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大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・207『ナースチャの中間服』

2025-05-09 09:15:48 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
207『ナースチャの中間服』   




 いい感じねぇ……


 そう言いながらスピンするナースチャ。

 場所も階段の踊り場、ナースチャはミュージカルの女優さんのようにイカシてる。ナースチャの後ろには、同じ中間服のわたしとロコが映っている。当然のことながら、ロコもわたしもナースチャほどにはイカしてはいない。

 宮之森の制服、男子は当たり前の学生服なんだけど、女子は二つボタンのスーツ。ボータイが控え目に胸元を引き締めてくれて清楚な美しさがある。

 夏は、ブラウスにプリーツスカート。ボータイもしないから、なんか地味。

 だけど、中間服と呼ばれる合服は無敵だ!

 夏服も冬服も悪くは無いんだけど、よその高校と大差はない。ま、ボータイとの組み合わせはグッドなので、わたし的には十分オキニなんだけどね。

 で、中間服はプリーツスカートにベストをドッキングさせる。

 スカートのウエストの裏に前後二つずつのボタンが付いていて、ベストを下端を留めるようにできている。ベストは比較的体にピッタリに作られていて、少し体の線が出る。それで、冬服や夏服よりもメリハリが付いて、ちょっとミッションスクールのジャンスカ風。清楚でありながら可愛い!

 わたしが昭和の宮之森高校を選んだのは、実に、この制服に憧れたからなんだ。

 一応令和の宮之森を受けたんだけど、その年から制服が改定されて、めちゃくちゃダサくなってしまった。それに気づいたのが合格者説明会だったんで、ベテラン魔法少女のお祖母ちゃんに頼んで昭和の宮之森に通えるようにしてもらったのが二年前の春。

 制服は伊勢半をはじめ三つの業者が請け負っていて、どこで作っても95%同じ。残り5%の違いは、微妙な縫製と裏地のグレードくらい。

 しかし、ナースチャの制服は特別製。「あの子のは防衛省魔法局の特注品だねえ」とお祖母ちゃんは見抜いた。

 防衛省魔法局というのは、お祖母ちゃんが所属していた日本国の秘密組織。

 お祖母ちゃんに言わせると「魔法使いと魔法少女の天下り組織」なんだけれど、潜在的な力は相当なもので、ナースチャの制服はまさにその魔法局の技術の結晶らしい。

「昨日届いたのよ。てっきり夏服と冬服だけだと思ってたから、ちょっと嬉しい(⌒∇⌒)」

 可愛くモノ喜びするのは、このお姫さまの美質だと思う。

「ちょっと失礼」

 ロコがスカートとベストの端っこをチェック。

「見た目は大浜伊勢半製ですけど、微妙に手触りが違いますねえ……」

「え、そうなの?」

「触って比べてみてください。わたしのは伊勢半ですから」

「ええ……そうなのぉ?」

 二人、無邪気にスカートの裾をめくって比較し始める。

「ウ(# ゚Д゚#)」

 ちょうど階段を上がってきた十円男が頬を染めてアタフタと二階へ急ぐ。

「エッチ!」「ウワ(''◇'')!」

 反射的に咎めると、残り一段を踏み外してつんのめる。

 次の時間は体育、男子は柔道のはず、こないだのMITAKAでもあたしたちが引き上げた後も一人残って先輩風を吹かせていた。ラッキースケベを咎めることも無いんだけど、奴にはこれぐらい言ってやってちょうどいい。

 更衣室に向かおうと本館を出たところでバレーボールが飛んでくる。

 一年生がトスバレーをやっていたこぼれ球。

 拾ってあげようとしたら、タイミングが合わないでコロコロ正門のところまで転がって、正門側を歩いていたナースチャが追いかける。

 足で蹴るとかすればいいんだけど、お姫さまのナースチャは健気に追いかけて……ヤバイ!

 魔法少女の第六感!

 追いかけたところにビームが走って、ナースチャの胸を貫いた!

 クソ、十円男を笑ってる場合じゃない!

 臍を噛んで正門を出る。

 尻餅をついたナースチャが「あれ?」っと起き上がる。

 通りの向こう、よその制服を着たユリアが駆け去っていった。

 

☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • ナースチャ             アナスタシア(ニコライ二世の第四皇女)
  • ユリア               ナースチャを狙う魔法少女
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
  • 妖・魔物              アキラ  戦艦石見(アリヨール)  藍(アオ、高松塚の采女)    
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長) 関根(MITAKA二代目リーダー)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
 
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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・206『MITAKAの代替わりと巡の決意』

2025-05-06 09:37:35 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
206『MITAKAの代替わりと巡の決意』   




「それでは、1972年度初めてのMITAKAを始めまーす( ー`дー´)!」

 会議室に関根さんの声が響いた。

 今日、5月6日は振り替え休日。

 なんだけど、昭和47年の宮之森高校は普通に土曜日。昭和の連休は、あくまでカレンダー通り。その連休明けの土曜日、新二年生たちだけで企画運営する最初のMITAKAが始まったんだ。

 関根さんは「先輩方も参加してくださぁい(^〇^;)」と微妙にひきつる笑顔で連休前には仁義を切りに三年の教室を周ってくれた。

「おお、いよいよなんだぁ」「うん、ありがとう」「最初だけ居させてもらおうかな」「健闘を祈るよ」「まあ、お手並み拝見だな<(`^´)>」

 みんな激励の一言を送った。最後のエラソーなのは10円男。

 会議室はテーブルが壁際に寄せられて、正規の椅子とパイプ椅子が二重の円に並べられ、わたしたち三年生は出入り口に近いパイプ椅子。

「ええとぉ、まずは、これを聞いてください」

 関根さんが目配せすると、お仲間の二年生がラジカセのスイッチを押して陽気な音楽、サンバっぽいのが流れる。すると「おお」とか「ああ」とかいう空気になって、微妙に固かった空気が解れてくる。

「あはは、やっぱりみんな聴いてるんですね。そうです、これは深夜ラジオのテーマ曲ですねぇ。なんの番組か分かります? 分かる人!?」

 みんなニコニコ手を挙げて「オールナイトニッポン!」と当てる前から声が上がる。

「そうですねえ、やっぱりみなさん聴いてるんですねえ(^▽^)」

 なかなかの滑り出し。ちなみに、あたしは『オールナイトニッポン』も『深夜ラジオ』も初めて聞く固有名詞だったりする(^_^;)。

「けっこうやるね」「心配無さそう」「うんうん」

 真知子とたみ子が小声で頷き、高峰君もやさしくつぶやく。

「みんなは、何曜日っていうか、どのパーソナリティーが好きですか? ちなみに、わたしは……」

 順調に誘導していって、どうやら大丈夫そう。みんなが「〇〇がいい」「〇△がいちばん」「みんないい」とか口々に言うのを「〇〇さんと言えば、戦後生まれ期待の新人ですがぁ……」と話題と興味を広げていく。

 さ、もう大丈夫。

 そろりとお尻を上げると、すでに真知子たちの姿は無い。

 みんな心得ている。

 ロコは最後まで参加するって言ってたし、10円男に「邪魔するんじゃないわよ」と念を押し、ナースチャといっしょに会議室を後にした。

 ナースチャは、まだ二回目のMITAKAだから「残っていてもよかったのに」と水を向けたんだけど「ううん、いいの(^_^;)」と遠慮がちな笑顔。

「ひょっとして……ユリアのことが心配だったりする?」

「あ、ううん……」

 やっぱり心配なんだ……何度も命を狙われてるしね。

「これからは夏に向かうだろうし、ロシア人は夏に弱いからね。ユリアもそうそう仕掛けてはこないわ」

 遠慮してるんだ……ウウ……心の友にこんな顔をさせちゃダメだ。

「あのね、ナースチャの敵っていうだけじゃなくて、わたし、あいつから取り返さなきゃならないものがあるのよ」

「ひょっとして、高松塚の宝剣?」

「うん、そろそろ本気で取り返さなきゃ青さんに申し訳ないしね」

「グッチ……」

「だいじょうぶだいじょうぶ、ペコさんとかもいるし。それに……こんなのもある」

 シャラン☆彡

 魔法の格納庫から例のものを出す。ほら、スセリヒメからもらったハイポーションみたいな特効薬!

