画的脚色も許せるとは思うけど、もう少し人間を描くべきだった。 画面にも“??”と思わせるシーンがたびたび有って、後進の指示が出ているのに櫂が全く動いていなかったりするのは興醒め。
 海戦のシーンにしても、この繰船で、どうやって敵のド#☆◆○に突っ込めるのか解らない。どうせCGならもっとスマートに見せられる筈である。
 てな訳で、迫力の映像ではあるが真価を発揮出来ていないと見える。“ノア”にも共通の問題で、ドラマのどこに重点を置くのか……最重要視点は一つに絞り込んでおかないと、散漫な印象の作品になってしまう。
 これらの問題が脚本にあるのか編集にあるのかは不明ながら、現実にグラフィック・ノベルが無いのだから罪の有りどころとしては半々ですかね。
 フランク・ミューラーは現在のヒーローコミック映画全盛の立役者ですから、年がら年中製作現場に呼ばれるらしい。その為、本業のイラスト・ストーリーがお留守になるらしい、痛し痒しですね。本作の為には、イラスト原作があった方が良かったと思います



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大阪府立真田山学院高校演劇部公式ブログ・Vol・17『今日この頃』 

2014-06-22 17:11:00 | 小説4
大阪府立真田山学院高校演劇部公式ブログ
Vol・17『今日この頃』 
 
       


※台詞は入ったんだけど

 稽古は着々……と言いたいんですけど、なかなかです。
 なかなかええ、とちごて、なかなか進まへんの「なかなか」です。日本語はむつかしい。

 配役は以下の通りです。

 咲花 かおる    三好清海 (二年:部長・演出)
 畑中 すみれ    九鬼あやめ(一年:舞台監督)
 由香・看護師    大野はるな(一年:音響・その他)

 本は『すみれの花さくころ』 ネットで、これに大橋むつおと入れると出てきます。

 えらそうや思うたら堪忍してくださいね。いわゆる高校演劇のレベルにはなりました。
 台詞も入ったし、立ち位置や、おおよそでとりあえずの動き(ミザンセーヌ)は決まりました。挿入曲も一応覚えました。文化祭のクラス劇やったら、もう完成です。そやけど演劇部は、ここからです。
 泣き笑いなんかの喜怒哀楽が、まだまだ引き出し芝居です。一応役者としての基礎練習はよそよりやってるんで、普通には芝居できます。役者の第一条件は、自己解放です。
 自己解放とは、芝居に合わせて自分の感情が自在に操れることです。一年の時に徹底的にやらされました。やり方は簡単。過去の体験で、悲しかったことや、辛かったことを再現するんです。演じるんとちゃいます。気持ちを表現するんとちごて、その時の物理的な記憶を思い出すんです。
 うちは、お婆ちゃんが認知症になって、あたしのことを忘れた時のことをおもいだしました。病院のたたずまい。病院独特の奥行きの在るエレベータ、消毒薬と、そこはかとなくしてくる病人さんらのニオイ。夏やったんで、エレベーターが開いたとたんに入ってきた冷気。それも足元やのうて、首筋で感じたこと。病室のドアが最初はちょっと重たいけどスルっと開く感覚……ほんで、お婆ちゃんが「こんにちは」と言うた時の他人行儀な響き。他人に対する愛想のよさ……この時の笑顔が、お婆ちゃんが亡くなったとき初めて見た死に顔と重なって、あたしの記憶は一気に、お婆ちゃんが死んだ日にとんでしまいました。どっと悲しみが溢れてきて、お通夜、葬式、火葬場、骨あげ、あたしはパニックになりかけました。
 この練習は、メソード演技の基礎です。ただ、レッスンの素材に使う思い出は、3年以上経過してて、感情の崩壊をおこさん程度のもん。これが原則です。うちは、お婆ちゃんが亡くなったばっかりやったんで、記憶が、そっちに引っ張られてしもて、まだ生傷のお婆ちゃんの死を思い出してしもたんです。
 そやけど、これであたしは自己解放を覚えました。

 しかし、役者は、これではあきません。役者個人が自分の感情を見せたら演技とちゃいます。
 役者は、その役に合うた感情表現ができんとあきません。たとえばAKBの高橋みなみと指原莉乃とでは、泣き方も笑い方もちがうでしょ?

 今、あたしは、この段階にさしかかってます。役の肉体化と言います。かおるというのは昭和20年に17歳やった女学生です。女と言えど人前で泣いたり笑うたりしたらあかんと言われてた時代です。ほんで宝塚を目指すほどの子ぉですから、姿勢もええし、歌もうまいし、抑えようとしても出てくる自然な明るさ……なかなかですわ。
 チェ-ホフやったかスタニスラフスキーやらが言うてました。本を書くのも演技するのも森の中を歩くのといっしょやて。
 一回通っただけやったらあかんのんです。毎日森を歩いて、森の中の最高の場所と道を探します。最初は、毎日違う道を歩いて迷うこともあります。適当に見つけたロケーションで満足することもあります。それでも繰り返し歩いて、ほんまに、その人物や戯曲が求めてる道を探ります。

 今は、暗中模索です。ネットで検索して昔の遊びなんかしたりしてます。お手玉、福笑いなんかにも挑戦しました。あと、かおるが死んだんは3月10日の東京大空襲なんで、そのことも調べてます。
 で、気ぃついたこと。一回の爆撃で一番犠牲者が多かったんは、原爆と違うて、この東京大空襲やったんです。一晩で10万人亡くなってます。東日本大震災の三倍です。で、これを企画したのがカーチス・ルメイいうアメリカの将軍で、皮肉なことに、この人は航空自衛隊の創設にも力を尽くした人で、日本は大勲位菊花賞いう最高の勲章をやってます。この勲章は天皇陛下が直接手渡すことになってるんですけど、昭和天皇は、直接手渡すことだけは断らはったそうです。むろん外交上失礼になれへん理由をつけてですけど。

