大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・トモコパラドクス・61『友子の夏休み グータラ編・3』

2018-11-18 07:01:37 | トモコパラドクス

トモコパラドクス・61 
『友子の夏休み グータラ編・3』
      

 三十年前、友子が生む娘が極東戦争を起こすという説が有力になったん…未来。そこから来た特殊部隊によって、女子高生の友子は一度殺された。しかしこれに反対する勢力により義体として一命を取り留める。しかし、未来世界の内紛や、資材不足により、義体化できたのは三十年先の現代。やむなく友子は弟一郎の娘として社会に適応する「え、お姉ちゃんが、オレの娘!?」そう、友子は十六歳。女子高生としてのパラドクスに満ちた生活が再開された! 娘である栞との決着もすみ、久々に女子高生として、マッタリ過ごすはずであったが……いよいよ夏休みも終盤、グータラを決め込む友子であった。


 桜島は、5000メートルの噴煙を上げていた。

 友子は、これだと思った!

 
 友子は、起こりもしない極東戦争のために開発された義体である。そのことが、利権化してしまい。友子は存在し続けなければならない。ストレスはハンパではない。従って、並のグータラでは、発散のしようがない。思い切ったガス抜きが必要だ。

「で、なにしようってのよ?」

 二日続けて遊びに来た紀香が、気乗り薄げにも聞く。
「極東戦争のシミュレーションやってみようかと思って!?」
「起こりもしない?」
「だから、面白いんじゃない。これくらいのことやらないと、あたしたち義体には息抜きにもならないわよ」
「でも、CPUのバーチャルでやっても……ひょっとして、本当にやってみるつもり!?」
 返事の代わりに、友子は身に合わない豪傑笑いで応えた。

――大変であります。尖閣諸島東方海域に、旧ソ連軍の大艦隊が出現いたしました。アドミラル・クズネツォフ級空母3隻を中核とした機動部隊で、総数60隻に及び……いま、関連のニュースが入ってきました。ロシア政府は、この旧ソ連軍の艦隊は、ロシアとはなんの関係もないと、周辺諸国に通達いたしました。続いて……尖閣諸島の西南に旧日本海軍そっくりの大艦隊が出現しました。これが映像であります……海上自衛隊の発表によりますと、大和型戦艦2隻……どうやら、特徴から、前が大和、後方が武蔵のようであります。続いて、長門、陸奥……高速巡洋戦艦、榛名、金剛、比叡、霧島と続き、その周囲を巡洋艦、駆逐艦が続いております――

「なんで、空母出さないのさ」
「作戦よ、作戦」

――中国政府は、日本の陰謀であると非難し、周辺海域の中国の艦船を避難させました。日本政府も、この旧帝国海軍の艦隊は日本政府が関わったものではなく、全くの不審艦隊であると発表いたしました。双方の艦隊の距離は50キロに迫り……あ、今ソ連艦隊の空母群から次々と艦載機が発艦しております!――

「スホーイ33の対艦ミサイルで、ドッカン、ドッカンやっちゃうからね!」
 紀香の鼻息は荒い。友子はおもむろに高速戦艦4隻を艦隊の前方に展開した。まともに勝負しては、友子に勝ち目はない。なんと言っても亜音速で飛んでくるミサイルである。

「全機、ミサイル発射!」

 合計120発の対艦ミサイルである。現代のイージス艦でも、飽和攻撃で、全ミサイルの撃破は難しい。
 友子は、それまでに、着弾観測用の零式観測機と零式三座水偵を12機発艦させていた。
「なに下駄履き飛ばしてんのよ、砲戦になる前に、そっちは全滅よ」
「どうかな……」

 なんと、12機の下駄履きは、120発のミサイルを撃ち落としはじめた!

「そんなバカな!」
「見かけで判断しちゃいけません」
「機銃の弾に自動追尾装置つけるなんて反則だ!」
「勝てば、なんでもありよ」

 そうこうしているうちに、ソ連艦隊は日本艦隊の射程に入ってきた。
 傲然と火を吐く大和、武蔵の46サンチ砲。高速で接近した巡洋戦艦4隻も、主砲を打ち始めた。
 ソ連艦隊も対艦ミサイルを撃つが、そのほとんどが高角砲に撃ち落とされる。
「アナログの高角砲が対艦ミサイル撃ち落とすなんて不合理だ!」
「でも、こっちの主砲はアナログのままよ」

 下駄履きが、本来の弾着観測をし始めたので、日本艦隊の弾は確実に当たり出した。

 結果は、旧日本艦隊の一方的勝利、旧ソ連艦隊は、ほとんどが撃沈された。

「どうだ、庭でバーベキューでも……」
 一郎が、呼びかけると、二人はスホーイ33と零式水偵でドッグファイトの真っ最中であった。二機の背後には沈み行くソ連艦隊。
「お前ら、こんなの国際問題になるぞ……」
 一郎の声に一瞬気を取られた隙に、スホ-イの30ミリ弾が水偵に当たったが、複葉機であるために、主翼の間をすり抜けてしまった。
「今だ!」
 水偵の後部座席の7・7ミリ機銃がスホーイのコックピットをぶち抜いて勝負がついた。
「負けたあ!」
「勝ったあ!」

 次の瞬間、ソ連艦隊も日本艦隊も分子にまで分解され、その姿がきれいに消えた。

 友子たちが、バーベキューをしている間に、周辺諸国は、居なくなった相手に非難のしまくりであった。

 なんの痕跡も残さなかったので、アメリカと日本のゲーム会社が一時疑いの眼差しで見られたが、技術的に不可能であるといわれ、国際的なハッカー集団のせいにされ、決着した。

 友子のウサバラシも、かなり人迷惑ではあった。

コメント

高校ライトノベル・トモコパラドクス・60『友子の夏休み グータラ編・2』

2018-11-17 06:14:35 | トモコパラドクス

トモコパラドクス・60 
『友子の夏休み グータラ編・2』
      

 三十年前、友子が生む娘が極東戦争を起こすという説が有力になったん…未来。そこから来た特殊部隊によって、女子高生の友子は一度殺された。しかしこれに反対する勢力により義体として一命を取り留める。しかし、未来世界の内紛や、資材不足により、義体化できたのは三十年先の現代。やむなく友子は弟一郎の娘として社会に適応する「え、お姉ちゃんが、オレの娘!?」そう、友子は十六歳。女子高生としてのパラドクスに満ちた生活が再開された! 娘である栞との決着もすみ、久々に女子高生として、マッタリ過ごすはずであったが……いよいよ夏休みも終盤、グータラを決め込む友子であった。


 
 宿題なんか、あっと言う間に出来る友子だが、あえてグータラやってみることにした。

 さすがに英数理の三教科は、グータラといっても、CPUが反応してしまい、並の高校生の百倍くらいの早さで終わってしまった。

 問題は読書感想文である。

 よくもまあ、これだけ傾向性の強い本を選んだなというショ-モナイ本のオンパレードであった。
 野間宏『真空地帯』 小林多喜二『蟹工船』 大岡昇平『レイテ戦記』 徳永直『太陽のない街』と、プロレタリア文学が続いた後、石坂洋次郎『青い山脈』 太宰治『斜陽』『人間失格』 やっと、今風なもので、井上ひさし『父と暮らせば』である。

 書こうと思えば、市民派をいまだに自認してはばからない国語の小林先生を感涙にムセバセるぐらいのチョウチン感想文などいくらでも書けるのだが、それでは面白くない。
 友子自身、小林という先生を好きになれなかった。沖縄戦の生き残りである理事長先生のことを、「沖縄県人の犠牲の上で生き残った人も居るには居ますがね」と間接的に揶揄する。