「え、サンドイッチ?」

「ううん、シベリアっていう元気と力の出る魔法のスィーツさ。ちょっと食べてみ」

「ここで?」

 あ、校舎の真ん前だ。

「じゃ、向こうで」

「うん」

 そこは、南館とグラウンドの境目、あのウェディングパラダイスをやった栄光の雛壇。ナースチャと並んでシベリアをパクつくと、空にはジャンボジェットが飛行機雲をひいて、なんとかなるような気がしてきた。



☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • ナースチャ             アナスタシア(ニコライ二世の第四皇女)
  • ユリア               ナースチャを狙う魔法少女
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・205『お祖母ちゃんと過ごす連休中日』

2025-05-03 09:06:58 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
205『お祖母ちゃんと過ごす連休中日』   




「う~~ん……ざっと2000人?」

 そう答えると「少しは分かるようになったかな」とお祖母ちゃんは頷いた。

 財務省前のデモの動画を見せて「何人いる?」と質問してきたんだ。増税しか考えていない内閣や財務省に反対して毎週のように財務省解体のデモが行われている。その動画。

 ナカグスクさんの話をしたら、沖縄返還の話からデモの話になった。

「今度は、これだ」

 キーボードをたたくと、すごいのが出て来た。

「うあぁ……」

 それは、何十万という人たちが国会を取り囲んでデモをやっている映像……画面がブルブル震えて、それはヘリコプターの振動なんだろうけど、カメラマンが慄いているように感じる。

「60年安保、主催者発表で33万人、警察の発表で13万人の参加者だった。まあ、実数は25万くらいかねぇ」

「ええぇ……」

 かなり引きの映像で、国会の全周が見えてるんだけど、周囲の道路は全てデモ隊の人たちで埋め尽くされている。財務省の2000人とはグレードが違う。

「え、なんか突入してるよ!」

「ああ、多勢に無勢、警察はデモ隊の百分の一も居ないからね、議事堂の玄関先までデモ隊が押し寄せたさ」

「これ、3Dにならないの?」

「刺激が強いからねぇ……」

 言いながらお祖母ちゃんは別の映像をフル3Dの映像で見せてくれた。

「国会の控室さ」

 丸いテーブルを囲んで、出っ歯で垂れ目のおじさんと、それを少し渋くしたようなおじさんが厳しい表情で腕組みしてる。周囲には、お役人だか議員だかが同じように厳しい顔で立っている。

「岸総理と弟の佐藤栄作大蔵大臣だよ」

「あ、安倍さんのお祖父ちゃん!?」

「まあ、見ておいで……」

 部屋には入りきれないで、廊下や他の部屋でも大臣や役人や議員たちが厳しい顔で立ったり座ったり。外ではデモ隊と警察の怒号が飛び交っている。

 ガッシャーン!

 なにかがぶつかるか壊れるかの音がして、部屋の人たちが一瞬そっちを見る。すると、廊下から駆けこんできて報告するナンチャラ長官。

『総理、このままでは議事堂の中に突入されてしまいます(;゚Д゚)!』

『そうかね』

『もう機動隊だけでは支えられません(-_-;)』

『総理、自衛隊に治安出動を(;゚Д゚)!』『そうだ、自衛隊を出動させよう(''◇'')ゞ!』

 なんかヤバいことを言いだしてる。

『それはダメだ』

『総理!』

『自衛隊を国民にぶつけては絶対ダメだ、百年の禍根を残す』

『兄さん、デモ隊が突入したら、ここで死のう』

 ただでも大きい目を見張って身を乗り出す佐藤大臣。

『ああ、これで安保条約が成立するなら死んでも惜しくない』

『総理……!』『せめて避難を!』『地下室に!』

『いや、ここでいい、ここに居なくちゃ』


「なんで避難しないの?」

 いまの総理大臣だったらぜったい逃げてる、いや、自衛隊とか呼んでガチガチに身辺を固めさせてる。そんでデモ隊に発砲させて「総理のわたしに万一のことがあったらどうするんだ!」とか涙目で吠えてる!

「あれ、壁際に立ってるの、お祖母ちゃん?」

「え、見えてるの?」

「あ、うん……ていうか、他の人は見えてないの?」

「……メグリ、あんたますます力付けて来たねぇ。いちおう、窓のカーテンに化けてるんだけどね」

「え、あ、そうなんだ(^△^;)」

「万一の時は、国会を護れって命令だったからね。でも、こんな何十万人のデモ隊、魔法少女でも対応しきれないよ」

「そうだろうねぇ(^_^;)」

「まあ、沖縄返還のときはこれほどじゃないけど、日本人というのはほんとうに前が見えてないからねぇ……さあ、お茶でも淹れようか」

 連休の中日はお祖母ちゃんとしみじみお茶を飲んで過ごした。
 


☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
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  • 滝川                志忠屋のマスター
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  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・204『先勝の結婚式・2』

2025-05-01 09:25:57 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
204『先勝の結婚式・2』   




「あ、ナカグスク様です」

 担当さんに訂正されてしまった。

 
 写真館の仕事は、結婚式、記念写真、披露宴の三つの写真を撮ること。

 お式と披露宴はスナップ写真みたいなもんだから気楽にパシャパシャ。

 記念写真は、新郎新婦のツーショットと親族一同の雛壇写真で、いちばん気を遣う。

 たいてい「新郎様」「新婦様」とお呼びするんだけど、いちおう両家の苗字は確認。字面は見れば分かるけど、読み方は必ず確認する。

 例えば、わたしの苗字は『時司』でトキツカサと読むけど、人によっては「トキジ」とか「トキシ」とか読まれてしまう。おめでたい結婚式で苗字を読み違えるなんて絶対アウトだからね。

「ナカグスク?」

 慣れない読み方なんで、思わず聞き返してしまった。

「新婦様は沖縄の方なの、向こうじゃ多い苗字よ」

「あ、はい(^_^;)」

 高校生というのはミテクレは大人だけど、中身は子どもだからね、知らないことも多くって、時どき注意されたり恥をかいたり。今みたいに「あ、はい(^_^;)」とか「そうなんだ( ゚Д゚)」と明るく返すことを旨としている。
 こういう時に、無表情とかフテった顔はぜったいNG。魔法少女だからというんじゃなくて、まあ、人としての対応のイロハ。

 ちなみに、教えてくれたのはお祖母ちゃんじゃなくて、ボスの直美さん。お祖母ちゃんは何百年も魔法少女やってるからたいていのことは知ってるしね。たまに知らないことがあってもごまかす。

 あ、そうそう。アニメの『葬送のフリーレン』を観ていてため息をついたことがある。お祖母ちゃんね。
 勇者ヒンメルのお葬式、いや、埋葬の時にね、ヒンメルのこと「何も知らなかった、人の寿命は短いの知ってて、なんで知ろうとしなかったんだろう」ってフリーレンが嗚咽するところがある。
 お祖母ちゃん、めずらしく怖い顔して見てた。きっと思い当たるところがあったんだ。

 そうそう、中城さんのこと。

 新郎の苗字は鈴木さんで、日本人の代表みたいな感じなんだけど、ご挨拶に行った時、支度部屋に新郎と新婦がいっしょにいらっしゃった。
 普通は、新郎新婦別々の支度部屋で、式場でいっしょになる。ま、たまにあることなんで、そのままご挨拶して出ようとしたら、おふたりでお薬手帳みたいなのを見ている。

 グレーとエンジっぽい色で、お祖母ちゃんの血圧手帳とお薬手帳に似ている。

「あ、これですか?」

 不躾に見てしまったのに、新婦さんは明るく二冊の手帳を示してくださる。

「渡航証明書、こっちは身分証明書」

 ――あ、ヤバイ――

 外国籍の人かと思った。

 こういう身分や国籍に関わることは見ちゃいけない。

「わたし、沖縄なんで、本土に来るにはこういうのがいるんです」

「え、あ……」

「あ、はい(^_^;)」も「そうなんだ」も出てこなかった。

 直美さんが――行くよ――と目配せするんだけど、新郎さんが明るく説明してくださる。

「5月15日には本土復帰して、こういうの要らなくなるんですけどね。15日は赤口なんで」

 ああ……赤口は仏滅に並ぶ縁起の悪い日。

「先勝って、なんだか先取りしたみたいで、いい感じなんで、この日に。ね(^▽^)」

 見交わすお二人。

「おめでとうございます」

 直美さんが締めくくって、スタジオの準備に。

「そうだ、沖縄が返ってくるんだった……」

 準備をしながら直美さん。

「去年は、甲子園の土捨てさせられてたもんなぁ……」

「甲子園?」

「沖縄は外国の扱いだからね、土は持ち込めないのよ」

「そうなんだ……」

 令和では沖縄は沖縄、東京や大阪に行くのと同じで、飛行機のチケット買ったらふつうに行ける。

 ググってみると、長い時間をかけてアメリカと交渉して返還にこぎつけたみたい。時の佐藤総理は、このことでノーベル平和賞をとっている。

 反対する声も大きい。核抜き本土並みとか、沖縄処分反対とか、返還協定批准反対とか……令和の時代でも辺野古基地反対とかやってるし。

 このあと、佐藤首相はいろいろ言われて総辞職。

 令和では、ウクライナとかで、それこそ領土をめぐって血みどろの戦争をやっている。

 ああ……ムズイことは考えない。

 中城、鈴木両家のお写真をキチンと撮って、わたしは連休のど真ん中に突入した。


☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • ナースチャ             アナスタシア(ニコライ二世の第四皇女)
  • ユリア               ナースチャを狙う魔法少女
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  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
  • 妖・魔物              アキラ  戦艦石見(アリヨール)  藍(アオ、高松塚の采女)    
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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・203『先勝の結婚式・1』

2025-04-30 16:05:35 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
203『先勝の結婚式・1』   




 令和から昭和の高校に通って三年目。

 もう三年生だから慣れたんだけど、曜日の違いにカックンとくることがある。

 4月30日の今日、令和は水曜日で連休の狭間。近所の子どもたちはふつうに学校に行く。

 1972年の昭和は連休中の日曜日で学校はお休み。

 人が働いていたり学校へ行ってる日に休みだと、ちょっと気分がいい。


 だけどね、今日のわたしはアルバイトなんだよ。


 戻り橋を渡って昭和47年の宮之森。

「あ、遅れちゃう!」

 今日は連休の日曜日で、暦は先勝(せんしょう)。

 先勝というのは先んずれば勝ちって日で、大安と同じくらい縁起がいい。特にね、午前中がいい。

 いつもよりも二組も多い。なにがって、結婚式よ!

