大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・141『なめくじ巴はどっち巻き?』

2020-03-30 15:32:18 | 小説

ライトノベル 魔法少女マヂカ・141

『なめくじ巴はどっち巻き?』語り手:マヂカ    

 

 

 中央通を渡って西へ、湯島聖堂の緑青を噴いた大屋根を見当に歩いて行く。やがて右手に大鳥居が見えてくる。これが神田明神の正面だ。

 普段は西側から男坂の階段を上る。

 アキバからの最短ルートであるだけでなく、階段を上るというロケーションがアニメの絵面としては出来ている。『ラブライブ!』ではドラマの重要な舞台になり『ラブライブ!サンシャイン!!』では聖地になっている。

 しかし、単に絵面がいいと言うだけでなく、西の男坂がいわば神田明神の勝手口であり、神や神に準ずるもはここから入るのが作法とされているのだ。

 

 司令からの指令と洒落ているわけではないが、言いつけ通り正面の大鳥居を潜る。

 

「急な呼び出しにもかかわらず、お運びいただきまして有難うございます」

 巫女さんが頭を下げて出迎えてくれる。

「あ……いつもの巫女さんじゃないんだ」

「はい、アオさんは男坂の巫女。正面大鳥居は、このアカが受け持っております。まずは、これへ……」

 アカ巫女が左側の甘味処を示すと友里が声をあげた。

「あ、高坂穂乃花の実家!?」

「え、そうなのか?」

 千年の歴史を生きてきた魔法少女は、そこまでは分からない。やはり、いまを生きている女子高生にはかなわない。

 アカ巫女の後を付いて店内に入ると、「いらっしゃいませ!」と看板娘が出迎えてくれる。茶髪だが頭の小さなサイドポニーテールが可愛い。

「穂乃花だ……」

 ペコリと頭を下げて友里が喜んでいる。

 外からは分からなかったが、内暖簾の中は一間幅の廊下が奥まで続いている。

 二回角を曲がったところに『ここより中奥』と表示があって、アカ巫女が「お着きいーーー」と声をあげ、同時に杉戸が開けられる。

 さらに、二回廊下を曲がって広書院に出た。

「しばしお待ち願います」

 アカ巫女がお辞儀をして去っていくと、数秒の間を開けて、神田明神が出御して上段に収まった。

「すまんな、わざわざ呼びつけて。ダークメイドは取り逃がしたようだが、黄泉の国では大層な働きぶりであったと聞いておる。おお、ひょっとして、それがジャーマンポテトだな。まずは、それを頂いてからの話にしよう。たれかある、酒と取り皿を持て!」

 パンパン

 神田明神が鷹揚に手を叩くと、アカ巫女が三方に載せた酒と取り皿を捧げ持って現れた。三方と徳利には神田明神のなめくじ巴の紋所が付いている。

 わたしが目を留めたせいか、アカ巫女がチラリと三方を気にした。

「ささ、ジャーマンポテトをこれに入れて、三人で頂こうではないか。まずは近う寄れ」

――え、いいの?――

 友里が心配な顔をするので、わたしの方から近寄る。

 いちおう小笠原流の作法で、将軍に招かれた地方大名のように礼は尽くしておく。それに倣ってオタオタと友里が……ドテ! こけた。

「あいた!」

「とんだ無作法を」

 友里の代わりに頭を下げる。予想通りアカ巫女の鼻が動いた。

「よいよい、無理にジャーマンポテトを無心したのは、このワシじゃ。作法にこだわることは無い」

 もう一度三方に目をやって紋所を確認する。

「おや、紋所が……?」

「いかがいたした?」

「友里がこけるまでは、御紋のなめくじ巴は右巻きであったように……」

「気のせいであろう、紋所がころころ変わったりはせんであろう」

「いや、ですから。神田明神の紋所は右巻きが正しいのでございますが……」

 そうなのだ、もともと紋所は正しく右巻きであったが、わたしが見咎めることでカマをかけると、アカ巫女が、その都度紋所の巻き方を逆にした。三回見咎めたので、紋所は逆の左巻きとなっている。

 それに、なめくじ巴は俗称であって、神田明神や、その巫女が俗称で呼ぶことを咎めぬわけがない。

 正しくは、流れ三つ巴なのだ!

 

「しまった、見破られた!」

 

 ドロンと煙が立って、あたりは真っ白になってしまった。

 

 白い煙が収まると、そこは、中央通の交差点だった。

 中央通に出たところから化かされていたとは気づかなかった。

 

 

 

 

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魔法少女マヂカ・140『戦い済んで神田明神』

2020-03-26 15:28:08 | 小説

ライトノベル 魔法少女マヂカ・140

『戦い済んで神田明神』語り手:マヂカ    

 

 

 三段重ねの重箱に一杯のジャーマンポテトを、わたしと友里で二つぶら下げて神田明神を目指している。

 

 ダークメイドこそは取り逃がしたけれど、黄泉の女王イザナミを滅ぼすと言う殊勲を挙げて、久々に大塚台公園の基地に凱旋した。

 M資金の回収もままならない特務師団なので、十分な報酬などは期待していなかった。

 だけど、褒美が山盛りの新じゃがだとは思いもしなかった。こんなもの、近所のスーパーでも一盛り110円で売っている。

「一つ頼みがあるんだ」

 しぶしぶジャガイモを持って帰ろうとしたら、来栖司令が頭を掻いた。

「このジャガイモでジャーマンポテトを作って神田明神に行ってくれないか」

「なぜ?」

 ついぞんざいな聞き方をしてしまったが、司令は咎めることもなく説明してくれた。

「折り入っての頼みがあるらしい。知っての通り、特務師団が抱えている問題は数が多い」

 それは分かっている。

 M資金の回収も完全には程遠いし、バルチック魔法艦隊との対決も痛み分けになっている。カオスはサムが亡命のようなかたちで、こちらに混じって、今では仲間同然だが、カオス本体とはただの休戦状態だ。

 その上、神田明神からの頼みなど、正直請けきれない。

 そもそも、東京総鎮守の神田明神が、もう少ししっかりしてくれていたら……いや、愚痴は言うまい。先の大戦までの苦労を思えば、今の状況はまだまだましなのだからな。

 

 学校の調理室で久々の調理研。

 

 ブリンダとサムも加わって、出来あがったころには、聞きつけてきたミケニャンも加わって、試食会は同窓会のように楽しく過ごせた。

 まあ、三割くらいは司令を許してやる。司令も防衛省との間に入って苦しい立場ではあるんだからな。

 重箱に詰め終わったところで連絡があった。

『いつもの転送室は使わないで電車で行って欲しい』

「え、どうして!?」

『東京の魔界ゲージが上がって、転送室を使うとどこへ飛んでしまうか分からないんだ。人員も指定されてきた。マヂカと友里の二名で行ってくれ』

 というわけで、アキバの駅から神田明神を目指して歩いているのだ。

 中央通の信号で引っかかる。

 駅を出たところから信号のタイミングを計って歩いてきたのだが、友里と愚痴をこぼしながらだったせいか、いきなりの赤信号に、戸惑った。

「ごめん、わたしがチンタラ歩いてたから」

「いいさ、すぐに青になる」

 そこで友里のスマホが鳴った。ちょっとおたついたが、重箱を引き受けてやると、片手でゴメンしながらポケットをまさぐった。

「あ、司令からだ……はい、もしもし……え、ああ、そうなんですか」

「なんて言ってる?」

「神田明神からの連絡で、湯島の聖堂側の正面から入ってくれって」

「遠回りじゃないか」

 アキバから神田明神に行くには、明神男坂から行くのが早い。三段重ねの重箱をぶら下げての遠回りはゲンナリだ。

「まあ、あっちの方が正面玄関だからかなあ」

 素直な友里は、スマホをポケットに入れながら、もうその気になっている。

 まあ、神田明神にも都合があるんだろう、大人しく信号の変わった中央通を渡った。

 

 