 友子は知っていた。理事長先生は、自決を決めてはばからない村長を殴り倒して手榴弾を箱ごと取り上げ、白旗を用意させ、英語で「民間人が大勢いる、彼らを助けてやってくれ!」と叫び、自分たち兵隊はガマの裏口から陽動のために駆け出した。
 八人で駆け出した分隊は、岩陰まで来たときには四人に減っていた。そして、最上級者の曹長は肩に貫通銃創を負っていた。伍長であった理事長は、ここまでだと思った。
 理事長は、取り巻く米兵たちに降伏を申し出た。曹長は拳銃を出した……仲間は伍長が撃たれると思った。曹長は自決しようとしたのである。戦死した小隊長から小隊を預かり、それも最後には、自分を含めて四人にまで減ってしまった。その責任をとろうとしたのである。負傷して力のない曹長の拳銃は他の仲間が取り上げ、四人は無事に捕虜になった。

 それでも、理事長は、どこかで贖罪の意識があった。数十名の民間人は助けたが、他に大勢の罪もない県民が命を落とし、自分たちは助かった。
 もし、あの時、曹長も戦死して、自分が最上級者になっていたら……曹長と同じことをしていたのではないかと。だから、自分が九十の歳を越えて生きていることに申し訳なさがあり、死ぬまで乃木坂学院の理事長を務めようと決心している。
 だから、くちばしの黄色い小林のような先生が市民派を気取り、どのような本を課題図書にあげても一言も言わず、ただニコニコしている。それを思うと友子はムナクソが悪くなり、CPUで、資料を集積し、戦前の蟹工船に関わる資料を全て集めた。
 結果は、予想していたが、蟹工船に関わる資料の多くが、その力仕事に見合うだけの賃金を払っていたことの証明になった。たしかに多喜二が書いたような事例も存在したが、多喜二が小説の中で書いたように、同じような反乱は起こらなかった。

 友子の『蟹工船』の読書感想はA4で百枚を超えた。

 改めて蟹工船を読み返すと、そこには搾取と被搾取の価値観しかなく、仕事への「やり甲斐」という観念が抜け落ちていることに思い至った。

「え、小林先生って、『資本論』でさえ剰余価値説(ほんの入り口)までしか読んでないんだ……」
「なに真面目に宿題なんかやってんのよ。うわあ、信じらんない。百枚もあるじゃん!」
 気がつくと紀香が、人がましくお客さんとして、座っていた。
「グータラ、人間的に夏休みを過ごそうと思ったら、こうなっちゃったのよ」
 友子は紀香のCPUにリンクしないで、アナログな人間の言語で喋ったので、一時間半ほど二人は言い合いし、時に爆笑し、リビングで聞いている父真一と、母である春奈は喜んだ。
「友子も、やれば年頃の女子高生らしくできるんじゃないか」
「そうね、ウフフ……」

 もっとグータラに徹しなければと、心に誓う友子であった。

コメント

高校ライトノベル・トモコパラドクス・59『友子の夏休み グータラ編・1』

2018-11-16 07:30:31 | トモコパラドクス

トモコパラドクス・59 
『友子の夏休み グータラ編・1』
      

 三十年前、友子が生む娘が極東戦争を起こすという説が有力になったん…未来。そこから来た特殊部隊によって、女子高生の友子は一度殺された。しかしこれに反対する勢力により義体として一命を取り留める。しかし、未来世界の内紛や、資材不足により、義体化できたのは三十年先の現代。やむなく友子は弟一郎の娘として社会に適応する「え、お姉ちゃんが、オレの娘!?」そう、友子は十六歳。女子高生としてのパラドクスに満ちた生活が再開された! 娘である栞との決着もすみ、久々に女子高生として、マッタリ過ごすはずであったが……いよいよ夏休み。王さんの別荘を引き上げて一波乱。


 夏休みもとっくに後半。あとは、当たり前に女子高生をやってみようと思う友子であった。

 というわけで、友子は、緊急アラームだけを残して、あとの機能を停止させた。つまり、ほとんど人間として生きてみることであり、義体であることをしばらく忘れようというわけである。

 で、今日は父であり弟でもある一郎が広告代理店からもらってきた優待券で、家族三人で『風立ちぬ』を見に行くことにした。
「化粧品と飛行機の違いはあるけど、モノを作る情熱や、憧れという点ではいっしょだからな」
 と、一郎。
「わたしは、死を覚悟の上のロマンスが楽しみ。ハンカチ三枚持って来ちゃった」
 と、義母である春奈も少女のようである。

 友子は、その気になれば映画館に行かなくても、作品全体を知ることなど朝飯前だが、一応家族である、一郎や春奈と同じ映画を映画館で観て共感したかった。

「お。中野さんじゃりませんか?」
 隣の中野と一緒になってしまった。

「こりゃ、鈴木さん。ご家族で映画ですか?」
「ええ、忙しいもんで、映画に行くぐらいが精一杯ですわ」
「このご時世、忙しいのはなによりですよ。どうですか、また新聞お願いできませんか?」
 と、中野は如才ない。
 中野は、いわゆる団塊の世代で、数年前に高校の教師を退職してからは、K党の党員活動を生き甲斐にしているオッサンである。なぜか体を横向きにして列の中で三人分ほどのスペースを取っている。
「いやあ、アベノミクスの恩恵にまだあずかれませんでね、未だに、リーマンショックで、給料下げ止まったままなんです」
「それに、オタクの新聞、来月から値上げでしょ。まあ、夏の休日でも、仕事でもらったチケットで、映画観るのが精一杯ですから……」
 春奈はニベもない。
「まあ、景気が戻りましたら、またよろしく」
「あら、今の政権じゃ、景気回復は見込めないというのが、党の見解じゃなかったですか、おじさん」
 友子も遠慮がない。
「これ、友子、失礼じゃないか」
 一郎がたしなめていると、二十代前半とおぼしき女の子が声を掛けてきた。
「中野先生、どうもお待たせしました。地下鉄一本乗り損ねたもので」
「いやいや、わたしも今来たところだから、さ、順番は取っておいたから、ここに並びなさい」
「いいんですか、わたしたちなら後ろ回りますけど」
「いやいや、最初から三人分確保しておいたし、そんなに混んでもいないから」
 たしかに、七分ほどの人数だが、友子は少し不愉快だった。いつもなら、並んでいる人たちの心を読むのだが、今日は封印している。見回した感じでは迷惑顔な人はいなかったし、他にもポップコーンを買いにいったりして、「おまたせえ!」と、横から入ってくる人もいたので、まあいいかと思った。

 映画は美しく、感動的だった。

 命のはかなさ。しかし、はかないが故に、「生きめやも」と強く願う人間の可憐さ、愛おしさ。そして突き抜けるような空への憧れに満ちていた。
 一郎は、鼻をかむフリをして。春奈は、堂々と三枚目のハンカチを涙でぬらしていた。
 友子も、人間モードになっていたので、正直に感動した。限りある命、限りない夢のパラドクスが、愛おしく羨ましくも思えた。

「兵器を作る人間の葛藤が描かれとらん……」

 気がつくと、前の席に女の子と並んだ中野のオッサンが、やや大きな声でぼやいていた……。

コメント

高校ライトノベル・トモコパラドクス・58『友子の夏休み 東京・3』

2018-11-15 06:17:15 | トモコパラドクス

トモコパラドクス・58 
『友子の夏休み 東京・3』
      


 三十年前、友子が生む娘が極東戦争を起こすという説が有力になったん…未来。そこから来た特殊部隊によって、女子高生の友子は一度殺された。しかしこれに反対する勢力により義体として一命を取り留める。しかし、未来世界の内紛や、資材不足により、義体化できたのは三十年先の現代。やむなく友子は弟一郎の娘として社会に適応する「え、お姉ちゃんが、オレの娘!?」そう、友子は十六歳。女子高生としてのパラドクスに満ちた生活が再開された! 娘である栞との決着もすみ、久々に女子高生として、マッタリ過ごすはずであったが……いよいよ夏休み。王さんの別荘を引き上げて一波乱。