 わたしのバイトは、公民館の結婚式場で記念写真の助手。

 高校に入った時からやっていて、もう日常の一部になってる。

 でも、先勝だってことを忘れていたんで、バイト先の須之内写真館にダッシュ!

 カックンカックン、川沿いの道を走る!

 カックンカックン カックンカックン

 うう……なにがカックンカックンかというと、歩道だよ!

 昭和の歩道は車いすとかを前提に作られていない。点字ブロックとかも無くて、車道との段差が大きい。令和の交差点では歩道が車道と同じ高さになっていて、自転車や車いすでもスイスイ行けるけど、昭和は折り目正しく段差のまんま。

 大浜とか宮之森とか、自治体がしっかりしていて、昭和にしては道路が整備されていて、ちゃんと歩道がある。
 古い街だから、数十メートルおきに交差点。会社やお店があると、そこだけは斜面なんだけど、車道との際を歩いていると段差になってる。前から人や自転車が来ると、いきおい車道側に寄ってこの段差。 

 普通に歩いてる分には気にならないけど、今朝みたいに急いでいると微妙に煩わしい。いちど数えてみた。百ちょっと数えたところでクラクションを鳴らされて――いくつまで数えたっけ?――になってしまった。

 プップー!

 またクラクション……と思ったら、道の向こう側に直美さんのホンダZ!

「やっぱり、ピッタリだったあ(^▽^)/」

「あ、すみません(;'∀')」

 三年目の以心伝心、写真館からZを走らせて、ドンピシャ拾ってもらって、先勝の公民館に向かった。

 続きは、また報告します。現場はめちゃくちゃ忙しいからね(^_^;)。

 

☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • ナースチャ             アナスタシア(ニコライ二世の第四皇女)
  • ユリア               ナースチャを狙う魔法少女
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
  • 妖・魔物              アキラ  戦艦石見(アリヨール)  藍(アオ、高松塚の采女)    
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長) 関根(MITAKA二代目リーダー)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
 
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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・202『雪国・2』

2025-04-19 10:13:40 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
202『雪国・2』   




 雪国…………?


 川端康成はうる憶え、ノーベル賞の『雪国』もロコに言われて――あぁ、そんなのあったか――という程度。

 そのせいか、突然ワープしたそこは、深々(しんしん)と雪が降るだけの一面の雪原。

 ただ、ロクなもんじゃないという気持ちはあって、右の耳に手をかざす。

 シュッ! カキーーン!

 衝撃が二つ。

 前方から光の速度かと思うようなものが飛んできて、とっさに右耳の如意(高松塚で青さんからもらった武器)を取り出し、弾き返しながら左に移動!

 弾き返したそれは、ブーメランのようにクルクル回って20メートルほど先で目の高さに静止……あ……高松塚の宝剣!?

 宝剣に気づくと、それを中段に構えるユリアが実体化した。

「フフ、岬じゃ、これでクソババアの右腕を切り落とせたんだけどね……お前も力を付けたもんだ」

「その剣は高松塚の青さんが言っていた宝剣でしょ、さっさと返しなさいよ!」

「いやなこった。これは魔封じの宝剣、魔法少女にも有効だってことは、こないだの戦いで分かったからね。さっさと宝剣の錆になっておしまい!」

 ガキーン!

 剣が唸ると同時に衝撃、ユリアは剣を振りかぶると同時に距離を詰めてくる! わたしは、それを辛くもはじき返して、全速力で駆けるしかなかった。駆けて駆けて、ユリアとの位置を変えることだ。位置と距離が変われば、勝機が見えてくる。

 しかし、逃げても走っても、走っても躱しても、この雪国は延々と雪原が続く!

 カキーーン! ガキガキ! シュイ―ン! ガキーーン!

 打っては離れ、離れては打って、それを何べん繰り返しても、雪原は続いていく……この雪国って……なんなの!?

「ここは世界最大の雪国さ」

「世界最大の雪国?」

 シュイ―ン! ガキーーン!

「シベリアよ」

「シベリア!?」

 そうだ、ナースチャがシベリアという言葉に青くなっていた。

 カキーーン! ガキガキ!

「そうよ、シベリアというのは永遠の流刑地! 川端の雪国を知らないから、その言霊にシベリアを結び付けてあげたのよ、時司巡はここで果てるの、このソビエトのユリアの力に屈してね!!」

 ガキガキ! シュイ―ン! ガキーーン!

「くそ!」

 ユリアの打撃斬撃はことごとく躱せる……んだけど、こちらの打撃も届かない!

 シュイ―ン! ガキーーン! ガキガキ! カキーーン!

 ウウ……どうやら技能は互角。

 ガキーーン! ガキガキ!

 しかし、スタミナというか耐久力は、ユリアの方が勝っている。

 あの炎熱の万博でも涼しい顔でソ連のコンパニオンをやっていた。岬の戦いでも、戦艦石見やアキラの介入で敗退したとはいえ、わたしとお祖母ちゃんを相手にしつこく攻撃を加えて来た。

 このままじゃ、スタミナ負けしてしまう(-_-;)。

 シュイン! ズザザザザ!

 一撃を躱して、雪原を地上スレスレに飛んで逃げる。

 いっそ、急上昇して逃げようかという気持ちが起こる。地上スレスレでは、いつ地面に接触するか分からず、すごいストレス。

 でも、上昇すればユリアは下の方からも攻撃できて、逃げの姿勢でいる限りアドバンテージはユリアにある。

 ああ、視界の縁が暗くなってきた……ちょっとヤバイ、宝剣奪還どころじゃない。

 え?

 狭まった視野の端っこに三角のサンドイッチが見えてきた……なんでサンドイッチ? そうか、お祖母ちゃんは夕べのサラダをパンに挟んで三つも食べていた。年寄なのに、しっかり食べるんだとか思ってた。

 わたしは、いつものように生協のクロワッサンをコーヒー牛乳で流し込んだだけ。

 だから、サンドイッチの幻影。

 それは、よく見るとカステラみたいなパンの間にアンコが挟んである。

――食べて!――

 思念が飛び込んできて、口元までやってきたそいつをひとカブリ!


 シャララン彡☆彡☆


 星くずのエフェクトがしたかと思うと、公民館の結婚式場、そのスタッフ控室。

「間に合ったあ(;'∀')!」

 だれか抱き付いてきたと思ったら、巫女服のスセリビメ、いや、御神楽采女さん!

「た、助かった……んですよね?」

「そうよ、雪国のフレーズで引っ張られたのよ、あのロシア女に!」

「あ、ありがとうございます」

「わたしの力では、あそこまでは飛んでいけなかったから、あれで助けられたらって……うまくいってよかった!」

「あの、甘いサンドイッチはなんだったんですか?」

「シベリアよ」

「シベリア?」

「日本独自のサンドイッチ、さっきのはコシアンだったけど、羊羹を挟んであるのもあるっていうか、そっちが正統シベリアなんだけどね、とっさのことに間に合わなかった」

「あはは……なんかダジャレの世界ですね(^_^;)」

「駄洒落は言の葉、思いを籠めれば武器にも助け舟にもなるのよ」

「そうなんだ」

「宝剣は残念だったけど、また、なにか方策はあるでしょ」

「そうですね……て、あ、学校始まっちゃう!」

 ええと、宮之森行きのバスは……とっさに控室の時刻表。

「なに言ってんのよ、グッチの力ならひとっ飛びでしょ」

 え、あ、そうだった。

 そして、学校を念じると、あっという間に学校にワープ。

 いきなりクラスの自分の席にワープしたものだから、すぐ後ろのロコをビックリさせてしまった(^_^;)。

 

☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • ナースチャ             アナスタシア(ニコライ二世の第四皇女)
  • ユリア               ナースチャを狙う魔法少女
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
  • 妖・魔物              アキラ  戦艦石見(アリヨール)  藍(アオ、高松塚の采女)    
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長) 関根(MITAKA二代目リーダー)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
 
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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・201『雪国・1』

2025-04-16 09:36:10 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
201『雪国・1』   




「今度は川端ですよ!」

 お早うの挨拶も無しにロコが叫ぶ。

「え、川端?」

 お早うの「お」を呑み込んで、頭の中に寿川の川べりが浮かんだ。寿川はわたしにとっては時空の川で、毎日寿川を渡って昭和の宮高(宮之森高校)に通っている。先月は、川沿いでユリアに追われてるナースチャを助けて大立ち回りをやったとこだし。川端という単語はセンシティブでデンジャラスだ。

「夕べ、川端康成が自殺したんですよ!」

「え、ああ……」

 人の苗字と分かって、センシティブとデンジャラスは削除されたけど生返事になる。川端ヤスナリ……言われてもピンとこない、誰だっけ?

