大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・アンドロイド アン・18『ちかごろのアン』

2018-09-16 14:34:38 | ノベル

アンドロイド アン・18

『ちかごろのアン』

 

 

 ちかごろアンの様子が変だ

 

 P音事件はアンを弄ろうとした早乙女采女たちが最終的には赤っ恥をかいた事件で、日ごろ采女たちを快く思っていない者たちは溜飲が下がった。

 アンは数ある被害者の一人として、いわば脇役の位置だが、俺はアンの仕業だと思っている。

 学校に置き勉を認めさせたのは、親友の赤沢や俺たち生徒有志の願いが通じたということになっているが、ヒントをくれて方向付けをしたのはアンだ。

 先日の台風では、カーポートで顔の右半分を血まみれにするというアクシデント。それを目にした町田夫人が卒倒してしまったが、ほんの数十秒で顔を直し、庭の八つ手の葉っぱが貼りついて町田夫人が見誤ったということに修正した。

 

 どうにもアンの狙いが分からない。いや、アンのスペックそのものもよく分からない。

 もっと突き詰めれば、なんで俺の家にやって来たか、そもそものところで分かってないんだけど、聞いても答えない、いや、アン自身もよく分かってないんだろう。

「ちょっと、なにわたしのお尻ばっか見てるのよ」

 掃除機のスイッチを止めたかと思うと、振り返って吸い取り口を向けてきやがった。

「そ、そんな、見てねーし」

「わたしの視覚器官は目だけじゃないのよ、どこにあるかは言えないけど、新一の安全を図るために日夜センサーを働かせてるの。あ、見たことを咎めてんじゃないわよ。見たけりゃいくらでも見せてあげるけど、昼間のリビングというのはねえ……ここ、町田夫人の二階の窓から丸見えだし。夜まで待ってくれたら、ベッドの上でいくらでも……」

「バ、バカ、なに言ってんだ」

「ハハハ、照れた新一カッワイイ~!」

「お、俺はだな~!」

「分かってる、わたしのこと心配してくれてたのよね……これはセンサーじゃなくて、その……以心伝心的な、ほら、言うじゃん『忍ぶれど色に出にけり……』だっけ?」

「ちょっと違うと思う」

「ま、だけど、ザックリそういうことだから。あ、いっけな~い、もう、こんな時間!」

「なんかあんのかよ」

「あした敬老の日でしょ、町田夫人に頼まれてるのよ、福寿会のお手伝い……なに、ボサっとしてんのよ、新一も手伝いにいくんだから!」

「え、俺もか?」

 急き立てられるようにして福寿会の過剰であるコミュニテイーセンターに向かう。

 

 この準備で、アンはお皿二枚を割って、花屋の注文書の3と書くところを8と間違えてハラハラさせてくれる。

 目が離せないが、ご町内の明るい働き手というポジションを獲得しつつある。

「いやー、すいませんドジばっかで💦」

「失敗したときが一番かわいいから、始末が悪いわねえ(^_^;)」

 冷や汗をかきながらも、町田夫人はアンといっしょにやることを楽しんでくれているようだ。

 ま、しばらくは見守ることにしようか。

 

☆主な登場人物 

 新一    一人暮らしの高校二年生だったが、アンドロイドのアンがやってきてイレギュラーな生活が始まった

 アン    新一の祖父新之助のところからやってきたアンドロイド、二百年未来からやってきたらしいが詳細は不明

 町田夫人  町内の放送局と異名を持つおばさん

 町田老人  町会長 息子の嫁が町田夫人

 玲奈    アンと同じ三組の女生徒

 小金沢灯里 新一憧れの女生徒

 赤沢    新一の遅刻仲間

 早乙女采女 学校一の美少女

 

コメント

高校ライトノベル・アンドロイド アン・16『アンと俺と台風・3』

2018-09-13 14:12:57 | ノベル

アンドロイド アン・17

『アンと俺と台風・3』

 

 

 ヤバイ!

 

 ひとこと叫ぶと、アンは家の中へ駆け戻った。

 この状況に卒倒しなかった俺は褒められていい。

 たぶん、アンがアンドロイドだということを知っていたから、顔の右半分がパックリ割れて、目玉がドロリと唇の横まで垂れ下がっても、ヤバイと叫んだ口の中に目玉が入っても、入った目玉が耳元まで裂けて、閉じ切らない口と言うか裂けめの中で飴玉のように転がっても、卒倒はしなかった。しなかったどころか、卒倒した町田夫人を抱きとめて「おーい、アン!」と声を張り上げる余裕さえあった。

 むろんスプラッター映画のデモを突然突き付けられたのと同じショックはあったけど、頭の芯の所が覚醒していた。

 

 ウンショ。

 

 見かけよりも重い町田夫人がずり落ちないように揺すりあげた時にドアが開いた。

「ごめんなさい、これでノープロブレムだから」

 戻って来たアンの顔は元に戻っていた。

「その顔……」

「それより……」

 アンは、暴風のためカーポートの隅に吹き寄せられている八つ手の病葉(わくらば)を手に持った。

「起こして」

「う、うん。町田さん、町田さん」

 声を掛けながら揺すると「う~~ん」と二度ほど唸って気が付いた。

「あ、あたし……アンちゃん……」

「大丈夫ですか、町田さん?」

「え、ええ……アンちゃんの顔?」

「風で八つ手の葉っぱが飛んできて貼りついたんです、突然で、わたしもビックリして」

 そう言いながら、右手の病葉をクルクル回して見せた。

「あ、あーなんだ。アハハ、わたしったら見っともない。ごめんなさいね、こんなオバサン介抱させちゃって」

「いえ、お怪我とかなくってよかったです」

「あ、それじゃ、くれぐれも気を付けてね」

 そう言い残すと、メガホンをギュっと握りなおし、ヘルメットのストラップをキリリと締めて町内の見回りに戻っていった。

 

「新一が卒倒してれば……」

「ん?」

「あ、なんでもない」

 

 ピークに差し掛かった台風の為に、アンの呟きを聞き逃した俺だった……。

 

 

☆主な登場人物

 

 新一    一人暮らしの高校二年生だったが、アンドロイドのアンがやってきてイレギュラーな生活が始まった

 アン    新一の祖父新之助のところからやってきたアンドロイド、二百年未来からやってきたらしいが詳細は不明

 町田夫人  町内の放送局と異名を持つおばさん

 町田老人  町会長 息子の嫁が町田夫人

 玲奈    アンと同じ三組の女生徒

 小金沢灯里 新一憧れの女生徒

 

 

コメント

高校ライトノベル・アンドロイド アン・16『アンと俺と台風・2』

2018-09-10 12:31:25 | ノベル

アンドロイド アン・16

『アンと俺と台風・2』

 

 

 ビル風というのがある。

 

 道の両側が高いビルとかになっていると、その狭くなった空間を風が吹き抜けるので倍以上の風速になるってやつだ。

 そのビル風の数倍数十倍の威力になったような突発的な暴風が吹く。

 普段は意識しないんだけど、俺んちの前と後ろ。それぞれ通り二つ隔てて三階建てと十階建てのマンションがある。

 けっこう距離が空いていてビル風現象が起こっているとは思わないんだけど、暴風ははっきりとビル風現象を増幅させている。

 ブオーーービュッ!ビュッ! ブオーーービュッ!ビュッ!