 まあ、今は、こんなとこです。役作りは、毎回のことやけど、大変です。まあ、四か月あるから、どないかなるでしょ。こういう楽観も役者には必要です。

※連盟の夏の講習会
 うちらは行きません。芝居は一日二日の講習なんかで身に付くもんと違います。自動車の運転に例えたら分かると思います。たった一日の教習で免許とった人の車に乗せてもらおと思います?
 ほんで、これはうちの中でも整理ついてないんですけど、今度の講師は、三年前に真田山を理不尽な理由で落としときながら、合評会では、その審査内容を撤回した人です。あの時の先輩らの気持ちは受け継がれてます。連盟の先生らは、こういうとこに心配りがありません。顧問の貴美先生も「組織的に総括せんままに、同じ審査員使うのは問題や」と言うてはります。
 そうなんです。この人は、また本選の審査員をやらはります。で、うちらは、その時と同じ芝居を持っていきます。

 ああ、どないしょ!?

 文責 大阪府立真田山学院高校演劇部部長 三好清海(みよしはるみ) 
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大阪府立真田山学院高校演劇部公式ブログVol・16『臨時増刊号』 

2014-06-20 07:38:46 | 小説4
大阪府立真田山学院高校演劇部公式ブログ
Vol・16『臨時増刊号』 
 
         


 昨日のVol・14は意外に反響が大きかったので、臨時特別号です。

☆反響のコメントなど

 実は、デリケートな問題なので、顧問の淀貴美先生からは書くなといわれてたんですが。概要だけでも書いておきます。学校訪問で行った誠学園や谷町高校でも話題ににはなってたんですが、あえて書かなかったことです。それほどデリケートかつ連盟にとっては、根本的な問題なんで、あえて要目だけでも書いておきます。みなさんにも考えていただけたら嬉しいです。

☆創作劇の偏重

 大阪は、90%以上が、顧問や生徒などによる創作劇がコンクールに出てきます。これは連盟が創作劇に特別な扱いをするからです。
「既成脚本と、生徒が一生懸命創作してきたもんを同列にはあつかえません」という連盟の公式見解による影響です。
 うちらは、坂東はるか先輩のころから、この風潮には反対してきました。谷町の先生なんか「上演本探してはいてんねんけど、どうせ落とされることが分かってると気がなえてしもてね……」と、苦笑いされながら言うてはりました。
 前号を読んだ人には分かると思うんですが、谷町の先生は「野村萬斎のマクベスなんかええな」と言うてはりました。やっぱり手に合うたものを探してはいてはるんです。これを、実際の上演にまでいかさへんのは、連盟の『創作至上主義』です。
 うちらは既成の『すみれの花さくころ』をやります。まっとうな芝居を、高校生にやらせるためには、創作優遇主義、どないかせんとあかんと思いました。

☆審査基準

 二校ともそうでしたが、連盟の審査には不信感を持ってはりました。コンクールの2回に1回は「あれ?」と思わはるそうです。むろんうちらもそうです。創作劇の偏重との相乗効果で、連盟の審査に疑問を抱かせてる大きな問題になってます。審査基準がないと、極端な場合「裏で、なにかあるんちゃうか?」と勘繰られてしまいます。実際学校訪問で行った学校の先生は「一つの地区で、同じ学校が四半世紀に渡って、地区で最優秀とんのはおかしいで」とおっしゃってました。やっぱり審査基準を作って、透明性のある審査が望まれています。

☆今年の審査員

 本選の審査員のお一人は、三年前に真田山を「作品に血が通っていない、思考回路・行動原理が高校生ではない」いうわけ分からへん理由で落としておきながら、合同合評会では、レジメで、その審査を撤回した人です。この人を再び使うんやったら、それ相当の説明が必要です。
 三年前は落とされましたが、東京のNOZOMIプロのディレクターは、ちゃんとDVDの記録を観てくれはって、坂東先輩がプロの女優になるきっかけになりました。その結果から見ても、審査はおかしいです。個人名はひかえますが、連盟は、この疑問と、三年前の誤審については釈明し、審査員の人選を再考すべきやと思います。

 では、もう学校に行く時間なんで、失礼します。

 文責 大阪府立真田山学院高校演劇部部長 三好清海(みよしはるみ) 
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大阪府立真田山学院高校演劇部公式ブログVol・15『加盟校活動報告・3・大阪府立谷町高校』

2014-06-19 06:51:42 | 小説4
大阪府立真田山学院高校演劇部公式ブログ 
Vol・15『加盟校活動報告・3・大阪府立谷町高校』
        


☆今回は近所の府立谷町高校にお邪魔しました

 旧制女学校が、戦後の学制改革で新制高校になった由緒ある高校で、昔は府大会で優勝したり、近畿大会にも出場経験のある伝統校でした。それが今では、兼業部員が一人だけ。で、この部員は帰宅部と兼業。
 そう言って笑わせてくれたのは、顧問の矢部先生。

 先生自体、正式には放送部の顧問で、演劇部は副業。連盟には演劇部として登録してるけど、校内の扱いは同好会やそうです。

 むろん好き好んで二つの顔を持ってるわけやないんで、演劇同好会がクラブとして、三人以上の部員は必要という実態を失って長いからです。
「コンクールは、三年に一回ぐらいかなあ……」
 寂しそうに先生は言わはります。
「今年は出ますよってに」
 帰宅部兼業のH君がいう。
「まあ、あてにせんと待ってるわ」
「一緒にやってくれる奴が、もう二人ほどおったらね」
「そんな言い方せんでもええがな。芝居いうのは、舞台は一人でも、やっぱり照明やら音響のスタッフはいるさかいな」
「まるっきり一人で演れる芝居もありますよ」
「知ってます。そやけど、稽古場にいっつも一人言うのは、やっぱりね……」
 H君は俯きながら、そない言うた。
「こいつだけが悪いんやないねんわ。やっぱり、条件整備いうのは顧問の仕事やからね。昔はほっといても演劇部は人が集まったけど、今はこっちから声かけてもあかんあらね」
「中学校で、演劇部が無いようなってしまいましたからね」
「この四月はHもがんばってくれたんですわ。入学者の名簿から演劇部出身の子探したんやけど、どうもね、今年は見事に一人もいてなかった」

