大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・ライトノベルベスト『リセウォッチング奇譚・2』

2015-10-25 07:38:04 | ライトノベルベスト
ライトノベルベスト
『リセウォッチング奇譚・2』
          


 省吾は、その子に誘われるようにして谷四で降りた。

 別に北浜高校の女生徒が誘ったわけではない。地下鉄のドアが開くと、北浜の子はさっさと降りてしまい、慌てて省吾が付いていったというのが、実際であったらしい。

 ちょうど造幣局の通り抜けからの帰りというMが、同じ車両に乗っていて、その一部始終を見て居た。シートの端から端へ話しかけていたのなら、その内容はMにも聞こえるはずだが、Mには、そんな風には見えなかった。
 女生徒が谷四で降りると、省吾は、その女生徒とは無関係に降りて行ったというのだ。

「どこに行くのん?」
「ついて来たら分かる」

 その短い会話だけで、二人は地下鉄の地上出口から出て無言で歩き始めた。

 谷四は、府庁なんかもある言わば官庁街で、夜の九時過ぎにもなると、府知事にこき使われている気の毒で僅かな公務員を除いては人通りは無い。

 二人は、府知事公舎近くの公園にいった。

 夜の官庁街の公園なんて、街灯が灯るだけで、人の気配など無いはずだった。ところが、そこには百人近い高校生が集まっていた。

「ここ、府労連広場て言うの。普段は学校の先生やら、府の公務員の組合が集合場所やら、小さな決起集会を開いてるとこ……」
 省吾は目を見張った、ほとんどの高校の制服に見覚えが無い。
 むろん知った顔など無かったが、みんな、どこか大人びた昭和の女子高生の匂いをさせていた。

「では、みんな、演壇に注目してくれる」

 古い工科高校……というよりは、工業高校という古い呼称が似合う眉尻の高い女子高生が演壇……は無いのに、その高さに上った。
「まずは、出席をとるね。安治川高校、上本町高校、戎橋商業高校、江坂工業高校……北浜高校……城北高校、清遊高校……」
 省吾は無意識に数えた。八十を超える数で、聞き覚えのある高校が十数校含まれていた。

 その聞き覚えのある高校は、省吾が小学校から今までに廃校になった高校だった。

「うちら、今夜旅立つのん」
「旅立つ?」
「聞いてくれて分かったと思うねんけど、うちら廃校になった高校の校霊……」
「校霊?」
「そう、学校には出来た時から魂が宿るのん。人間には仄かにしか分からへんけど、なんでか自分の学校は母校て言うでしょ?」
「あ、それでみんな女子高生のナリなんや……」
「さすが、リセウォッチャーやな」
「で、オレがなんで……」
「あんたやったら、託せる思うて」
「託す。オレに……」

 その時、集まった女子高生たちの視線が省吾に集中した。

 百に近い学校の思い出が嵐のように省吾の頭の中に飛び込んできた。

「しばらく、オレ姿消すから……」
 そう言って、その夜の遅くに省吾がお別れにきた。訳は以上のようなことで、オレはただ頷くしかなかった。

 それから、五年後に省吾はひょっこりと現れた。

 天満の小さなギャラリーで、廃校になった高校のリセウォッチャーとしての展示会をやっていた。
 百点あまりのイラストの前に立つと、直接頭の中に、その学校の歴史の情景が、夢のように浮かんできた。

 そのイラストたちは様々な物語を聞かせてくれたが、共通していたのは寂しさだ。
 特に千九百七十年代に創立され、わずか三十年余りで廃校になった学校の寂しさは痛かった。
――あたしたちを消耗品のように作って壊すくらいなら、もっと他の道があったはず。あたしたちは一生懸命やったんです――

 世間は東京オリンピックで湧いて、この展示会はあまり注目されなかったけど、卒業生や元の教職員たちがちらほらやってきては胸を熱くして帰って行った。

 おれは新聞記者の一年生だけど、いつか新聞で特集を組めればと思う。今は、こうやってブログに書くしかない。

 省吾の姿は、それ以来見かけることは無かった。


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高校ライトノベル・ライトノベルベスト『リセウォッチング奇譚・1』

2015-10-24 14:43:34 | ライトノベルベスト
ライトノベルベスト
『リセウォッチング奇譚・1』
         


 天六を過ぎたとこで省吾が急に立ち上がった。

 二三秒立ち上がっていたかと思うと座る気配がした。オレはスマホでゲームをやってたんで別人やないことだけを確認して、またゲームに没頭した。
「セーヤン、いま通った子見たか……?」
「オレは省吾みたいなリセウォッチャーと違うからな……」

 ここから後は、後に一時戻って来た省吾から聞いた話。

 リセウォッチング言うのは、間違うたら変態扱いされかねん趣味。
 女子高生の制服を電車やら駅のホームで見かけたら観察して、記憶に留め、その記憶の蓄積をもとにスケッチを描きメモを付けてファイルにする。関東に少数生息するウォッチャーが居てて、ベテランは『東京女子高制服図鑑』というベストセラーを出して、前世期の終わりごろに、このウォッチングを変態のカテゴリーから、立派な趣味にした。
 この趣味が、半ば公認されるようなると、逆に学校が利用し始め、制服改訂の資料なんかにして、一時高校の制服モデルチェンジブームを作り、私立高校の合同説明会なんかには、マネキンに制服を着せて並べて分かりやすくしてある。この四五年は公立高校でも似たようなことをやってるらしい。

 省吾曰く、このリセウォッチングには厳しい掟がある。

 スマホなんかで盗み撮りしてはいけない。
 観察している相手に気づかれてはならない。
 友人関係などを利用して実物や資料の提供を受けてはならない。
 観察対象に話しかけたり、ナンパまがいのことをしてはならない。
 同行の士と語らいあうのは構わないが、やたらに自分がウォッチャーであることを吹聴してはいけない。
 あくまでスケッチと資料の収集であり、実物の制服の収集をやってはいけない。
 それから……あとは聞いたけど忘れた。

 オレはゲームに夢中で気いつけへんかったけど、天満橋の駅から乗ってきた子が、信じられん制服を着ていた。

 なんと十年前に廃校になった北浜高校の制服を着てた。
 最近は、有名女子高校の制服のレプリカなんか売ってるらしく、ごく少数やけど、これをコスプレにして楽しんでる人も居てるとか。
「コスプレは雰囲気で大概わかる。あの子は現役の高校生の空気があった」
 省吾は、リセウォッチャーらしく絵が上手い。サラサラっと……珍しく顔から描き始めよった。
「メッチャ可愛い子やんけ!」
 省吾は、この道の使徒らしく頬を染めて、直ぐ制服のスケッチにうつりよった。

 オレが見ると、普通のセーラー服やけど、省吾に言わせると胸当ての刺繍、白線の間隔、ポケットの位置、持ってる鞄なんかが大違いで、旧制女学校から続いた雰囲気を色濃く残しているらしい。
 オレは可愛いということを除くと、今時珍しいお下げやいうことぐらいやった。