「あの娘、薬漬けにしてマカオあたりに売り飛ばしてもよかったですね……」

 友子が沈んだあたりの海面を見つめながら、手下が言った。
「自分のモノにしたあとにだろ、変態ヤロー」
 女の手下は容赦がない。
「王清香の娘だ(友子のハッタリを信じている)、どんなオマケがついているか知れやしねえ。始末するしかねええのさ」
 朱元基は、一口吸っただけの煙草を、海に投げ込んだ。すると海に落ちるまでに爆竹のような音がして、空中に文字が現れた

――このお礼は、百倍返しよ。王清娘――

 花火の文字がうかびあがり、朱元基たちは、オゾケをふるい、キャビンに戻った。

 ミナコは、海底に着くと、コンクリートの固まりを足に着けたまま、ドルフィンキックで船を追いかけた。そして、船底に近づくと、勢いを付けてコンクリートの足で船底を蹴り上げた。

――大変だ、機関室に浸水、すごい勢いだ!――

 機関長が、船内電話で、そう言うと、さっさと機関室を放棄した。
 衝撃音で、みんな気づいてはいたが、それからの展開までは読み切れなかった。
「機関室はロックしてきただろうな。あそこだけなら沈没することはねえ!」
「そこにぬかりはねえ。海保が来る前にヘリ呼んで、物だけでも運び出そうぜ」
「陳頼、ヘリを……」
 朱元基が、最後まで言う前に、右舷側に衝撃を感じ、船はゆっくりと傾いていった。
「王精香の娘のタタリだ!」
 気の弱い手下がパニックになり始めた。図体がデカイので手が付けられない。
「この薬を飲みな、気分が落ち着く」
「す、すまねえ、アネサン」
 その手下は、十秒ほどで落ち着いて、海に飛び込んだ。
「あのバカ、カナヅチなんだぜ」
 救命具を投げてやったが、届かなかった。その間に残りの手下は救命胴衣をつけ、女の手下から薬をもらっていた。
「ボス、あんたも」
「オレは、海には強いんだ。それより、あの絵を……み、見あたらねえ!」
 絵は、友子が海に投げ入れられたとき、分子にまで分解されていた。
「早く、もうもたないよ、この船は!」
 仕方なく、朱元基は海に飛び込んだが、その瞬間、首に微かな痛みを感じた。しかし、とにかく沈み行く船に巻き込まれてはいけないので、船から離れることに懸命だ。

 ミナコは、海上にに姿を現して脅かしてやろうとも思ったが、これ以上裸を晒すのもいやなので、丘を目指して泳いだ。
 ヨットハーバーに泳ぎ着くと、無人のクルーザーを選んで乗り込み、シャワーを使わせてもらい、とりあえず着る物を拝借した。お金は、船内にあった紙切れを分子返還して十万円ほどつくり、そのまま家を目指した。

「お帰り、あら、服が替わったのね?」
 母である春奈が聞いた。
「汗びちゃだから、借りてきちゃった」
 テレビを点けると、さっきまでのミナコの活躍が、さっそくニュースになっていた。悪のご一統さんは、なぜか、みんなヘロイン中毒で、事情聴取もできないようだ。あの女の薬と朱元基に刺した注射のせいだと思われた。
 ただ、あの女一人が発見されていないことが気になった。

「あたしにも心を読ませないなんて、たいしたやつね……ま、いいや」

 夏休みも、とっくに後半。あとは、当たり前に女子高生をやってみようと思う友子であった。

コメント

高校ライトノベル・トモコパラドクス・57『友子の夏休み 東京・2』

2018-11-14 06:57:06 | トモコパラドクス

トモコパラドクス・57 
『友子の夏休み 東京・2』
      

 三十年前、友子が生む娘が極東戦争を起こすという説が有力になったん…未来。そこから来た特殊部隊によって、女子高生の友子は一度殺された。しかしこれに反対する勢力により義体として一命を取り留める。しかし、未来世界の内紛や、資材不足により、義体化できたのは三十年先の現代。やむなく友子は弟一郎の娘として社会に適応する「え、お姉ちゃんが、オレの娘!?」そう、友子は十六歳。女子高生としてのパラドクスに満ちた生活が再開された! 娘である栞との決着もすみ、久々に女子高生として、マッタリ過ごすはずであったが……いよいよ夏休み。王さんの別荘を引き上げて一波乱。


 友子は悩んだ。泣き叫ぶべきか、青ざめて震えることにするか……。

 で、一度やってみたかった誘拐された可憐な少女というのをやってみることにした。
「深入りしすぎたな、お嬢ちゃん。お前が別荘から、この絵を持ち出しているのは、あちこちの防犯カメラに写っていたぜ」
「ということは、この絵について何か知ってしまったということだ。王のジイサンのとこまで行くくらいだからな」
「そ、そんなんじゃ、あ、あ、あ、あ、ありません……あの絵を持ち出すように……」
「言われただけなのかい?」
「そんなヨタが通じるほどアマちゃんじゃねえんだぜ。その絵ちょろっと見てみろ」
「それはただのフェルメールの複製です。お、お礼に頂いたんです」
「……なるほど、表面はフェルメールだが……ほうら、端の方をめくると、別の絵が出てくる」
「そ、そんなの知りません。ただの……」
「同じサイズの絵なんか、お礼に渡すかしら、女子高生に?」
「とりあえず、アジトに行ってから、洗いざらい喋ってもらおうか」

 むろん絵は、友子が電子分解して、フェルメールの下に作った精巧なレプリカだ。友子の狙いは当たりつつある。

「あ、あ、あたし気分が悪い……」
「ちゃんとエチケット袋があるから、ここに吐きな」
 友子の口にビニール袋があてがわれた。友子は、かなり加減して百馬力で運転手の後頭部目がけてヘドを噴射した。運転手の男は気絶し、助手席の男がブレーキを手で押さえ込んだ。下っ端の工作員とはいえ、かなり訓練はされているようだ。
「チ、なんて馬力でヘド吐くのよ! 李、林と代わって!」
 素早く、李という男は運転手の林と入れ替わった。そのどさくさに、友子は残りのヘドを道路に吐いた。
「大丈夫、あなたたち、車に弱いんだから……」
「なんで、そんなに優しい声なんすか?」
「見える範囲に防犯カメラが三台もあるのよ!」
 
 そう、友子は、ちゃんと場所を選んで事に及んだのだ。そして、車が再び動いて道路を離れ、角を曲がったところで、友子のヘドは濛々と赤い救難信号である煙を吐き出した。警察は、それを見て非常線を張った。しかし、彼らも周到に代車の大型トラックを用意していて、非常線にかかることもなく友子を連れた工作員たちは、アジトに着くことができた。

 友子は、別室に監禁され、その間に工作員たちは絵の真贋を確認している様子だ。

「間違いない。中華の字が浮かび上がる」
「当たりましたね」
「あの娘を連れてこい。もう少し聞き出せるかもしれない」

 部屋に連れてこられると、裸にされて椅子に括りつけられた。足はなぜかブリキ缶の中だ。

「君の選択肢は二つだ。楽に死ぬか、苦しんで死ぬか」
「知ってることを全部喋れば楽に死なせてあげる」
「こ、このブリキ缶はなに? で、ど、どうして、あたし裸にされたの?」
「そのブリキ缶にはセメントを詰めるの、ゆっくり海の底で眠ってもらうために。裸にしたのは身元がバレないように。今日日は下着のかけらからでもメーカーや販路が分かってしまうからね」
「死ぬのね……あたし」
「まあ、いずれは死ぬんだから、知ってることみんな話してくれたら、この注射で眠るように死なせてあげる。イヤなら、生きたまま海に沈んでもらう」
「じゃ、生きたまま沈めてくれる。その代わり、その絵がなんの役に立つのか教えてもらえる。こう見えても王一族の王清香の孫娘、王清娘よ」
「あ、あんたが王清香の……」

 これは、ハッタリである。彼らが一番恐れている王一族の女傑の名前を出しただけである。今は生死も明らかではないが、その存在は彼らの伝説的な恐怖になっている。ただ、孫がいても、四十代にはなっている。
「清香の娘なら敬意を払わなくちゃな。この絵には清朝の隠し財産の在りかが描かれている。並の技術では解けない手法でな。日本円で五十兆の価値がある。元を質せば漢族の王朝である明から簒奪したもの、それを正統な子孫が、人民のために使おうという遠大な計画だ」
「で、あんたの名前は?」
「冥土のみやげに聞いておけ、朱元基だ」

 ここまで聞けば十分だ。彼らの思念から全てのことは分かっていたが、第三者が確認できるような証拠を握ることだった。もっとも、人民のためというのは言い訳だが。これは、誰も信じないだろう。
 友子は、この部屋に入った時に、口から超小型カメラを二台、音速で吹きだし天井と壁に仕掛けた。

 友子は、そのあと、足を速乾性のコンクリートで固められ、軽トラックに乗せられ、そのまま船に乗せられた。同時に残した超小型カメラに位置情報と映像の内容を警視庁に転送した。むろん自分の裸にはモザイクが入るようにしてある。

 ドッポーン……!