 高校演劇だけとちごて、中学校の演劇部が壊滅状態いうのが改めて実感。

「もし、何人か居てたら、やってみたい芝居とか無いんですか?」
「うん、野村萬斎がやってた5人だけでやる『マクベス』なんかよかったね」
「先生、5人なんか、絶対不可能。それに、あれマクベス以外は、みんな一人で何役もやらならあかんさかい、宇宙的規模で無理」
 
 そこで一回話題が途絶えてしもた。わざわざ来た甲斐ないので、他のことに話題をふってみる。

「ラノベなんか読まはります?」
「うん、多少はね。『はがない』とか『おにあい』とかね。映画も観に行ったし。

 ちょっと解説『はがない』とは「僕には友達がすくない」の略。『おにあい』は「お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ」の略。

 けっきょく、後半はほとんどラノベの話で盛り上がっておしまい。あたしらはラノベみたいな芝居でもええと思う。とにかく、面白いと思う着想を芝居にする力。それが必要。
「近所やねんさかい、コンクールなんか二校合同で出られたらええのにな」
 矢部先生の苦し紛れは、可能性やとおもいました。管理やら責任の問題はあるけど、野球部なんかでは複数校が合同で試合に出ることもあるらしい。連盟の規約を変えならでけへんけど、一つの可能性やと思うて帰ってきました。

 ちなみに、このブログは朝の5時から起きて打ってます。昨夜のうちにやっといたらよかったんやけど、台本読んでたら寝てしまいました。次は、うちらのクラブのこと書きたいと思います。

 文責 大阪府立真田山学院高校演劇部部長 三好清海(みよしはるみ)
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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評『ノア~約束の舟』

2014-06-15 07:20:42 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評
『ノア~約束の舟』



 これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に身内に流している映画評ですが、もったいないので転載したものです。


ようやく見られました、本作は製作段階から賛否両論、クランクアップ後、ヴァチカンに推薦を頼みにいって断られている。

 ただ、プレミア公開後は賛否の声が止み、静かになった。売り上げは低めのスマッシュヒット程度、製作費が不明なので採算が取れているのかはよく分からない。
 画像は良く出来ているとは思うが、どうも盛り上がりに欠ける。世界観が解りにくいのが一因だと思う。
 これは、アメリカ人も同じように感じたんじゃないだろうか。
 物語は、キリスト教信者でなくとも皆さんよ~くご存知のお話。アダムとイブの楽園追放後、大地に満ち溢れた人間達のあまりの罪深さに神は深くお怒りになり、人間を滅ぼしてしまおうとされた。神は“正しき人ノア”に方舟を造り、全ての動物をヒトツガイずつ守れ、地上を水で満たし方舟に乗るもの以外は総て滅ぼしてしまうと告げられる。さあ、ここで何故、人間以外の動物がヒトツガイだけなんだとはお聞き下さるな、一応答えは持ってますが、説明しだすと膨大になります(だって、魚は全部助かる訳ですし…)
 ノアが人々に笑われながらも指示された通りの大きさの方舟を造りあげると、ヒトツガイづつの動物達が集まって乗り込んだ。それと同時に天の水門が開き滝のような大雨が降り始め、地上は間もなく水に覆われ沈んでしまう。雨は40日降り続けてようやく止んだ。ノアは烏を放って大地の様子を探るが、烏は何の手がかりも持たず帰って来る。
 続いて鳩を放つと、鳩はオリーブの小枝をくわえて戻った。やがて水は引き、方舟はアララト山(アゼルバイジャンに本間にある山)山頂にたどり着いた。世界はそこから再生されて行った……と言うお話であります。

 この話は旧約聖書の創世記の始めの方に有ります。僅かなページであまり詳しい記述はありません。洪水神話は聖書以外にも在りまして、一番古いのはメソポタミアのギルガメッシュ神話です。旧約聖書の世界はメソポタミアと重なっており、“ノアの方舟”はこのギルガメッシュが下敷きだと言われています。 面白いのは、ニューギニア・南太平洋にも、殆ど同じ神話が有り、この神話では3羽目の鳥を放ったが、その鳥は帰って来なかった。確か、3羽目の鳥が新天地への案内人を連れて来る筈で、舟を造った老人は森の中に姿を隠し(死んだという意味)、今も鳥の帰りを待っている。このニューギニアの神話を、現地に伝道に入った伝道師が聞いてビックリしたそうであります。
 奥地に入ってくる軽飛行機から食料やら農耕道具やらが出て来るので「鳥が帰ってきた」と騒ぎになり、聞きただした所、この神話を聞かされたと言われています。この話は起源が解らないので、どの位前から語り継がれているのか不明です。