 省吾はセオリー通り、距離をあけて付いていき、隣の車両へ。
 横長のシートを五人分開けて座り、他の乗客の隙間から向かいの窓ガラスに写る彼女の姿を観察し始めた。
 天満橋で横の席が空くと、なんと、その子が座ってきた。

「あんた、ずっとウチのこと観察してるでしょ」

 省吾は、心臓が止まりかけた……。


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高校ライトノベル・栞のセンチメートルジャーニー・4『ふるさと』

2015-10-20 07:20:46 | ライトノベルセレクト
栞のセンチメートルジャーニー・4
『ふるさと』
    


 気がついたら、一面の菜の花だった。

「いったいどこなんだろう?」
「栞に分からんものが、オレに分かるか」

 前回はいきなり、昭和三十一年の秋。それも栞が堕ろされた病院のすぐ側、O神社の近くに飛ばされ、栞が堕ろされる状況を追体験してしまった。
 どうも、この地図と年表は使いこなすのが難しいようで、栞がフト頭に浮かんだ場所。時代に行ってしまうようだ。げんに今、栞は「いったいどこなんだろう?」と他人事のように言った。

「田舎の話してたんだよね」
 栞は、菜の花を一本手でもてあそびながら、遠足のような気楽さで歩いている。
「ここ、お母ちゃんの田舎じゃない?」
 そう言われて、周りを見渡すと、母の田舎である蒲生野とは、いくぶん様子が違う。遠くに見える山並みが、幾分いかつく。蒲生野特有の真宗寺院を中心とした村々が見えない。ところどころに灌木に混じって白樺のような、木々が立ち上がり、ちょっとした林になっている。林の彼方には茅葺きの家がたむろした村が見えるが、蒲生野のように、家々が肩を寄せ合うような集村ではなかった。道も畦道ではなかったが、道幅のわりに舗装もされておらず、電柱も……送電鉄塔さえ視野に入らない。
「名の花畑に 入り日薄れ 見渡す山野端 匂い淡し 春風そよ吹く……♪」
 栞が『朧月夜』を歌っていると、一瞬風が強くなり、ソフト帽が転がってきた。
「お……」
 反射神経の鈍いわたしは拾い損ねた。
「ほい」
 栞は、菜の花で、ヒョイとすくい上げ、帽子は、道の脇を流れる小川に落ちずにすんだ。
「やあ、助かりました。ありがとうございます」
 信州訛りの言葉が追いかけてきた。
「はい、どうぞ」
 栞は、帽子の砂を払って、信州訛りさんに渡した。
「どうもです。いやあ、セーラー服なんですね。ハイカラだ、都会の方なんですね」
 この言葉と、周りの様子、そして信州訛りさんのスーツの様子から、大正時代以前だと踏んだ。
「ええ、東京の方です。素性はご勘弁願いたいんですが、怪しいものじゃありません」
「ご様子から、華族さまのように……いえいえ詮索はいたしません。東京の方が、こんな信州の田舎にお出でになるだけで、嬉しく思います。あ、わたし、永田尋常小学校に勤めております高野辰之と申します」
「高野さん……」
「しがない田舎教師ですが、いつか東京に出て勉強のやり直しをやろうと思っています」
 大人びてはいるが、笑顔は少年のようだった。高野という名前にひっかかったが、調子を合わせておいた。
「あれは、妹ですが、ちょいと脳天気で……」
「失礼よ、お兄様。わたくし栞子と申します。兄は睦夫。今上陛下の御名から一字頂戴しておりますけど、位負けもいいところです」
「それは、それは……いやいや、そういう意味ではなく」
「ホホ、そういう意味でよろしいんですのよ」
「あ、いや、どうも失礼いたしました」
 高野さんは、メガネをとって、ハンカチで顔を拭いた。向学心と愛嬌が微妙なバランスで同居した顔だった。
「高野さん、ここは、まさに日本の『ふるさと』という感じですね。わたくし、感心……いえ、感動しました」
「それは、信州人として御礼申し上げます」
「兎を追ったり、小鮒を釣ったり、菜の花畑に薄れる入り日……山の端が、なんとも……」
「匂い淡し」二人は、この言葉を同時に口にして、若々しく笑った。

 それから、高野さんは、信州の自慢話を、本当に楽しそうに語った。しばらくすると、道の向こうから高野さんのネエヤが、高野さんを呼ばわった。
「これは、とんだ長話をしてしまいました。それでは、これでご免こうむります」
 高野さんはペコリと頭を下げると、少年のような足どりで菜の花の中に消えた。

「栞、どうして栞子なんて言うたんや」
「だって、この時代、華族さまの娘なら、子の字が付いてなきゃ不自然……見て、山の上に朧月が出た!」

 戻ってきてから気が付いた。高野辰之は『ふるさと』や『朧月夜』『春がきた』などの国民的な童謡を作った人だ。栞は知ってか知らでか、ずいぶん作詞のヒントを与えたようだが、平気な顔をしてゲ-ム機に取り込んだ童謡を聴いている。ボクは、その印象が薄れないうちに、この短文を書いているが、しだいに朧月のようにあやふやになっていく……。



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高校ライトノベル・栞のセンチメートルジャーニー・3『栞の終わりから始まる話』

2015-10-19 07:35:02 | ライトノベルセレクト
栞のセンチメートルジャーニー・3
『栞の終わりから始まる話』
    


 玉串川から帰ってきて、和尚からもらった地図と、年表を広げてみた。

「どないして使うんやろ。栞、分かるか?」
「分かんないよ。どうして使い方聞いてこなかったのよ」
「栞かて、聞けへんかったやないか」
「だって、兄ちゃん知ってるって思ったから」
「なんで、オレが分かるねん?」
「だって、もともとは、社会科の先生だったじゃない」
「これは並のもんとは、ちがう。枯れる寸前の桜を満開にして、とうの昔に亡くならはった今東光和尚を呼び寄せたんは、栞の力やろ。せやから栞は分かってる思た」
「桜はわたしだけど、あの和尚さんは知らないもん」
「そんなこと言うたかてな……」
「そんなに頼りないから、早期退職なんか、するはめになったんじゃん!」
「じゃんとは、なんじゃ!」
 ……と、兄妹げんかになってしまった。

 そして、気が付くと、ここに居た。二十歳過ぎまで住んでいた、大阪市の東北の町はずれ。O神社の秋祭りの真っ最中。
 この近所に、終戦後、まだ少年だった野坂昭如が、赤ん坊の妹と一時期住んでいた。O神社自体、その縁起は源義経にまで遡る由緒正しい神社である。
 栞と二人で現れたのは、神社の前ではない。鳥居の前を東西に走る道の西の外れあたり、見覚えのある御旅所に御神輿が据えられ、町内の大人や子供たちで賑わっていた。
 道沿いの様々な出店が黄昏の中に、ポツリポツリと電球を灯し始めていた。