 いかにも絶賛増幅中という暴力的な風音。

 ボン!

 キャ!

 特大の風船が破裂するような音が響き、アンがしおらしい悲鳴を上げる。

 破裂音にもビックリしたが、アンの悲鳴にも驚く。アンがうちに来て以来悲鳴を上げるのは初めてだ。

「大丈夫か!?」

 思わず肩を抱いてしまう。アンを気遣いながらも、男らしい庇い方だと自分の行動に胸が、ちょっぴりだけど熱くなる。

「う、うん、ちょっとビックリしただけ」

 寄り添うと、微かに震えている。

 な、なんだ、この小動物みたいな可憐さは?

「ちょっと様子を見てくる」

「あぶないよ!」

「大丈夫、二階の出窓から見るだけだ」

 

 見に行って驚いた。

 

 カーポートのアクリル屋根が一枚割れて、二枚が千切れかけてバタバタしている。

 あれがぶっ千切れたら、ご近所の窓やら壁やらに突き刺さって大変なことになる。

 ちょっとビビったけど、軍手をはめて外す決心をする。

「アンはうちの中に居ろ!」

 そう言ったにもかかわらず、アンは健気にも手伝いに出てきた。

 

 あなたたちーーーーだいじょーーーーーぶーーーーー!?

 

 風下の方から風混じりの声がした。

 町田夫人がヘルメットにメガホンを持って近所の様子を見て回っているのだ。

 日ごろお節介なオバサンだと思っていたが、さすが自治会長の嫁、緊急時には遺憾なく観周りをされているようだ。

「アクリル板を取ったら中に入ります!」

「待ってなさい、手伝うわ!」

「「あ、ありがとうございます!」」

 二人そろって声をあげた時だった……

 

 バン!!

 

 一瞬猛烈な風が吹いて、千切れかけていたアクリル板が吹き飛んだ!

 ウグ!

 くぐもった悲鳴がした。

「大丈夫かアン!?」

「大丈夫だよ……」

 言葉に反して、アンの顔右半分はパックリ割れて生体組織が血まみれで露出し、目玉がドロリと垂れ下がっているではないか!

 

 キャーーーーー!

 

 悲鳴をあげて卒倒したのは、カーポートの傍まで来ていた町田夫人だった……

 

☆主な登場人物

 

 新一    一人暮らしの高校二年生だったが、アンドロイドのアンがやってきてイレギュラーな生活が始まった

 アン    新一の祖父新之助のところからやってきたアンドロイド、二百年未来からやってきたらしいが詳細は不明

 町田夫人  町内の放送局と異名を持つおばさん

 町田老人  町会長 息子の嫁が町田夫人

 玲奈    アンと同じ三組の女生徒

 小金沢灯里 新一の憧れ女生徒

 

 

コメント

高校ライトノベル・アンドロイド アン・15『アンと俺と台風・1』

2018-09-06 14:10:03 | ノベル

アンドロイド アン・15
『アンと俺と台風・1』

 

 

 久々の大型台風だった。

 

 だったと、テレビとかで言ってるけど、十七年の人生経験しかないので、比較対象になる五十年前の台風を知ってるわけじゃない。

 でも、我が家的には未曽有の被害を被ったので、実感としては『大型台風』そのものだ。

「新一、雨漏りしてる!」

 アンが指摘したのは、警報が出て臨時休校が決まって二度寝を決め込もうと思った時だ。

「雨漏り?」

「どこが漏ってる?」

「さあ……でも漏ってる音がする」

「音があ?」

 耳を澄ますが俺には聞こえない。アンはアンドロイドなんで聴力とかの五感も優れているんだろう。

「場所も分かったりしないのかあ、アンドロイドなんだからさあ」

 そうボヤいたのは、二階の天井を見過ぎて首が痛くなった時だ。

「だって、ナチュラルモードなんだもん」

「え、そんなの初めて聞いたぞ」

「新一を甘やかさないためのプログラム、自分じゃ解除できないの、ごめん」

 可愛く手を合わせやがる。

 これをやられると何も言えなくなってしまう。俺んちに来た頃はやらなかったから、学習したか、俺に合わせたプログラムが起動したか。

 三度目の天井観察をやって発見した。

 雨漏りはクローゼットの中だった。クローゼットの外は外壁で、外壁はそのまま屋根とくっ付いている。どうやら、その接合部分に横殴りの雨が吹きつけたんだろう。幸い雨水は壁を伝っているだけで、床や中の衣服を濡らすには及んでいない。

「とにかく服を出すぞ!」

「は、はい!」

 可愛い声で腕まくりなんかしやがる。

 んしょ んしょ……

 眉をヘタレ八の字にして衣装ケースを運ぶところなんか、まさに非力な女子高生だ。町内運動会での怪力発揮を知っているので――なにをブリッコしやがって――なんだけど、あやうく萌えそうになる自分が情けない。

「天井にどんどん広がってくよ~」

 オフホワイトの天井に年輪のようなシミが広がっていく。いっそ落ちて来れば鍋や洗面器で受け止められるんだけど、為すすべがない。

「屋根上がって直すしかないかなあ」

「だめよ、この暴風雨のさ中に!」

「だよな……あ、滴り始めた」

 水平に見える天井でも僅かに凹凸があるんだろう、そこに集まった雨水が数か所で滴り始めた。

「なんとかしようよ新一」

 けなげに空き缶で漏水を受けるアン。なんとかしてやらねばと腕を組む。

「よ、よし!」

 閃いた俺は、古いバスタオルを出して、いちばんひどいところに吊るした。

「あ……すごいすごい!」

 バスタオルに吸引されて、天井の漏水は一か所に集まり始めた。あとは、バスタオルの限界を超えて落ちてくる雨水を洗面器に受けるだけだ。

 滴る雨水は、やがて洗面器にリズムを刻み始める。

 ピタン ポチャン ピタン ポチャン

 二人で体育座りして、雨だれの音を聞く。

 外は暴風雨のさ中なのに、とても穏やかなひと時になった。

 

