♡RITTLE PRINCESS・4♡
♥……テリアって、犬?♥
「なんだ、水なんてないじゃん」火星の谷間に降り立って、結衣の第一声。
「あるわよ、ほら、これ」
プリンセスは、足元の黒っぽい砂の塊を拾い上げた。
「なによ、バッチイ」
「塩のカタマリ……これが水を含んでる。でしょ、アシス?」
「ハイ、0.5パーセント、大発見デス」
アシスは空中に砂の塊の成分表を映し出した。NaClから始まり、三十番目ほどにH₂Oが並んでいる。
「こんなの手に握っているうちに蒸発してしまいそうじゃない」
「蒸発しても水は水。でしょ、その水蒸気が集まって、入道雲やら台風になったりするんだから」
「でもね、あたしの感覚じゃ海とか湖とか、せめて水たまりになってないと実感湧かないのよね」
「ユイ、見テゴラン、谷ノ斜面ニ何本モ黒ッポイ筋ガ見エルダロ……」
アシスが谷の斜面を指さした。なるほど、シマウマのような筋がずっと続いている。
「ん~……谷なんだから、ああいうのあって当たり前じゃないの?」
「アレハ、水ガ斜面ヲ削ッタ証拠ダヨ」
「……なのかなあ?」
「ユイって、思った以上に想像力ないのね」
プリンセスが呆れて腕を組んだ。
「なによ」
「でも、分かったでしょ、ユイが箱の絵を描いて『この中に王子さまがいるよ』って言ったいい加減さが」
「そ、それとこれは!」
結衣は顔を赤くして手を振った。
「プリンセス、砂ノ中ニバクテリアガイマスヨ!」
「ほんと!?」
プリンセスは、ジャンプしてアシスの前に行った。
「ホラ、ココデス!」
「あ、ほんと……ユイも見においでよ!」
「……テリアって、犬?」
結衣は砂の塊を覗き込んだが、何も見えない。
「アシス、拡大してあげて」
「ハイ」
アシスが砂の塊に手をかざすと、ユイが観ているところだけ数万倍に拡大された。
「え……このグニュグニュしたの?」
「そう、この単細胞が進化して、いろんな生物になるんだよ」
「ん~……ピンとこないなあ」
プリンセスはため息ついて、アシスと顔を見合わせた。
「チョット進化サセテミマショウ……」
アシスが塊の上で手を回すと、バクテリアの動きが活発になり細胞分裂し始めた。
「え……何がおこるの?」
バクテリアはグニュグニュと細胞分裂をくりかえし、人の形になったかと思うと結衣そっくりな女の子になった。
「あたし?……どうして?」
結衣は目の前の不思議が釈然としない、一陣の風が吹いてきて、視界がグラリと揺れた。
「ユイ!……」
プリンセスとアシスの叫びが途中で途切れ、風の吹く音だけが残った……。
『ノラ バーチャルからの旅立ち』ノラ バーチャルからの旅立ち:クララ ハイジを待ちながら:星に願いを:すみれの花さくころの4編入り(税込1080円)
『はるか ワケあり転校生の7ヵ月』 (税込み799円=本体740円+税)
東京から転校してきた坂東はるかが苦難を乗り越えていっぱしの演劇部員になるまでをドラマにしました。店頭では売切れはじめています。ネット通販で少し残っています。タイトルをコピーして検索してください。また、星雲書房に直接注文していただくのが確実かと思います。
『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』
青雲書房より発売中。大橋むつおの最新小説と戯曲集!
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼
ラノベとして読んでアハハと笑い、ホロリと泣いて、気が付けば演劇部のマネジメントが身に付く! 著者、大橋むつおの高校演劇45年の経験からうまれた、分類不可能な新型高校演劇入門ノベルシリーズと戯曲!