「そうですよねぇ……ショックが大きいと、すぐには感情が付いてきませんからねぇ」

「あ、えと……」

「いやぁ、川端康成は三島由紀夫とも親交がありましたからねえ、やっぱり三島の死を引きずっていたのかもしれませんねえ……あ、テレビでやってますよ!」

 ちょうど電気屋さんの前に来たところで、通勤通学途中の人がショーウィンドウのカラーテレビに食いついている。

 テレビは急きょ番組を変更して、川端康成のニュースを流している。

 ロコが言った通り、三島との関係と影響についてコメンテーターやら解説委員が固い表情で語っている。

『川端さんはノーベル文学賞をとられた方でしょ、三島もノーベル賞には何度も候補に挙がっていましたし』『そうです「金閣寺」はその域に達していましたからねえ』『いやあ、この二人の文豪の喪失は大きいです』『あ、現場の逗子のマンション前と繋がりました』『こちら、現場の……』

 現場は逗子のマンション、ここからは少し距離はあるけど近所。

「うう、見ていたいですけど」

「行こうか、学校遅れちゃうね」

「はい、休み時間に演劇部のテレビ見せてもらいましょう」

「うん、ええと、川端康成の作品て……ナントカの踊り子だっけ?」

 乏しい知識を絞り出して『踊り子』が付いていたのを思い出す。

「はい『伊豆の踊子』ですね。でも、極めつけは『雪国』でしょ。何と言ってもノーベル賞ですからね」

「雪国……」

「書き出しがいいんです。国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった……」


 いい表現……思った瞬間、わたしはトンネルの中。


 遠くで「グッチ……」とロコの声がして、それが瞬間で消滅すると、出口の先、白い夜の底が見えるばかリ。

 テレポート?

 わたしの力は芽生えたばかり、ロコの熱気と電気屋さんの前でテレビに見入っていた人たちの圧、そして、やっと名前が思い出せる程度の、でも『国境の長いトンネル』『夜の底が白くなった』の銘文に触発されて能力が発動、とんでもないところにワープしてしまった……?

 

☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • ナースチャ             アナスタシア(ニコライ二世の第四皇女)
  • ユリア               ナースチャを狙う魔法少女
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
  • 妖・魔物              アキラ  戦艦石見(アリヨール)  藍(アオ、高松塚の采女)    
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長) 関根(MITAKA二代目リーダー)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
 



 




 
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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・200『今日から万博』

2025-04-13 10:25:28 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
200『今日から万博』   




「ああ……やっと戻ってきたぁ……」


 学校から帰ると、顔も見ないでしみじみ言うお祖母ちゃん。だから「ただいま」も引っ込んでしまって口ごたえっぽくなる。

「いつもどおりだよぉ」

「え、ああ、おかえり。いや、そうじゃなくてね、右手の調子がね、やっと戻ってきたんだよ」

「え、あ、ああ……って、明くる朝には戻るって言ってなかった?」

 先週の日曜、花見に出かけたら、岬の灯台でユリアに襲われ、お祖母ちゃんは右手を切り落とされたんだ。だけど、カタチ的にはその場で回復、機能的にも「朝には戻るよ」と言ってその通りになっていた。

「ヘヘ、魔法で補助してたんだ。それが、やっと普通に動かせるようにね……なんだよ、その顔」

「ちゃんと言ってよね、家のこととか、いくらでもメグリがやるんだから!」

「アハハ、お祖母ちゃんにも意地ってもんがあるからね、うん、もう大丈夫なんだから。そんなに怖い顔しないの」

「だって……」

 お祖母ちゃんは何百年生きて来たのか分からないくらい長生きの魔法少女だけど、エルフの魔法使いほどじゃない、やっぱり少しずつ衰えてるんだ。少し鼻の奥がツンとしてきた。

「ところでさ、あのソ連の魔法少女、変だとは思わなかったかい?」

「なにが」

 照れ隠しに話題を変えたんだと思って、ツッケンドンな返事になる。

「あいつの本性は下半身だっただろう」

「あ、うん、腰と足だけで逃げて行ってびっくりした」

「あれもフェイクだったんじゃないかと思えてきたのよ」

「ええ?」

「いや、本性が下半身ということに間違いはないんだけどね。ただ逃げるだけなら、あれだけの魔法少女なんだ、やりようはいくらでもある」

「そうなのぉ……」

 自然に向かいのソファーに腰掛ける。

「剣が残っていなかっただろ?」

「あ」

 そうだ、千切れた上半身は剣を握ってはいなかった。

「仮にも特級魔法少女の右腕を切り落としたんだ。奴の技量も相当なんだろうけど、あの剣の力はその上をいくのかもしれない」

 それって……(^_^;)

「負け惜しみじゃないよ」

 よ、読まれてる。

「メグリ、おまえも気をお付け、ナースチャのことはみんな気を付けてるけど万全じゃないからね」

 そうだった、ペコさんなんか片付いた後にやってきたもんね……。


 昨日は、あたしもお祖母ちゃんも、それっきりユリアのことには触れなかった。


 翌朝って今朝のことなんだけど、リビングに下りると、お祖母ちゃんは居なくて、テレビが点けっぱなし。

 あたしはテレビなんか見ないんだけど、お祖母ちゃんは昭和のクセというか習慣が残っていて、どうかすると一日中テレビが点いている。

『いつから並んでいらっしゃるんですか?』

 レポーターが先頭の人にマイクを向けた。

『あはは、昨日の午前十時からです(^○^;)』

 照れたように関東の〇〇県からやってきた人は答える。

「そうか、万博は今日からなんだ……」

 去年、安倍晴天に拉致られるようにして建設途中の万博会場に行ったことを思いだす。一周2キロの外壁回廊を歩いて妖たちの侵入を警戒していたんだ。

 そうだ、アキラどうしてるかなあ。

 大屋根の上で出会った白いワンピースの女の子(119『妖退治・5・アキラ 夏の思い出』)。正体を聞くと昔の潜水艦の船霊、イタリア、ドイツ、日本と三回も国籍変わって、それでも万博の大屋根で妖たちの見張り番をやっていた。

 そう言えば、岬で大砲を撃って助太刀してくれたのも船霊の戦艦石見。彼女も、ロシアと日本と所属が変わっていた。

 寄るべのない魂とかに親和性があるのかもしれないね、わたしは。

 なんて思ってしまったせいか、目の前に安倍晴天が現れた!

「あ、もう、びっくりするなあ! 今日はまだ窓も開けてないよ!」

「いやいや、グッチとも仲良くなれたから、窓が開いてなくても来られるようになったんだよ。いやあ、目出度い目出度い(^▽^)!」

「目出度くないわよ、うちは女だけの家なんだよ、それに絣の着物だし!」

 晴天は口の上手い奴で、その力の根源は、変に似合ってる『言いくるめ絣』の着流しだ。油断がならない。

「これは晴天のユニホームだ他意はないよ」

「どうだかぁ」

「そうじゃなくて、今日は情報を伝えに来たんだ」

「情報?」

「ユリアが持っていた剣は、高松塚古墳の青さんが言っていた宝剣だ」

「ええ!?」

「ああ、そうなんだ。盗掘者から巻き上げたか、あるいは時空を超えてあいつ自身が盗んできたものなのか。とにかく、あれが始皇帝の宝剣に間違いはない」

「ええと……それで……」

「取り返すんだろ?」

「あ、ああ……」

 そうだ、青さんと約束したんだった(;'∀')。

「ということで、がんばれ(^▽^)」

 ドロン

 言いくるめ絣は笑顔の残像を残して消えてしまった。

 
☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • ナースチャ             アナスタシア(ニコライ二世の第四皇女)
  • ユリア               ナースチャを狙う魔法少女
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
  • 妖・魔物              アキラ  戦艦石見(アリヨール)  藍(アオ、高松塚の采女)    
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長) 関根(MITAKA二代目リーダー)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  

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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・199『今日から三年生』

2025-04-10 11:06:43 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
199『今日から三年生』   




 三年生になった!


 エクスクラメーションを点けてる割に感動はしていない。

 高校入学が新大陸の発見だとしたら、二年の春が大陸横断。三年の春は西海岸、いよいよ錨を上げて太平洋に乗り出す来春を目指す学年。いろいろ勉強やら準備やら。

 ところが、大陸横断でいろいろ冒険したり戦ったりしてきたので、サンフランシスコとかロサンゼルスとかシアトルとかで、ついのんびりしてしまう。野球も面白いし、魚とかも美味しそうだし、ゴールドラッシュが起こるのも西海岸だしね。大陸を横断した安心感でグダグダの予感。

 なんだかダラケテしまいそう。

 あ、ドジャーズの大谷はよかったよね! ホワイトハウスに招かれて、トランプ大統領と肩を並べてさ。大谷って、背が高くてガタイも立派で、大男のトランプと並んでも遜色ない。それでいて、PRESIDENTであるトランプへのリスペクトはきちんと立ち居振る舞いに出てるし。令和の日本男児ここにあり! そんな感じだった。こないだの総理大臣、英語に訳したらストーンブレイク。ヘラヘラニヤニヤオドオド、みっともなすぎて草が茂る。

 こっち、昭和47年の総理大臣は佐藤栄作。見た目も立ち居振る舞いも立派。暗殺された安倍さんとは伯父甥の関係。なんか血脈を感じる。ググってみると、沖縄返還も成し遂げてノーベル平和賞を受賞。まあ、それはもうちょっと先なんだけど……あ、そうそう新学年が始まったという話しだよ。

 今度の担任は二年で世界史を習ってた吉村先生。半分禿げた白髪頭で、たぶん60は超えてるんじゃないかなあ、再任用? よく分からないけど。

 ショックなのは、大方の仲間とはクラスが分かれてしまったこと。

 たみ子も真知子も佳奈子も高峰君も十円男の加藤高明でさえよそのクラス。

 でもね、ロコとナースチャは同じクラス。

 まあ、10クラスもあるんだから不思議なことじゃない。去年がラッキーすぎたんだ。同じことはロコもナースチャも思っているだろうから顔には出さない。

 ピーーーーーン!!