 しかし、台風は、これでは収まらなかった……

 

☆主な登場人物

 

 新一    一人暮らしの高校二年生だったが、アンドロイドのアンがやってきてイレギュラーな生活が始まった

 アン    新一の祖父新之助のところからやってきたアンドロイド、二百年未来からやってきたらしいが詳細は不明

 町田夫人  町内の放送局と異名を持つおばさん

 町田老人  町会長 息子の嫁が町田夫人

 玲奈    アンと同じ三組の女生徒

 小金沢灯里 新一の憧れ女生徒

 赤沢    新一の遅刻仲間

 早乙女采女 学校一の美少女

 

コメント

高校ライトノベル・アンドロイド アン・14『文科省通達』

2018-09-03 15:46:55 | ノベル

アンドロイド アン・14
『文科省通達』

 

 

 置き勉してもいいんだってよ!

 

 嬉しそうにスマホの画面を示して、赤沢が目をへの字にする。

 遅刻の常習犯で、成績も振るわない親友だが、どことなく人に愛されるのは、こういうところだろう。

 なにか珍しいものや面白いことがあると、率先してみんなに広める。

 時にスカタンもやるが、みんなで面白がることが無上の楽しみである。

 いわばグローバルなイチビリがみんなに愛されている。

 その赤沢の新発見に、教室のみんなが目を向ける。

「この時期に置き弁したら、弁当箱メッチャ臭くなるぞ」

「その置き弁じゃねえ。クソ重たい教科書とか勉強道具を置きっぱにしてもいいという文科省のご通達だ!」

「「「ええ、なに!?」」」

 興味を持った数人が赤沢の画面を見て、それぞれ自分でググり始めた。

 

「……なんだ、小学生対象じゃないの」

 

 玲奈が重要ポイントを指摘してスマホを置いた。

 玲奈もアンも、なんとなく市民権を得て、食堂以外の昼食をうちのクラスでとるようになってきたんだ。

「んなこたねーよ。小学生に認められて高校生に認められないってのはおかしーよ」

「そーよ! いまでも一応黙認はされてるけど、学年とか先生によっては『持って帰れ!』ってうるさくなることあるもんね」

「あ、それ矛盾感じてた! 置きっぱでいいなら矛盾とか思わなくっていいし」

「そもそも、持って帰れって言われなくて済むし!」

「そーよそーよ、通学カバンなんて電車の中で肩身狭いもん!」

「そーそー、部活のジャージとか道具とかもね」

 クラスのみんなが不満を並べ始めた。

 

「「「置き勉してもいいように学校にかけあおう!」」」

 

 赤沢が投げた石は大きく波紋を広げていった。

 

「ちょっと新一」

 アンがオイデオイデをするので後を付いて廊下に出る。

「こっちこっち」

「つぎ、こっち……」

 あちこちの教室を周って勉強道具を集め、かなりの量になったところで保健室に向かった。

「ちょっと体重計借りま~す」

 二人で持った勉強道具を秤に載せる……体重計の針は11キロを指している。

「こんなに重いんだ!」

「それに、すごくかさ高いでしょ」

「これは、赤沢の言う通り、置き勉を認めてもらわなきゃな!」

 俺も赤沢教の信者になりかけた。

「そこじゃないのよ」

「どういうことだよ?」

「見てよ、英語だけでも辞書が二種類、文法と構文の副読本で3.2キロ」

「だから置いといたほうが楽だろうが」

「違うの、こんなに要らないのよ。和英辞典とか文法や構文とか、ほとんど使わないでしょ」

 

 そう言えばそうだ。

 入学時や新学年でいろいろ買わされるけど、使わない者が多い。

 

「教科の先生が、てんでバラバラにあれもこれも必要だって言うからこうなるのよ。販売時期も何度にも分かれるし、こうやって重さとか確認したことが無いのよ」

「それって……」

「根本的に減らさなきゃならないのよ」

「おまえ、アッタマいいじゃん!」

「さ、赤沢くんに言ってやって、わたしから聞いたって言わないでね」

「お、おう」

 

 結果、俺と赤沢の共同提案ということで先生たちに申し入れ、勉強道具というかアイテムの見直しが始まった。

 P音事件と言い置き勉のことといい、アンは、なにか方針転換を始めたような気がするんだけど……。

 

 

☆主な登場人物

 

 新一    一人暮らしの高校二年生だったが、アンドロイドのアンがやってきてイレギュラーな生活が始まった

 アン    新一の祖父新之助のところからやってきたアンドロイド、二百年未来からやってきたらしいが詳細は不明

 町田夫人  町内の放送局と異名を持つおばさん

 町田老人  町会長 息子の嫁が町田夫人

 玲奈    アンと同じ三組の女生徒

 小金沢灯里 新一の憧れ女生徒

 赤沢    新一の遅刻仲間

 早乙女采女 学校一の美少女

コメント

高校ライトノベル・アンドロイド アン・13『P音を飛ばす』

2018-08-30 14:00:23 | ノベル

アンドロイド アン・13
『P音を飛ばす』

 

 

 アンは音源を飛ばせるらしい。

 

 そう思ったのは昨日の昼休み。

 例のP音で、ときどき弄られるアンだったが、その都度ちょっとだけ頬を染めて(*´艸`*)と笑っている。

 そうすると、周囲もつられてウフフとかアハハになって、それでおしまい。

 こういうことは、意固地になって無視したり知らぬ顔を決め込むとエスカレートするもんだ。

 そういうアンの反応は好感を持たれ、そのぶん動画をアップした者の評判は悪くなる。

 

――悪質だよねえ――削除される前に魚拓とってて加工して再投稿だもんね――も、サイテー――

 

 収まりがつかないのが、采女の取り巻きたち。

 アンが中庭とかを歩いているとヒソヒソと話声がしたり嫌味な笑い声がするようになった。

「いやーね、あれ、早乙女さんの取り巻き達よ」

「顔も見せないで、メッチャムカつく(; ・`д・´)」

 アンよりも、いっしょに歩いてくれている玲奈たちが怒りだす。

 そういうことが四五も回続いた昨日の昼休み。

 中庭を見下ろす三階の渡り廊下からクスクス笑いが聞こえてきた。

「ちょっと、いいかげんにしなさいよ!」

 玲奈がブチギレて渡り廊下に向かって拳を振り上げた。

 すると人の気配と気配の分だけの忍び笑い。

「玲奈、もういいわよ」

「だって、あいつら」

「「「そーよそーよ!」」」

 なんだか刃傷沙汰になりそうな気配になってきた。

 すると、渡り廊下の方から元気のいいP音が立て続けに起こった。

 

 ピーーープーーープププーーブスブスーーーブーーーー!