 閑話休題、映画に戻りまして、画面には全地球を台風のような雲が無数に覆っている画が映し出されています。これで、全球大雨になったというわけですね。
 旧約聖書の記述だけではプロットにもならない為、聖書以外の外典(聖書には採用されなかったが、正当とされる文書)や異端とされる文典(死海文書など)やキリスト教以外の文典にまで渉猟してストーリーを組み上げたようです。この辺りが、本作を否定的に見る人々の根拠でしょう。
 聖書には登場しませんが、ノアの祖父・メトセラやカインの末裔が王として出て来ます。この二人が極めて大きな意味を持っています。
 無宗教の人間が“信仰”を理解しにくいのは“神の意志”をいかに理解するのかっていう所につきます。 端的に言って“神の意志”は、無条件に従うものであって理解するものではありません。エデンの園で、蛇にそそのかされて“知恵の実”を食べなければ、人間は汚れを知らずに生きられたのですが、半端に知恵が付き、半端に神に近い存在になってしまったが故に苦難の人生を生きる存在になってしまった訳です。
 カインの末裔達は、この事に対して怨み骨髄(彼らにはもう一つ怨みが有りますが)「神の助けなどいらない」と叫ぶ。
 ただ、本作では神を否定しているのではなく、絶えず呼びかけているのに応えてくれない神に絶望している設定になっている。後半、このカインの末裔たる王が、イブに対する蛇のように、ノアの次男ハムに語りかける。実は、ノアは誰にも語らなかったが、ある重大な決意を秘めており(これも聖書には無い設定)、これを実行するか否か、王の囁きはこの点に関して重大な意味を持っています(あ~~~イライラする! ノアの秘密は重大伏線だから書けない! だから遠まわしにしか書けない。)
 本作では、神の意志は声として聞こえるのではなくビジョンとして見える事になっています。
 この指示にいかに従うか、ここにノアの人間としての懊悩が現れてきます。聖書にはノアの懊悩など出てきません。
 本作の弱い所は、この物語を相対的に分析しすぎたという所に尽きます。絶対的な神の物語を、人間の視線で再構築した、要するに滅ぶべき人間の言い分に幾らかなりとも正当性を持たせたという事です。
 ご存知ない方には誤解があると思いますが、この旧約聖書の世界は厳密にはキリスト教ではありません。この世界はユダヤ教世界であり、キリスト教は形としてはユダヤ教の一派です。ちなみにイスラム教もユダヤ教の分派です。だから旧約聖書に登場する預言者はイスラムにとっても預言者ですし、教典の中には創世記も出エジプト記も、その他の章も含まれています。
 本来は人間が発音出来ない名前なのですが、それをヤハウェと呼び、エホバと言い、アラーとも表す。これらは総て一つの“唯一神”“創造主(CREATER)”を現しています。
 本来、唯一神は厳しく非情なものです、しかし、厳しいも非情も人間から見ればの事であって、当の神様にしてみれば関係ない話。キリスト教も、この厳しさや非情さを受け継いではいますが、優しい愛の宗教とも呼ばれています。それは、キリストが人の罪を許す為、自ら十字架にかかった。その大きな愛が教えの中心にあるからです。
 映画は、この古いユダヤ教(もっと厳密に言えばプレ・ユダヤ教)の厳しく救いの無い(人間からすれば)話に“愛の救い”を織り込みたかったのかもしれません。
 だから、厳しい宗教映画にも出来ず、まさか単なるデザスターにもファンタジーにもするわけにいかず。人間ドラマを全面に押し出す訳にも行かなかった。面白おかしく作っているのではなく、大真面目に苦闘した跡は見てとれますが、あまりに多角的な視点から描こうとしたがため、せっかくの作品の中心が見えにくくなっています。キリスト教徒たる人々であろうとも世界観をつかみにくいだろうと思うのは、この事情からです。

 ノアの方舟は、あまり映像化されていません。大昔にあるのと、80年代「天地創造」の一部分、後はショートフィルムが有るくらいで、テレビドラマに一本(ジョン・ボイトがノア……やったと思います)ありましたね。あんまり覚えていないんですが、悪魔が小舟に乗って方舟をつけまわすエピソードがありました。
 それにつけても、毎回思うのは“方舟”があまりに立派に“船”の形をしてるんやなぁと言うことで、素直に聖書を読むと、縦・横・高さの寸法しか出てきません。竜骨をどうせいの、舵はどうだのの指示はありません、要するに馬鹿でかい、まさに“箱”を作れといわれているとしか思えない。 今作は、まさに四角い箱を作っています。これには唸りましたねぇ。しかも、実寸通りに、全長だけは3/2のセットを組んだそうです。その分リアルな画が撮れています。
 動物達は一部を除いてCGですが、そらそうですわな。動物っちゃ、膨大な数の彼らをいかに40日間養ったのかについても聖書には記述がありません。この解決策にも唸りました、なぁ~るほどね、そうきますか。
 ちょっとけなした評価にはなってしまいましたが、駄作ではありません。それぞれに感じる所も意味も違うとは思いますが、必ず誰にも見るべきシーンがあると思います。ハリー・ポッターのエマが、ノアの養女であり、長男セムの妻として方舟の中で子を産みます。ああ、あのハーマイオニーが……感慨ひとしおでありました。 それと、本作にはヤハウェもエホバも、もっと言うならGODという単語も出てきません。終始ノアは“CREATER”と呼んでいます。これに翻訳の戸田さんは「神」と言う訳を当ててはりました。“創造主の創造物”っちゅうセリフがわりと多いですから「神」とする方が収まりはええんですが……まぁ、やめときましょう。これをいいだすとまた長い話になります。
 お薦めか否か……スケールもスペクタクルもありますからお薦めいたします。いつもは、見ながら小理屈つけなはんなと言ってますが、本作の場合は逆で、映画の中の理屈をあまり気にしないで下さい…と、申し上げておきます。

 長々のご精読、感謝感激〓


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大阪府立真田山学院高校演劇部公式ブログ・Vol・14『加盟校活動報告・2・誠学園高校』

2014-06-14 16:41:06 | 小説4
大阪府立真田山学院高校演劇部公式ブログ
Vol・14『加盟校活動報告・2・誠学園高校』 
 
      

☆誠学園高校にお邪魔しました

 誠学園高校は、大正時代から続く伝統私立高校です。顧問の織田先生は連盟の運営委員もお勤めになられ、校内では学年主任もやっておられる忙しい先生です。そんなご多忙な中、わたしらの演劇部訪問にも快く応えていただきました。