 友子は、東京湾の真ん中で海に放り込まれた。沈んで見えなくなるまで朱元基の目を笑いながら見つめてやった……。
 

コメント

高校ライトノベル・トモコパラドクス・56『友子の夏休み 東京・1』

2018-11-13 06:54:55 | トモコパラドクス

トモコパラドクス・56 
『友子の夏休み 東京・1』
      

 三十年前、友子が生む娘が極東戦争を起こすという説が有力になったん…未来。そこから来た特殊部隊によって、女子高生の友子は一度殺された。しかしこれに反対する勢力により義体として一命を取り留める。しかし、未来世界の内紛や、資材不足により、義体化できたのは三十年先の現代。やむなく友子は弟一郎の娘として社会に適応する「え、お姉ちゃんが、オレの娘!?」そう、友子は十六歳。女子高生としてのパラドクスに満ちた生活が再開された! 娘である栞との決着もすみ、久々に女子高生として、マッタリ過ごすはずであったが……いよいよ夏休み。王さんの別荘に来ている。



 古風な眼鏡を掛けた梨花のお爺さん王貞勇は、友子が持ってきた絵を見るなり、言葉を失ってしまった。

「芳子さん、このお嬢さんと二人きりにしてくださらんか」
 かろうじて、秘書の川島芳子にそう言うと、黙り込んでしまった。
 アイスティーの氷がコトリとでんぐり返ったのを合図であったかのように、お爺さんは口を開いた。

「この絵が残っていたなんて……いや、感謝のしようもありません」

「いえ、わたしにもよく分からないんです。別荘を出る朝に『あの絵を持ち出さなきゃ』それだけ思って、あとは、気が付いたら、ここにお邪魔していたって感じなんです」
「ほんとうですか……」
「はい」
「やはり、この絵の伝説は本物だったんだなあ……」
「本物……ですか?」
「これは、わたしの爺さんの孫悟なんです。孫文先生に心酔していましてね。苗字まで孫にしちまった。もっとも、オヤジの代で帰化したときに、もとの王にもどしましたがね」
「あの、どこも傷んでいませんか。そんな大事な絵とは知らずに運んでしまったもので」
「いや、大丈夫。大切に扱ってくださった」

 その言いきりかたは、単に友子への気遣いだけとは思えなかったので、友子はお爺ちゃんの心を覗いてしまった。

 どうやら、眼鏡に秘密があるらしく、サインのところを見ると、書かれていない中華の二文字が浮かび上がり、その真贋が分かる仕組みになっているようだ。そして、この絵は、精巧なダミーが作られていて、ダミーの方は銀行の貸金庫の中に隠されフェイクになっている。中国の秘密組織は、そこまでつきとめて別荘を襲撃したようだ。
 でも、なぜ自分が、それを予測して、この絵を持ち出したかは思い出せなかった。ただ、お爺ちゃんの思念の中に、この絵自身ではなく、絵の中に隠された暗号のようなものこそが重要であることが分かった。しかし、その暗号が、どのように重要なのかまでは、お爺ちゃんにも分からないようだった。
「梨花は、少しは変わりましたかね?」
 お爺ちゃんの、もう一つの心配は、直接口をついて出てきた。
「はい、眠くなると、人前でもアクビができる程度には」
「おお、それは大進歩だ。小さなころから行儀作法は仕込んだが、年頃に相応しい感情表現が苦手な子になってしまったようで、貴女たちお友だちに期待しておったんですよ」

 友子は、旅行中の梨花のほどよい、リラックスしたシャメを見せた。

「おお、この無防備な大あくびが良い。わたしのスマホに送ってくださらんか。いいや、本人には見せやしません。孫の成長を陰ながら見られればいいんです。もっとも、本人が、これを見ても笑って済ませられるぐらいに成長したら……そうだ、結婚式のスライドにしてやろう!」
「ハハ、それまで、梨花のこと、もっと鍛えておきます」
「あなた方なら安心だ。ぜひよろしく」
「ところで、お爺様。この絵と同じサイズの絵があったら、頂けません?」
「かまわんが、どうしてかね?」
「敵は、どこかで、あたしが、この絵を、ここに持ち込んだことに気づいていると思うんです……」
「囮になるつもりなのかね!?」
「任せてください、鬼ごっこには自信がありますから」

 ここで、友子は軽い催眠術を、お爺ちゃんにかけた。そうでもしないと、このお爺ちゃんは、女子高生に危ない真似など、絶対にさせないからだ。

 こうして、友子は同じサイズの絵を元の紙に包んで、王交易公司をあとにした。

 そして、地下鉄の駅の近くで予測通り四人組の男女に拉致……させてやった。 

コメント

高校ライトノベル・トモコパラドクス・55『友子の夏休み 軽井沢・6』

2018-11-12 07:21:01 | トモコパラドクス

トモコパラドクス・55 
『友子の夏休み 軽井沢・6』
     

 三十年前、友子が生む娘が極東戦争を起こすという説が有力になったん…未来。そこから来た特殊部隊によって、女子高生の友子は一度殺された。しかしこれに反対する勢力により義体として一命を取り留める。しかし、未来世界の内紛や、資材不足により、義体化できたのは三十年先の現代。やむなく友子は弟一郎の娘として社会に適応する「え、お姉ちゃんが、オレの娘!?」そう、友子は十六歳。女子高生としてのパラドクスに満ちた生活が再開された! 娘である栞との決着もすみ、久々に女子高生として、マッタリ過ごすはずであったが……いよいよ夏休み。王さんの別荘に来ている。


 友子は、休ませていた機能を一発で稼動させ、ベッドから起きあがるとリビングへ向かい残留思念と向き合った。

 これを普通にいうと、ただならぬ気配に目が覚めた友子は、月明かりだけが差し込むリビングで、幽霊に会ってしまった……ということになる。
 並の女子高生なら、悲鳴をあげて卒倒しているところだろう。

 しかし、友子は義体の感覚で、それを見ているので、悲鳴を上げることもなく、卒倒することもなかった。

『やはり、君は、ただの女の子じゃないね』

 これには、少し驚いた。残留思念とは空間や、場の記憶であり、それが現実の存在に声を掛ける事などあり得ないからである。万平ホテルのジョンレノンや、軽井沢大橋の幽霊などが、そうである。

 だが、この孫文に似たオジサンの残留思念は語りかけてくる。

『あたしは、義体なんです』
『義体?』
『つまり、義足や義手の全身版です。とんでもなく高性能ですけど』
『でも、感じるのは人の心だよ。ロボットというわけでもないようだね』
『ええ、心は人間のままです。でも、三十一年年前の十五歳だから、見かけよりは歳をとってますけど』
『そのせいだろうね、もう一人の似た子より、君を選んだのは』

 「孫文」さんは、月明かりを浴びながら、カウチに腰を下ろした。こんなに人間として据わりの良い人に出会ったのは初めてだった。友子も誘われるように、ソファーに腰を下ろした。