 え、え、ちょ、ちょ~~~~!!

 

 P音と慌てた声を残して取り巻き達の気配が消えた。

 

「ひょっとして、アンがやったのか?」

 食堂の券売機に並んだアンの横顔に聞いた。

「どうだろ、取り巻きさんたちの声がP音になったらと思ったら、そうなっちゃった」

 そう呟きながら、アンはたぬきそばのボタンを押した。

 

 放課後に玲奈から聞いた話では取り巻き達は発する声がP音になるだけでなく、濃厚な臭いまでついているということで、終日口をつぐんだままだったそうだ。

 

 自覚があるのかないのか、同居人の俺としては、ただただ平穏を祈るだけだった。

 

 

 

コメント

高校ライトノベル・アンドロイド アン・12『P音』

2018-08-26 14:11:20 | ノベル

アンドロイド アン・12
『P音』

 

 

 今度は動画だった。

 

 ほら、食堂で早乙女采女(さおとめうねめ)って美少女三年生がやってきてアンにいろいろ話したろ。

 なんでも采女さんの知り合いがスーパーに居て、エスカレーターでオタオタしてるアンを写メってネットで流した。

 一応、そのお詫びってことだったけど、直後にアンの後ろを通った女子がズッコケて、トレーに載っていたものがひっくり返った。なぜかコショウが載っていて、コショウの灰神楽がたって、もろに被ったアンはクシャミを連発。

 その情けない姿を十秒ほどが動画に撮られている。

 クシャミを堪えようとして、堪えきれずに――グフッ!――と噴いてしまい、涙と鼻水が爆発してしまった。

 瞬間的に腹圧が急上昇して、PU~~~と可愛いP音を発してしまったんだ。

 

 写メの時は赤沢が教えてくれたんだけど、動画を発見したのは町田夫人だった。

 

「こんな動画許しちゃダメよ!」

 回覧板のついでに「こんなのが出回ってるわよ」と教えてくれて「削除依頼をしよう!」との励ましに続き、こっちの返事も待たずに、その場で運営会社に電話してくれた。

「「ありがとうございます」」

 二人でお礼は言ったけど、不安だった。

 こういうやつらは反応すればするほどカサにかかってエスカレートしてくるもんだ。

 町田夫人の義侠心が裏目に出ないことを祈った。

 

 アハハハハ

 

 たいして興味もないアジア大会の中継を観ているとキッチンの方でアンの笑い声。

 また感電して狂っちまったか!?

「ほら」

 振り返ると、鼻先にスマホが突き付けられる。

 例の動画。今度は目の所に申し訳程度の目隠しが施され、P音の所はリフレインするように加工されていた。

「こ、こいつーーー!!」

 さすがの俺も血が逆流した。

「スレも面白いよ~」

 

 HEこき女! 笑い死ぬ~! HHHHHHHHHHHHHH~ こえ~~ 8888888888 よく撮った!

 撮ったやつサイテーー! サイテー言いながら見てるし! ただの生理現象 WWWWWWWW 削除削除!

 挙げた人削除しなさい、天誅が下ります! るせー! 目隠ししてるしー! 魚拓とったし~

 

「通報する!」

「いいよ、ほっといて。飽きたらやめるだろうし」

「しかし、再生回数1000超えるぞ」

「ほっときゃいいのに……」

 

 通報してから気が付いた。

 アンはアンドロイドだ。

 それも、よくできたアンドロイドで、人間同様に食事はするが100%エネルギーに変換してしまう。

 だから、その……排泄するということがないし、P音を発することもない。

 それに呼吸することもないから、グフ! という具合に鼻水を爆発させることもない。

 

 アンのやつ何のために?

 

 そう思って再び振り返ると、拳銃を持つような手をした。

 PU~

 なんと口からP音を発しやがった!

 

 

☆主な登場人物

 

 新一    一人暮らしの高校二年生だったが、アンドロイドのアンがやってきてイレギュラーな生活が始まった

 アン    新一の祖父新之助のところからやってきたアンドロイド、二百年未来からやってきたらしいが詳細は不明

 町田夫人  町内の放送局と異名を持つおばさん

 町田老人  町会長 息子の嫁が町田夫人

 玲奈    アンと同じ三組の女生徒

 小金沢灯里 新一の憧れ女生徒

 赤沢    新一の遅刻仲間

 早乙女采女 学校一の美少女

 

 

コメント

高校ライトノベル・アンドロイド アン・11『三年一組 早乙女采女』

2018-08-23 14:17:57 | ノベル

アンドロイド アン・11
『三年一組 早乙女采女』

 

 

 ……どうも狙っているらしい。

 

 というのはアンのことだ。

 自治会の運動会や学校でのアレコレで、アンは「よくできた」という冠詞が付き始めたのだ。

 よくできた三丁目のお嬢さん。

 よくできた転校生。

 よくできた新一の妹。

 その「よくできた」を回避を狙っていろいろドジをやっているように思えるんだが、人にもアンにも言わない。

 

 家で感電したことも、町田夫人の自転車とお見合い衝突したことも、スーパーのエスカレーターでオタオタしたことも知れ渡った。

 知れ渡ったということは、言い換えれば注目されていたということでもある。

 お見合い衝突は、町内の放送局である町田夫人が広めたことだろうし、スーパーの一件は、学校の関係者がス-パーに居たらしいのだ。

 

「おい、こんなのが出回ってるぞ」

 

 もう三十秒早ければ免れた遅刻。

 さして悔しがりもせず遅刻指導の列に並んでいて、遅刻仲間の赤沢がスマホの画面を見せる。

 アンは、初日こそ従兄妹同士の許婚(いいなづけ)だと宣言したが、あくる日からは俺自身が緊張の糸が切れ、そんな俺といっしょに登校しては遅刻の巻き添えと早く出るようになっていた。