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魔法少女マヂカ・139『反撃』

2020-03-22 17:17:04 | 小説

ライトノベル 魔法少女マヂカ・139

『反撃』語り手:マヂカ    

 

 

 抽出した鐚銭は単に古い銭というだけではなかった。

 

 欠けていたり曲がっていたり、擦り減り過ぎて何の銭か分からなくなっているものまであった。

 そうなのだ、鐚銭というのは、古いと言うだけではなく傷んでしまって使い物のならないという意味もあるんだ。

「まあ、使えるものは1/3と言ったところか……」

 ブリンダは寛永通宝。十三枚あるので、いざとなったら銭形平次のように飛び道具として使う。

 わたしは、ちょうど六枚残っていた永楽通宝。明の永楽帝の時代に作られた渡来貨幣で、戦国時代に湧き起った貨幣経済を支えた通貨で、信長が旗印にもなっている。

「真田幸村みたい!」

 ゲームの『無双 真田丸』で親しんだノンコが喜んでくれた。じっさい三個二段にして額に頂いてみると、雪村の兜の前立のようだ。

 残りの二枚は和同開珎と富本銭だ。

「それは、うちにおくれやす!」

 サムと交代で戻ってきたウズメが装着した。

「富本銭は厭勝銭(ようしょうせん:まじない用に使われる銭)どす! 絶大な威力どすえ!」

 ウズメは目にもとまらぬ早業で装着した。

「え、どこに付けたの?」

「内緒どす!」

 どすの利いた声で答えると、真っ先に飛び立っていく。

「じゃ、あとは頼んだよ!」

 北斗のみんなに守備を頼んで、ブリンダと二人、北斗のプラットホームを蹴った!

 

「これでも喰らええええええええ! どす!」

 

 醜女どもの眼前に躍り出たウズメはガンダムを思わせるファイティングポーズをとるや、せっかく休憩中にまとった巫女服の前をはだけた!

 ズボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボォーーーーーン!!!

 ウズメは、オッパイの先に鐚銭を仕込んでいたのだ。それも鐚銭中の鐚銭! キングオブ鐚銭と言っていい和同開珎と富本銭だ!

 一撃で、醜女軍団の九割がたを撃砕してしまったΣ(゚Д゚)!

「オレ達の獲物が無くなる!」

 ブリンダとともに風穴に逃げ込もうとする残敵を追撃する。

 二人の鐚銭もなかなかの威力で、たちまち残敵の半分以上を粉砕した。

「中に、まだ少し残ってる!」

 額の前で両手をXに組んで鐚銭ビームを発して、閉じかけている風穴に飛び込む。

 

 バチコーーーーン!

 

 閉じかけた風穴の蓋がはじけ飛び、その破片が飛散するのも待たずに三人一丸となって飛び込む。

 バチ バチバチ バチ

 破片が露出した肌にポップコーンのように爆ぜる。

 眼前に迫る破片は鐚ビームが瞬時に蒸発させるので、なにも気にせずに突進できる。逃げ込んだ醜女どもは、手向かう気力も失せて、あちこち逃げ回っては岩にぶつかったり、互いに衝突したり、暴走した一円ビームに自らを焼いたりしてパニック状態だ。

 シュビィーーーーーーーーン

 ガラスを掻きむしるような音がしたかと思うと、我々は黄泉の奥つ城にたどり着いた。

 

―― おのれ、ここまで、わが安息の黄泉の国を汚しおって……許さぬぞおおお! ――

 

 それは、襤褸(らんる)の衣をまとった腐乱死体……辛うじて窺える襤褸の色と柄、髪がほとんど抜けてしまった髑髏の額の飾りから高貴な者であると知れる。

「やはり、貴女様……」

 ウズメが悲痛な声で、襤褸の名を呼ぼうとするが、あまりの痛ましさに声も出ない様子だ。

「我が背イザナギとともに、草々の神と、この大八島の国々を産んだイザナミであるぞ。数多の結界と醜女どもを破り、この奥つ城まで踏み込んだる罪、許し難し! 滅びよ!」

 ザワ

 空気がざわめいたかと思うと、髑髏に残ったわずかな髪が尾を引いたまま鬼醜女となって襲い掛かってきた。

「させるかあ!!」

 ブリンダと二人鐚銭ビームを出力いっぱいに照射する。

 バチ バチ バチ バチ バチ バチ バチ バチ バチ バチ バチ バチ バチ バチ バチ バチ バチ バチ バチ バチ 

 先ほどまでの醜女と違って一撃で倒すことは出来ないが、それでも鐚銭の威力は大きく、二撃、三撃するうちには、ことごとく弾き飛ばすことができた。

「おのれえ、おのれえ、もう我が身には眷属の一人も居らぬのかあ……」

 イザナミは、自分の髪を醜女に変えて我々を襲わせてきたんだ。黄泉の魔がつ神になり果ててはいるが、髪は女の命、その悄然とした姿は同性として見るに堪えないものがある。

「イザナミノミコトさま……せめてもの引導は、このウズメがおわたししますえ……お喰らいやすううう!」

 再びウズメは衣の前をはだけて、同性の我々でも目を見張るようなオッパイを突き出した。

 

 シュボン

 

「あ、あれ?」

「ウズメさん、使いすぎたのよ!」

 鐚銭は紙のような薄さになり、吐息に飛ばされた花びらのようにウズメの眼前を漂うばかりだ。

「わが身と共に滅びよおおおおおお!」

 イザナミは襤褸の裾を掴んで蝙蝠の羽根のように広げた。

「変態がコートをまくったみたいだなあ」

「二人とも、身を庇いなはれえ!」

 叫んだかと思うと、ウズメは胸乳を顕わにしたままイザナミに吶喊を試みる!

 ウズメが抱き付くのと、襤褸が飛び散るのが同時であった。

 

 ビシュ ビシュ ビシュ ビシュ ビシュ ビシュ ビシュ ビシュ

 

 襤褸の砕けが突風のように吹きつけて、思わず両手をかざして耐える!

 目を開けると……イザナミはウズメが居たところは青白い残り火となって、その周囲は同心円状に襤褸や二柱の神であったものが取り巻いているだけだ。鉋くずのようになった富本銭の欠片がヒラヒラと目の前を横切って行った。

 ウズメは、最後の最後、イザナミに抱き付いて、共に散っていったんだ。

 わたしとブリンダを守った……あるいは、襤褸の魔がつ神のまま散っていくイザナミを哀れに思ってか……魔法少女には及びもつかない何ものかに準じたか。

「………、………!」

 ブリンダが、何か叫んでいるがミュートにしたような口パク……いや、耳をやられたか!?

 まだ、なかば意識が飛んでいる……あ、ブリンダのコスがズタボロだ。

 と……ということは?

 わたしも、ズタボロの裸同然だった!

 

 二人の悲鳴が黄泉の奥つ城に木霊した……というのはサルベージされた後、北斗のクルーの弁である。

 

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魔法少女マヂカ・138『量子バルブ』

2020-03-20 13:46:45 | 小説

ライトノベル 魔法少女マヂカ・138

『量子バルブ』語り手:マヂカ    

 

 

 

 北斗は黄泉比良坂の上空を旋回した。

 

 僅かな時間でも千曳の大岩が開いてしまったために、あたりは朱を含んだ闇色に淀んで、まるで地獄の空を飛んでいるようだ。

 千曳の大岩は閉じてしまったが、周囲の岩や地面からは間歇的に風穴が開いては閉じて、醜女たちが姿をのぞかせては赤い舌を蛇のように動かして威嚇している。

「すまない、嵐山のトンネルで手間取って、今になってしまった」

 晴美隊長は、わたしとブリンダの不始末を咎めることもなく、自分たちの不手際を詫びてくれる。

「さすがは聖メイド、こんな不始末でも労ってくれるのね」

「それはお互いさまということで、どうするかを考えないとな」

「もう一度量子パルス砲で千曳の大岩をぶち抜けない?」

「嵐山のダメージで出力が足りないのよ。回復の見込みは?」

「三日ほどはかかります」

 友里の返事に隊長は静かにうなづく。悟ってくれという気持ちが読み取れる。

 ノンコも清美も、助っ人のサムも黙々と操作しながら警戒してくれている。ミケニャンは北斗の外で醜女たちを牽制しているウズメから目が離せない。

「ウズメさんのエロはアキバにはないものニャー、あれ、アキバにも取り込めないかニャ?」

「風俗営業になってしまう」

「違うニャ! あの目ニャ! 色っぽいだけじゃニャくて、可愛いニャ。萌ニャ。あの目で見られたら、一瞬動きが止まってしまいそうになるニャ。もし、アキバのメイドになったら50%は客足が伸びるニャ~(⋈◍>◡<◍)」