「あたし、ちょっと遊んでくるね」

 あたりをグルリと見渡して、栞は気楽に、そう言った。かなたに学校帰りの女学生の一群がいて、たちまち、その中に紛れてしまった。
 電気屋の前は人だかりがしていた。覗き込むと、ショ-ウインドウの中のテレビが大相撲の秋場所を中継していた。
「がんばれ、千代の山!」と子どもの声がした。行司の呼び出しで、千代の山と東富士の横綱同士の対戦と分かったが、記憶にない。おそらく大鵬、柏戸以前の横綱だろう。道路が舗装されていないことや、映画の看板から、昭和三十年代の初めごろと感じられた。
 町行く人たちに、ボクの姿は見えているようで、ぶつかるようなことは無かった。しばらく行くと『祝政令指定都市』の横断幕が目に付いた。錆び付いた記憶をたどってみると、大阪が京都や横浜などと並んで政令指定都市になったのは、昭和三十一年である。良く覚えていたものだと、自分で感心したら、横断幕に昭和三十一年九月一日と書かれていた。我ながら間の抜けたオッサンである。

 タコ焼きや イカ焼きの良い匂いがしてきた。値段を見ると十個十円と書いてある。そう言えば、物心ついたころ、タコ焼きは十円で十個と八個の店があり、値段の端境期であった。姉は友だちと足を伸ばして遠くの店まで十個十円のタコ焼きを買いにいっていたっけ。安いと思った。が、この時代の金は持っていない……と、ポケットをまさぐると、百円札二枚と、十円玉八個が入っていた。念のため十円玉を調べると、みんな、この年以前のギザ十だった。
「おっちゃん、二十円で」
「はいはい」
 オッチャンは経木の舟に手際よくタコ焼きを並べ、ハケでソースを塗って、青のり、粉鰹をかけて新聞紙でくるんでくれた。この時代は、マヨネーズをかける習慣はまだない。
 栞が戻ってきたら食べようと、両手でくるむようにして持った。
 首を向けると本屋が目に入った。『三島由紀夫 金閣寺発売』の張り紙が目に飛び込んできた。『金閣寺』の初版本は古本の相場でも十万円はするだろう……値段を見てガックリきた「二百八十円」 タコ焼きを買わなければ買えた。と、よく見ると、発売は十一月で、予約受付中になっていて苦笑した。

 キキ、キー……と微かな音がした。向こうの大通りを走る市電のきしむ音だ。あの通りと川を越えると、当時住んでいた社宅がある。そこには三十を超えたばかりの両親と六歳の姉、そして三歳の自分自身が居るはずだ。でも、とても見に行く気にはなれない。ここに来たのが唐突であったこともあるが、ボクにとっては、昭和というのは、忘れ物と同義である。だが、この忘れ物に正対する性根がボクには無い。

 突然悲鳴がした。キャーともギャーともつかない断末魔のような悲鳴が……!

 悲鳴の方角には路地があり、路地の入り口には古ぼけたブリキの看板があった。
『S産婦人科→』
 他の人たちには聞こえなかったようで、みな、電気屋のテレビや、屋台の出店、本屋に群がり、あるいは、そぞろ歩いていた。何十分かがたった……路地の向こうの産婦人科の出入り口から小男が出てきた。小さな体からは罪ともやるせないとも取れる気持ちが滲み出て、小さな体を俯かせ、さらに小さくしていた。
 小男が、ボクの前を通り電車通りの方に向かった。刹那、その横顔が見えた。

――と、父ちゃん……!?

 父の背中を見送って、ノロノロ振り返ると、栞がションボリと立っていた。
「兄ちゃん、見てしまったんだね……」
「し・お・り……」
「なんで、こんな時代、こんな場所にタイムリープしちゃったんだろうね」
「ここは……?」
「そう……わたしが死んだ場所……お母ちゃんは、明日の朝には帰る」

 秋祭りの賑わいの中、手の中のタコ焼きは、すっかり冷めてしまった……。 


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高校ライトノベル・栞のセンチメートルジャーニー・2

2015-10-18 07:43:40 | ライトノベルセレクト
栞のセンチメートルジャーニー・2
『その始まり』
 
          

「兄ちゃん、いちだんと出不精になったね」

 冷蔵庫から、お決まりのコーヒー牛乳のパックを二つ取りだし、炬燵の上に並べながら言った。
「オレは、そんなに肥えてない。現役時代の67キロをキープしてる」
「そのデブじゃないよ。相変わらずのダジャレだなあ」
 パックにストローを刺して、わたしに寄こした。
「還暦前のオッサンが、引きこもって、コーヒー牛乳飲みながら、パソコン叩いてるのは……」
「なんやねん?」
「うら寂しいね……」
 そう言って、栞は、コーヒー牛乳を飲みながら、部屋を眺め回した。
「あ、カレンダーが二月のままだ」
 身軽に立ち上がって、従兄弟のお寺さんからもらった、細長いカレンダーをめくった。寺のカレンダーなので、月ごとに、教訓めいた格言が書いてある。

「人間には 答の出ない悲しみあり……か」

 格言を音読した栞を見上げるようなかたちで目が合った。
「兄ちゃんの悲しみは……悲しみの象徴が、わたしなんだよね」
「何を勝手にシンボライズしとんねん」
「ほらほら、言ってみそ。『神崎川物語 わたしの中に住み着いた少女』に書いてるでしょ。『こいつには、いっぱい借りがある』って。あれは素直で、たいへん結構でした、花丸!」
「あれは、文飾や文飾!」
 わたしは、飲み終わったコーヒー牛乳のパックを屑籠に放り込んだ。見事に決まり、ガッツポーズ
「ナイス、ストライク!」
「子供じみたことを……雫が垂れて拭くのはわたしなんだよ」
 栞は、卓上のティッシュを引っぱり出して、拭いた。
「今、拭こうと思たとこや!」
「どうだか……」
 栞は、天井に付いたままのシミを見上げながら言った。
「あれ、リョウ君が小さいときに、チュウチュウ握って吹き上げたときのシミ。すぐに拭くからって、そのままにしたもんだから、もう取れなくなっちゃったんだよね」
「なんで、そんな細かいとこまで知ってんねん!?」
「だって、妹だもん。それも悲しみの象徴の……」
 おちょくった、憂い顔になった。
「これ、見てみい……」
 本棚から、一枚の封筒を取りだし見せてやった。
「公立学校共済……年金見込額等のお知らせ?」
 コーヒー牛乳の最後の一口を口に含んで、栞は吹き出しそうになった。
「安……!」
「せやろ、シブチンやないと、長い老後はやっていかれへんのや!」
 わたしが二十七年間勤めて、確定した共済年金額は1165900円に過ぎない。老齢年金や、個人年金を加えてもカツカツである。