 で、そうそうスマホの画面。

 ス-パーでオタオタしてエスカレーターに乗れないでいるアンのへっぴり腰が映っている。

 いかにも体育苦手少女のヘタレ眉はいただけない。

「だれが撮ったのかは分かんねーけど、俺はこういうアンもいいと思うぜ」

 赤沢はいいやつだ。正直、写真の撮り方の悪意を感じる俺だったが「こういうアンもいいぜ」とフォローしておくことで注意喚起してくれている。

 おたつけば、こういう写真を撮るやつらはエスカレートしてくることを言ってるんだ。

 

 食堂で、こんなことがあった。

 

 朝起きられないことを理由に弁当を作ることを止めたアンは、玲奈たちとお昼をしていた。

「ごめん、委員会あるから先にいくね」

「あ、うん、じゃね」

 玲奈はギリギリまで付き合ってくれていたようなんだけど、トロトロ食べるアンを待っていては委員会に間に合わなくなってきたのだ。

 デザート代わりのフライドポテトに手を伸ばしたところで声が掛かった。

「あなたが三組のアンね?」

 なんと校内一の美少女と誉れも高き三年の早乙女さんが横に座ったのだ。

「え、あ、はい」

 ちょっと不思議だった。

 アンの席に回るのだったら、中央の通路から入るのが普通なんだけど、早乙女さんは窓側の狭い通路から寄って来た。

「ス-パーの写真、わたしの知り合いが撮って、何人かに送ったの。あなたの了解も得ないで申し訳なくって、とりあえずはお詫びと思って……」

「いいえ、わたしってドジだから気にしてません」

「でも……」

「あの、ちょっと前にもご近所のオバサンと衝突してましたし(*ノωノ)」

「そう、それならいいんだけど。あ、わたし三年一組の早乙女采女(さおとめうねめ)っていうの。よければよろしくね」

「あ、道理できれいな人だと思ったら、早乙女さんですか!」

「あら、知っていたの?」

「はい、男の子たちが、ときどき噂してます!」

「やだなあ(まんざらでもないお顔に見える)」

 美しく恥じらって頬を染める早乙女さん。俺でもドキッとする。そんな上級生をホワホワ見つめるアンもいいんだけど、口ぐらい閉めろ!

「早乙女さん、記念写真!」

 取り巻きらしい女子が二人の前に立ちスマホをカメラ構えた。

「あ。写真は……」

「ぜひ、撮りましょう!」

 フライドポテトを持ったまま、アンが明るく賛成する。

「え、あ……」

「じゃ、そのまま立ってください!」

 

 その時、別の女子がトレーを持って窓側からやってきて、二人の後ろでズッコケた。

 

 ワ!

 

 転倒こそしなかったが、お手玉してしまい、トレーの上のアレコレが踊ってしまった。

「ごめんなさい!」

「フ、ファックション! フ、ファックション!」

 アンがクシャミを連発! 重なって写メの連写音!

 二発のクシャミの後、三発目を堪えようとして、アンは爆発した。

 

 グフ!

 

 鼻水が飛び散り、同時にクシャミではないP音がハッキリとした!

「早乙女さん、OK!」

 写メ子がOKサインを出してトレー女ともども早乙女さんは逃げた!

 

☆主な登場人物

 

 新一    一人暮らしの高校二年生だったが、アンドロイドのアンがやってきてイレギュラーな生活が始まった

 アン    新一の祖父新之助のところからやってきたアンドロイド、二百年未来からやってきたらしいが詳細は不明

 町田夫人  町内の放送局と異名を持つおばさん

 町田老人  町会長 息子の嫁が町田夫人

 玲奈    アンと同じ三組の女生徒

 小金沢灯里 新一の憧れ女生徒

 赤沢    新一の遅刻仲間

 早乙女采女 学校一の美少女

 

コメント

高校ライトノベル・アンドロイド アン・10『あわわわ(*#O#*)』

2018-08-19 12:36:10 | ノベル

アンドロイド アン・10
『あわわわ(*#O#*)』

 

 

 地震かと思った!

 

 遅刻仲間の赤沢が「ぜったいおもしれーって!」と押し付けてきたラノベを読んでいるうちに居ねむっちまって、突然グラグラガシャガシャの家鳴りがして飛び起きたのだ。

 このー! くそー!

 家鳴りにアンの罵声が混じっているのに気付いて音源の玄関にまろび出る。

「な、なにやってんだ、アン!?」

「なにって、ドア開けて買い物に行くとこなのよ! この~! この~!」

「や、やめろ! おまえの力だと家が壊れる!」

「だ、だって……!」

「落ち着け!、玄関のドアは外に向かって押すんだ! 押すんだよ!」

「え? え? え……ほんと、開いた! 新一、エラーい!」

「の、のわーーーー!」

 

 無事にドアが開いたのが嬉しくて抱き付いてくる。その勢いで玄関ホールに重なって倒れてしまい、昨日の感電事故に続いて、アンの柔らかさに包まれてしまう。

「じゃ、行ってくるねー!」

「あ、ああ、気いつけてな……あ、おれも一緒に行くわ」

 アンを一人にしてはいけない気がして、俺はご近所お出かけ用のサンダルをつっかける。

 施錠していると、またしてもアンのトチ狂った声!

 

 ワ、ワ、ワ、アワワワワ!