『不思議、人にしろ残留思念にしろ、思いは読み取れるんだけど、オジサンの心は読めない』
『そういう風にできているからさ。中国四千年の奥深さとでも言っておこう』
『で、あたしを選んでくださった理由というのは……?』

 そこで、友子の記憶は途切れた。

「さあ、最後の朝なんだから、ボリボリ食って、バリバリ働こう!」
 紀香の元気な声で起こされた。紀香がサッと開いたカーテンからは、夏の朝日が容赦なく照りつけて、みんなは仕方なく、朝ご飯を食べて、帰り支度にとりかかった。
 バニラエッセンスが来て、一日分遅れた薪割りは、三十分で片づいた。紀香と友子が人間業と思える限界のスピードで、やり遂げた。
「ねえ、夕べ二時間ほど、あたしの記憶がとんでんだけど、友子は?」
 シャワーを浴びながら紀香が聞いた。
「あたしも、こんなの」
 友子はデータを紀香に送った。友子は「孫文」さんに出会った記憶も消えていた。
「ま、芝居の稽古も進んだし、親交も深まったことだし、有意義な二週間ではあったね」
 確かに、お嬢様然としていた梨花も、みんなの前で気楽に話せるようになったし、眠ければ人前でもアクビができる子になった。麻衣にいたっては、コーラのゲップ以外にも、眠りながらではあるがオナラまでするようになった。

「さ、じゃあ、閉めるわよ」
 別荘中の点検を終えた後、梨花が玄関のドアをロックした。
 竹内セガレグル-プも、最初の印象とはまるで違う好青年ぶりでマイクロバスで待っていてくれていた。

 読者にだけは伝えるが、友子は平べったく大きな包みを抱えていたが、誰も気にしなかった。実は友子が、そういう暗示をみんなにかけているのだが、かけた本人にも自覚は無かった。

 友子達が、竹内セガレグル-プに駅のホームで見送られてから、三十分後に、梨花の別荘は大爆発を起こした。トンネルの中だったので友子も紀香も気づかなかった。

 東京に帰ってから、ニュースで知った。別荘は跡形もなく吹き飛んでいた。そして焼け跡から、性別不明の爆死体が四人分出てきた。

 この仕掛けをしたのが、自分であるとは、友子のCPUは99・9999%忘れていた……。

コメント

高校ライトノベル・トモコパラドクス・54『友子の夏休み 軽井沢・5』

2018-11-11 06:54:58 | トモコパラドクス

トモコパラドクス・54 
『友子の夏休み 軽井沢・5』
  

 三十年前、友子が生む娘が極東戦争を起こすという説が有力になったん…未来。そこから来た特殊部隊によって、女子高生の友子は一度殺された。しかしこれに反対する勢力により義体として一命を取り留める。しかし、未来世界の内紛や、資材不足により、義体化できたのは三十年先の現代。やむなく友子は弟一郎の娘として社会に適応する「え、お姉ちゃんが、オレの娘!?」そう、友子は十六歳。女子高生としてのパラドクスに満ちた生活が再開された! 娘である栞との決着もすみ、久々に女子高生として、マッタリ過ごすはずであったが……いよいよ夏休み。王さんの別荘に来ている。


 軽井沢大橋に行ってみよう! 簡単に決まってしまった……。

 軽井沢大橋とはご大層な名前で、巨大な橋を連想するが、湯川ダムから続く渓谷の上に渡された小ぶりなアーチ式の橋である。

 これに(大)の字が付くのには理由がある。

 いつのころからか、ここは自殺の名所になり、軽井沢の心霊スポットの一つになっているのだ。
 
 地元の人間は、まず行かない。行くのはたいてい、夏の避暑にきた若者達である。そこを見越して友子は竹内興産のセガレグループに頼んだ。
「ねえ、軽井沢大橋に連れてってよ!」
 セガレグループは、一瞬たじろいだが、リーダーの秀哉に目が集まると、秀哉は顔を青くしながらも作り笑顔で頷かざるを得なかった……。

 国道176号線を右に折れて、三百メートルほど山道をいくと、それはあった。

 橋の欄干の上には二メートルほどの鉄柵が付けられ、さらに、その上には三段の有刺鉄線が内向きに傾けて取り付けてあり、よほどの決心と実行へのエネルギーがないと乗り越えられないシロモノで、それだけのエネルギーがあれば、実行など思い立たないだろうという仕掛けになっている。
「街路灯が薄青いだろ……」
 秀哉が、マイクロバスの運転をしながら呟いた。
「ほんとだ、普通白色か、オレンジ色だよね……」
 純子が、さらに低い声で続ける。
「あの色はな、一番心が落ち着いて、自殺を思いとどまらせる効果がある……そうだぜ……」 
 秀哉の声は、落ちるとこまで落ちて、語尾はほとんど聞こえなくなった。
「じゃ、降りて見学しようか!」
「わ!!」
 紀香が脳天気な大声を出すので、みんなびっくりし、各人各様の悲鳴をもらした。友子は、わざとだったし、テレビのスタッフたちは見上げたもので、表情一つ変えなかった。

 バスを降りて、テレビスタッフ、結衣たちバニラエッセンスの三人に友子たち六人は徒歩で橋を渡り始めた。テレビのクルー達が九十メートル下の渓谷を写すが中継用のライトでは、谷底までは届かず、ただ上流のダムから流れてくる川の音を轟かせるだけであった。

 橋を渡り終え……気配に振り返った。

 すると、橋の中央当たりに、白いワンピースの女の人の姿が見えた!
 友子には予想外だった。本番は、もう少しあとで出す予定であった。
「で、出たー!」
 秀哉が叫ぶとセガレグループは、百メートルほども走って、姿が見えなくなった。
 元幽霊の結衣まで怯えているのはおかしかった。
 テレビクルーは震えながらも、しっかりと映像と音声を撮り続けている。時間にして数十秒、白いワンピース姿はフェードアウトしていった。

 みんなは幽霊と思いこんでいるが、友子と紀香には分かった。

 これは、場の空間が覚えている残像である。強い想いや事件があると、空間自体が網膜が強い光を残像として残すように記憶されてしまう。たまたま、ここの空間は、そういうものを残しやすい時空的な構造にになっていたのだ。思い詰めた人は、その残像を見て誘い込まれるようにして飛び込んでしまうのだ。結衣の元の水島クンのような本物の幽霊もいるが、ここは、どうやら時空の問題のようだった。
 友子は紀香ともども義体の因果さを思った。
「男の子達がいない!?」
 麻衣が気づいて騒ぎ出した。
 友子は、紀香に目配せされ、仕方なく偶然を装って、セガレグループを捜した。四人は、ほとんどひとかたまりになって、林の中で震えていたが、秀哉の姿が見えない。

――この斜面の下、気づかない?――

 紀香から思念が送られた。

――ケガはしていないわ。とりあえずパルスショックをおまけ付きで送っとく――

 ギャ~~~!

 どう聞いても男らしいとは言えない悲鳴を残して、秀哉が崖を駆け上がってきた。
「い、いま、白い服着た、お、お、女に、い、息吹きかけられた~~!」
 秀哉は、短パンの前を濡らしたことも気づかずに叫んだ。で、これを契機に秀哉のご威光もかすみ始めていくのであった。

 期せずして、友子は、地元のアクタレを更正させてしまった……。

コメント

高校ライトノベル・トモコパラドクス・53『友子の夏休み 軽井沢・4』

2018-11-10 06:32:38 | トモコパラドクス

トモコパラドクス・53 
『友子の夏休み 軽井沢・4』
 


 三十年前、友子が生む娘が極東戦争を起こすという説が有力になったん…未来。そこから来た特殊部隊によって、女子高生の友子は一度殺された。しかしこれに反対する勢力により義体として一命を取り留める。しかし、未来世界の内紛や、資材不足により、義体化できたのは三十年先の現代。やむなく友子は弟一郎の娘として社会に適応する「え、お姉ちゃんが、オレの娘!?」そう、友子は十六歳。女子高生としてのパラドクスに満ちた生活が再開された! 娘である栞との決着もすみ、久々に女子高生として、マッタリ過ごすはずであったが……いよいよ夏休み。王さんの別荘に来ている。

 
 バニラエッセンスが急にやってくることになっちゃった!