 ウズメは責任を感じているんだ。

 十銭玉の勢いで攻めきれずに押し返されて、せめて風穴から先には醜女たちを出さないように睨みを利かせてくれている。醜女の中には一銭玉を失くしてしまい、ウズメの流し目に直撃されて蒸発してしまう者もいる。

「なんとかしないと、ウズメもいつまでも持たないぞ」

「北斗のCPで解析中です」

 砲雷手の清美が応える。CPは微かに唸りをあげながら演算を繰り返しているが、今のところ『エスケープ』と『撤退』の二文字を点滅させているだけだ。

「り、量子バルブが疲労破壊寸前!」

 機関部の調整をしていたノンコが悲惨な声をあげる。

「定期点検で外したバルブ、まだ使えるかもよ!」

「廃棄品ですよーー(-_-;)」

「替えるまでもてばいいから!」

「はいい、隊長!」

 ノンコは操作卓を離れてツールボックスに取りついた。

「二個残ってる、どっちします!?」

「どっちでもいい、即、交換!」

「友里、二十秒だけ期間停止して!」

「十秒でやって!」

「分かった!」

 ズビューーーーーーーン

 底が抜けるような音がして、エンジンが停止。しかし、質量50トンの北斗は、速度を5キロ落としただけの惰性で結構走る。

「交換完了!」

 ズゥイーーーーーーーン

 エンジンが再始動、5キロの失速はたちまち回復した。

 ピポパポポ ピポ

「CPがアンサーを出します!」

「「「「「なんと!?」」」」」

 全員がモニターに釘付けになる。

―― 量子バルブの真鍮にビタ銭の成分あり 量子バルブの真鍮にビタ銭の成分あり ――

「「「ビタ銭?」」」

 クルーたちが頭を捻る、わたしと晴美隊長だけが分かった!

「「鐚銭だ!!」」

「だから、それはなんだ? ビタミンの一種か?」

「明治以前に使われていた通貨だよ、真ん中に四角い穴の開いた銅貨で、明治になってからもしばらくは補助貨幣として使われていた」

「『びた一文やれるか!』の鐚だ」

―― 鐚銭を抽出復元すれば醜女の一銭銅貨に対抗できる ――

「そうよ! 鐚一文は一銭の1/10よ!」

「じゃ、バルブから抽出復元して!」

「あ、でも、バルブを外したら北斗が……」

「動かなくなるニャ!」

 

「……だいじょうぶ! ツ-ルボックスに、もう一つ取り外したのがある!」

 

 もうちょっと頑張って!

 ウズメに祈りながら、バルブから鐚銭を抽出にかかった。

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ライトノベル 魔法少女マヂカ・137『突撃!』

2020-03-15 14:44:04 | 小説

ライトノベル 魔法少女マヂカ・137

『突撃!』語り手:マヂカ    

 

 

 

 十銭玉の威力は絶大だ!

 

 醜女たちは一円玉を頼りに、自分たちこそ『これ以上崩しようのないブス!』を自任していたが、戦後生まれの悲しさか、一円以下の貨幣価値など想像も出来ず、一円の1/10の威力に恐れをなした。正面から十銭玉の威力を目にした者は、瞬時に『醜』の字が霧消してしまい、普通のモブやNPCに還元されて昇天してしまう。

 昇天の間際にブスブスと煙を上げるのが、せめてもの醜女の意地であろうか。

 かろうじて直視することから免れた醜女たちは煙を引きながら地底深く千尋の底へ潜っていく。

「くたばれええええええどす! いてまえええええええどす! 黄泉の風穴は幾十、幾百に枝分かれ、枝に潜られる前に、いてまえどすうううううう! くたばれどすううううううう!」

 ジュババババババババババババババババババババ!

 ウズメは、四方八方へ首を回し、十銭玉光線を目につく限りの枝穴に照射する! 我々も見習って十銭玉光線をせわしなく照射するが、ウズメほど機敏になれず、一つ二つと見落としが出ているような気がする。

「ウズメ、もう少し速度を落とせない? 見落としがあ……」

「一気呵成に底を、あやつの奥つ城を目指さなあきまへん! 一刻も早よおに!」

 なにを、そこまで焦らなければならない?

「後ろから来る!」

 ブリンダが叫んだ! 首を巡らしてチラ見すると、見落とした風穴から醜女たちがわらわらと湧いて出て、背後を脅かしにかかる。

「喰らえ! 十銭玉こーーーーーせーーーーーーんんんんんんんんんんんんんん!!」

 ジュババババババババババババババババババババ!

 裂ぱくの十銭玉光線をお見舞いする!

 しかし、この新手の醜女どもは、たじろぐことなく眉間の一円玉をかざしながら突き進んでくるではないか!?

「ウズメ、十銭玉が効かないぞ!」

 ブリンダが、バリアを張りながら叫んだ。

「あれは……一銭玉どす! 十銭の1/10! 口惜しいけど、しばし撤退どす! バリアを最大にして回れ右いいいいいい!」

 三人、バリアを前方に集中し、音速で突き抜ける!

 させるものかああああああ させるものかああああああああ

 呪いを呟きながら、醜女たちは次々に襲い掛かってくる! バリアはバチバチと音を立てて弾いていくが、一銭醜女たちは、数を増すばかりで、まるで、イナゴの大群に盾一枚で立ち向かっているようなありさまだ。

「ク……方向を見失う」

「ま、前が見えない」

 ズコ ゴッ ゴツン ガツン ボコ ドゲシ ガシッ

 風穴の側壁にぶつかり、並んだブリンダともクラッシュして、このままでは自滅と思った瞬間……。

 

 ズボボボボボーーーーーン!!

 

 数多の一銭醜女たちをまとい付かせながら、風穴を飛び出た。

 なんということだ、風穴はあちこちに広がり、そこから、無数の一銭醜女どもが雲霞の如く湧き出してくる。掲げたバリアは、半分ほどに擦り減り、これ以上の進撃はおろか防御も困難に思われた。

 醜女どもは、ほとんど満天を覆うほどになり、醜女どもの瘴気で隣にいるブリンダの姿もかすみ始めている。

 もう撤退しかないと観念しかけた時、何かが…………弾けた!

 

 ズッゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!

 

 電柱ほどの太さの光の束が雷のように走り、光はプラズマを発して、半径二十メートルほどのトンネル状に醜女どもを蒸発させた。

 穿たれたトンネルの向こうに見えたものは…………北斗だ!

 嵐山のトンネルで瘴気に絡めとられて足止めされていた北斗が、ようやく追いついて、主砲である量子パルス砲を発射して、醜女の山に一穴を穿ってくれたのだ!

「撤退どすうううううう!!」

 光速でトンネルを抜けると、バシュっと音を立てて醜女のトンネルは閉じてしまった。

 

 

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ライトノベル 魔法少女マヂカ・136『千曳の大岩!』

2020-03-11 13:19:26 | 小説

ライトノベル 魔法少女マヂカ・136

『千曳の大岩!』語り手:マヂカ    

 

 

 ズンズタッタ ズンズンタ! ドコドコドコドン! ズンチャカズンチャ! カカズズンチャ!

 

 ウズメが一旋すると、古代から現代に至るまでのリズムが一斉に鼓動し始めた!