 

「どうした?」

 家の前に出ると、町田夫人が急ブレーキをかけた自転車の前輪に跨るようにして至近距離でお見合いしているアンだった。

「ご、ごめんなさい!」

「いえいえ、こちらこそ💦」

 どうやら、道路に出たところで、自転車の夫人と出くわし、双方、互いの進行方向に避けてしまってお見合いになってしまったようだ。

「す、すみません、アンのやつが」

「いえいえ、わたしもドジっちゃって」

「アン、いつまで跨ってるんだ」

「え、あ!」

 前輪に跨ったものでスカートがめくれ上がって縞パンが見えている。 「縞パン」の画像検索結果

「わ、あわわわ(*#O#*)」

「アンちゃんも意外にそそっかしいのね(⌒∇⌒)」

「いえ、あ、はい、粗忽ですみません」

「ううん、こういう女の子って好きよ。運動会の時のスーパーウーマンみたいなのもいいけど、ドジっ子も好きよ。じゃ~ね」

 

 にこやかにペダルを漕ぎ始める夫人に真っ赤な顔でペコペコ頭を下げるアン。

「新一も頭下げる!」

「俺もか?」

 夫人がもう一度振り返って手を上げてドンマイのサイン。

 揃ってため息ついてスーパーに向かった。

 スーパーでも、エスカレーターに乗り損ねてアタフタしたり、特売に目を奪われてワゴンをひっくり返したりした。

 スーパーにはご近所の人もチラホラ居て、明るい笑いを誘っていた。

 

 どうも、感電事故から、ちょっとおかしくなってきたアンだった。

 

 

 ☆主な登場人物

 

 新一    一人暮らしの高校二年生だったが、アンドロイドのアンがやってきてイレギュラーな生活が始まった

 アン    新一の祖父新之助のところからやってきたアンドロイド、二百年未来からやってきたらしいが詳細は不明

 町田夫人  町内の放送局と異名を持つおばさん

 町田老人  町会長 息子の嫁が町田夫人

 玲奈    アンと同じ三組の女生徒

 小金沢灯里 新一の憧れ女生徒

 赤沢    新一の遅刻仲間

コメント

高校ライトノベル・アンドロイド アン・9『エマージェンシー! エマージェンシー!』

2018-08-16 12:56:15 | ノベル

アンドロイド アン・9
エマージェンシー! エマージェンシー!』

 

 

 

 従兄妹同士の婚約者という噂は急速に収まった。

 

 クラスが離れているし、特段イチャイチャするわけでもないので、みんなの関心が続かないのだ。

 やっぱ、最初にカマシテおくというアンの狙いは正しかったのかもしれない。

 

 ボム!

 

 くぐもった爆発音がした、いつかネットで見た地雷の爆発音に似ている。同時にリビングの照明が落ちた。

 マンガ読む手を休めて首をひねると、ソファーの向こう、キッチンの方で小さな原子雲みたいなのが上がっている。

「どうかしたか、アン?」

 スーっと立ち上がると、ソファーの向こうに突っ張らかった形のいい手足が見えた。

「ア、アン! 大丈夫か!」

 脚をも連れさせながら寄ってみると、ジューサーのプラグを持ったまま、白目をむいてアンがひっくり返っている!

「ア、アン、アンアン!」

 ファッション雑誌のタイトルみたいなのをバカみたく繰り返すんだけども、オロオロするばかり。

「す、すまん、俺がジュースなんか作ろうって言ったばかりに、おい、アン、アン、アン、どうしたらいいんだよ!?」

 ワイドショーでやっていたジュースが美味そうなので、いっちょ作ってみるか! と、思い立ち「それなら、作ったげる!」と、アンがキッチンに立った。アンに作らせたら間違いは無いし、栞を挟みっぱなしのマンガも読みたいし「じゃ、頼むわ」と返事したのが悔やまれる。

 コンセントとプラグには黒っぽいホコリが付着しているところを見ると、どうやらトラッキングのようだ。

 ジューサーも、何年かぶりで棚から下ろしたもので、チェックしなかったことも悔やまれる。

 

 人間だったら救急車を呼ぶところだけど、アンドロイドを救急病院に搬送しても仕方がない。

 

「え、えと、えと……」

 オロオロ狼狽えていると、開きっぱなしの白めに、なにやら虫が行列……と思ったら、白目の左から右へテロップが流れている。

――エマージェンシー! エマージェンシー! 緊急回復ボタンを押してください 急回復ボタンを押してください ――

「え、え、急回復ボタンて、どこのあるんだよ?」

―― 胸部のエマージェンシーパネルを開放し 赤いボタンを押す ――

「え、え、胸部?」

 ためらいながら、アンのカットソーを捲り上げる。

 人と変わらない白い胸がせわし気に息づいている。

「パ、パネルって、どこにあるんだよ?」

 肌はバイオなんだろう、すべすべで、ちょっと触れるにしても罪悪感がある。しかし、事態は急を要する。

 フニ

 あーーー(ヾノ・∀・`)ムリムリ!

 再び白めに目をやる。

―― パネルが見つからないときは マウストゥーマウスで息を吹き込む 空気圧で緊急回復ボタンを押せる ――

「マウストゥーマウス?」

 去年、保険の授業でやった人工呼吸の要領を思い出す。

―― 人工呼吸の実施方法で可能 ――

「よ、よし、えと……まずは気道確保だよな……」

 

 アンの顎に手を当てて、クイっと持ち上げ、鼻をつまんで口づけの要領。

―― や、柔らけ~ い、いかん、実施だ実施 ――

 

 中略

 

 三分ほど人工呼吸を続けると、白目のテロップが消えて瞳が回復した。

 フーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 空気が抜けるような長い息をして、アンが蘇った。

 

 ただ、時間がかかり過ぎたのか、俺の人工呼吸が不備だったのか、そのまた両方か、アンには後遺症が残ってしまった……。

 

 主な登場人物

 

 新一    一人暮らしの高校二年生だったが、アンドロイドのアンがやってきてイレギュラーな生活が始まった

 アン    新一の祖父新之助のところからやってきたアンドロイド、二百年未来からやってきたらしいが詳細は不明

 町田夫人  町内の放送局と異名を持つおばさん

 町田老人  町会長 息子の嫁が町田夫人

 玲奈    アンと同じ三組の女生徒

 小金沢灯里 新一の憧れ女生徒

 赤沢    新一の遅刻仲間

 

コメント

高校ライトノベル・アンドロイド アン・8『今日から学校・3』

2018-08-14 10:35:12 | ノベル

アンドロイド アン・8
『今日から学校・3』

 

 

 同じクラスだったらどうしようかと心配したが、さすがにそれは無かった。

 

 俺は一組だが、アンは二つ向こうの三組だ。

 二つ向こうということは、体育や芸術でいっしょになることもないし、校舎の都合でフロアも違う。

 生徒の関心は移ろいやすい、正門前のラノベじみたあれこれも、来たるべき行事や部活や試験やら個人的なアレコレで三日もたてば消えていくだろう。

 

 しかし、それは甘かった。

 