「でも、それが出不精の言い訳にはならないわよ!」
 その一言で、栞を乗せて、玉串川の川べりを自転車で二人乗りするハメになった。むろん栞の姿は見えないので、人にはえらく重い自転車を漕いでいるように見える。
「なんで、幻の栞に体重があるんや!」
「兄ちゃんには、栞は実在だからね。悪しからず」
 この二三日暖かくはなったが、玉串川の桜は、まだまだ固い蕾だった。
「まだ、ちょっと早かったなあ……」
「ちょっと、待っててね」
 栞は自転車を降りると、あたりを見渡し、一番老木と思われる桜に、何やら話しかけ、気安く「お願~い!」という風に手を合わせた。
 すると……その桜が、みるみる満開の桜になった。
「うわー、ごっついやんけ!」
 思わず、河内弁丸出しで声を上げてしまった。
「この桜はね、もう歳をとりすぎたんで、この春には咲かないんだ。咲かないと分かったら、もう切り倒されるだけ……で、お願いしたの。元気だったころの姿を一度だけ見せてちょうだいって」
「ほんなら、これは……」
「そう、この桜の青春時代の思い出……三十分ほどしか見られないから、しっかり見て上げて」
「うん……」

「これは見事やなあ……!」
 十分ほどたったころ、後ろで声がした。見ると、目のギョロっとした坊主が、後ろ手を組んで満開の老桜を見上げていた。
「このお坊さん、この桜が見えるんだ……」
 この桜の満開の姿は、他の通行人の人には見えない。なのに……。
「フフ、お嬢ちゃんの姿も見えてるで。お嬢ちゃんが、この桜を励ましてやってくれたんやな」
「あ、あ、あの、お坊さん……」
「孫ほど歳が離れてるように見えとるけど、あんたら兄妹やな……」
「坊んさん……ひょっとしたら、天台院の?」
「せや、今東光や……」

「これ貸したげよ」
 満開の桜の下で、事情を説明すると、東光和尚は、衣の袖から、何やら取りだした。
「これは、地図帳と年表ですね……」
「せや、ただ特別製でなあ。力のあるもんが念ずると、それで、旅行がでける。地理的にも時間的にもな」
「ボクに、そんな力が!?」
「アホいいな。あんたは、ただの初老のおっさんや。力があるのは、妹さんの方や」
「わたしが?」
 栞もびっくりした。
「この桜を元気づけて、昔の姿を思い出せたんや、あんたには、そのくらいの力はある。まあ、家帰って試してみい。単位にしたら、ほんの何センチやけど、ほんまに行けるよって。まあ、ちょとしたセンチメートルジャーニーやな」
 そのダジャレが自分でもお気に召したのか、東光和尚は呵々大笑された。
「こんな貴重なもの……どんなふうにお返しにあがったらよろしいんでしょう?」
「あんたが、要らんようになったら、自然にワシとこに戻ってきよる。気いつかわんでええ」
「ありがとうございます」
 兄妹そろって、頭を下げた。
「ほんなら、もう行に。あんたらは、もう、この桜堪能したやろ……こいつは、もとの老桜に戻るとこは見られたないらしい」
「あ、ほんなら、これで失礼します」
 わたしは、自転車に跨った。妹の体重が掛かるのを感じてペダルを踏もうとしたとき、東光和尚の声がかかった。
「お嬢ちゃん、あんた名前は?」
「はい、栞っていいます」
「ええ名前や。人生のここ忘れるべからずの栞やなあ……大事にしたりや、兄ちゃん」
 和尚が桜を見上げるのを合図のように、ボクはペダルを漕ぎ出した。

 そして、後ろはけして振り返らなかった……。

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高校ライトノベル・栞のセンチメートルジャーニー・1『おひさしぶり』

2015-10-17 08:00:38 | ライトノベルセレクト
栞のセンチメートルジャーニー・1
『おひさしぶり』
    


 これには、幾つかの原因がある。


 年末から続いていた寒さが、急に緩み、四月上旬並の上天気になったこと。
 蔵書点検のために、五日間図書館が休んでいたこと。
 カミサンが「ついでに、アタシの予約本も取ってきて」と、図書カードを渡したこと。
 そして、わたしの気が緩んでいたこと。

 最後の「気の緩み」から説明が必要だろう。

 わたしは、五十五歳で早期退職をしてからは、家で本ばかり書いている。書いてはブログのカタチでアップロードしている。
 昨年の秋、六年ぶりに紙の本を出した。これが、あまり売れない。それが、昨晩旧友が「ネットで発見して、楽天に注文した」とメールを寄こしてきた。横浜の高校も、わたしの戯曲を上演したいとメールを寄こしてきた。で、ああ、オレも物書きのハシクレなんだと目出度く思ってしまった。

 本を書くことをアウトプットだとしたら、人の本を読んだり、映画を観たりすることはインプットである。しかし読むのが遅く、戒めとして、図書館で本を借りるときは、二冊を超えないようにしている。
 蔵書点検明けの図書館は混んでおり、カウンターの前は、ちょっとした行列になっていた。行列はバーゲンと同じように勢いがある。
「お願いします」
 カウンターに二枚の図書カードを置くと、「少々お待ち下さい」と言われ、数十秒後には六冊の本が出された。

――あいつ(カミサン)五冊も予約しとったんか!?――

 で、つい、カウンター横の新刊書を、装丁だけで選んで二冊加えた。その時セミロングの女子高生が、数冊の本を返しにきたのとゴッチャになった。
「あ、こっちがわたしのんです」
 女子高生と、司書の女の人は手際よく本を分けて、処理を済ませた。

 家に帰って、袋から本を出し、カミサンのと自分のとに分けた。本に間違いはなかったが、一枚のシオリが混じっていた。
 たまに借りた本の間から、前の借り主のシオリが出てくることがある。カミサンは嫌がって捨ててしまうが、わたしは気にせず使って、読み終わったら挟んだまま図書館に返す。

 そのシオリは、本と本の間から出てきた。

 まあ、同じようなものだと思い、炬燵の上に本といっしょに置いておいた。そして、いつものようにパソコンで日刊と、勝手に自分で決めた連載小説を打っていた。
「どないしょうかな……」
 ささいな表現で止まってしまった。
「『そして彼女は』か……『そのとき彼女は』どっちかなあ……」
 その時、パソコンの向こうから声がした。
「『やっぱり彼女は』だよ」
「ん……?」

 パソコンのモニター越しに、座卓がわりの炬燵の向こうを覗くと、そいつが居た。

「おひさしぶり」
 
 セーラー服のセミロング。その定番の姿で妹がいた。

 この妹は戸籍には載っていない。で、わたし以外には姿が見えない。
 わたしは、三つ上の姉と二人姉弟である。ずっと、そう思っていた。しかし、わたしが高校三年生の時に、父が言った。

「……おまえには、三つ年下の妹がいたんや」

 その日、担任が家庭訪問をして「卒業があぶない」と言って帰った。わたしは、すでに二年生で留年し、修学旅行を二回も行き、五月生まれなもので、わたしは、すでに十九歳であった。
「あのころは臨時工で、収入も少なかったし、先の見通しも立てへんよって、三月で堕ろしたんや」
 父は、わたしの不甲斐なさがやりきれなかったんだろう。だから、こんな痛い言い方をした。
 わたしは、姉によく似た高校一年生の妹の姿が頭に浮かんだ。