 バニラエッセンスとは、この春まで、東京ドームの横っちょでヘブンリーアーティスト(東京都が発行している路上アーティストの許可書)で、ディユオをやっていたコンビ。そこに、わが乃木坂学院に長年住み着いていた幽霊の水島君が、宇宙人マイの戦争のお手伝いしたお礼に、かわいいアテンダントの義体をもらい、女子高生として、この世に復活。そして、このデュオが気に入って仲間入り。名前もバニラからバニラエッセンスと改名、いまでは「いきものがかり」にならぶ男女混成のトリオユニットとして有名になってきた。

 で、水島……いや、清水結衣の夏休み企画で、ボーカルの結衣が友だちの夏休みにお邪魔するという企画をプロダクションが急に決まったのだ。

「お早う、みんな!」

 にこやかにやってきた結衣の後ろには、メンバーの岩崎と西川、そして画面には映らないが、カメラや音声、スタッフの面々がゾロゾロ。で、その後ろには、軽井沢に避暑に来ている老若男女がゾロゾロゾロ……。

 何も聞いていない梨花たちはオロオロ、その能力で、あらかじめ知っていた友子と紀香はオロオロのふりをしながら、スタッフに混じって、場内整理にかかった。で、この際、社会的なマナーを身につけさせてやろうと竹内興産のセガレグループも呼んでやった。

 最初は結衣を中心にして、デビュー前の思い出、乃木坂駅前のパンケーキ屋さんの話なんかに花が咲き、なぜか用意されていたパンケーキをみんなで食べ、ヘブンリーアーティスト時代の苦労話。そんな中、毎日岩崎と西川の演奏を聞きに来た結衣との運命的な出会い。それぞれの学校時代、結衣は、まだ現役の女子高生だけど、そんな話に発展し、この軽井沢がジョンレノンにゆかりの地であることに話題が移り、

「それでは」

 ということで、バニラエッセンスが即興でビートルズやジョンレノンの曲にチャレンジしてみせるという、まるでアドリブのような構成台本通りに進んだ。

 結衣には、もう幽霊時代の記憶はない。三月前以前の記憶は作られたものだが、それだけに美しかった。
 宇宙人マイが作った結衣の経歴はドラマチックであった。中学のころは新聞配達のバイトで、母子家庭の家計を助け、高校授業料無償化のおかげで、思いもかけず乃木坂学院に入学、気後れから、なかなか友だちが出来ず、ようやく友だちになってくれたのが、この軽井沢に来ている友子たち、そして生まれもった音楽の才能をひらかせてくれたバニラの二人。

 友子は気づいていた。プロダクションは、あたかも偶然のように見せかけて、次のアルバムでジョンレノンの曲をカバーさせようと狙っている。そして、結衣が自然にジョンレノンやビートルズにリスペクトの気持ちを持つように演出していること。
 友子も、やらせではあるが、結衣には自然な発展と進んで協力した。
 バカの竹内興産のセガレグループを運転手と案内人に仕立て、紳士的に軽井沢を案内させた。

 そして、これは予想外だったけど、メンバーの西川君が、雰囲気にイマジネーションをうけ、『軽井沢の思い出』という曲を休憩時間に創ってしまった。まだ、詩はできていなかったので、結衣はスキャットで合わせ、適度にジョンレノンへのオマージュになっていた。

「良い曲だなあ……」

 竹内興産のセガレグループは、本当に感動の涙を流していた。
 いいところ持って行かれそうになり、友子と紀香はある企みを企てた……。

コメント

高校ライトノベル・トモコパラドクス・52『友子の夏休み 軽井沢・3』

2018-11-09 06:37:53 | トモコパラドクス

トモコパラドクス・52 
『友子の夏休み 軽井沢・3』
  

 三十年前、友子が生む娘が極東戦争を起こすという説が有力になったん…未来。そこから来た特殊部隊によって、女子高生の友子は一度殺された。しかしこれに反対する勢力により義体として一命を取り留める。しかし、未来世界の内紛や、資材不足により、義体化できたのは三十年先の現代。やむなく友子は弟一郎の娘として社会に適応する「え、お姉ちゃんが、オレの娘!?」そう、友子は十六歳。女子高生としてのパラドクスに満ちた生活が再開された! 娘である栞との決着もすみ、久々に女子高生として、マッタリ過ごすはずであったが……いよいよ夏休み。王さんの別荘に来ている。


 ダイニングのテーブルに着くと、二つ足りないモノがあった……。

 食卓の上には朝ご飯が揃っていた。ってか、起きるなり、みんなで用意したんだから、当然。
 だけど、用意したはずの食パンが、どこにもなかった。そして妙子の姿も……。

「妙子、どうしたの?」
 とりあえず妙子の方から聞いてみる。
「ごめんなさい、わたしがいけないの」
 なぜか純子が謝った。
「なんか、あった?」
「ジョンレノンが、毎朝パンを買いに行ってたお店のこと話したの……」
「あ、それは、わたしが最初にきりだしたの。ジョンレノンの朝食はフランスパンだったって」
 梨花がフォローにまわった。
「で、わたしが、そのパン屋さんの名前教えたら、自転車で、妙子がすっとんでった」
「え、そこって、どのくらいかかるるの?」
 紀香が分かっていながら聞いた。
「旧軽銀座通りにあるパン屋さんで、往復で四十分ばかり」

 その間、妙子を悪者にしてやってはかわいそうなので、ジョンレノンのことを話題にして、梨花のお父さんが大事にしているアナログのレコードプレイヤーで、ジョンレノンの曲を聞いた。

「ごめん、遅くなって。今パン切るからね」
 三十五分後に妙子が帰ってきて、キッチンに入り大急ぎでフランスパンを切って、お皿に盛りつけてきた。
「はい、お待ち!」
 大皿に、ドーンとフランスパンが載っけられ、テーブルに鎮座した。
「妙子、ご厚意はありがたいけど、汗ビチャじゃん」
「走ってる間は、平気だったんだけど、やっぱ、軽井沢も夏なのね」
 妙子は、サマージャケットを脱ぐとタンクトップ一枚になった。
「朝ご飯食べたら、シャワーの浴び直ししといでよ」
「そのあと、ジョンレノンゆかりの地を回ろうって、話がついたとこ」
「うん、グッドアイデア! あ、ジョンレノンがかかってる!?」
 今頃気づいた妙子であった。

「キャー!!」

 日頃の発声練習からは思いもつかない妙子の悲鳴が、バスルームからした。
「どうしたの妙子!」
 梨花たちは、急いでバスルームに向かい、ドアを叩いた。
「変な男達が、そこの窓の隙間から覗いてた!」
 妙子は、勝手に欠点と思っている胸を懸命に隠し、声を震わせながら言った。

 友子と紀香には、声の主は分かっていた。軽井沢に着いた早々、邪魔してくれた竹内興産のセガレどもだ。

 仲間で一番先に目が覚めた友子は、一番にシャワーを使った。その時からヤツラの存在には気が付いていたが、微妙に自分の立ち位置を変えて、裸が見えないようにし、うまく物置の上に昇った彼らが物置の上から落ちる位置に誘導したので、彼らは揃って屋根から落っこちた。
 でも、若さとは凄いモノで、その物音に気が付いたのは、同じ義体の紀香だけで、みな爆睡していて、だれも気づかなかった。
 敵も敵で、性懲りもなくまたやって来ているのは気づいていたので、紀香と友子はすぐに庭に回った。