 マイクがいつものハウリング。

 昭和の学校の放送設備はほんとうにお粗末。

 でもって、ボッ! ボッ! マイク叩いちゃだめでしょ!

 やっと落ち着いて校長先生が百年一日って感じで『新学年の始まりにあたって』的な訓話をお垂れになる。たぶん、だれも真剣には聞いていないよ。

「……それでは、今年度移動になった先生方を紹介します」

 これで終わりだ。去年も一昨年も、人事の連絡があって始業式はおしまい。

 新任の先生が三人、三人とも一二年生の担当なんで、関心はないよ。

「転任は……」

 転任も三人。その三番目を聞いて、微妙などよめきが起こる。

 国語の杉野が県立大浜北高校に転任、いや、トバされた!

 杉野、杉野先生はいろいろあった。一時間目の授業に来ない、六時間目は持ちたがらない、授業が終わったらさっさと帰る、内緒で予備校の講師やって、妹尾先生に見つかって逆切れしちゃうし(176『熱は下がったけど……』177『ひょっとして、なにか覚醒した?』)。ま、わたしも、あれで、いろいろ能力に目覚めちゃったんだけどね。


「実は木下先生もそうだったみたいですよぉ」


 教室に戻るとロコが情報を披露してくれる。

「木下って……ああ、英語だっけ?」

 校長先生が紹介した転出の一人なんだけど、習ってない先生はほとんど分からない。

「杉野先生とは別の予備校なんですけど、県教委の調査が入って判明したそうですよ」

「で、どこに転勤だったっけ?」

「丑寅工業ですよ」

「ええ、丑寅工業……」

 北高も丑寅工業も荒れた学校だ。

「もう、完全にシベリア送りですねえ……(-_-;)」

「え……シベリア送り……!?」

 いつの間にかナースチャが後ろに来ていて、怯えた目で話を聞いていたよ(^_^;)



☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • ナースチャ             アナスタシア(ニコライ二世の第四皇女)
  • ユリア               ナースチャを狙う魔法少女
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
  • 妖・魔物              アキラ  戦艦石見(アリヨール)  藍(アオ、高松塚の采女)    
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長) 関根(MITAKA二代目リーダー)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
  
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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・198『春休みの最終日の災厄』

2025-04-07 11:56:38 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
198『春休みの最終日の災厄』   




 今日で春休みもおしまい。


「桜を見に行こう!」

 起き抜け、パジャマのまま二階から下りようとしたらお祖母ちゃんの声が噴き上がってくる。こないだから警報の出てる霧島新燃岳を思わせる勢い!

 三日前に高麗山(こまやま)に花見に行ったとこなんで気が進まない。

 なんたって、今日は春休み最後の日だからね。

 特に用事が無ければ、長期休暇の最後は一人でウダウダしていたい人なんだよわたしは。しかし、山の噴火とその気になったお祖母ちゃんには逆らえない。

 朝ごはんと朝のアレコレに30分だけ猶予があって「さあ、出かけるよ!」とお祖母ちゃん。魔法使いのフリーレンと同じくらい長生きしてるのに、思いたったら子どもみたいになる。

 突然の思い付きなんで、お弁当なんかは用意なし。お財布とスマホ持っただけで外に出る。

「取りあえず、川沿いだよ」

 あ、そういや川沿いにも桜はあったんだ。というか、けっこうイケてる。

 日ごろは、家の前の戻り橋を渡って昭和の学校に行くだけだから、ほとんど気にも留めてなかった。昭和にも寿川はあるわけで、その川沿いを駅まで歩いていると、わざわざ令和の桜を見ることもないからね。

「おお……川沿いの桜もなかなかだねえ」

 お世辞じゃなくて、そう思うよ。

 めったに通らなくなった令和の川沿い、なんだか色々変わっちゃってるなあ……と思う。道路の舗装も上等だし、川には欄干以外に、その内側に子どもの背丈ほどのフェンスが立っている。電柱もコンクリート製だし、電線以外に光ケーブルが目立つしね。

 でも、桜は変わらない。

 むろん、一本一本の桜と顔見知りなわけじゃないんだけど、植えてある間隔とか大きさ、満開の桜花を身にまとった、その大きさとか勢いは同じ感じ。

 昭和のあのころとは50年の開きがある。桜の寿命は人間と変わらないとか……ということは、あのころの桜は寿命を迎えて更新されて、更新された桜が、ちょうど元の桜と同じくらいの樹齢になってるんだね。

「ソメイヨシノってのは苦労だからね」

「苦労?」

「クローンだよ。品種改良で生まれた特異種だから挿し木で増やすしか無くて、どれも同じDNA」

「そうなんだ……」

「だから、全国どこへ行ってもソメイヨシノは同じ色、同じ形」

「え、形は違うよ」

「花とか樹皮とかはいっしょ。巡だって、起き抜けと今とじゃ違うだろ。起きた時は髪もグチャグチャで顔もブチャムクレだし。楽しい時と悲しい時とじゃ違うだろ。でも、どれも同じ巡だ」

「ああ、なるほど」

「で、お祖母ちゃんは、いつだってアレが必要なわけでぇ……」

 いきなり道路を渡ったかと思うと、池田酒店でお酒を買いに行ってるし(^_^;)。

 いつの間にか一キロほど歩いて、そのまま大浜まで行ってみようということになって大浜線が『し』の字に曲がるところまでやってきた。

「ああ、海が見えて来たよ」

「ああ……」

 春の海は、高麗山からも見たし、横須賀の帰りには石見の内火艇に乗ってひねもすノタリノタリ哉も見てきたところ。

 でも、何度見ても春の海の穏やかさには癒される。

『し』の字の曲がるままに歩いて、岬の灯台までやってきた。

 川沿いの桜がそうであったように、ついこないだ来た1972年と変わりはないんだけど、この純白の灯台に灯台守の若夫婦は居ない。もう何年も前に日本中の灯台は無人化されてしまったからね。

「あ、石碑があるよ」

 お祖母ちゃんが官舎の横の白い石碑を指さした。

 前にも令和の灯台には来たんだけど気が付かなかった。灯台や官舎と同じ白い石を使っていたし、そんなに大きなものじゃないから迂闊なメグリは見落としていたんだね。

「ふうん、明治からこっち、三十人の灯台守がいたんだねえ……」

「ほんとだ……」

 三十代目の灯台守は平賀勲さん……そうか、あのご夫婦は最後の灯台守だったんだ。

 石に彫られた名前を指でなぞってみる。

「あれ、名前の上に丸印?」

「ああ……殉職したしるしだね」

「え、殉職!?」

 見ると、他にも三人の灯台守に●印が付いていて、石碑の下に『●印は殉職者』と小さく書かれている。

「灯台守っていうのは厳しい仕事だからね、どんな嵐の夜でも灯はともし続けなくちゃならないし、時には遭難船やらの救助とかもね」

 そ、そんな……

「巡、助けようなんて思うんじゃないよ。定まった歴史に手を加えるのは、それが、たった一人の命を救うことだって大きな影響が出ることがあるんだからね」

「でも、でも、勲さんはとってもいい人で……」

「しばらく、向こうの灯台にはいかない方がいい」

 そう言うと、お祖母ちゃんはわたしの両手を重ねて、それを自分の手で包むようにしてポンポンと叩いた。

 
 ビシュ!


 空を切る音がしたかと思うと、お祖母ちゃんにいきなり突き飛ばされた!

 理解するのに数秒かかった。お祖母ちゃんが睨み据える視線の先を追うと灯台のてっぺん、抜き身の剣を持ってソ連女が立っている!

「フフ、やっぱり一撃では倒せないかしら」

「貴様ッ、ロシアの魔法少女だな!?」

 え?

 お祖母ちゃんが上げた右手は肘から先が無くなっている! そして、たった今まで立っていたところに、お祖母ちゃんの右手が落ちている!

「邪魔する者はだれもいないわ、初手はババアの右手しか落とせなかったけど、今度は二人そろって叩き切ってあげるわッ!」

 セイ!

 掛け声と共に跳躍するユリア! 

 反射的にジャンプしたわたしは、無意識に耳に手をやって如意を取り出していた。ほら、高松塚で釆女の青さんからもらった得物よ!