「あんたたち婚約してるんだって!?」

 一年で同級だった三組の玲奈が休み時間にやってきて、容疑者をゲロさせる刑事のようにドンと俺の机を叩いた。

「な、なんだよそれ?」

「だって、アンが宣言してたわよ」

 今度は前の席に座って顔を寄せてきた。

「新一の従妹でさ、生まれた時に親同士が二人を許婚(いいなづけ)にして、そんでもって、もういっしょに住んでるんだってえ!」

「え? ええ!?」

「もう、このこの、この~!」

 

 昼休みには、俺とアンの弁当の中身が同じだということが暴露され、週末まで格好の話の種にされてしまった。

 

「でも、安心して」

 週明けは、どんな顔をして登校すればいいのかと悩んでいると、戸締りをちゃんとやったというような調子で答えが返って来た。

「同居の従兄妹で、婚約までしていたら、もう、その先はないでしょ。多少くっ付いていたりしても当たり前だし、二人が、この先どうなるんだろうなんてことも興味ひかないと思うわよ。それになにより、わたしにも新一にも言い寄って来る者は居なくなるって!」

 そりゃそうだろ、同居の婚約者という鉄壁に挑もうなんて奴はいないだろう。

「ね、わたしのスペックって、アイドルグループのセンター並みなんだから、これくらいの虫除けしとかないとね」

 そうか、そういう深慮遠謀があったのか!

 しばし感心した……が……待てよ?

 それって、俺の高校生活……女の子と付き合うことが完全にできなくなるっちゅうことじゃねーのか?

 だろ? 同居の許婚と付き合ってくれるような女の子っているわけねーじゃねーかあああああああああ!

 

☆ 主な登場人物

 

 新一    一人暮らしの高校二年生だったが、アンドロイドのアンがやってきてイレギュラーな生活が始まった

 アン    新一の祖父新之助のところからやってきたアンドロイド、二百年未来からやってきたらしいが詳細は不明

 町田夫人  町内の放送局と異名を持つおばさん

 町田老人  町会長 息子の嫁が町田夫人

 玲奈    アンと同じ三組の女生徒

 小金沢灯里 新一の憧れ女生徒

 赤沢    新一の遅刻仲間

コメント

高校ライトノベル・アンドロイド アン・7『今日から学校・2』

2018-08-12 10:24:45 | ノベル

アンドロイド アン・7
『今日から学校・2』

 

 

 えーーお兄ちゃん!?

 

 正門付近のオーディエンスが声をあげる。

 そりゃそうだ、制服モデルかアイドルの制服姿かという美少女が、一山いくらのワゴンセールのモブキャラに、ちょっと甘えと媚を漂わせて助けを求めてきたんだ。そのギャップに敵意の籠った悲鳴を上げるのは当然だ。

ちょ、な、なんで居るんだ!?」

 声を押えた分、尖がった詰問調になってしまう。

七分遅れで出ろって言ったろが!」

「七分遅らせたわよ、でも、初日の緊張感で……」

タクシーでも拾ったのか?」

「ううん、つい走っちゃって」

 

 ウウ……どんだけの速さで走ったっていうんだ!?

 俺はインクレディブルファミリーの親父のボブの心境だ。

「大丈夫だよ、マラソンの世界新の記録は破ってないから」

 ニコニコ笑顔のアンに、咄嗟には言葉が出ない。

「はい、お弁当!」

 目の前に久しく見なかった弁当の包みが突き出される。

「べ、弁当!?」

 たった七分のタイムラグで弁当まで作ったってか? というより周囲を見ろよ、このエロゲ妹シュチを咎める視線でいっぱいだろーが!

「同居の従兄妹同士なら、やっぱ、こういう気配りは良いもんじゃないかと思い至ったわけよ」

 従兄妹というキーワードにオーディエンスからの視線に殺意が籠る。

 そりゃそうだろ、妹ならば一線は超えられないが、従兄妹ならば結婚だってできるんだ。

 従兄をお兄ちゃん呼ばわりするメチャ可愛い従妹スマイルのままアンは背伸びして俺の耳元に口を寄せてきた。

どうせ、いつかはバレるんだから、ハナから認知してもらったほうがいいのよ!」

 ヒソヒソ声ではあるけど、きっぱりと言いやがった。

「食べたら洗っとくのよ、じゃ」

 そう言って、アイドルじみたハツラツさで昇降口に駆けていくアン。

 その後ろ姿を見送るオーディエンス。その隙に裏の通用門まで移動して校内に入る俺だった。

 

コメント

高校ライトノベル・アンドロイド アン・6『今日から学校・1』

2018-08-11 11:36:30 | ノベル

アンドロイド アン・6
『今日から学校・1』

 

 

 今日から学校だ。

 

 いや、俺は学校は毎日いってる。

 アンだよアン。

 いろいろ手続きとかがあって、アンの登校が今日からって意味なんだ。

 

「ど、似合ってる?」

 

 自治会の運動会が終わって、飯の前に風呂に入って、出て来てぶったまげた。

 レディーファーストでアンを先に入れてやって、その間に米を研ぐとか、俺のやれる範囲で晩飯の用意をした。

――お風呂空いたわよ~🎵――の声に「おお」と返事して、ざざっと一風呂浴びて出て来たところ。

 制服モデルみたく、フワリと旋回してポーズを決めるアンが居た。

「明日っから学校だっけ……」

「そだよ、おソロのお弁当とか作ってあげっから、いっしょに行こうね!」

「それは断る!」

「えーーなんでえ!?」

 

 俺は、なにごとも目立たないことをモットーにしている。

 女と一緒に、たとえそれがアンドロイドで従妹設定であっても、いっしょに学校なんてあり得ない。

 それに、アンのデータベースにある女子高生というのは、かなり偏差値の高いそれだ。

 制服モデルか、アイドルの制服姿。渋谷なんか歩いていたら確実にスカウトされそうなオーラに満ち満ちている。

 さらに、言葉遣いが「そだよ」とか「おソロ」とか「えーなんでえ!?」とか微妙にJKスラング。うちの男子生徒からはギャップ萌えの高偏差値で見られることは確実だ。

 

 それで、いろいろ言い渡した。

 

 制服の着こなしはともかく、男子を瞬殺しそうなスマイルとか視線の送り方とか言葉遣い、それに一緒に登校することなんぞの禁止事項を申し渡した。

 それで、一夜明けての今朝。

 俺より七分後に出ることを申し渡して、俺は家を出た。七分違うと同じ電車に乗ることがないからだ。

 そうして、通勤通学のモブキャラに溶け込み、無事に、その角を曲がったら学校の正門というところまでやってきた。

 

 登校のピークにさしかかる時間で、正門前の4メートル道路は制服姿でいっぱいだ。

 そのいっぱいの制服の背中が微妙に向かって左、学校の看板があるほうの門柱に傾斜している。

 また捨て猫か?