「懲りないわね、あんたたち!」
「ちょっと痛い目にあってもらおうか……」
 紀香と友子は、ものすご~く手加減して、ニイチャンたちの相手をしてやった。骨折はしないが、二三日は痛みの残る程度に。
「あんたたちの様子は防犯カメラでバッチリだからね。それから、全員のスマホ預かったから」
「あ、おれ達のスマホ!」
「くそ、いつのまに!?」
「中の情報は全部コピーしといたから」
「そ、そんなこと出来るわけないだろ!」
「竹内興産は、経産省と仲ががよろしいようで……先月の初めにも、お父さん霞ヶ関に行って、いろいろなさってるみたい」
「そ、それは!」
「分かってもらえた? あたしたち、こういうのには強いの。ほら」
 友子は、全員のスマホを投げて返してやった。
「あたしと、友子のメルアドは入れておいて上げたから。軽井沢にいる間仲良くしてあげるわ」

 男たちは、悲鳴ともののしりともつかない声を上げて逃げて行った。

「うわー、さすがジョンレノンが泊まったホテルだ!」
 朝食の片づけが終わると、みんなでジョンレノンゆかりの地を見て回った。例のパン屋さんを回った後、ジョンが定宿にしていた万平ホテルにまわった。起源は江戸時代にさかのぼるというホテルには気品さえ漂っていた。

 そして、ラウンジではジョンレノン親子がくつろいでいる姿が見えた。
 むろん幽霊ではない。この万平ホテルの空間が記憶している姿で、時に勘の良い人には、これが見えて幽霊騒ぎになることもある。友子は、みんなにも見せてやりたかったが、きっと大騒ぎになると自重した。

 しかし、この能力は数日後、思わぬところで役にたつことになる……。

コメント

高校ライトノベル・トモコパラドクス・51『友子の夏休み 軽井沢・2』

2018-11-08 06:44:06 | トモコパラドクス

トモコパラドクス・51
『友子の夏休み 軽井沢・2』
       

 三十年前、友子が生む娘が極東戦争を起こすという説が有力になったん…未来。そこから来た特殊部隊によって、女子高生の友子は一度殺された。しかしこれに反対する勢力により義体として一命を取り留める。しかし、未来世界の内紛や、資材不足により、義体化できたのは三十年先の現代。やむなく友子は弟一郎の娘として社会に適応する「え、お姉ちゃんが、オレの娘!?」そう、友子は十六歳。女子高生としてのパラドクスに満ちた生活が再開された! 娘である栞との決着もすみ、久々に女子高生として、マッタリ過ごすはずであったが……いよいよ夏休み。王さんの別荘にくることになった。


 五百坪はあろうかという敷地に、一同はおったまげた!

「少し、中心部からは離れているけど、この方が落ち着けるでしょ」
 タクシーの支払いをカードで済ませた梨花は、言い訳のように言った。
「でも凄いよ梨花さん。うちんとこなんか町内会ごとおさまっちゃう。ゲフ!」
 コーラを半分ほど飲んで、麻衣はゲップと感嘆詞をいっしょに吐き出した。
「お庭はきれいにしてあるのね!」
「ねえ!」
 マンション住まいの妙子が残念と感心をいっぺんにし、紀香がうまく合わせた。
「広いだけじゃないわ、趣味がいいし、手入れが行き届いている。わたし、庭のお手入れ覚悟して、軍手もってきちゃった」
 同じ軽井沢に別荘を持っている純子が、残念なような嬉しいような様子で軍手を振り回した。
「それは正解よ。今朝は庭師の人に入ってもらったけど、明日からは、わたしたち。芝刈りだけでも大変。ほら、庭の隅に練習用に刈らないままのが残してある」
 なるほど、四十坪ほどの芝が伸び放題に残してある。
「あと、水やり。四カ所に水道があるから、明日からがんばりましょう。それから、あそこに積んである丸太は一日十束ずつ、冬用の薪割り。よろしくね」
 梨花が、お気軽そうではあるが、済まなさそうに言った。

 建物は、お金はかかっているが、質素な作りになっていた。

「うわー、外から見るより広いね。ゲフ!」
 麻衣が、残りのコーラを飲みきって感動した。
「うちより、ステキ……」
 純子がため息、
「でも、よーく見て」
 梨花が視線を低くしたので、みんなもそれに習った。
「オー、ホッコリだーらけ!」
 分かっていながら紀香が、おどけるように言う。
「まあ、自助努力の教育よ。がんばりましょ!」
 義体の能力を封印して、友子が宣言した。
「じゃ、とりあえず部屋に行きましょ。わたしたちが使えるのは二階のゲストルーム」
「ヤッホー!」
「六人の大部屋のほうだけどね」
「いいじゃん、修学旅行みたいで!」

 ゲストルームだけは、掃除が行き届いていた。で、それぞれのベッドの上には、掃除用のツナギ帽子、マスクなどが、揃っていた。
 部屋だけ掃除して、廊下は、ちゃんとホコリが積もっていた。梨花の両親の気合いの入れ方がよく分かる。

 家具に掛けられたカバーを取ると、いっそうホコリが舞い立ったが、そこは若さ、キャーキャー言いながら、お掃除にかかった。
 あらかた終わったところで、梨花が遅い昼ご飯を作りに厨房に入った。
「手伝おうか?」
「いいわよ、一人の方が、能率いいの」
「なんだか、あたしたち、お料理ヘタクソのオジャマ虫みたいじゃん。梨花」
 妙子の言葉が、友だち言葉になっている。みんなで労働したことで、仲間意識が芽生え始めたのだろう。
「じゃ、食器並べたり、見学してくれればいいわ」

 ジュワー!

 野菜を炒める盛大な音、見事なフライ返し。みんな、ひたすら、フクロウのように「ホー、ホー!」であった。

「三把刀(サンバーダオ)の華僑って聞いてはいたけど、梨花ちゃんもたいしたもんね」
 紀香が、先輩面で言う。もっとも昼ご飯の天津飯と唐揚げを最初に平らげたからではあるが。
「なんですか、その三把刀(サンバーダオ)ってのは?」
 友子が、分かっていながら、後輩の顔で聞く。
「仕立て屋、調理、理容、この三つの技術があると、華僑の人たちは世界中どこでも食べていけるって、たくましさと覚悟を同時に表現した言葉。でしょ、梨花ちゃん?」
「ええ、わたしなんか、まだまだですけど」
 奥ゆかしく恥じらう梨花は、清楚な中にタクマシサを感じさせ、友子には好感であった。

「ね、あの油絵の男の人って、孫文さん?」

「あ、それは、わたしの大叔父のお父さんなの」

 友子は、たいがいのものからはその情報を読み取ることが出来たが、この絵を描いた人は気迫以外は、みんな消し去っている。人間にこんな事ができるのかと感心した。

 そして、この先、この絵が呼び込んだとしか思えない事件……それは、この旅行の、まだ先に起こることであった……。

コメント

高校ライトノベル・トモコパラドクス・50『友子の夏休み 軽井沢』

2018-11-07 07:06:30 | トモコパラドクス

トモコパラドクス・50 
『友子の夏休み 軽井沢』
      

 三十年前、友子が生む娘が極東戦争を起こすという説が有力になったん…未来。そこから来た特殊部隊によって、女子高生の友子は一度殺された。しかしこれに反対する勢力により義体として一命を取り留める。しかし、未来世界の内紛や、資材不足により、義体化できたのは三十年先の現代。やむなく友子は弟一郎の娘として社会に適応する「え、お姉ちゃんが、オレの娘!?」そう、友子は十六歳。女子高生としてのパラドクスに満ちた生活が再開された! 娘である栞との決着もすみ、久々に女子高生として、マッタリ過ごすはずであったが……。


 駅の改札を出たとたんに興奮した。なんたって、ここは軽井沢なのだ!