 ジャキーーン

 中空で打ち合うと、そのまま灯台の周囲を周りながら対峙する。

「いつのまに、そんなものを……イッパシの魔法少女になったじゃない、倒し甲斐がるわぁ」

「ク……させるかあ!」

 ジャキーン! シュキン! シャキシャキ! シャキーン!

 五回打ち合って、なんとかしのいだけど、次はヤバイかも。

「そうかぁ……キレはなかなかのものだけど、修業が足りないから息が続かないのね……行くぞ!!」

 ブワ!!

 すごい圧に空間が歪む!

 グァッギーーーーーーン!!

 ググググ……(`m´#) 

 渾身の力ではじき返したけど、次は無理だ、絶対やられる!

「フフ、じゃあ、とどめ!!」

 ドッゴーーン!! ビシ!

 やられる! と思ったら、ユリアは服が千切れ飛んで、沖の方を睨み据えている。

「おのれ、裏切り者め!」

 怖い顔で睨んでいると思ったら、沖に戦艦石見、つまりアリヨールが砲門を向けている。

「スキありっ!」

 ズビュン!!

 今度はお祖母ちゃんが、マジカルスピンからの飛び蹴りを食らわせ、ユリアの体は上下に千切れてしまう!

「クソ……!」

 小さく悪態をつくと、ユリアの上半身は下半身を見捨てたまま超光速で東の空に飛んで行ってしまった。

「すみません、遅くなりましたッ(;゚Д゚#)」

 荒い息をつきながらペコさんが実体化した。

「ああ、来てくれたんだ。ありがとうね、ペコ」

「申しわけありません、気が付くのが遅くて……その手は!?」

「アハハ、ちょっと不覚をとってしまって、なに、大丈夫さ」

 ブルン

 右腕を振ると、新しい右手が飛び出してきた!

「魔法少女の体はトカゲのしっぽみたいなもんだから……しまった!」

 お祖母ちゃんの声に振り返ると、いつの間にかユリアの下半身は猛スピードで灯台の敷地を駆け抜けて見えなくなってしまった。

「あいつの本体は下半身だったんだねえ……ペコ、敵は油断がならない、すぐに戻ってナースチャの警護にあたりな」

「はい、ほんとうに申し訳ありませんでした。では、これで……!」

 ペコさんも戻っていって「お祖母ちゃん、帰ろうか……」そう言って、お祖母ちゃんの手を取ろうとして、ひっくり返ってしまった。

「え、なにぃ?」

「あ、ごめん、右手はまだ映像だけなんだよ。実体が戻るのは明日の朝だろうね」

「そ、そうか」

 そうなんだ、ペコさんを困らせないよう、とっさに右手をホログラム再生したんだ。

 お祖母ちゃんは、池田酒店のお酒をちょっとだけ呑んで、それから二人で家に帰った。

 わたしの春休みが終わった。



☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • ナースチャ             アナスタシア(ニコライ二世の第四皇女)
  • ユリア               ナースチャを狙う魔法少女
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
  • 妖・魔物              アキラ  戦艦石見(アリヨール)  藍(アオ、高松塚の采女)    
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長) 関根(MITAKA二代目リーダー)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  

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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・197『高麗山のお花見』

2025-04-04 10:55:37 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
197『高麗山のお花見』   




 やっぱりお姫さまだ!

 誰がって、ナースチャよ、ナースチャ!

「富士山と桜と湘南の海と、ついでに東京タワーも見たいかなあ(^〇^)」

 なんて無茶を言う。

 春休みは一回ぐらいたみ子や真知子、佳奈子、それにロコ、他にもMITAKAのみんな。いつもの仲間で遊びに行きたかったんだけどね。

「グッチは魔法が使えるんでしょ(^▽^)/」

 高松塚古墳に行ったことで、わたしの魔力を知っているお姫さまは簡単に言う。

「それは緊急か非常の時よ。他の子たちには秘密なんだからね」


 で、結局は情報通のロコに電話すると「あ、任せてください!」と元気な返事が返って来て、駅で待ち合せた。


「な、なんであんたが!?」

 駅の改札にはロコの他に十円男が立っていた。

「え、誘われたからさ」

「ほかのメンバーは連絡がとれなかったり旅行中だったりしましてね、高峰君が『加藤君なら空いてるぞ』って言ってくれて」

「さ、天気も上々、次の準急に乗れば十時半には着けるぞ」

 駅の無料パンフをめくって引率の先生みたく、サッサと前を行くお邪魔虫。

「もぉ」

 牛みたく唸ると、気のせいかバッグが重い。

 歩きながら確認すると、お弁当が四人前になっている。

 お弁当はタキさんが用意してくれたんだけど……ひょっとして、見越してた? それとも人数に合わせて増える魔法のお弁当?

 
 それから電車で20分、バス10分、その間待ち時間が15分。


「うわあ、注文通りだ!」

 ビックリした! 

 右を見ると平塚の街を挟んで相模湾! 左を向くと、山々の向こうにデジャブを感じる富士山が春霞にほどよく霞んでる! そして、目の前には広場を挟んで東京タワー!?

「あ、テレビ塔なんですけどね、無料で登れますし、高麗山(こまやま)の標高と合わせたら十分東京タワーの展望階の高さです」

「うんうん、なにより姿が東京タワーだわぁ(^▽^)」

 高校生というのはまだまだ中身は子どもだからね、さっそく『東京タワー』に上ってみる。

 そうそう、ここは平塚にある高麗山公園。文字通り小高い山でね、春夏秋冬を問わず訪れる者に感動と憩いを与えてくれる、神奈川県の名所……って、ここに来るまでは知らなかったんだけどね(๑´ڡ`๑)。

「天下三分の計とか思いつきそうな景色だなあ……」

 十円男はむつかしい四文字熟語で感動する。

「それ、三国志、諸葛亮孔明の名言ですねえ!」

「おお、ロコ同志は三国志が分かるんだ」

 このごろ革命とか造反有理とか言わなくなったと思ったら、そういうものをネタにしているんだ(^_^;)。

「こういうところで告白されたら素敵でしょうねえ……」

 春風に髪を弄らせながらのたまうナースチャは、これも反則ってぐらいに可愛い。

「それって、一種の吊り橋効果ですね!」

「ああ、吊り橋の上で異性に出会うとドキドキして恋と錯覚するってやつだな」

 プ( ´艸`)

「し、失礼だなあ、グッチは」

「あ、ごめんごめん」

「海と桜と富士山と……これって、お風呂屋のペンキ絵のモチーフですねえ」

「「ああ」」

 十円男といっしょに声を上げてしまう。クソ。

「なに、お風呂屋のペンキ絵って?」

「ああ、それはですね」

 ロコが大衆浴場のなんたるかと共に、ペンキ絵の素晴らしさを語る。

「……という感じで、タイルの壁面いっぱいに風景画が描いてあって、そのモチーフによく使われるんですよ」

「それは俗物の代表みたいなもので、太宰治も『まるで風呂屋のペンキ絵だ』って批判してたぞ」

「フフ、たった今『天下三分の計』って感動してたじゃないですかぁ」

「い、いや、あれはだなあ(;'∀')」

「ナースチャ、そのお風呂屋さん行ってみたい!」

「あ、いいかもですね! 探しておきますよ!」

「お、いいな!」

「賛成してくれるのはいいですけど、加藤君はいっしょには入れませんからね」

「分かってるよ、そんなこと(#''◇''#)」

 アハハハハハハ(´∀`)(ᵔᗜᵔ*) (ᵔ△ᵔ*)

 
 それから、ゆっくり満開の桜を愛でて、タキさん心づくしのお弁当をいただいて、  あれこれ語らって……青春って、やっぱ最後は語り合ってしまう。ま、しかし、こういう時の話しとか雰囲気は、それこそ吊り橋効果だからね。

 三時ごろにお尻を上げて山を下りる。

 ほんの一秒ほど時間が停まって身構えたら、桜の後ろにユリア!