「お忙しいところ、お時間をいただいてありがとうございます」
「いや、あんたらこそ、うちみたいなとこに取材に来てもろて、ありがとう」
「先生とこは、部員いてはれへんのんですか?」
「いや、お恥ずかしいけど、今のとこゼロ。せやけど、コンクールまでには部員入れて参加しよ思うてます。ま、連盟の役員もやってることやし、辞めるわけにいかへんさかいね」
「先生の熱意で、引っ張って行ってるんですねえ」
「半分は、なんちゅうか生き甲斐やね。連盟の仕事はえらいけど、仲間の先生がいっぱい居てるし、こない言うたらなんやけど、毎年ゼロから出発するのんはスリリングでええもんやで」

 (笑)

「どんなふうにして、その都度部員を集めはるんですか?」
「一応は、新入生のオリエンテーションで演劇部の勧誘はやるんやけどね……」
「オリエンテーションとか、新入生歓迎会では、なかなか集まれへんでしょ」
「せやねん。おれが、もうちょっと若うてイケテたら、来るやつもおるんやろけどな。こんなおっさんではな(笑)」
「ほんなら、どんなやりかたで? 去年もたしか3人出てくる芝居やってはりましたね。なんかエチュ-ド発展させたような」
「あれは、演芸部いうのが別にあってね。あ、植物育てる園芸とちゃうほうの演芸。あそこの部員に声かけて、夏休み利用して東京までワークショップうけさせに行って、言われたように、エチュ-ドから膨らませてん」
「いっそ、その演芸部と演劇部の合併なんか考えられませんのん? 地方によっては『舞台芸術部』いうくくりかたしてるとこもあるようですけど」
「うん、一つの考え方やけど、僕は、やっぱり演劇部いうあり方にこだわりたいんや」
「なるほどね」
「それに、正直言うと、そういうくくり方したら、演劇部の方が飲み込まれてしまいそうな気ぃしてな」
「今、ああいうコント系いうか、演芸パフォーマンス系は人気も馬力もありますからね」
「ま、今年もいろんなとこに粉ふってがんばってみるわ。ところで真田山は、まだ既成脚本にこだわってんのん?」
「はい、大阪では不利やいうのは分かってるんですけど。基本は外したないんです。戯曲言うたら、吹奏楽のスコア(総譜)にあたるもんでしょ。スコアなんて、プロの作曲家でもむつかしいでしょ。吹部のコンクールなんかでも、新作は、なかなか古典を超えられません。せやから新曲に挑むとこは、作曲家の先生に自分らの演奏聞いてもろて、その長所やら特徴に合うた曲を作ってもろてるらしいです。むろん、そんな贅沢なことできるのは、一部の恵まれた吹部だけですけど。ま、とにかく自分らで作曲までやる吹部は考えられへんそうです」
「ま、せやけど、高校生やないと考えられへん芝居言うのもあるさかいなあ。僕は既成の本でプロの真似事するのは外れてるように思うねん」
「お言葉ですけど、それやったら吹部も軽音もプロの真似事になります。野球やらサッカーなんか、完全に大人と同じルールでやってますけど」
「まあ、見解の相違やね。お互い自分らのやり方でやっていこうよ」
「先生、連盟の役員してはるから、このさい聞いときたいんですけど。大阪は創作劇の方が有利やいうのはホンマですか?」
「有利いう言い方はそぐわへんなあ。借り物の既成脚本と、生徒やら顧問の先生が苦心して書いてきたもんには、それだけの評価をしたらならあかんと思うねんけど」
「コンクールに『創作脚本賞』がありますけど、『既成脚本選択賞』いうのんは考えられません?」

 (笑)

「まあ、冗談でもええんですけど、既成の脚本探してきて、自分らなりに咀嚼して、舞台化するのんは、チャラけた創作劇やるよりも、大変な努力がいると思うんですけど」
「まあ、お互い、それぞれのやり方でがんばろうや。ところで真田山は、どんなんが候補にあがってるのん?」
「あ、もう絞り切って稽古に入ってます」
「もうかいな!?」
「はい、そやかて、もう一学期も後半でしょ。残り4か月いうても、定期考査やら、検定とか、個人的な理由で抜けるのん考えたら、実質の稽古は3か月切ります。一日3時間の稽古として270時間。役の肉体化には、これくらいはかかります」
「ま、一つの考え方やな」
「でもね、先生。270時間言うたら、日数で、11日にしかならへんのですよ。ま、見解の相違やからええですけど、審査基準はどないなりますのん?」
「それは、残念やけど、無しやな」
「お言葉ですけど、先生、昨年度の最後の地区総会では、連盟の運営委員会で諮ってみるて言わはったんちゃいますのん?」
「諮った結果、いらんいうことになったんや」
「そやったら、総会で報告あってもよかったんちゃいます? なんかスルーされたような気ぃするんですけど」
「まあ、君らには言えん事情もあってな」
「大人の事情……いえいえ、冗談です。一回聞いてみたかったもんですから。ほんなら、今日は、どうもありがとうございました」
 
 ちょうど校内放送で先生を呼ぶ声。うちらは、それで失礼しました。お忙しい中、際どい質問にも答えてくれはって、感謝の一言です。

 文責 大阪府立真田山学院高校演劇部部長 三好清海(みよしはるみ) 
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大阪府立真田山学院高校演劇部公式ブログ・Vol・13『加盟校活動報告・1』

2014-06-11 18:01:08 | 小説4
大阪府立真田山学院高校演劇部
公式ブログ・Vol・13『加盟校活動報告・1』 
 


☆本年度加盟校確定       

 本年度加盟校が、連盟から発表されました。昨年は111校でしたが、今年は113校です。一昨年が112校でしたから、ほぼ横ばい状態と言えると思います……というのが、常識的な見方ですけど、あたしらは、統計資料いうのを、そのまま鵜呑みにはしません。

 加盟したということは、パソコンに学校に送られてきた書類に数字や必要事項を打ち込んで連盟にメールで送信、あとは加盟費の12000円を振り込んだ学校の総数ということで、実際演劇部としての実態があるかどうかというのは別問題やし、連盟も、その実態の検証はしてません。
 そやさかいに、コンクール参加校が、加盟校数と一致したことはありません。去年は111校の加盟校で、コンクールに参加したのは89校で80%の参加率です。実数では21校の学校が加盟しながら、コンクールに参加してません。

 これは、何を意味してるんでしょうか?