 高校生と言うのは萌とか可愛いものが大好きで、それをいいことに捨て猫をする事件が二度ほどあった。

 また、その伝かと思い、子猫の顔ぐらい拝んでやろうと背中を傾斜させながら近づいた。

 

 おにいちゃ~ん💦

 

 背中群の向こうからヘタレ眉でブンブン手を振って飛び出してきたのは、夕べ言って聞かせたばかりのアンだった!

 

 

 

コメント

高校ライトノベル・アンドロイド アン・5『自治会大運動会』

2018-08-10 08:33:38 | ノベル

アンドロイド アン・5
『自治会大運動会』

 

 

 ちょっと違和感。

 

 小学校の運動会用のコートは一周200メートルが標準だ。

 アンのデータベースでは、そうなっている。

 ところが。自治会の運動会は一周150メートルとコンパクト。

 それに、参加者・観客の過半数が65歳以上。若者は数えるほどしかいない。

 

「なんで、こうなの?」

 ジャージ姿の新一に聞いてみる。

「それはな……」

 新一は、名探偵のように腕を組んで、賢そうに答える。

 

「年寄りに200メートルトラックでは広すぎる。そして、それほど多くない参加者と観客がスカスカに見えないようにコンパクトにしているんだ」

「なーるほど、新一、えらい!」

 二人は綱引きと百メートル走にエントリーしている。

 綱引きは偶数丁目と奇数丁目の対向だ。

 三丁目の二人は奇数組。

「三年連続で偶数に負けていますので、みなさん奮闘してください!」

 自治会長でもある町田のおじいさんが声を掛ける。放送局の町田夫人はおじいさんの嫁だ。

「がんばるぞーーー! ヒミゴ!」

 町田夫人がこぶしを突き上げ、町内のみんなが、オーーー! と、応える。

 ヒミゴってなにかと思ったら、奇数丁目の1・2・3をくっつけた語呂だと理解。アンも本気モードになってきた。

 

 瞬間で勝負がついた。

 

 開始のピストルが鳴って、オーエス! の掛け声のオーで、奇数組がロープを三メートルも引き寄せたのだ。

「アン……力出し過ぎ」

「テヘ」

 しかし、町田夫人もおじいちゃんも町内結束の賜物だと感激しているので、二人はポーカーフェイスで通した。

 

 オーーーーーーー   「露出の多いラン...」の画像検索結果

 

 どよめきがおこった。

 あいつぅ……新一は渋い顔になる。

 百メートル走のスタートラインに着いたアンがジャージを脱ぐと、露出の多いランニングウェアーなのだ。

 アンは自制して人間らしい速度で一位になったが、突き刺さる視線に、ちょっと驚いた。

 ご町内の爺さんたちの視線のベクトルを可視化処理すると、たちまちハリネズミのようになるアンだった。

 おもしろいので、映像化して新一に送ってやると、その日一日渋い顔の新一であった。

コメント

高校ライトノベル・アンドロイド アン・4『ご町内の放送局』

2018-08-09 06:29:38 | ノベル

アンドロイド アン・4
『ご町内の放送局』



「新ちゃんといっしょに住むことになりました、従妹のアンです。よろしくお願いします」

 アンは、回覧板を持ってきた隣の町田夫人に、くったくのない笑顔で応えた。

「あら、従妹さんだったの。ゴミ出しでお見かけして、すてきなお嬢さんだと思ってたの、ほんとよ」
「照れます、言われつけてないですから」
「ホホ、ほんとうよ。ご近所の奥さんたちも言ってるわ。ここらへん若い人が少ないから、大歓迎」
「わたしも分からないことだらけなんで、助けていただくと思います」
「あの……まだ学生さん?」
「はい、高校生です。今度の学校は、まだ編入手続き中なんですけど」
「じゃ、ここに腰を落ち着けるのね」
「ええ、父が海外赴任してしまって、母は四年前に亡くなりましたので、同じ境遇の新ちゃんと……」
「そうなの……いえね、あたしたちも心配してたの。高校生の一人暮らしでしょ、なにかと大変じゃないかって」
「そうなんです……新ちゃんて、手がかかるんです、大掃除に三日もかかりましたから。それにお風呂ギライで……」
「ホホ、なにか困ったことがあったら遠慮せずに、オバサンたちに相談してね」
「そんなこと言われたら、ほんとうに頼ってしまいますう!」
「どうぞ頼って! 真っ当にやっていこうって若い人は、あたしたちにとっても希望の星だから、じゃあね!」

 町田夫人は、固い握手をして帰って行った。

「あそこまで話す必要あんのか?」
 パジャマ姿でソファーにひっくり返って、新一がプータれる。
「町田さん偵察にきたんだよ」
「だったら余計にさ、あの奥さん放送局だぜ……それも嘘ばっか。俺たち従兄妹じゃないし、学校の編入とか言っちゃうし」
「するよ。もう学校のCPとリンクしてるし、連休が終わったら連絡来る。ご近所の様子や新ちゃんのこと考えたら、それが一番。さ、さっさと着替えて朝ごはん」
「パジャマのままじゃダメ?」
「ダ~メ! せっかく早起きと着替えの習慣がつきかけてるんだから!」
「せっかくのシルバーウィークなんだからさ」
「ちゃっちゃとやって。町田夫人が望遠鏡で見てる……」
「え、覗かれてんの!?」
「気づかないふり……あのオバサンに信じ込ませたら、ご町内全部の信用が得られるから」
「なるほど……お、自治会の運動会があったんだな、明後日……気づかないで良かったな」
 回覧板を投げ出して、新一は自分の部屋のドアノブに手を掛けた。
「これ出ようよ! まだ出場者足りないみたい!」
「うざいよ、自治会の運動会なんて」
「チャンスだよ、あたしのことも新ちゃんのことも変に興味持たれる前に解消できる。ほら、町田夫人の心拍数が上がった、喜んでるふうにして。ヤッター、新ちゃん、ご町内の運動会、今からでも間に合うかな!?」

 新一は無理矢理喜んだ芝居をやらされた。三十分後、アンが運動会の申し込みをした。すると町田夫人を始めとするご町内の二人への関心は、かなり好意的なものに変わっていった。
 

コメント