 いっしゅん身構えるとすぐに姿が消える。続いてペコさんが後を追っていて、わたしが出る幕じゃなかったけど……。

 
☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • ナースチャ             アナスタシア(ニコライ二世の第四皇女)
  • ユリア               ナースチャを狙う魔法少女
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
  • 妖・魔物              アキラ  戦艦石見(アリヨール)  藍(アオ、高松塚の采女)    
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長) 関根(MITAKA二代目リーダー)
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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・196『高松塚古墳・4・釆女の青』

2025-04-01 09:20:40 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
196『高松塚古墳・4・釆女の青』   




「突然お呼び止めいたして申し訳ございません」

 小腰をかがめ、お辞儀をしながらのお詫びをされて、ちょっとアタフタ。

 青いロングスカートみたいな上に赤の上着、ベルトというか帯というか、ローウェストの腰ひもで、黒髪はバレッタで留めたみたいな感じで、両手でラクロスのスティックみたいなのを捧げ持っている。

「あ、いえ(^_^;)」

「わたくし、あの御陵(みささぎ)に眠っておられるお方に仕えております。采女の青と申します」

「え、あ……えと……(;'∀')」

 わたし一人アタフタ。ナースチャはカーテンコールのバレリーナみたいに軽く片足を引いて会釈した。

「お二方とも尋常ならざるお方とお見受けいたしました。ご身分もさることながら、そのお力……」

「いえ、ただの高校生で……」

「いえいえ、こなたさまは外つ国のやんごとなき姫君。あなたさまは、陰陽寮は時司のお方とお見受けいたしました」

 ナースチャは皇女らしくアルカイックスマイルをカマシてるけど、わたしは素性を暴露されて、いよいよアタフタ。

「あ、時司というのはただの苗字でぇ(^_^;)」

「いえいえ、わたくしも、いささかの力を持って皇子に仕える身。陰陽の道の方は分かります」

「えと、その釆女さんが、なんの御用でしょうか?」

「はい、実は、あの御陵の君は大切な宝剣と共にお眠りになっていたのですが、五百余年前に盗掘に遭って盗まれてしまいました」

「あ、そう言えば、説明に剣の金具は見つかったけど、剣そのものは発見されていないって書いてあったわ!」

 ナースチャはよく読んでる。

「はい、あの剣は百済の王子から譲られた聖剣なのです。百済滅亡の時に守り刀としてお持ちになったもので、近江の国に安住の地を頂かれた折り、この日ノ本の国を護るためにと、我が君にお譲りになられたものなのです。その元は秦の始皇帝の御物であるとか、持つ者の力に呼応して鎮護の力を発揮いたします。いわば、東洋のエクスカリバー、我が君がこの飛鳥の地に鎮もって天下の安寧を祈り守護されるには必携の品にございます」

「で……(^_^;)」

 悪い予感に胃のあたりがキリキリ、ナースチャは目をキラキラ。

「どうか取り戻してくださいませ」

「あぁ、そういうのは、ちょっと……」

「時司の君が訪れてくださったのは、神々がお設えなさってのことに違いありません、伏してお願い申し上げます。なにとぞなにとぞ……そうです、これをお渡ししなければ」

 釆女さんは、手に捧げ持っていたラクロスのスティックみたいなのを差し出した。

「え、これは?」

「如意にございます」

「ニョウイ?」

「尿意ではございません、如意でございます」

「あ、ニョイニョイ(^_^;)」

「はい、大和言葉では孫の手……」

 あ、背中を掻くやつ。

「……の形をしておりますが、力を備えた者が使えば、またとない得物になります」

「えもの?」

「中国では猿の妖怪が使っておりました」

「あ、如意棒……でも、ちょっと大きいし……(^_^;)」

 引き受けたわけじゃないし、引き受けるつもりもないし、遠回しに断る。

「いえ、普段は、このように……」

 青さんが指を動かすと如意は、たちまちニ三ミリに縮んで右の耳に入ってしまった!

 シュポ

「え、ちょ、ちょっと(;゚Д゚)!」

 たまげているうちに青さんは「それでは、よしなにぃ~~~」と声だけを残して消えてしまった。

「なんだか面白くなってきたわねぇ(^▢^)」

 ナースチャは目を輝かせ、どこかで晴天の笑い声がして、モヤモヤしながら宮之森に帰った。

 むろん瞬間移動。

 少し上手くなって、志忠屋の真ん前。ご飯をゴチになって家まで歩いて帰った。


☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • ナースチャ             アナスタシア(ニコライ二世の第四皇女)
  • ユリア               ナースチャを狙う魔法少女
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
  • 妖・魔物              アキラ  戦艦石見(アリヨール)  藍(アオ、高松塚の采女)    
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長) 関根(MITAKA二代目リーダー)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
 
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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・195『高松塚古墳・3・現地に飛んだ!』

2025-03-29 12:04:07 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
195『高松塚古墳・3・現地に飛んだ!』   




 はああ…………(-д-;)(´Д`;) 


 ナースチャとふたりでため息をついてしまった。

 魔法で奈良の高松塚古墳に飛んだんだ。

 安倍晴天に「人間の五人や六人、念じるだけで運べるよ」と教えてもらって、エイヤ!って飛んだ。

 初めてなんで、高松塚古墳付近の地図を睨みながら飛んだんだけど、着いたのは最寄りの近鉄飛鳥駅前。

 うぉっと( ゚Д゚)! キャ(>_<)! わ(〇△〇)!  あぶねえ(><><)!

 駅前から高松塚古墳に向かう人ごみのど真ん中に出現して、ビックリされたりヒンシュクをかったり。

「「すみませーん!!」」

 取りあえず謝って、道のわきに寄ってため息をついたというわけ。

 アハハハハハ

 どこかで晴天のバカ笑いが聞こえたんだけどムシムシ!

「ごめんねぇ、まだ慣れないもんで(^_^;)」

「ううん、面白かった!」

「そか、じゃあ、気を取り直して行くかぁ」

「うん!」

 飛鳥駅から現場までは緩い坂道。緑が多いんで宮之森城址公園の本丸を目指すのに似てるんだけど、あそこは花見の時でも、こんな人ごみにはならない。
 混み方と熱気は万博に似ている感じ。

「でも、この人混みは悪くないわよ」

「そう?」

「うん、ロシアで人が行進してるって、あんまりいいイメージじゃなかったし」

 あ、そうか。ナースチャは『血の日曜日事件』の悪い思い出があるんだ……。

「明日香美人だって評判だけど、どんなだろうね(^▽^)」

 話題を変える。じっさいウキウキしてるんで、ごく自然に変えられる。

「すごいよね。新聞には6世紀のお墓だって書いてあったけど、そんなのがゴロゴロ転がってるんだものね! この先にあるのは高松塚だけじゃなくて、天武持統天皇合葬陵やら文武天皇陵、中尾山古墳とか終末期の古墳がゴロゴロしてるんだもんね。それも、駅から10分ちょっとのところだよ!」

「よく知ってるねえ(^_^;)」

「だって、なんの心配もしなくて勉強だけしてればいいんだもん」

「あ、そうだねぇ」

 ナースチャは、百年も前に家族もろとも殺されるはずだったんだ。

「日本の皇室は、高松塚古墳のころには、もう盤石だったんだよね。たしか……うん、そのころは天武天皇のちょっと後の時代だけど、その天武天皇は……すでに40代目なんだよ!」

「なに、その本は?」

 ナースチャはリュックから小さな辞書を出して確認している。

「日本史小辞典」

「あ、すごい……」

「お父さんなんて、やっと14代目だったんだよ」

「お父さ……ああ、ニコライ二世だったっけ?」

「うん、お父さんはジョージ五世と従兄弟同士でね、あ、ジョージ五世って、イギリスの王様。エリザベス女王の伯父さんでね」

「え、ナースチャってロシアの皇女でしょ?」

「うん。ヨーロッパの王室ってみんな親類同士だからね」

「ええ……ということは、エリザベス女王とナースチャは親類!?」

「そうだよ、マタイトコ? ううん、それはお父さんだし……マタイトコの娘がエリザベス女王……やだ、わたしってベスより年上なんだ!」

「アハハ……よく分からないけど、すごいよね(^_^;)」

「そういうのと関わりなく、極東で124代も続いてるんだぁ……すごいよ、日本は」

「そ、そうだね(^_^;)」

 ナースチャのハイテンションに付き合っているうちに、人の流れに載って発掘現場に着いてしまった。

「あららぁ……」

 着いてビックリ玉手箱。

 そう、浦島太郎が玉手箱にワクワクするぐらいの期待に満ちてやってきたんだけど、玉手箱……古墳の入り口はガッチリ封鎖されていた。

「空気に触れると傷んじゃうんだ、カビとか生えたりして……」

 ガッカリしながらも、ナースチャは納得。

 魔法でビュンと飛んできただけだけど、わたしは、お昼に美味しいものでも食べなきゃおさまらないよ。

「ね、見て……」

 ナースチャが横腹をつつく。

「ん?」

 古墳の横には発掘の状況やら石室の中の様子やらがパネルになって掲示されている。

 へえーー ほぉぉー なるほどぉー なになにぃ そうかぁ フムフムぅ

 老若男女の見学者が合格発表を見る受験生みたいに真剣に読んでは、石室の封印や古墳の全貌を窺って感心している。細かい説明を読んでる余裕はないけど、石室に描かれていた壁画の写しは興味深いよ。

 四神の玄武・青龍・白虎や人物像は自分の知っている日本画とは全然印象が違って素直に「ほぉ」と声が出たよ。ま、思えば、新聞、いや、スマホでググれば、もっと鮮明なのが観れるんだけどね。

 それに、周囲の見学者さんたちの感動が伝染してるのが半分だと思う。

 まあ万博と同じだ。月の石なんて、目の前で「はい、月の石」なんて出されても感動なんかしない。あれだけのシュチエーションと万博ってグレード、そんで、あの待ち時間と人混みだから思うんだろうね。