 ビバップ! ヒップホップ! ブレイキン! ロック! サンバ! ルンバ! ポッピン! カワチオンド!

 これだけのリズムが刻まれれば、何のことか分からない騒音になりそうなものだが、全てのリズムが明瞭に聞こえ、体ばかりでなく魂までもが揺さぶられる。

 唐突に始まったのに、ウズメが最初の旋回を終える前に、わたしもブリンダも追随して旋回してリズムを刻み始めた!

 ドコドコドコドン! ズンチャカズンチャ! カカズズンチャ! ズンズタッタ ズンズンタ!

 二旋目に入ると、ウズメの衣はサヤサヤと解れ始め、三旋目には、身にまとっているものは全て解れ果て、数枚の衣の解れが気短な惑星のように、流星のようにウズメを中心にまとわりつくだけだ。

「すごい、単に裸になるんじゃなくて、僅かな断片だけはまとわりついて、すごいエロチシズムだ!!」

「何を感心しているんだ、オ、オレたちも、ほとんど同じなんだぞ!」

 ブリンダに言われて気づく、ウズメほどではないが、魔法少女のコスは、あらゆる縫い目がほつれてしまって、ウズメとわたしたちを取り巻いて土星の衛星のように取り巻いて、かつ、うねりだした。

「ちょ、ちょっと、胸が丸出しぃぃ!」

「あきまへん、もっと自由になりなはれぇ、もっと跳びなはれぇ(^^♪」

「し、しかし(;'∀')」

「爆ぜろリアル! 弾けろシナプス! どすえ! このウズメのようにいいいいいいいいい!!」

 ウズメの姿は古事記にある通り、胸乳(むなぢ)も陰(ほと)も露わに舞い狂い、いっしょに踊っている、わたしでさえ見とれてしまう。

「もっとぉ! もっとぉぉ! もっとぉぉぉぉぉ! 跳びなはれぇ! 爆ぜなはれぇ!」

「し、しかしぃ……」

 八百年を超えて魔法少女をやっているが、やはり女だ、ウズメのようにはいかない(^_^;)

「も~まどろっこしいぃ」

 ウズメが流し目をくれて意識が飛んでしまった! 

 

「いまどす!」

 

 かすかに残った聴覚がウズメの声を捉える。

 千曳の大岩が小さく開き、開いたスリットの中に、熱に浮かされたような瞳が幾百と煌めくのが見えた。

 黄泉醜女(よもつしこめ)たちが、我々三人の舞踏に感応し、鼓動を同期させてしまって、戒めを解き始めたのだ。ブリンダもわたしも舞踏のリズムを刻んだままスリットに突入、たちまちのうちに岩戸の内に、文字通り踊りこんだ!

 醜女たちは、熱と勢いに飲み込まれ、ウズメとわたしたちは水中に投ぜられた灼熱の鉄球!

 見る間に周囲の醜女どもを粉砕、蒸発させてしまった。

 しかし、醜女たちの数は天文学的なもので、うかうかしていると、呑み込まれそうな圧だ!

「十銭玉!」

 ウズメの声に、わたしもブリンダも、慌てて十銭玉を装着した。

 

 

 

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ライトノベル 魔法少女マヂカ・135『醜女らの誇り』

2020-03-07 14:35:05 | 小説

ライトノベル 魔法少女マヂカ・135

『醜女らの誇り』語り手:マヂカ    

 

 

 うちらだけでやり遂げますえ!

 

 ハンナリした京都弁だが、ウズメの強い意思は通じた。

 通じたんだけど、100万馬力でなければ開かない岩戸を、合わせて20万と50馬力にしかならない三人でどうすると言うのだ!?

「うちが、なんで天岩戸の前で踊ったか分かっといやすか?」

「オレは、見たことないが、話ではウズメが狂おしく踊って天照大神の注意を引いたと聞いているぞ」

「天照大神が僅かに岩戸を開いたところを田力男が一気に開いた!」

「だから、田力男が居なければ、どうにもならない」

「岩戸というもんは、神の力で閉めるもんどす。デフォルトでは100万馬力が要るけど、踊りで神さんの好奇心を揺すぶると、どんどん閉める力は弱まっていくんどす。つまり、うちらが上手な踊りをすればするほど閉める力は弱まって、最後は向こうの方から開けるようになりますのんや」

「そうなのか?」

「ウズメに二言はおまへん。せやけど、うちの力では出血大サービスいうとこまでは開かしまへん。ここは、お二人にも踏ん張ってもろて、完全開放にまでもっていくんどす!」

「わたしとブリンダにも踊れって言うのね?」

「オ、オレは戦ってばかりだったから踊ったことなんて……」

「ウズメは芸事の神さんどす。願うておくれやしたら、AKBとか乃木坂程度のスキルは身に着けさせたげます! さあ、願いなはれ!」

「え、えと、じゃあ、いっちょう頼むわ」

「それじゃ、ダメだよ」

 ブリンダはアメリカの魔法少女だ。お願いの仕方が分からないのだ。

「こんな風にやるのよ」

 お参りの正式な作法である『二礼二拍手一礼』を身をもって教えてやる。

「こ、こうか?」

「背中を丸めちゃだめ、美しく45度の角度まで……背中は曲げない、そうそう、そして、二回拍手して、もう一度お辞儀!」

「よろしおす……これで、こなたさんには、うちと並んで舞う力が備わりましたえ」

「それじゃ!」

 やる気満々になったブリンダは、ステップを踏み始めるが、ウズメは手を挙げて制止した。

「もう一つ言うとくことがおます」

「な、なんだ?」

「ここを閉じてる力は伊邪那美(いざなみ)が、その下僕の黄泉醜女(よもつしこめ)どもの怨念を束ねてやってる災いどす。うちらは、その醜女どもの怨念を踊りで和らげるんどす」

「そうよね」

「分かってる、このブリンダ、一世一代のダンスを見せてやるぞ!」

「話は、その次どす」

「「つぎ?」」

「踊りを中断して黄泉の国に踏み込むと、正気に戻った醜女どもが怒り狂って襲い掛かってまいります」

「入ってしまえばこちらのものだ!」

「この風切丸で刻んでやる!」

「醜女一人一人の力は知れてると思うんどすけど、数が読み切れまへん。これをお持ちやす」

「これは……」

 ウズメが手渡してくれたのは十銭白銅貨だ。明治からこっち、何度もモデルチェンジされた貨幣で、穴あきと穴ナシがある。これは、大正時代の穴あき白銅貨、令和の時代の十円玉に相当する、下から二番目の通貨だ。

「これをどうするんだ?」

「手に余ったら、これを目にハメて醜女どもを睨んでやっておくれやす」

「睨んで、どうなるの?」

「醜女どもは一円玉をお守りにしてるんどす」

「一円玉?」

「へえ、一円は、これ以上崩しようのないお金どっしゃろ」

「ああ、一円玉ブス!」

「なんだ、それは?」

 アメリカ人のブリンダには分かりにくい。

「ブスというのは、見ただけで目が潰れると言う伝説の毒なんだよ。これが転じて見るに堪えない醜女のことをブスというようになったんだ」

「UGLYという意味なんだろうが、ずいぶんな言い方だな(;^_^」

「せやけど、そこが醜女らの誇りなんどす。せやさかいに、十銭の目力で睨まれると力を失うてしまうんどす」

「そうか、日本人と言うのは面白いことを考える!」

「しかし、一銭を出されたら太刀打ちできなくなったりしない?」

「そら、大丈夫どす」

「なんで?」

「醜女らも代替わりして、みんな戦後生まれの醜女どす。一円より下があるとは思てしまへん」

「そ、そうか」

「ほなら、いきますえーーー!」

 

 ウズメが手を挙げると、ドラムロールがドロドロと鳴るなか、巨大なステージとバンドが現れ。三人うち揃ってリズムに乗った!