 加盟時から、あるいはコンクールの時期にクラブの実態がないクラブがあるということやと思てます。東京の演劇部仲間に言うと「最初から、コンクールに参加する意思のない学校があるんじゃない?」と言われました。
 東京と大阪は、文化が違うなあと実感しました。

 余談ですけど、東京は外国です。タヌキうどん言うたら、大阪ではきつねうどんの蕎麦バージョンのことですけど、東京は素うどん(東京ではカケうどん)に天かすがはいってるもんで、大阪ではハイカラうどんて言います。冷たいコーヒーはコールコーヒー、アイスコーヒーで、けしてレーコとはいいません。東京の喫茶店で「レーコ」て言うたら「あたし愛子ですけど」いうウソみたいな話があります。
 エスカレーターは右側を空けるので、大阪の人間は戸惑います。
 ささいなとこでは「チャリンコ」が通じません。「チャリ」です。ついでに名古屋は「ケッタ」で、もう完全に外国。それから東京の人間が相槌に使う「そうなんだ」は、あたしらには冷たく感じます。逆に、大阪の「うっそー!」いうのはちょっときつく感じるとか。
「直す」は完全に通じません。クラブが終わって「机なおしとくように」て言われたら、東京の9割は「机壊れてませんけど」になる。
 二人称の「あんた」はとても見下した言い方に聞こえるようで、あたしは東京の子ぉには使いません。

 ま、とにかく、大阪で連盟に加盟して、コンクール目指せへん学校なんか考えられません。ちゃいます?

 ちなみに、東京の加盟費は7000円です。大阪は12000円。知ってました!? 大阪の人間がほとんど東京の倍の加盟日払うて、コンクール参加を目指さへんいうようなモッタイナイことはしません。
 なにが言いたいかというと、連盟に幽霊加盟校があるいうことです。クラブに幽霊部員が居てるのといっしょです。

 ほんなら、なんで幽霊加盟校があるのかというと、顧問の先生の熱い気持ちと都合からです。ちょっと信じられませんけど、役員やってはる学校の演劇部が部員ゼロいうとこもあります。連盟で重責を担ってはって、連盟に加盟せんわけにはいきません。先生もしんどいもんです。
 それから、コンクールの時には、なんとしても部員を、たとえ兼業部員でもええから、かき集めて創作劇でっち上げて……すんません、工夫してお書きになって参加しはります。ほんで、コンクールが終わったら、元の部員ゼロに戻りはります。
 そういう学校を含めて113校。分かりました、数字のマジック?

 ま、オオヤケの数字の113校を信じたとしても、大阪は261校の高校があります。これで割ったら、加盟率は43%、コンクール参加89校で勘定したら35%という寂しい数字が出てきます。
 うちらの真田山も、やっと部員3人。裏方入れても4人は獲得せんと、コンクールに参加できません。頑張ります!!

☆学校探訪

 これは予告です。最近他の学校のブログでよその学校紹介が流行ってます。たいてい部員の数も多くて、活発に活動してる学校です。そんな学校は、実は少ないんです。いや、ほんま。
 そこで、あたしらは、ごく普通の小規模、あるいは幽霊加盟校の取材に力を入れることにしました。

 これは、ただのイチビリとちゃうんです。

 アメリカで年収一億円以上の人ばっかり取材して「これがアメリカだ!」いう番組作ったらウソになるでしょ? アメリカ人の平均年収は350万円で、日本とほとんど差がありません。そこに日本ほど充実してない社会保障やら、一世帯あたりの家族数を考えたら、けして日本より豊かやとは言えません。ちなみに、あたしは国際科なんで、言うことがヒネこびてます。ほんなら次回からの学校探訪、お楽しみにね。

 文責 大阪府立真田山学院高校演劇部部長 三好清海(みよしはるみ) 
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高校ライトノベル・タキさんの押しつ・け映画評『ポンペイ/グランド・ブタペスト・ホテル』

2014-06-09 06:14:38 | 映画評
タキさんの押しつ・け映画評
『ポンペイ/グランド・ブタペスト・ホテル』



 これは悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に身内に流している映画評論ですが、もったいないので転載したものです。


ポンペイ

 昨今 隆盛を極める「キリスト教関連作品」かと思いきや、思いっきりデザスタームービーでした。
 考えてみりゃ、ポール・アンダーソン(バイオ・ハザード)監督が、そんな映画を撮る訳ゃないか。1959年に「ポンペイ最後の日」ってぇ作品があって、人々を蹴散らして我先に逃げようとするローマ人を、主人公は柵を閉じて阻み、槍に刺される。彼の命が果てる時、神(天使だったかも……いや、キリストだった筈)がその魂を迎えにくる……と言う幕切れでした。
 同じ展開かな? と思って見ていましたが、1/3位から 「どうやら、こら違うなぁ~」と判りました。
 ブリテン島でローマに反逆していたケルトの一族が全滅させられる。一人生き残ったマイロ少年(子役の怨みの視線が尋常ではない。毎度、最近の子供の演技力には驚かされる)は奴隷狩りに捕まり、17年後、無敵の剣闘士となり、ブリテンからポンペイに送られる。 そこでポンペイの剣闘士王アティカスやポンペイ支配者の娘カッシアと出会う。
 マイロとカッシアは恋に落ちるが、折からポンペイにやってきたローマ元老院議員コルブス(K・サザーランド)は、マイロの仇であり、また、カッシアを奪おうとする存在でもあった。 闘技場で、マイロが絶体絶命の危機にさらされた時、ベスビオス火山が火を噴き、ポンペイは絶望の縁に立たされる。
 正直、食いたりません。 本作はアメリカでは不入りで、失敗作とされています。主役のキット・ハリントンは第2のテーラー・キッチュなんぞと言われています。デザスターシーンと、マイロ/カッシアの恋愛は良く出来ていますが、他のドラマが弱すぎる。105分(実質90分)では短すぎた。キーファーが極悪非道のローマ人を上手く演っているが、後一押し。他の登場人物についても描写が足りない。
 思い入れが薄いから(悪役も善玉も)悲しみに繋がらないし、カタルシスも少ない。映像が優れているだけにこれが惜しまれる。 CGを半分以下に押さえて、ミニチュアとセットで撮ったとはいえ、相当に製作費を掛けている。 それがドラマ不足でボツになるとは……キット・ハリントンに同情したくなりました。