ネット通販ではアマゾンや楽天があります。青雲書房に直接ご注文頂ければ下記の定価でお求めいただけます。
青雲書房直接お申し込みは、下記のお電話かウェブでどうぞ。送料無料。送金は着荷後、同封の〒振替え用紙をご利用ください。
お申込の際は住所・お名前・電話番号をお忘れなく。
青雲書房。 mail:seiun39@k5.dion.ne.jp ℡:03-6677-4351
♥……テリアって、犬?♥
「なんだ、水なんてないじゃん」火星の谷間に降り立って、結衣の第一声。
「あるわよ、ほら、これ」
プリンセスは、足元の黒っぽい砂の塊を拾い上げた。
「なによ、バッチイ」
「塩のカタマリ……これが水を含んでる。でしょ、アシス?」
「ハイ、0.5パーセント、大発見デス」
アシスは空中に砂の塊の成分表を映し出した。NaClから始まり、三十番目ほどにH₂Oが並んでいる。
「こんなの手に握っているうちに蒸発してしまいそうじゃない」
「蒸発しても水は水。でしょ、その水蒸気が集まって、入道雲やら台風になったりするんだから」
「でもね、あたしの感覚じゃ海とか湖とか、せめて水たまりになってないと実感湧かないのよね」
「ユイ、見テゴラン、谷ノ斜面ニ何本モ黒ッポイ筋ガ見エルダロ……」
アシスが谷の斜面を指さした。なるほど、シマウマのような筋がずっと続いている。
「ん~……谷なんだから、ああいうのあって当たり前じゃないの?」
「アレハ、水ガ斜面ヲ削ッタ証拠ダヨ」
「……なのかなあ?」
「ユイって、思った以上に想像力ないのね」
プリンセスが呆れて腕を組んだ。
「なによ」
「でも、分かったでしょ、ユイが箱の絵を描いて『この中に王子さまがいるよ』って言ったいい加減さが」
「そ、それとこれは!」
結衣は顔を赤くして手を振った。
「プリンセス、砂ノ中ニバクテリアガイマスヨ!」
「ほんと!?」
プリンセスは、ジャンプしてアシスの前に行った。
「ホラ、ココデス!」
「あ、ほんと……ユイも見においでよ!」
「……テリアって、犬?」
結衣は砂の塊を覗き込んだが、何も見えない。
「アシス、拡大してあげて」
「ハイ」
アシスが砂の塊に手をかざすと、ユイが観ているところだけ数万倍に拡大された。
「え……このグニュグニュしたの?」
「そう、この単細胞が進化して、いろんな生物になるんだよ」
「ん~……ピンとこないなあ」
プリンセスはため息ついて、アシスと顔を見合わせた。
「チョット進化サセテミマショウ……」
アシスが塊の上で手を回すと、バクテリアの動きが活発になり細胞分裂し始めた。
「え……何がおこるの?」
バクテリアはグニュグニュと細胞分裂をくりかえし、人の形になったかと思うと結衣そっくりな女の子になった。
「あたし?……どうして?」
結衣は目の前の不思議が釈然としない、一陣の風が吹いてきて、視界がグラリと揺れた。
「ユイ!……」
プリンセスとアシスの叫びが途中で途切れ、風の吹く音だけが残った……。
『ノラ バーチャルからの旅立ち』ノラ バーチャルからの旅立ち:クララ ハイジを待ちながら:星に願いを:すみれの花さくころの4編入り(税込1080円)
『はるか ワケあり転校生の7ヵ月』 (税込み799円=本体740円+税)
東京から転校してきた坂東はるかが苦難を乗り越えていっぱしの演劇部員になるまでをドラマにしました。店頭では売切れはじめています。ネット通販で少し残っています。タイトルをコピーして検索してください。また、星雲書房に直接注文していただくのが確実かと思います。
『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』
青雲書房より発売中。大橋むつおの最新小説と戯曲集!
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼
ラノベとして読んでアハハと笑い、ホロリと泣いて、気が付けば演劇部のマネジメントが身に付く! 著者、大橋むつおの高校演劇45年の経験からうまれた、分類不可能な新型高校演劇入門ノベルシリーズと戯曲!
ネット通販ではアマゾンや楽天があります。青雲書房に直接ご注文頂ければ下記の定価でお求めいただけます。
青雲書房直接お申し込みは、下記のお電話かウェブでどうぞ。送料無料。送金は着荷後、同封の〒振替え用紙をご利用ください。
お申込の際は住所・お名前・電話番号をお忘れなく。
青雲書房。 mail:seiun39@k5.dion.ne.jp ℡:03-6677-4351