 

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魔法少女マヂカ・134『時空の穴から黄泉比良坂へ』

2020-03-03 14:20:06 | 小説

魔法少女マヂカ・134

『時空の穴から黄泉比良坂へ』語り手:マヂカ    

 

 

 絡みつく瘴気が取れ次第、北斗は進発することにして、わたしとブリンダはウズメに続いて次元の穴に飛び込む。

 

 ウニュ~~~~~~💦

 

 ウズメがブチ開けた時空の穴は、なんとも粘液質というか絞ったゴムかシリコンのチューブの中を行くような不快さがある。

「足から突っ込んだのがまずかったか……コスがまくれ上がって……(;'∀')」

「なんだか……みっともない(^_^;)」

 二人がが文句を言うとウズメが器用に上下を逆さまにしてくれる。

「なんだか、逆子を直すみたいだな」

「時空の穴は、時空と時空の間に産道をつけたようなもんどすから、おつむは進行方向。体の力を抜いて、穴の蠕動運動に身を任せることどすえ」

「そんなものなのか?」

「おお、なんとなく分かるぜ。カチカチのウンチってのは出るの大変だからな(;゚Д゚)」

「ブリンダ、例えが悪い」

「ホホホ、どっちゃでもよろしい。途中で余計なもん見えるかもしれまへんけど、けして目を奪われんようにしとくれやす」

「「余計なもの?」」

 揃って言ったのが悪かったかもしれない。絡みつく襞が透明になり、なにやらスポットライトが当たったように見えてくるものがある。

 日暮里の駅と、その周辺のような……人通りが無く、信号は赤の点滅を繰り返し、時おりゴミが風に舞いあげられている。ビルの向こう側、遠近の数か所から黒い煙が上がっていて、何かを焼く嫌な臭いがする。

「人を焼く煙どす。コロナウイルスの対応に失敗した最悪の未来どすなあ」

 そんなものを見てはたまらないので、シンクロナイズドスイミングのように手足を動かして向きを変える。

「なんだか、日の丸を引き裂いてるぞ……」

 大勢のアジア系とみられる者たちが、日の丸を引き裂いて叫んでいる。外国語なのだが、耳が自動で翻訳モードになって日本語に変換される。

―― コロナウイルスの発現地は日本だ! 日本は謝罪と賠償をしろ! ――

『ちがう、日本は被害者だったんだ』

―― だったら、なんでお礼を言いに来るんだ! ――

『マスクや防護服を送ってくれて勇気づけてくれた、そのお礼だ』

―― 嘘つけ、日本が発現地だと、学者も政府も言ってるぞ! ――

―― 謝罪と賠償だ! ――

 なんだ、これは……!?

「それもコロナウイルスの対応を間違えた未来の一つどす、もうじきどすよって、目ぇつぶっときやす」

「「あ、ああ」」

 目をつぶると、見えなくなり、音声も小さく消えて行った。

 

 フワフワ

 

 チューブの中で締め上げられるような束縛感が霧消して、無重力空間に放り出されたような浮遊感がした。

 ドスン!

「「イテ!」」

 マジカとそろって尻餅をつく。

 あたりを見回すと、緩やかな坂道に着地したようだ。周囲は深い木々に覆われ、生臭い水が腐ったような臭い。左の茂みに水面が見え隠れしている。

「あの池に次元の出口が繋がっとったんどす」

「え?」

「あそこから出てきたのか!?」

「一瞬のことどすから、臭いは……首尾よう帰ったらファブリーズどすなあ」

「ハハハ、まあ、すぐに慣れるさ」

「あれが……」

 ウズメが指差したのは坂道の上、そこだけが緑に覆われることが無く、岩肌が露出している。

「千曳の大岩どすなあ」

「え、あれが?」

 近づいてみると、それは岩肌ではなく、五階建てのビルほどの大岩だ!

「これを動かすのか……?」

「重量……百万トンはあるぞ!」

 一トン動かすのに一馬力いるとして百万馬力以上の力が居る。

「ブリンダの出力は?」

「オレは、せいぜい十万馬力だ」

「わたしも、それぐらいだ。ウズメは?」

「五十馬力くらいどすやろか?」

 え、合わせて二十万馬力ちょっと……ぜったい無理だ。

「思い出した! ウズメさん、踊るのはあんただが、岩を動かすのは田力男命(たぢからおのみこと)だ!」

 田力男は高天原最高の力持ちで、たしか相撲取りの守り神になっているはずだ。

「タヂカラさんは、せいぜい百人力どす。まあ、天岩戸よりも小振りやさかい、大丈夫、最後は魔法少女はんお二人の力でも開きますえ(o^―^o)」

 嘘だろ……。

 

 

 

 

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魔法少女マヂカ・133『嵐山トンネル』

2020-02-28 15:00:43 | 小説

魔法少女マヂカ・133

『嵐山トンネル』語り手:晴美     

 

 

 プシューーーーーーー

 

 トンネルに入ったところで北斗は停止してしまった。

「機関オーバーヒート、足回りに固着物あり、しばらく動かせない」

 友里が示したモニターには、釜の部分が真っ赤になった北斗の断面図が出ている。

「出力が戻るまで停車、トンネルの出入り口方向の警戒を厳にしろ」

 北斗のスペックから言うと、京都駅からここまでの戦闘は十分許容範囲なのだが、忍者や牛頭馬頭どもの瘴気は、釜だけでなく足回りも疲労させてしまった。しばらく停車して回復させなければならない。

 クルーたちも慣れたもので、機関や足回りをクールダウンさせながら、嵐山口から二百メートル入ったところで、模範的な停車を決めた。

「瘴気が固着しないうちに除去するぞ」

「「「ラジャー」」」

 友里がツールボックスから瘴気落としのハンマーを取り出して、みんなに配る。

「え? オレもやるのか?」

 ブリンダがプータレるのを目力で押さえ込み、クルーは運転室から飛び出る。

「うちも、手伝わしてもらいますえ」

「気持ちはありがたいけど、その巫女服じゃ」

「ほなら、これで……えい!」

 スピンしたかと思うとウズメは、ちょっと昔の体操服姿になった。胸には『うずめ』と平仮名で書いてある。

「漢字の天鈿女命やと読めしまへんやろ」

「あ、いや、まあ、全員女子だからいいんだけどね(^_^;)」

 体操服と言ってもワンサイズ小さ目なブルマ姿で、同性のわたしが見てもエロい。だれかに似ていると思ったら、アキバでメイドをやっていたころポップなんかで見かけたスーパーソニコだ。

「あたしは、初期設定が天岩戸のあれどっしゃろ……胸乳をば掛き出で裳紐をほとに忍ばし垂れて踊りまくった姿どっしゃろ、どんなコスになっても、こないなりますのんや」

 カンカン カンカン カンカン

 トンネルに瘴気を掻き落とすハンマーの音が響く。

「ウズメさんて、何をした神さまなんですか?」

 ノンコが作業の手は休めずに聞いてくる。調理研の三人は日本神話など習ったことが無いのだ。

「天照大神(アマテラスオオミカミ)が天岩戸にお隠れやした時に、岩戸の前で、ぶっ飛んだダンス踊らしてもろて、天照大神さんを無事にお出ししたんどす」

「えー、どんなダンスなんですかあ?」

「せやかかいに……」

 ウズメは瘴気を掻き落とすハンマーの音に合わせて、天岩戸の下りを説明する。いや、説明というよりは、ワンマンショー、これでは作業がはかどらないと思いつつも見入ってしまう。