 姉は、わたしと違って、勉強も良くでき、親類や近所では評判が良かった。高三のときは、担任から大学への進学も勧められていた。しかし、わたしを大学に行かせるために、姉は高卒で働いていた。
 痛む心に浮かんだ妹の姿は、そんな姉を、少しこまっしゃくれた感じにした印象だった。わたしの生来のずぼらさや、意気地のなさをせせら笑っているような姿形で浮かんでくる。

 こいつが、早期退職して間もないころ現れるようになった。
 今と同様、文章の言葉に悩んでいるとき、炬燵の向こう側に現れた。両手両足を炬燵につっこみ、炬燵の天版にアゴを乗せ、「バカ……」と一言言って現れた。

 若干の混乱のあと、妹であると知れた。知れたとき、また「バカ……」と言った。

 ミカンの皮を剥きながら名前を聞くと、こう答えた。
「栞(しおり)」
 ……人生のここ忘れるべからずのための栞である。

「兄ちゃんばかだからね」
 そう言いながら、気まぐれにヒントやアイデアをくれ、あとは仕事場を兼ねたリビングで遊んでいる。栞にとっての遊びは、乱雑にした本の整理をしながら、気に入った本を読むことである。時に気持ちが入り込んだ時はボソボソと音読になり、突然笑ったり、泣いていたりする。それが面白くニヤニヤと笑って観てしまう。それに気づくと「バカ」と、口癖を言う。
 ある日、車のコマーシャルで、長崎の『でんでらりゅうば』をやっていて、それが気に入ってやりはじめた。役者をやっていたころ、基礎練習で、これをやったので、わたしは容易くできる。それが悔しいのだろう「でんでらりゅば、でてくるばってん……」と続けていた。

 気が付くと『でんでらりゅうば』が聞こえなくなり、居なくなった。で、それがまた現れた。

「おひさしぶり」 今度は、かなり絡まれそうな予感がした……。


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高校ライトノベル・ライトノベルセレクト『フォーチュンクッキー!』

2015-10-13 15:11:12 | ライトノベルセレクト
ライトノベルセレクト
『フォーチュンクッキー!』
        

「チェ、こんなもの」そう言ってお姉ちゃんは、テーブルの上に投げ出した。

「いらないんだったら、ちょうだい!」
 そう言ってもらっちゃった。ティッシュのパッケージほどの大きさの箱に、それは入っていた。

 フォーチュンクッキー[辻占煎餅(つじうらせんべい)]と幸せ色で書かれていた。
 
 これは、お姉ちゃんに想いを寄せている彼が、ネットで見つけた限定品らしい。
「こんなもので、気を引こうっていう子供っぽさがヤなのよね」
 そう言って、大人ぶったOL三年目の姉上は、あれほどバカにしていたジブリのアニメを見に行った……たぶん友だちで、同類のお局様コースまっしぐらのヨーコさんと。
 
 お姉ちゃんは、ミーハーが嫌いなミーハーというヤヤコシイオンナなのだ。流行りのものは、とりあえず拒絶する。で、世間が「やっぱ、すごい!」と評価(主にテレビの某コメンテーター)すると、さも自分が評価したようにして飛びついていく。こないだの80年代体験ディスコに行ったのもそうだし、今日のジブリも、いつだたかの村上春樹って人の本もそう。

 で、これは、職場の一ノ瀬さんという、職場の女子がみんな狙っているというイケメンのサラブレッド。会社の会長の甥ということで、会社での未来は約束された人らしい。一度だけ、お姉ちゃんの荷物持ちで、出かけた先でばったり出会い。わたしにもキチンとご挨拶してくださった。イタズラ好きなガキ大将の匂いが残っているような印象で、下げた頭を上げたときには、初対面の距離を超えた近さで、ウィンクされちゃった。
 
 このフォーチュンクッキーは、そんなお姉ちゃんを試そうとする一ノ瀬さんのイタズラな気持ちだと思う。

 フォーチュンクッキーはAKBで、おおいに流行っている。

「また、世間は秋元康の策略にのって。こんなのサンフランシスコの場末の中華料理屋で始まった駄菓子じゃん。中にオミクジだなんて、不衛生!」
 とニベもない。

 あたしは知っている。うちのバンドでも、この曲をやるので調べたんだ。元々は日本のものだ。昔アメリカで万博をやったときにアメリカに持ち込まれ、それをチャイナタウンのレストランで真似してやるようになり、アメリカ人でも中国のものだと思っている人が多いらしい。
 元来は、北陸地方で、お正月の縁起物で、神社なんかで売られていたらしい。

 あたしだって、いつまでも、オバカな妹じゃないんだぞ。
 試しに、一個蟹の爪みたいな辻占煎餅を割ってみた。

「末吉、運命の人は、意外に近くに」

 それを見て、遼介の顔が浮かんで、思わず心臓バックン!

「さあ、みんな。本番前の縁起物に、どうぞ!」
 控え室で、緊張の固まりになりつつあるメンバーに、フォーチュンクッキーの箱を開けて見せた。
「これ、ひょっとして、フォーチュンクッキーか!?」
「おうよ。本家本元、福井の壽屋の辻占煎餅よ!」
 研究が進んでいるメンバーには、これだけで分かる。
「これ、限定品なんだぜ。よく手に入ったな!」
「これも、今日のロックコンクールのためよ」
 わたしも見栄を張る。

「わ、オレ、大吉!」
 ドラムのジンが、まず喜んだ。キーボードのミヨシが中吉、ベースのサトーも大吉。
「おれ、こういうの運がないから、だれか引いてくれよ」
 遼介は、あたしの顔を見た。
「情けないオトコね、凶が出ても責任とらないからね」
 あたしは、テキトーに選んで渡してやった。
「……………」
「何が出たんだよ、教えろよ」
 ジンがせっつく。
「いや、これは……」
 遼介がモジモジするもんだから、あたしも含めて遼介をもみくちゃにしてやる。

「アフタースクールのみなさん、スタンバってください」
 係のオニイサンが、出番近しを伝えてくれた。

 フォーチュンクッキーのお陰か、コンクールは準優勝だった。

 カラスが二三羽、西に飛んでいく。まだコンクールの余韻が残っている。準優勝の火照りが。帰りの電車は、前の駅でミヨシとサトーが降りた。ジンは、もう一個むこうの駅だ。
 だから、この道を歩いているのは、あたしと遼介だけ。
「良かったね、初出場で準優勝もらえて」
「フォーチュンクッキーのお陰かもな」
「あ、遼介のは、なんて出てたのよさ!?」
「これ……」
 ヤツはお神籤の上、三分の一だけを見せた。そこには大吉と書かれていた。
「よかったじゃん。で、その下は」
「いいよ」
「よくない、見せなさい!」
 ふんだくって見てやると、こう書いてあった。