グランド・ブタペスト・ホテル

 本作、全米60館強の限定公開から始まって、後に少しは増えたのだろうが、基本的に少数だったはず。ウェス・アンダーソンの作品は、いつも爆発ヒットにはならないものの口コミで評判が広がり、結果、長期に渡って動員数が落ちないという結果となる。
 とは言っても、超大作のように1億$超え……なぁんてな事にはならない。確実にファンに受け、それなりに愛される作品と言える。2012年の「ムーンライズ・キングダム」は4000万$程度の興行収入ながら、10週間に渡ってランキングに留まった。
「ムーンライズ~」は“小さな恋のメロディー”的、お子ちゃま恋愛がベースだったので、多少つらい部分が在ったのだが、本作は遺産相続に絡む殺人ミステリーがベースなのでストレートに面白い(と、私は思ふ) ウェス・アンダーソンは基本的に大人の寓話を作り続けている。 そこにアンダーソンの、今や無くなった物(色んな意味で)への憧憬が入り込む。そして、現実に在りそうなファンタジーワールドが立ち上がる。 今作、ビル・マーレイ他アンダーソン常連組に加え、主役の伝説のコンシェルジュ/グスタフにレーフ・ファインズ(文句なし名演)、その片腕ベルボーイ/トニー・レヴォリ(まだ新人ながら、メチャ面白い)。特筆はティルダ・スウィントンのマダムD、何ちゅう老けメイク!そらまぁ、特殊メイクが発達しとりますから驚くにはあたらんかもしれませんが、アンダーソン作品の中に現れると本当にティルダが老けたのかと思わされる。
 アンダーソンお得意の画も満載、雪の荒野にポツンと電話ボックスが在ったり、ホテルその物もまるでマチュピチュのように有り得ない山頂にデンっと建っております。1930-40年頃のスクリューボール・コメディ・スタイル(古過ぎて私もあんまり見ていません)で作られており、古いと感じる向きも有るかもしれません。若干 好き嫌いに左右されるかも……です。
 アメリカでは、映画館一軒あたり売り上げの記録を樹立、これも10週間ランクイン、最終売り上げはまだ不明ながら、判っている所では5200万$位。多少好みのセンスとは違っても、結構笑える作りになっています。
 まぁ、騙されたと思ってお出かけ下さいまし(ダメでも料金払い戻しはいたしかねます。念の為〓)



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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ読書感想『岳飛伝九』

2014-06-08 15:10:51 | 読書感想
タキさんの押しつけ読書感想
 『岳飛伝九』



 これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に身内に流している読書感想ですが、もったいないので転載したものです。


久方振りの新刊です。ずっとスティーブン・ハンターの旧作を読んでいました。

「真夜中のデッド・リミット」に掛かったところで、これで手持ちのハンター作品は終了です。
 今回、読み返してみて、よ~く解ったのが「真夜中~」と「さらば、カタロニア戦線」の二作以外は、極一部にせよ、全部“スワガーサーガ”に繋がっているという事です。
 日本でのスティーブン・ハンター作品の翻訳出版は、出版社が三社にまたがり、また、出版順がバラバラだった為、その有機的繋がりが分かりにくかった訳です。
 今、改めて作品世界が見えています。これまでも部分的に読み返す事はあったのですが、「極大射程」から順を追って全部読んだのは初めて、やって良かったです。銃器がサブの主人公ですから、そちらに興味の無い方には苦痛になると思うので、万人にお薦め出来ないのが本間に惜しい。

 さて「岳飛伝」です。

 南宋と梁山泊は海上でとうとう開戦、呼応している訳ではないが、金とも開戦となり、ウジュ対呼延凌の間で火蓋が斬られる。南方では、秦容と岳飛に対して大里に侵攻した南宋軍が牙を剥き始める。
 ここ2巻、眠ったような展開だったのが、一気に動き始めています。
 経済戦も、ここ2巻に張られていた伏線が明らかになっている。「水滸伝」はこうじゃなくっちゃ面白く無い。   まぁ、小説ですから、沙門島が落とされて孫二娘が死んだりします(これでオリジナルメンバーの生き残りは8人)が、やむなしですね。彼女がここで死ぬ意味が分かりません。北方御大の価値観に“?”マーク一つです。
 物語的には岳飛が梁山泊にまた一歩近寄り、蒋ケン材も梁山泊に助けられる。これで間盛忠が梁山泊に取り込まれたら(無い話ではない)ある種の形が出来上がる。
 なんせ秦カイが、アホの官僚剥き出しになってきたし、ダラン(金の丞相)が死んで、金の宮中も大混乱。ウジュが軍事クーデターを起こして収拾しようとする。いずれにしても、後、ン十年で蒙古に飲み込まれるとも知らず、みんな懸命の権謀術数、読んでいて泣けて来ます。
 さて、ほんまに北方文豪……この先、モンゴルをどう絡めるつもりなのでしょうねぇ。
 また、楊令の遺児・胡斗児は、このまま、ウジュの子として生涯を終えるのか(な訳ゃぁ無え) 風雲急を告げる岳飛伝、次巻は一体いかなる仕儀となりますやら。いや、ほんまにやめられまへんなぁ。
 北方御大、物語途中でご病気など召されませんよう……楽しみに待っとりますでございます。