「ウズメさんて、アキバでメイドやってもナンバーワンになれそう♪」

「メイドどころか、アイドルだってできそう(^^♪」

「ちょっとR指定だけど🎶」

 クルーたちものってくる。

「あたして、そっち方面の神さまでもあるんどすえ(^▽^)/」

 そうだ、車折神社というのは芸能の神さまでもあるんだ。

「でもさ、てか、だったらさ、天岩戸とかいうの開けたのなら、千曳の岩もどうにかなるんじゃない?」

 サムが、確信的なことに思い至った。

「え、あ、黄泉比良坂(よもつひらさか)にあるやつ? 軽いもんどすえ(⌒∇⌒)」

「じゃ、手伝ってもらったら?」

「あ、岩どけるだけやったら」

「「「「「「ほんと!?」」」」」」

「へえ、太秦ではご迷惑かけましたよってに」

「あ、じゃ、急いで瘴気落とそう!」

「千曳の大岩どしたら、黄泉比良坂まで道つけますよ」

「そんなことができるのか!?」

「女子の細腕やさかいに、蒸気機関車通すほどのは無理どすけど、うちの他に二人ほどテレポさせるくらいには」

「じゃ、わたしとブリンダが行く!」

 正魔法少女の二人が手を挙げた。

 

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魔法少女マヂカ・132『太秦あたり・3・天鈿女命(アメノウズメノミコト)』

2020-02-22 16:39:31 | 小説

魔法少女マヂカ・132  

『太秦あたり・3・天鈿女命(アメノウズメノミコト)2』語り手:マヂカ 

 

 

 弥勒さん……弥勒菩薩さん……弥勒菩薩半跏思惟さん

 

 ウズメさんが弥勒さんに呼びかけるが、弥勒は居ねむっているのか反応が無い。

「ミロクというのは恥ずかしいのか?」

「恥ずかしいから、寝たふりなの?」

 ブリンダとサムがスカタンをかます。

「恥ずかしいのではなくて半跏思惟(はんかしい)、片足だけの胡座で考え中ってことよ」

 

 パコーーン

 

「あたしが出てきたのに寝たふりはないでしょ!」

 ウズメに張り倒されて、目を白黒させ、ゆがんだ冠を直すミロク。

「え、あ、あ、あたし?」

「弥勒菩薩半跏思惟ってのは、あんたしか居ないでしょ!」

「あたしは広隆寺の弥勒菩薩半跏思惟よ、中宮寺にも弥勒菩薩半跏思惟が居るから、分かんな~い(^_^;)」

「ここいらじゃ、あんたしかいないでしょーが!」

「でも、入試とかじゃ、キチンと書かなきゃ正解にならないしい」

「じゃあ、広隆寺弥勒菩薩半跏思惟!」

「えと、拝観時間には、まだ間があるんですけどお……」

「ここは裏次元だから、時間はたたないし、観光客もやってこないよ!」

「あ、あ、そうなの。じゃ、もうちょっと寝てよっかな、ここんとこ考え事多すぎてえ」

「ちょっと待て!」

「あ、痛い痛い、耳引っ張らないでくれるぅヽ(`Д´)ノ」

「おまえの耳たぶ長くて引っ張りやすい」

「もう、激おこぷんぷん丸だよ!」

「古い言い回し……って、それはいいんだ。いや、よくない! 激おこでごまかすな! おまえ、取り巻きたちに魔法少女を攻撃させただろ」

「え? え? ああ、なに、あんたたち!」

 たったいま気が付いたように、忍者たちと牛頭馬頭たちを睨みつける。

「いや、弥勒さまは攻撃命令を出されました。我らは、そのご命令を実行したまでのこと」

 服部半蔵が異を唱える。

「命令? うそよ、いつ、あたしが命令したあ?」

「かように、頬を((^^ゞ)」

「え……あ、ああ、あれはね、ちょっと痒くなったからあ、ごめんね、人騒がせでえ(^_^;)、てへぺろ」

「てへぺろすんな!」

「えと、そーゆうことだから、あなたたち、通っていいよお」

 ええんかい!

「ミロクさまあ、ウズメさまあ」

「「なに!?」」

 黒牛頭が折れた車軸を持ち上げて不足を言う。

「車軸が折れちまって、仕事にならないんすけど」

 黒牛頭がリーダーだったようで、牛頭馬頭どもが、いっせいに車軸の折れを持ち上げる。

「ああ、ごっめん! それはあたしだわ。あたしって車折神社の御祭神だから、プンスカすると車軸折れちゃうのよね。まあ、保険でなんとかするから」

「え? 保険きくんすか!」

「うん、岸和田のダンジリ保険の保険屋に入ってるから。修理が済むまでは代車でやっといて。牛頭馬頭が動かなかったら、亡者どもを地獄に送れないもんね」

「ほんじゃ、我々は、これで」

 牛頭馬頭たちは納得すると、次々に姿を消していく。気づくと、弥勒と忍者たちの姿も見えなくなっている。

「ごめんね、脚を停めてしまって。京都は神さまや仏様で一杯でしょ、古株のあたしなんだけど、神仏習合とかで、いろいろ難しくって。ま、お詫びに少し先までは送らせてもらうわ」

「えと、それは有難いんだけど、ウズメさんの服装……R18指定だから……」

「あ、堪忍どすえ。ほな、これで……」

 

 ドロンとバク転すると、普通の巫女姿になったウズメさんだった。

 

 北斗はウズメさんを乗せて、嵐山のトンネルに入っていった……。

 

 

 

 

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魔法少女マヂカ・131『太秦あたり・2』

2020-02-21 16:26:13 | 小説

魔法少女マヂカ・131  

『太秦あたり・2』語り手:マヂカ 

 

 

 気配だけが巨大な圧となって北斗と外から北斗を守護する我々正魔法少女に押し寄せる。

 決壊寸前の巨大なダムの前に居るようだ。

 

 一人一人の能力が高くとも、数万、いやそれ以上の忍者たちの一斉攻撃と、千数百年溜めこまれた弥勒菩薩の法力が解放されてはどうにもならない。

「そんなに、あのミロクというのは凄いのか?」

「やせっぽちの小学生くらいにしか見えないけど……」

 ブリンダはアメリカ、サムはカオスの魔法少女だ。百鬼夜行のようなオタク妖怪は分かっても、千数百年の昔から祀られている弥勒のことは計りかねるのだろう。

「弥勒は、京の都が沼地であった頃から住んでいる。都は渡来人の秦氏(はたし)が一族の総力を挙げて桂川を飼いならし、水を抜いて人が住めるようにした土地だ。秦氏は、それを惜しげもなく桓武天皇に差し出して、この千年の都が作られたのだ。桓武天皇は、秦氏に報いようとしたが、秦氏の希望は広隆寺一つ建てることだけだった。秦氏の真の狙いは、分からぬままに現在(いま)に至っている」

「マジカ、太秦って、太い秦って書くのよね」

「太というのは大の美称なのよ、桓武天皇は無欲な秦氏に報いようと姓の上に『太』を付けて太秦としたのだ。あの、弥勒の微笑は底が知れない……」

 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴ ゴゴゴゴゴゴゴゴ ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

「なんだ!?」

 北方の化野の方角から、赤々と炎をまとった車たちが押し寄せてきた。

「牛と馬の化け物!」

「ケンタウロスとミノタウロス!?」

「違う、牛頭と馬頭……地獄の車引よ。地獄の底から湧いて出たゴミどもよ」

「あいつらも様子見か!?」

「カギを握っているのは弥勒……」

 ブリンダもサムも西と北からの圧を受けて暴発寸前だ、このままでは、二人のどちらかが耐え切れずにフライングしかねない。

「弥勒と話しを付けてくる、二人とも、徴発にのったりしないで」

「あ、ああ」「うん」

 二人に念を押し、広隆寺までジャンプしようとした時、ソヨリと弥勒の指先が動いた!

「来るぞおおおおおおおおお!!」

 万余の忍者と牛頭馬頭ども堰を切ったように襲い掛かってきた!

 こうなると、敵にも味方にも言葉は通じない。

 正魔法少女三人は、数百年、千数百年鍛え上げた魔法少女、戦乙女の裂ぱくの雄たけびを上げて突きかかるだけだああああああ!!

 セイイイイイイイ! ドゥオオオオオオオ! オリャアアアアアアア!

 それぞれの得物を手に一閃!二閃! 瞬時に数百の忍者と牛頭馬頭を車ごと粉砕! 撃滅!