「運命の人は、意外に近くに」
「おお……でも、一番下の方なんて書いてあったの? 千切れてる」
「もみくちゃにされてるうちにさ……」
「……うそ、持ってんだ。出せ、遼介!」
「だ、大事にしたいから……」
 こういうウソのつけないところが、遼介のいいとこだ。数秒して、ヤツはやっと出した。

「それは、これをくれた人」

「遼介……」
「前から……好きだったから。だから……」
 運命を感じてしまった。
「あ、あたしも……」
「真琴……」

 ヤツの顔が迫ってきた。あたしは幼い一線を……越えられなかった。

「あ、あたし末吉だから、だから大事に……」
「ああ、大事にしような」
 
 そう言って、遼介は、三叉路の左側の道へ行った。

「遼介!」
 思わず呼ぶと、ヤツは電柱一本分向こうから言った。
「オレも、末吉に付き合うから!」

 フォーチュンクッキーの思い出でした…………

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高校ライトノベル・逢魔が時・5『かみきり』

2015-10-12 12:50:02 | 小説5
逢魔が時・5
『かみきり』
              

 ロンゲがありがたい季節になってきた。

 ロンゲは朝夕の冷え冷えとした空気から首筋を守ってくれる。
 中学の頃、一度ショ-トにしたことがある。ちょうど今みたいな季節で、摩子は首筋から風邪をひいて一週間ほど寝込んだ。
 それから、また髪を伸ばしはじめ、この秋には腰の上10センチまでの長さになった。
 体育の時間や部活のときはひっつめやポニテにしている。
 クラブが空中分解してからは、体育の時間以外、髪は下ろしたままだ。廊下で何度か森本や顧問と出くわした、二人ともなにか言いたそうにするが、部活の摩子と様子が違うので、今のところ声をかけられることがない。

――……やっぱりなあ……でも……どうしよう……ま、これでもいいか……――

 気が付くと横断歩道の前に来ていた。
 渡ると、またあっちの世界に行ってしまう。一瞬たじろいだ摩子の足許をすり抜けて、猫が横断歩道を渡っていった。
 横断歩道の向こうに着くと、猫は振り返り、ニャーと一声鳴いて路地の方へ。路地の角に両の手が、猫は、その手にすくい上げられる。
 猫をすくい上げた手は、すぐに消えたが、摩子にははっきり分かった。

――あれは、もう一人のあたしだ――

 横断歩道を渡り、路地に踏み込むと、猫も、もう一人の摩子の姿もなかった。振り返ると、道の向こうは真っ黒な闇。
「行くしかないか」
 そう呟いて、摩子は路地に足を踏み入れる。
 人気がないという以外、摩子の世界と同じ世界。
 目だけ動かして、まわりに気を配る。今日のこちらがわの世界は、なんの気配もしなかった。
 今までは、なにかしら気配があって、それが気になる。気になったからと言って怪しげなものに会いたいわけではないけど、それなりに手順というものがあった。
「いきなりというのは、ごめんだな……」
 学校カバンをゆすりあげ、摩子は路地、路地から表通り、そして、また路地と歩いた。
 そうやって黄昏の街を歩いていると、少しずつ街の音がもどってきた。街のかなたに電車が走る……通りの向こうに子どもたちが遊んでいる足音と声、お豆腐屋さんのラッパ、家々からはテレビの音声や、夕飯の用意をする音。
「懐かしいなあ……」
 そう思っていると、なんと、お味噌汁や揚げ物、カレーやなべ物などの夕飯の香りがしてきた。
「ああ、お腹へった……」
 家の晩ご飯が恋しくなった。なったからといって、こちらは向こう側、あやかしの世界。じっさいに家に帰って夕飯を食べられるわけではない。
 でも、それまでと違う穏やかさ、温もり、空腹にひかれ、家の前までやってきた。

「あら、おかえり。腹ペコな顔して」
「……お母さん」
「ちょうど晩御飯の用意ができたとこだから、さっさと着替えてといでよ」
 母は回覧板を手に家の中に、家の中には父の気配もした。
「ラッキー、今夜はすき焼きなんだ!」
 着替えてキッチンに行くと、テーブルのすき焼き鍋の中で牛肉がジュージューおいしそうな音を立てて焼けていた。
「ネットで、近江牛のいいのが出てたから、夕方に着いたとこだ。三人で食べるのは久しぶりだな」
 父が、昨日までの遠慮した様子ではなく、ニコニコ顔で、すき焼きを取り仕切った。
「昔の御手洗家がもどってきたね!」
 摩子も、ニコニコ笑顔で玉子をかき回した。

 一時間以上かけて、楽しい夕飯になった。

「ああ、お腹いっぱい!」
 お腹も心も幸せになり、摩子はゴロンと横になった。
「まあ、行儀の悪い。牛になっちゃうわよ……」
 母の言葉を途中まで聞いて、摩子は本格的に眠ってしまった。

 襟首の涼しさで目が覚めた。

「ん……ここは?」
 摩子は街はずれの空き地で横になっていた。
「あ……あたしの髪?」
 襟首に回した手は髪には触れなかった。慌ててカバンから手鏡をだした。
 手鏡には、ショートカットの摩子が写っていた。
「ええ……どうして!?」

「かみきりにやられたんだよ」

 声をした方を見ると、例の猫。
「かみきり……?」
「寝ている間に髪の毛を盗っていく妖怪。手が込んでるね、摩子をだまして寝かせつけたんだ」
 それだけ言うと、猫はスタスタと夜の闇の中に消えていった。

 摩子は、またいっそう逢魔が時の世界に入り込んでしまったようだ。

 

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高校ライトノベル・逢魔が時・4『べとべとさん・2』

2015-10-10 11:38:25 | 小説5
逢魔が時・4
『べとべとさん・2』
          


 あっちの世界と、こっちの世界、ほとんど違いはない。

 でも、摩子には分かる。口ではうまく言えないが、分かる。
 逢魔が時の横断歩道を渡ると……クラっときて、ひどい立ちくらみのように一瞬なにも見えなくなる。
 見えるようになると、違和感……同じ街の逢魔が時、全てが黄昏色から闇に落ちようとしている。

 だが微妙に違う……そう、気配がするのだ。

 今も気配がしている。
 ついさっきまでは、空中分解してしまったクラブのことで頭がいっぱいだった。
 横断歩道を渡ったとたん、何者かの気配が闇の向こうから……大げさに言えば、纏わりついてくる。
 最初は摩子のソックリだった。
 ソックリは、本当なら横断歩道の無い二車線を横断しようとして、摩子が車に撥ねられ轢かれて死んでしまうことを見せてくれた。
 三日後は、座敷童だった。摩子の家の座敷童だったようで、励ましてやると、父とともに幸せな家庭を取り戻してくれた。
「今度は誰なの……」
 闇に向かってささやいてみたが、気配はそのままで、何も現れてはこない。

 数分待った……なけなしの残照はすっかり無くなり、ボンヤリとした街灯だけが町の切れ端をシミのように浮き立たせている。

 気配は、摩子の後ろにまわった。電柱一本分の背後……べと、べと、べと、音をさせて摩子に近づいてくる。
 摩子は、振り返ることもできず、前に逃げた。
 そいつは、摩子のすぐ後ろまで近づくと、歩調を摩子に合わせた。
 