 令和人間には微妙なんだけど、昭和に通うようになってまる二年。こういう昭和の感受性は、ちょっと生意気だけどかわいいと思ってしまう。

「うん……やっぱり感動だねえ……ここには1300年の歴史が息づいてるんだ……」

 ナースチャは行儀がいい。人の感動を斜め上から評論するようなことはしない。たったいま「かわいい」なんて思ったことは、ちょっと封印。

 すごいねぇ……すごいねぇ……と他の見学者さんと同じように呟きながら古墳を一周。

 帰り道を見下ろすと、来た時よりもすごい人波が押し寄せてくる。

「人酔いするねぇ、ちょっと脇道通っていこうか」

「うん……ねえ、あの人物像気づいた?」

「え、ああ、ちょっと日本画とはタッチが違うかなあ……それと、衣装が予想してたのと違ったかなあ」

 ゆったりというか、モッサリしてるというか、フワっとルーズで腰ひも的なのも思い切りローウェストだし。

「うん、それもそうだけど、着物の打合せが逆だった」

「え?」

「左前」

「そうだった?」

「うん、洋服と同じだからアレって思った」

「ナースチャ鋭ぉい~」

「ううん、ずっと洋服の生活してたからね」

「あ、そうか」

 納得しかけて、わたしだって洋服ばっかの生活……なんだけど、言い返さないで、別の事を言う。

「左前っていうと、日本じゃ幽霊の証拠なんだよぉ」

「ええ、そうなの( ゚Д゚)!?」

「うん」

「ていうことは、あの女の人たちは幽霊!?」

「ということになるかなあ」

「うわぁ怖い~」

 馬鹿を言いながら、いつのまにか林の中に踏み込んでしまう。

 すると、後ろから「もうし……」と声がした。

「「え?」」

 振り返ると、あの人物像にそっくりな女の人が怪しい笑顔で立っていた。



☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • ナースチャ             アナスタシア(ニコライ二世の第四皇女)
  • ユリア               ナースチャを狙う魔法少女
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
  • 妖・魔物              アキラ  戦艦石見(アリヨール)     
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長) 関根(MITAKA二代目リーダー)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
 
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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・194『高松塚古墳・2・晴天に頼む』

2025-03-26 09:15:06 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
194『高松塚古墳・2・晴天に頼む』   




 遠くへ出かけるならあの人だ。


 思ったとたんに声がした。

「いやあ、修学旅行以来だねぇ」

「わっ!」

 ビックリして振り返ると、ニコニコしながら座っているのは、あの安倍晴天だ。

「あはは、以心伝心というやつだね。窓も開いてたし(^▽^)」

 うちは特急魔法少女のお祖母ちゃんの家だから、凄腕の陰陽師と言えども勝手に入ってくることはできない。うかつに開けていた窓からさっさと入ってきたんだ……それにしても早すぎる。

「だから以心伝心。二人の心が呼び合えば5Gのルーターみたいなもんさ」

「じゃあ、さっそく……」

 と、思ったら晴天は久留米絣。この人の久留米絣は呪物で、相手をなんでも従わせられる『言いくるめ絣』だ。

「そういうグッチだって……」

「え?」

 驚いた。自分もいつのまにか『言いくるめ絣』のワンピを着ている。

「いやはや、腕を上げたねぇ。反射的に対抗魔法が使えるんだ」

「え、ああ……」

「それで赤いリボンを付けたら魔女みたいだよ」

 ポポ

 軽い刺激がしたと思ったら、頭に赤のリボンが載って、柱に立てかけて箒が現れた。

「あたしは魔女じゃないんです!」

 言ったとたんにリボンと箒は消えてしまった。

「ほほう……で、特急魔法少女殿……の孫殿の御用は何かなぁ?」

「ええと、友だちと高松塚古墳を見に行きたいんだけど、鉄道とかで行くと大変でしょ。泊まりにもなっちゃうし」

「ほう、高松塚古墳……」

「それでね、万博の時(妖退治 115~120)みたいに送り迎えしてもらうと嬉しいんだけど」

「なんだ、そんなことか」

 つまらなさそうに座ったまま後ろ手を突く晴天。なんだか、いっぺんに十歳くらい老けたみたいにオッサンぽくなる。

「なによぉ」

「グッチは、もうほとんど一人前なんだから、そんなの自分でやりなよ」

「ええ?」

「人間の五人や六人、念じるだけで運べるよ」

「え、そうなの( ゚Д゚)!?」

「うん。で、いっしょに行くのはMITAKAの諸君かなあ?」

「ああ、今度は一人……」

 みんなで行きたいと思わないでは無かったけど、魔法で飛鳥まで飛んだら正体バレてしまうしね、あり得ない。

「で、相手は?」

「あ……」

 ちょっと躊躇ったけど、晴天なら構わないだろう。

「ナースチャ、アナスタシア・ニコラエヴナ・ロマノヴァ」

「ほう、ロシア皇帝ニコライ二世第四皇女かぁ……」

 キラリ ……☆

 あ、晴天の瞳が輝かせてしまった(^_^;)。

「そうか、気が向いたらボクも行ってるかもしれない。魔法のいい練習になるかもしれないし……じゃあね(^▽^)」

 いっしゅん扇風機が強で回ったような風がすると、窓枠がガタピシいって陰陽師の姿は掻き消えた。




☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • ナースチャ             アナスタシア(ニコライ二世の第四皇女)
  • ユリア               ナースチャを狙う魔法少女
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
  • 妖・魔物              アキラ  戦艦石見(アリヨール)     
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長) 関根(MITAKA二代目リーダー)
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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・193『高松塚古墳・1』

2025-03-23 14:50:41 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
193『高松塚古墳・1』   




 灯台ではジンジャーティーをいただいた。


 温めたティーカップにスライスした生姜を二切れ、そこに紅茶を注いで蜂蜜を一匙。そしてクルクルかき回すと、紅茶と生姜の香りがホワホワたってめちゃくちゃ美味しい。

 美味しいだけじゃなくて、からだがホコホコと暖まって、それがしばらく続く。

「ブランデー入れると、もっと暖まるんだけどね」

 と恵さん。

「うん、でも、ブランデーだけで飲みたくなるからねぇ」

 と勲さん。

 春とはいえ、岬の海風はまだまだ冷たく、灯台守には必須の飲み物なんだろうね。


 恵さんの真似をしてジンジャーティーを淹れているとロコが電話してきた。


『もしもし、テレビ見ました!? 奈良で国宝級の古墳が発見されましたよ!』

「え?」

『奈良の明日香村ですよぉ。月の初めから調査してたんですけどね、きのう石室を開けたらすごいんです! 極彩色の壁画が残ってたんですよ!』

 お祖母ちゃんが思いついて「ああ……あれかぁ」と声をあげる。

 昭和から電話をかけると、令和のわたしのスマホにかかって来る。

『地元のお百姓さんが生姜を保存する穴を掘っていたら、ぐうぜん掘り当てたんだそうですよ!』

 こないだ横井庄一さんが発見された時と同じテンション。事件や発見に人の何倍も反応するロコはジャーナリストに向いていると思うんだけど、令和で検索しても彼女に該当するジャーナリストは見当たらない。ま、高校生のインタレストなんてコロコロ変わるだろうしね。

「高松塚は大騒ぎだったねぇ……」

 新聞を広げて懐かしそうなお祖母ちゃん。覗き込んでみると魔法で出した当時の新聞。一面全部が高松塚の写真と記事。

「あれ?」

 現地説明会に押し寄せた人たちの中に若いころのお祖母ちゃんが写っている。

「ああ、ある宮さまがどうしてもご覧になりたいとおっしゃるんで、護衛に付いて行ったんだよ」

「へえぇ……」

 確かに、お祖母ちゃんの前に貴公子って感じの男の人が説明を聞いているのが写ってる。

「でも、普通はマッチョな警察官が付くんでしょ?」

 女の護衛官が付くのは女性の皇族に対してだ。男の皇族なら男の護衛官だろう。

「いちおう古墳ていうのはお墓だからねぇ……」

「あ、そうかぁ」

 人が葬られているんだ、それも千年以上昔の。どんな障りがあるか分からないから、魔法少女にお鉢が回って来るんだ。

 クシュン!

 ようやく春めいた暖かさに窓を開けたら、とたんにクシャミ。

 去年あたりからあやしいと思ったら、どうやらわたしも花粉症デビュー。

 昭和の宮之森は時どき光化学スモッグが出るけど、花粉症の症状は出ない。令和の方が空気はきれいだと思うんだけど、ことスギ花粉に関しては昭和の方が少ない感じがする。

 時計を見ると、もうお昼を過ぎている。

 昭和に行くのも億劫なので昼食を兼ねて志忠屋に向かう。タキさんの命令でナースチャの面倒を見ていることもあって、お昼のまかないご飯はいつでも食べさせてくれる。

 カランコロン

 ドアのカウベルが鳴って「こんちはぁ~」と挨拶すると、常連さんに混じってナースチャもお昼を食べている。

「あ、グッチ!」

 パスタを絡ませたフォークを持ったままナースチャが振り返る。目をキラキラさせて、カウンターにはお祖母ちゃんが見ていたのと同じ新聞が、その紙面を開いたまま載っている。ちょっと悪い予感。

「ねえ、高松塚古墳見に行こうよ(^▽^)!」

 予感はコンマ5秒で現実の問題になった。

 

☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • ナースチャ             アナスタシア(ニコライ二世の第四皇女)
  • ユリア               ナースチャを狙う魔法少女
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
  • 妖・魔物              アキラ  戦艦石見(アリヨール)     
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長) 関根(MITAKA二代目リーダー)
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