 敵どもは一度は足を止めるが、刹那の後に、大旋回しながら車掛かりに攻め込もうとする!

 我々は、無言のうちに三人背を寄せ合って守りを固める。下方では北斗が停車している。今のところ北斗に手が回っていないのが救いだ。

「正面を突破して、活路を!」

「やってみるか」

「うん」

 三人力を合わせたところで異変が起こった。

 バキ! バキボキ! ボキバキビキバキバキバキ!

 なんと、牛頭馬頭たちの車の車軸が一斉に折れだしたのだ。

「いったい、なにが起こっているのだ!?」

 忍者たちも異変を恐れて映画村の上空に引いていく。

 

「いやあ、遅くなってごめんねえ(^_^;)」

 

 レールの上空に巫女服のメイドがキラキラのエフェクトをスパークさせながら出現した。

「メイドか?」

「アキバの定番?」

「バジーナ・ミカエル・フォン・クルゼンシュタイン一世 、アキバなら、先生の専門でしょ、あれはなに!?」

『巫女服というのはゲームとかラノベの世界にあるものでな、実際のアキバではコスプレ以外にはありえないぞ。それに、あのメイド服、スケスケで、動くたんびに隙間から中が見えるし……R18指定ものだぞ!』

 そうなのだ、ちっともじっとしていないで、エロいダンスをしまくって、忍者も牛頭馬頭も弥勒さえも目を奪われている。も、もしや、もしや、あやつは?

 

「あたしは、車折神社の天鈿女命(アメノウズメノミコト)ですよ~ん☆彡☆彡☆彡」

 

「え、神さまなのか!?」

「あ、あれが?」

 あ……そうだ、あの人は、そういう神さまなのだ……どう説明していいのか、こいつ……いや、この神さまをどうしていいのか、ちょっと頭がスクランブルエッグになるマジカであった。

 

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魔法少女マヂカ・130『太秦あたり・1』

2020-02-16 15:04:31 | 小説

魔法少女マヂカ・130  

『太秦あたり・1』語り手:晴美 

 

 

 西に向かってるから気を付けろ。

 

 二条で百鬼夜行を躱した。

 危ないところだったけど、マヂカたち正魔法少女の機転で乗り切れた。

 山陰線は二条を過ぎて、大きく西へ曲がる。

 まだ彼方ではあるが、黄泉比良坂のダークメイドと正対する。気は抜けないのだ。

 だから、誰に言うともなく注意喚起をした。

「……なんだか視線を感じるよ」

 一番子どもっぽいノンコが言い出したのは意外だった。

「正面……少し北に寄れた方角からです」

 加減弁に手をかけて友里がこちらを向く。機関士なので、視線を投げかけててくるものを気にしているのだ。徐行して様子を見るか、戦闘を避けて全速で突き抜けるか。

「すごい目力……パルス弾打ちますか?」

 砲雷手の清美は視線の主を威嚇して突っ切りたい。

「正体は分かっているが敵性の判断がつかない、原速で走れ」

「「「ラジャー」」」

「あの目力はなんなのニャ―?」

「妙心寺の八方にらみの龍だ。様子を見ているのだ、敵認定されたら襲ってくる……」

 四百年の昔、狩野探幽が八年の歳月をかけて命を吹き込んだ傑作、敵に回せば面倒な相手だ。

「十一時の方角に多数の敵性反応! 忍者と思われる!」

 清美がモニターに映像をあげる。北斗の高性能レーダーが数十個のドットを浮かべている。

 忍者に特有のドットで、現れては数秒で影が薄くなる。忍者は動いた瞬間でしか影を捉えられない。ドットは明滅しながら北斗を取り巻こうとしている。

「マヂカ、正魔法少女三人で当たってくれ」

「ラジャー」

「おそらくは太秦映画村の忍者、数が多い。全滅させなくてもいい、優勢のまま突き抜ければ振り切れる。劣勢になれば、様子見の龍も襲い掛かってくる」

「任せて!」

 マヂカが飛び出すとブリンダとサムも後に続く。

 忍者たちがマヂカたちに指向すると、さらにその向こうに新たな気配。

「注意しろ!」

「眠っているように弱い気配です、全速で突っ切れば……」

「甘いよ友里、あれは広隆寺の弥勒(みろく)だ。侮ってはいけない。やつは平安京が出来る前からここにいる。眠ったような目が開くか、頬にあてた指が動くようなら攻撃のシグナルだ。清美、いつでもカウンターを食らわせられるようにチャージだけはしておけ」

「ラジャー」

 清美はゆっくりとパルス砲のエネルギーを120%に上げ始めた。パルスガを使えば確実に撃破できるが、こんな序盤で奥の手を晒すわけにはいかない……小倉山のトンネルを抜けるまでは気が抜けない。

 今のところ、我が方は連携の良さだけが頼りか……。

「どうぞ」

 ノンコがハンカチを差し出す。自分が脂汗を流しているのに初めて気が付いた。

 

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魔法少女マヂカ・129『二条大路の百鬼夜行』

2020-02-12 14:34:07 | 小説

魔法少女マヂカ・129  

『二条大路の百鬼夜行』語り手:マヂカ 

 

 

 クルーである調理研の三人と隊長は残ってもらった。北斗を守らなければならないからだ。

 

 ミケニャンも戦力にならないので残してきた。

 二条駅の妖に戦いを挑むのは、わたしとブリンダとサム、三人の正魔法少女だ。

 

 駅の改札を抜けるとセピアの電灯が灯った待合室。正面は車寄せの付いた正面出口、勢いで外に出たくなるが、様子を窺うために立ち止まる。

 示し合わせたわけではないが、ブリンダとサムも歩みを止める。

 三人とも魔法少女として同程度のスキルを持っている証だ。

「貴賓室……」

 呟いただけで、一番近くのサムが瞬間移動して貴賓室をロックした。

「ロックしたわよ。何者かの気配がしたけど、封印しながら威嚇したら、直ぐに大人しくなった」

「問題は外だ。すごい量の妖気を感じる」

「ステルスの呪(しゅ)をかけてから出よう」

 印を結んで、自分に呪をかけ、サムとブリンダにも念入りにステルスの呪を掛ける。

「このステルス、視界がボケる」

 サムはカオスの魔法少女なので、我々には出ない副作用があるようだ。

「少しすれば慣れるだろうけど、それまで、オレとマヂカの間にいるがいい」

「うん、そうさせてもらう」

 

 駅前に出てサムが慣れるのを待つ。

 

 ザザザザ ザザザザ ザザザザ

 

 かなたの前方から、なにか大勢の者が寄って来る気配がした。

「来るぞ!」

 ブリンダが身構えつつサムを後ろに庇った。

 この気配は……?

 息を潜めつつ記憶を探る。

 都は二条付近の妖どもに関する記憶……。

「一つ一つは非力な妖だが、数が多すぎる。まともに相手をしていたら、漏れたやつが北斗に迫るぞ」

 そうなのだ、この気配は百や二百の数ではない。地獄の底から陸続として湧いて出てくるのではないかと思われるくらいだ。

「湧いて出てくる……」

「無限なるものには対応の仕様が無いぞ」

「こいつらは……」

 思い出した、こいつらは平安の昔から丑三つ時の二条通に現れ、目にしたものを様々な不幸に陥れるという妖のパレードだ。

「どうする? 三人で掛かれば時間は稼げるが……」

「北斗がな……出発しても、無限に二条駅がループするんじゃ意味ないし」

 こんな序盤で足踏みしていては、永久に黄泉比良坂には着けない。恐るべしダークメイド。

「ねえ、これってアキバのダークメイドの仕業なんだよね?」

 ブリンダの陰に隠れていたサムが、なにかを思いついたように指を立てた。

「うん、だから黄泉比良坂に……」

「アキバって言えば、いろいろ規則があったでしょ……過度に露出するコスはダメとか、チラシ撒いていい場所とか、プラカードの規制とか……そもそも交通のルールとかは……思いついた!」

「あ、サム!」

 言うが早いか、サムはテレポしたかと思うと、通り一つ向こうまで迫ってきた百鬼夜行の先頭を阻むように立った。

 そして、パチンと手を叩いて、何かを実体化させた。こちらからではよく分からない……が。

 百鬼夜行は、その出現したモノのために行進を停めたではないか!