 べと、べと、べと、べと、べと、べと、べと、べと、べと、べと……。

 走って逃げたい衝動に駆られたが、走れば、たちまち追いつかれそうな気がした。気がするだけでなく、追いつかれた時の自分が見えた。
 追いつかれると、体中の穴という穴から侵入され、心も体も奪われてしまうような恐怖の予感。
 摩子は声も立てず、ひたすら歩いた。
 自分の家の前を二度通過した。違う道を歩いているのだけど、どうやらループしているようだ。

 べと、べと、べと、べと、べと、べと、べと、べと、べと、べと……べと、べと、べと、べと、べと、べと、べと、べと、べと、べと……べと、べと、べと、べと、べと、べと、べと、べと、べと、べと……。

 三度目に家の前を通過したとき、このままでは死ぬと思った。
 そして苦しい息の中、考えが浮かんだ。

 ……道を譲ろう……でも、どうやって……あの気配の名前も分からないのに……。

 べと、べと、べと、べと、べと、べと、べと、べと、べとべと、べと、べと、べと、べとべと、べと、べと、べと、べと!

 とうとう、それが、すぐ背中までやってきたとき、声が出た。
「べとべとさん、どうぞお先に!」
 それだけ叫ぶと、気力が尽き果て、摩子は立ち止まってしまった。

 フッツリ……気配は足音と共に消えた。

 街の気配が、あっちからこっちにもどった。
 


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高校ライトノベル・逢魔が時・3『べとべとさん・1』

2015-10-09 13:31:44 | 小説5
逢魔が時・3
『べとべとさん・1』
          


 気が付いたら渡っていた。

 座敷童のおかげで、父が戻ってきて、御手洗家に平和が戻って来た。
 最悪の場合、学校も辞めて、母と一緒に、この生まれ育った街から出て行かなければならないと思い詰めていた。

 まずは一安心の摩子だったが、学校の問題は解決していない。

 今日の稽古、主役が休んでしまった。
「じゃ、あたしが代役やるね」
 摩子が、そう言ったが、演出の森本は返事もしなかった。
「……じゃ、始めるよ。さ、みんながんばろ!」
 摩子はなけなしの元気を奮い立たせ、笑顔で言った。
「勝手に始めるな」
「だって、他の役者が稽古できないよ」
「揃わなきゃ稽古の意味が無い。役者を揃えておくのは、摩子、舞台監督である、おまえの仕事だろ。それもできないのに、イイコちゃんぶって、稽古、稽古って言うなよ」
「なによ……その言い草は!」

 摩子は、溜まりに溜まっていたものをぶつけてしまった。

「もう演劇部もおしまいだ……」
 口げんかに負けて、森本は、そのまま帰ってしまった。他の部員もいなくなった。
 悔しく情けない思いで胸がいっぱいになり、摩子は夕方まで稽古場を出ることができなかった。
 西に沈む夕陽が稽古場のカーテンを懐かし色に染め始め、優しく弄るように頬の涙を乾かしていく。
 吐息をつくと、床に自分の影がドアの方に延びている。

 ふと影が誘ったような気がした。

 そして……いつの間にか学校を出た……そして……気が付いたら渡っていた。

 あの逢魔が時の横断歩道を……摩子は、もう一段深く、向こうの世界に踏み込んでしまった。


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高校ライトノベル・逢魔が時・2『座敷童』

2015-10-08 11:24:02 | 小説5
逢魔が時・2
『座敷童』
           

 あれから例の横断歩道は現れない。

 三日ほどは気になったが、摩子には学校の悩みがあったので、子どものころからの夢想癖の為せる技と納得した。
 幼いころ、魔女のアニメを観た。魔女は子どもたちを魔界に誘い込み、自分の小間使いに使っていた。アニメを観た後、街のいろんなところで魔女を見かけるようになり、とても怖い想いをしたことがある。映画で純白のウェディングドレスを着た花嫁を見た、すると駅前や商店街のお店のショーウィンドウにウェディングドレスを着た大人の自分が見えたこともある。

 ま、あれの一種だろ。今のあたしには現実の問題がいっぱいあるんだ。

「……オレの脚本のどこが悪い」
 森本は静かに切れた。
 コンクールの脚本候補を出したのは、摩子と部長の森本だけだった。摩子は高校演劇の古典とも言われる既成の脚本を、森本はラノベに影響された自分の創作脚本を押した。
 摩子は、自分の推薦にこだわる気はなかったが、森本の創作劇は、どうにも書けていなかった。人物は類型的で台詞は、ことごとく説明的。転換が多く、道具も大掛かりになる。稽古を進めていっても破綻するのは目に見えていた。

 クラブの調和を守ることを優先して、摩子は、それ以上の反対はしなかった。で、演劇部は壊滅寸前になっている。

 校門を出ると、どっと疲れがやってきた。
 摩子は舞台監督なので、稽古中はハイテンションでいる。ここまで破綻せずに稽古を維持できたのは、摩子の力である。
 でも、この三日ほどは、それも限界になってきている。稽古に人が集まらなくなっている。代役は摩子一人でこなしている。もう全部の役の台詞が頭に入っている。そんな摩子を、森本は疎ましく思っていて、顔色や態度に出る。

「もう限界かな……」

 ここのところ癖になった独り言が口からこぼれた。独り言なので返事する者などはいない。
「そうだニャー」
「エ……」
 猫が追い越しざまに返事をした。三日前、あの横断歩道で追い越していった猫だ。
「いま、喋った?……喋ったよね……」
 猫は一瞬振り返ると、黄昏色の路地裏に入っていった。
「待って、待ってよ!」
 猫を追いかけて、摩子は路地裏をクネクネと小走り。

 お地蔵さんの角を曲がると行き止まりだった。

「あれ……ここを曲がったはず……」
 前には何十年も前からあるような板塀、高さは二メートル以上もあり、あの猫が飛び越えられるようなものではない。摩子は、それでも確かめたくて、板塀に手を掛けた……すると、板塀がクルリと回って、摩子は前につんのめってしまった。
「ウワー!」
 天地がひっくり返り、二階から落ちるような衝撃を感じ、一瞬目がくらんだ。
「ええ…………?」
 見覚えのある小さな崖が目の前に立ちはだかっている、崖の上には板塀……あそこから落ちたんだ……ここは、あの二車線の道沿いにある崖、あの向こうには行ったことがない。