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大阪府立真田山学院高校演劇部公式ブログ・Vol・12『明日地区総会』

2014-06-06 22:22:39 | 小説4
大阪府立真田山学院高校演劇部
公式ブログ・Vol・12『明日地区総会』



☆明日β地区総会

 よそより早いと思うんですけど、明日6月7日地区総会です。最初の予定は以下の通りでした。

  ア)生徒連絡会代表生徒(2名) イ)地区講習会の計画 ウ)地区大会顧問審査員候補者(2名以上)卒業生審査員の推薦 エ)その他

 淀貴美先生から議案が変わったことを、今日聞きました。審査基準と審査方法について大幅な変更案が示されました。重要なことなので、あらかじめ、その内容が加盟校に伝えられ、熟慮の上地区として賛否をとり、大幅な点で合意がなされた場合、細目について意見がある場合、地区で集約して、地区代表者会議にかかります。以下、その内容です。


※:審査基準試案
今の浪速高等学校演劇連盟を始め、多くの高校生の演劇コンクールには審査基準がありません。また、昨年の予選では審査結果に疑問が持たれたところもありました。そこで、この原案を運営委員会審査問題諮問委員会として提案します。

①作品にドラマ性があるか
 ドラマ性とは、葛藤と読み替えてもいい。いわば、人間の物理的・心理的イザコザ。それが、作品に書けているか。この評価は既成、創作を問わない。作品の種類によってはエモーションと理解してもいい(能や音楽劇の場合、並のドラマツルギーで評価できないことがある)

②観客の共感を得られたか
 劇的な感動(人間が葛藤することや、その変化への観客の感動)を観客に与えられたか。

③表現に対する努力は十分であったか
 演出、演技、道具、音響、衣装、照明、などが作品を表現する上で、効果的になされていたか。

 以上の三点(③については項目別)に10段階評価を行い、最高点と最低点を除外して平均値を出す〈予選では10段階評価のみで、最高点・最低点の除外はやらない〉上位1/3の作品につき、さらに論議し、最優秀以下の受賞作品を決定する。その場合、一定の点数に至らない場合(例えば満点を100点とした場合、80点に満たない)上位コンクールへの出場権は与えるが、最優秀の称号は与えない。

 本選以上では、審査員に顧問審査員・OB審査員なども加え7名程度とし、点数集計において、最高点と最低点は除外し、平均値を出す(予選は審査員が3名なので、これは当てはめない)

※審査の点数化へのこだわり
 審査をしていて「これはだめだ」と思うと、無意識に「落とす理由」を探すことが多い。言うならば「減点方式」で、辛い審査になりがちである。
 逆に「これはいける」と思うと、無意識に「上げる理由」を探すことが多い。言うならば「加点方式」で、甘い審査になりがちである。
 ゆえに、全ての出場校を、最初は0点として、上記の項目について加点していく。これで無意識な主観による「加点」「減点」が、かなり防げると思料される。

 点数化しない限り、同じコンクールで「甘い加点」と「辛い減点」のダブルスタンダードに陥る可能性が高くなる。

※補足
 審査員は、事前に上演台本に目を通し、会場には台本を持ち込まず、メモのみとする。これは、半ば無意識に台本ばかり見て、舞台をあまり見ていない審査員にきちんと舞台を観て頂くため。観劇後、審査員はメモをもとに、直ちに審査員室で、審査用紙に点数を記入、審査管理委員に渡す。全作品を見終わるまで、作品についての論議は原則しないものとする。ただし、作品に、著作権上の問題、社会的、人権的な問題があった場合は、別とする。
 審査員席は、観客席後部が望ましい。観客の反応ごと作品を見るため。また、舞台全体を視野にいれるためにも、それぐらいの位置が望ましい。

 できるだけ、多くの観客に作品を観てもらうため、連盟、出場校は観客動員に努める。最低、連盟のサイトに会場、日程、時程はアップロ-ドしておくこと(これは、今年はやって頂けました。一歩前進です)

 コンクールの地区大会において、出場校が10校に満たない場合、シード制は適用しない。


わたしたちの考え

 おおむね妥当な改定案やと思います。ただ、ここに触れられていないのは、審査員の選び方です。予選は従来通り顧問と専門家審査員とOB審査員やと思うんですが。問題は、この専門家審査員です。ちょっと小劇場関係の方々に偏る傾向があります。本選においては、今まで専門家審査員3人でした。
 この人たちは、自分の得意な芝居のジャンルや傾向には、ええ感性してはります。けども、他の芝居にはどうなんでしょ?
 教育現場に居てない人に「高校生らしくない」とか「高校生の感性やない」「等身大の高校生が描けてる」言われて、現場の生徒や先生が感心してるのは、なんか滑稽な感じがします。


☆関係ないんですけど

 今日、環状線の駅から学校行く途中に黒猫が歩いてました。それから白猫が通って、そのあと白黒のブチがきたら面白いと思てたら、ほんまに白黒のブチがきました。思わず笑てしまいました。なんかええことがおきるんちゃうかと思たら、九鬼あやめが『外郎売』の暗記に成功! 大野はるなは、まだ覚えられません。はるなは、うちがカスムほどの綺麗な子。まして、あたしよりも自分のミバに自信のないあやめは、こんなとこで差ぁつけたかったみたいです。なかなかええ当て馬やと思てます。


 文責 大阪府立真田山学院高校演劇部部長 三好清海(みよしはるみ)
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