 

「サム、いったい何をしたんだ!?」

 

 戻ってきたサムにブリンダが詰め寄る。

「アキバってば、中央通とか昭和通りとかあるけど、みんな交通ルールをきちんと守ってるよね」

 アキバは日に何十万人も押しかけるオタクの街だ。そう言えば、あの百鬼夜行、オタクの群れに見えないこともない。

「向こうからしか見えないけど、信号機を立てておいたんだ。ずっと赤信号のまんまの信号機」

「しかし、赤信号だけでよく停まったな」

「うん、ダークメイドの姿をした信号機。目が赤く点滅してる」

 なるほど、永久ではないかもしれないが、ダークメイドと決着をつける間くらいはもちそうだ。

 

 駅に戻って北斗を始動させると、こんどは無事に円町駅が見えてきた。

 

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魔法少女マヂカ・128『ループする二条駅』

2020-02-09 17:38:29 | 小説

魔法少女マヂカ・128  

『ループする二条駅』語り手:マヂカ 

 

 

 

 京都駅を出発すると梅小路京都西駅、丹波口駅を経て二条駅。

 

 装甲列車が出てきたので梅小路には気を配ったが、霞の向こうに鉄道博物館が濃灰色のシルエットになって沈もるばかり。念のためボイラー室側壁のガンピットから量子カノン銃を覗かせて警戒するが、北斗は梅小路公園の縁を撫でるようにして、たちまちのうちに丹波口駅に迫る。

「とりあえずは無事の発進かニャ……」

 ミケニャンが早々と安どのため息を漏らす。

「どれぐらいで黄泉比良坂に着くのかな?」

「いまの北斗はSLモードだから、無事に行けば十時間くらいじゃない? ノンコ、眠かったら寝ていていいよ。ブリンダとサムが寝台車取ってきてくれたから」

「まだ、大丈夫だよ」

「あ、高架になったぞ」

「そうか、京都市内は高架工事が完了しているんだ……」

 京都は休眠前に訪れた戦前の印象しかない。山陰線の高架と言えば餘部鉄橋があるくらいで、ずっと地上を走るイメージしかない。

「うわあ、お寺みたいな駅だ」

 ノンコが和風の二条駅を珍しがっている。

 二条駅は古都のイメージを壊さないように寺院建築を模した和風の駅舎になっている、離宮として使われた二条城が近いこともあって、天皇や皇族方の利用を考慮して、その規模の割には貴賓室を備えているなど、地味な割には凝った造りになっている。

 あれ……?

 二条駅は地上駅のはずだ、高架になって目の高さに地上駅が見えるのはおかしい?

「マヂカ、進行方向に同じ駅が見えるぞ」

 ブリンダも警戒の声をあげる。

「その向こうにも……」

 次々と二条駅が現れては後方の霞の中に消えていく。

「ループしている……」

「友里、二条駅を検索してくれ、いまの二条駅の姿をモニターに出すんだ!」

 安倍先生が叫ぶ、聖メイド服であるバジーナ・ミカエル・フォン・クルゼンシュタイン一世の衣装をまとったまま男っぽく命ずるのは、なにか倒錯した魅力がある。

「これです!」

 すっきりした高架の駅舎がモニターに映し出される。

「みんな、この駅のイメージを持って!」

 しかし、少し遅かったようだ。和風の二条駅駅舎は次々にループしていく。

「総員戦闘準備! 次の二条駅に停車して妨害している霊魔を撃破する!」

「「「「「「ラジャーー!」」」」」」

 

 総員の声が揃い、機関士である友里が加減弁を押しブレーキをかけた。

 

 

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魔法少女マヂカ・127『裏次元 京都駅0番線』

2020-02-05 14:39:47 | 小説

魔法少女マヂカ・127  

『裏次元 京都駅0番線』語り手:安倍晴美 

 

 

 高機動車北斗は京都駅0番線の軌道上に降り立った。

 

 京都駅と言っても裏次元の京都駅であって、停車しているのはC54の外形をしている北斗だけだ。

 0番線というのが意味深に感じられるが、とりたてて不思議なことではない。1番から14番までのホームが出来ていた後に、山陰線のホームを作らなければならなかったので、既存のホームナンバーを変えるとダイヤ編成やら利用者の混乱を招く。そこで駅舎の手前に作って0番としたのである。ちなみに、日本国中で0番線が存在する駅は四十ほども存在する。

 この0番線のホームは全長五百メートルほどもあって、日本最長である。

 実は、このホームは四百年以上の昔に、豊臣秀吉が都の羅城として築いた『御土居』の跡である。都に羅城があったというのはこういう理由だ。

 天下を取った秀吉に明国の学者が、こう言った。

「太閤殿下、都が羅城に囲まれていないのは異なものでございます。その昔には羅城門も存在していたと聞き及びます。日ノ本の威容を内外に示すためにも、羅城の建造をお勧めいたします」

 なにごとも威容や威厳を大事に思う秀吉は、この明国の学者の進言を取り入れて、都を囲む羅城を建造し、御土居と名付けた。

 しかし「太閤殿下のお力と豊臣家の揺ぎ無き力を思えば都が戦火に晒されることを前提にした羅城など無用でございましょう」という石田三成たちの検索をいれて御土居の建造は半ばで中止とされた。その歴史的遺構の上に北斗は降り立ったのだよ。

 

 はあ…………。

 

 魔法少女達がそろってため息をつく。

「なにも出撃中に授業しなくても……」

「で、でも、知らないことだったので、為になりましたよ(^_^;)」

 ノンコが正直に言ったのを清美が取り繕う。

「そ、そう、いい話でしたよ(^_^;)」

「友里、ヨダレを拭きな」

 

 0番線に入ったのはいいのだが、濃密な靄に覆われて身動きが取れないのだ。おそらくはダークメイドの妨害だろう。いたずらに先を急いでは足元をすくわれる。

 それに、黄泉比良坂まではレールの上をC54として走行せねばならず、敵の妨害が無いとしても一昼夜はかかる。

 北斗は戦闘車両であるので、居住性が著しく悪い。そこで、京都駅に隣接する梅小路鉄道博物館から寝台車を借用するためにブリンダとサムを向かわせているのだ。その間に教育を兼ねて京都駅0番線のレクチャーをしているのだけど、つい授業のようになってしまったというわけだ。

「来たニャー!」

 居ねむっていたミケニャンが耳を立てた。どうやら寝台車がやってきたようだ。

「待って!」

 車外に出ようとしていたミケニャンを清美が制した。

「これは……装甲列車!?」

「敵!」

 身体が反応してコマンドパネルを開くと、瞬時に頭脳がウェポンの選択をする。

「前方シールド展開! 全速後進! 量子カノンよーい! パルスエネルギー充填急げ!」

「ラジャー! 量子カノン発射準備照準よし!」

「目標、敵装甲列車! テーー!」

 量子カノンの発射と起動が同時になり、北斗は通常の倍の速度で0番線を全速後進した。

 

 ズッゴーーーーン!

 

 それまで停車していた空間に火球が弾けた。危ないところだった。

「パルスエネルギー充填90パーセント」

「よし、発射と同時に後進いっぱい! テーーー!」

 

 ズッゴゴーーーーーーーン!!

 

 撃破できなければ逢坂山のトンネルまで後退しようと思っていたが、90パーセント充填のパルス砲でも、なんとか撃破できた。

 完全には撃破できなかった装甲列車はフォルムを残していたが、背後から現れた寝台車によってガラス細工のように蹴散らされた。

 引き込み線に入って寝台車を連結し、北斗は黄泉比良坂を目指して0番線を後にした。

 

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