「こっちニャー」後ろで、猫の声。

 振り返ると……あの横断歩道があった。
 猫がお尻を向けて、横断歩道を渡っていく。
「待って」
 猫を追いかけ、横断歩道の真ん中までくると、またグラリときた。

「あ……」摩子はたたらを踏んだ。

 横断歩道を渡ると、電柱一本分先の路側帯におカッパに着物姿の女の子が立っていた。
「……ほんとに来てくれたんだ」
 青白い女の子の頬に、ほんのりと血の気がさした。
「あなたは……?」
「聞かない方がいいよ……それより、あたしに『がんばれ』って言って」
 熱っぽい目をして女の子が言う。「がんばれ」はクラブでさんざん言ってきた言葉、あまりいい感じはしない。
「あたしはちゃんと聞くから」
 女の子は切なそうにに胸で手を組んだ。
「あ、えと……がんばって」
「うん……嬉しい!」
 女の子は、本当に嬉しそうに目を輝かせ、体も光ったかと思うと妖精のように消えてしまった。

「ただいま……あ……!」

 家に帰ると、しばらく見なかった男物の靴が並んでいた。
「……お父さん!」
「おかえり……摩子にもお母さんにも心配かけたな」
 長らく別居していた父が戻ってきた。お母さんも嬉しそうだ。
「お便所みたいな苗字だけど、もしばらく、このままでいようか……摩子?」
 御手洗(みたらい)家に幸せが戻ってきた。

 さっきの女の子は座敷童(ざしきわらし)だったようだ。
 

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高校ライトノベル・逢魔が時・1『ようこそ逢魔が時に』

2015-10-07 14:02:09 | 小説5
逢魔が時・1
『ようこそ逢魔が時に』
         

 ……こんなところに横断歩道?

 摩子はいぶかしんだ。
 小学生のころから学校に通うのには、この二車線の道を渡ってきた、だから間違えようもない。道沿いに建つ家やお店、郵便ポストに自販機、電柱の位置まで頭の中にある。
 むろん、この道にある三つの横断歩道を見間違うことはない。

 電柱四つ分向こうの横断歩道には信号機が付いていて、赤信号で車が溜まっている。あそこまで歩いていったらタイミングがずれそうだ。
 その横断歩道は、街灯に照らされて、とても白く浮き上がって見えた。
――そうか、新しい横断歩道なんだ。きっと学校に居る間にできあがったんだ――
 そう納得して、摩子は肩に掛けた通学カバンをゆすりあげ、横断歩道に踏み出した。

 黄色いセンターラインを越えたところで、一匹の猫が追い越していった。

 この道沿いの野良猫や街猫じゃない……そう思った時、クラっときた。
 一歩よろけただけで身を立て直し、横断歩道を渡り切る。
「アレ…………?」
 黄昏時だというのに、道路に自分の影が伸びている。街灯は摩子の正面、太陽は、ちょっと前に西の空に沈んでいる。
 影は、摩子の脚から離れ、伸びた路側帯の先でムクムクと立ち上がった。
 数秒で影は姿かたちがはっきりした。
 それは、もう影ではなく、摩子そのものであった。
 突然の怪異に、摩子は言葉も出ない。

「とうとうやってきてしまったのね」

 影……いや、もう一人の摩子は、黄昏色に微笑んで言った。
「あ、あなたは……?」
「御手洗摩子……あなたといっしょ」
「……どういうこと?」
「ちょっと車道を見て」
 うながされて車道を見ると横断歩道が無くなっている。
 脇道から、第三の摩子が現れた。学校で嫌なことがあった、そのままの顔で歩いて道の向こう側にやってきて、ろくに道の左右も見ずに渡り始めた。
 黄色いセンターラインまで来たところで、北側から走ってきた車が摩子を撥ねた。

 ボン、ドサ、グシャ……三つの音が続いた。車は摩子を撥ねたうえ、撥ね飛ばされた摩子を轢いていった。
 異様にねじ曲がった摩子の体から血が流れ出て、見る見るうちに道路を赤黒く染めた。

「本当は、ああなっていたの」
「あ……あたしが」
「逢魔が時のこちら側には横断歩道があるの」
 車道の摩子の死体が消えてゆき、再び横断歩道が現れた。
「な、なんなの、これは!?」
「ようこそ、逢魔が時の世界に。いろいろ起こるけど、少しづつ慣れていって。ね……」

 もう一人の摩子は輪郭を失い、元の影にもどり、その影も横断歩道も数秒で消えてしまい、街は神秘と憂愁の中に沈もっていった。
 


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高校ライトノベル・♡RITTLE PRINCESS・5♡♥この胸の苦しさは?♥

2015-10-03 12:40:40 | 小説
♡RITTLE PRINCESS・5♡
           ♥この胸の苦しさは?♥      


「……なんで、あなたはあたしにソックリなの?」

 結衣は、白い闇の中、自分ソックリに進化したバクテリアに聞いた。
 ほんとうは、プリンセスに捕まり(プリンセスは捕まえたという意識はない)火星などに連れてこられたことの方が、よほど不思議なのだけれど、たったいま目の前でおこった不思議の方に思考力のほとんどが費やされている。
「わたしを認めてほしいの」
 バクテリアは結衣と同じ声で言った。
「認めるって……?」
「あなたと同じ姿に進化したでしょ……」
「そうよ、なんであたしと同じ姿に」
「何億年分の進化を一秒でやったの、サンプルがいるわ」
「でも、どうしてあたしなの? プリンセスもアシスもいるじゃない?」
「アシスはロボット、プリンセスは****だからコピーできない」
「なによ****って?」
「え……通じないの?」
 バクテリアは戸惑った。
「****にしか聞こえない、****には意味が無い」
「……仕方がない。とにかく、この姿でいるには、あなたの許可がいるの。姿には、その……著作権のようなものがあるから」
「イヤ!、バクテリアがあたしと同じ姿をしているなんて!」
「そんな……あなたが許してくれなかったら、わたし元のバクテリアに戻ってしまう」
「もどればいいでしょ、頼んだわけじゃないんだから!」
「そんな、残酷だわ。バクテリアが進化して、あなたと同じ姿の人間になるなんて、宇宙のチリが集まって地球や火星ができるほどの確率なのに……」
 バクテリアはサメザメと泣き崩れた。
「え……ウ、ウ……なに、この胸の苦しさは?」
「……シンクロしたのよ、ソックリだから、わたしの胸の痛みが伝わったんだわ」
「そんな……たまらないわよ……ア、痛い、苦しい……分かった、許す!、認めるから!」

 胸の痛みに耐えかねて、結衣が叫ぶと、風が吹いてきて、元の谷にもどった。

「どっちがユイなの?」
 プリンセスが不思議そうに聞く。
「遺伝子マデ、ソックリデス!」
 アシスがビックリした。
「わたしがコピーで、こちらがオリジナルです」
 バクテリアが恥かみながら事情を説明した。
「アア、人間ニナッタノナラ、火星ニ残シテオクワケニハイキマセンネ……」
 バクテリアを進化させた責任があるので、アシスは気まずそうに、バクテリアを連れていくことを提案した。
「ややこしいから、あなたはホクロをつけましょう」
 プリンセスは、バクテリアの目の下に泣キボクロを付けた。
「名前ハ、ドウシマショウ?」
「テリアってよんでください」
「テリア、良い名前ね!」

 火星の地平線に太陽が沈むころ、テリアを加えた四人はケトル号に戻った。


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