 友子のクラスメート王梨花の突然のメールで決まってしまった。梨花のお父さんはお金持ちの華僑で、よく分からないが、大変なお金持ちってか、そんな感じは普段ぜんぜんさせない、本物のセレブ。
 そのお父さんが気を遣った提案をしてくれた。

「八月の半ばに、仕事仲間を連れて避暑にいくので、それまで別荘の掃除とかしてくれたら、食料付きで使ってもいいよ」

 娘が、学校でうまく溶け込み始めているので、二学期を見据え、もっと友だちとの関係を良くしてやろうという親心であることは、解析しなくても友子には察せられた。なんといっても見かけは十六歳の女子高生であるが、感性の奥には四十六歳のオバサンの心が潜んでいる。大人の気配りはすぐに分かる。

 で、けっきょくクラスの仲良し女子、麻衣、妙子、純子、そこに友子と紀香が加わった。紀香と妙子は演劇部員でもあるので、梨花のお父さんが趣味で敷地の中に作ったダンスのレッスン用の別棟を借りて、コンクール用のお芝居の稽古をするという、もっともらしい理由もねじこんである。

「うわー、あんな近くに山!」

 麻衣が無邪気に感動。妙子がその横に並んだ。
「あれは離山、向こうに見えるのがもっと大きくて浅間山」
 純子も軽井沢に別荘を持っていて慣れっこなので解説をした。梨花は、それを後ろでニコニコ聞いている。人柄の良い子だ。

 紀香と友子は、駅前の国道26号線、すなわち旧中山道に気を取られた。
 明治に外国人達が、ここに別荘を構え始める前や後の、土地の情報がいっぺんに飛び込んできた。中には皇女和宮が、十四代将軍家茂に嫁いだとき、ここを通ったときの覚悟や寂しさなども混じっていた。

「お気軽そうだけど、ここもいろいろあったところなんだよね……」
「ま、しばらくシャットダウンする、バカンスにならないものね」

 六人は、タクシー二台に分乗して別荘に向かった。

 気づくと、後ろからつかず離れずで、一台のワゴンが着いてきている。

「ちょっと後ろの車まきますね」
 運転手さんは気楽そうに言ったが、緊張はダイレクトに伝わってきた。
「竹内興産のセガレとその取り巻きですね」
 紀香が振り向きもせずに答えたので運転手さんはびっくりしていた。
「ちょっと、そこの脇道に入ってもらえます?」
「え、この道は林への一本道で、行き止まりだよ」
「ちょうどいいわ」
 友子と紀香は平気な顔をしていたが、四人は顔色もなかった。
「大丈夫、同じ人間、コミニケーションすれば分かるわよ」

 タクシーを停めて、紀香は友子といっしょにワゴン車に近づいた。

「ちょっと秀哉くん。顔かしてくれないかな」
 男達は、秀哉の名前を知っているので驚いたようだが、ニヤニヤ笑いながら、二人のあとを付いていった。

――いい、ケガさせちゃだめよ――
――うん、ちょっと、あそこの神経刺激しておわりにしよう――

 そのあと、林の奥で男達の大笑いする声がしはじめた。気になった運転手さんが駆けつけると、男達は笑いながら、地面をのたうち回っていた。
「ちょっとギャグが効き過ぎたみたい」
「もう、大丈夫だからいきましょう」

 その後、男達は、気絶するまで笑い続けた……。

コメント

高校ライトノベル・トモコパラドクス・49『友子のマッタリ渇望症・4』 

2018-11-06 07:07:26 | トモコパラドクス

トモコパラドクス・49 
『友子のマッタリ渇望症・4』


 三十年前、友子が生む娘が極東戦争を起こすという説が有力になったん…未来。そこから来た特殊部隊によって、女子高生の友子は一度殺された。しかしこれに反対する勢力により義体として一命を取り留める。しかし、未来世界の内紛や、資材不足により、義体化できたのは三十年先の現代。やむなく友子は弟一郎の娘として社会に適応する「え、お姉ちゃんが、オレの娘!?」そう、友子は十六歳。女子高生としてのパラドクスに満ちた生活が再開された! 娘である栞との決着もすみ、久々に女子高生として、マッタリ過ごすはずであったが……。


 かすかに期待していた……。

 多分「再会」という店の名前のせいだろう。
 期待に反して、店内は、良いコーヒーの香りがするだけで、人の気配も義体の気配もしなかった。

 とりあえず左側の窓辺の四人がけに腰をおろし……かわいい悲鳴を上げた。

「キャ!」

 お尻を押さえて立ち上がると、そこに滝川がいた。

「たいしたもんでしょ、ここまで気配を消せると」
「この対応不能の状態を『びっくり』っていうんでしょうね……前いいですか?」
「どうぞ」
 友子は、滝川の膝の感触をお尻に残したまま、前の席についた。目の前には成分分析不能なコーヒーが湯気を立てている。
「……成分が分からないと不安?」
「いえ、こういう状況に慣れないんです」
「ここでは、ただ安らげばいいんだ」
「滝川さんも、義体なんですよね?」
「ああ、そうだよ。それ以上は説明しないけどね。とにかく、ここではくつろげばいい」
「………」
「無理もないけど、トモちゃんは困った人だ。分析して解析しないと、前に進めないらしい」
「すみません」
「じゃ、ほんの一瞬だけ、ぼくの過去の断片を見せるよ……」

 一瞬、頭の中に深い悲しみや怒り、恐れ、破壊の衝動など、ささくれだった情念が飛び込んできた。そして、それらは、解析する間もなく頭から消え去った。

「……すごい」
「それだけ分かればいいよ。人間は、自分でしょいきれないものを、全部義体である我々に背負わせた。無責任……とまでは言わないけど。ぼくたち義体にも退役や休息は許されていいと思うんだ」
「滝川さんは、退役されたんですか?」
「むりやり。もう人間たちに義体であることも感知させない。まあ、いつかは突き止められるだろうけどね。それまで、ぼくはただの城南大学の学生さ。トモちゃんの記憶からもたどれない仕組みになっている」
「このお店は?」
「ぼく達がが作った、義体のための亜空間。トモちゃんが必要になれば、どこにでも現れるよ。店の名前とカタチはその時次第だけどね」
「……おいしいコーヒー」
「よかった」
「これが美味しいと感じられることは、わたし、少しは癒されたんですね」
「ハハ、そうだけどね。癒されたと感じればそれだけでいい。認識の共有化も、ここではしなくていい。なんとなくの表情や仕草で、そう感じればそれだけでいいよ」
「フフ、はい、そうします」
「これから夏休みだね。人間らしく過ごせよ、トモちゃん」

 気づくと、店の中には数組の客が憩い、ウェイトレスがゆっくりと対応していた。二人いるウェイトレスの一人と目が合った。その目は「良かったわね」と言っている。

「じゃ、わたし行きます。なんだか、良い夏休みが送れそうな気になってきました」
「それはけっこう。また、電話かどこかの喫茶店で」

 喫茶店を出て、振り返ると、やはり店は消えてただの児童公園に変わっていた。

「やっぱりね」
 そう、納得した後、友子は、思い切り人間的なショックを受け、うなり声を上げてしまった。

「くそ~!」

 友子は、薄いビニール袋に入った犬のウンコを、まともに踏みつけてしまった。ウンコは、破れたビニール袋からはみ出してお気に入りのヘップにベッチャリと付いてしまった。実に、人間であったころから三十数年ぶりの失敗であった。
「こういうのも癒しの現れかもね」
 さすがに、ウンコは目力で電子分解した。60%の水分と、有機分子に分解されてウンコは空気によって希釈されていった。

 友子の夏休みが始まった……。

コメント

高校ライトノベル・トモコパラドクス・48『友子のマッタリ渇望症・3』

2018-11-05 06:42:02 | トモコパラドクス

トモコパラドクス・48 
『友子のマッタリ渇望症・3』
   

 三十年前、友子が生む娘が極東戦争を起こすという説が有力になったん…未来。そこから来た特殊部隊によって、女子高生の友子は一度殺された。しかしこれに反対する勢力により義体として一命を取り留める。しかし、未来世界の内紛や、資材不足により、義体化できたのは三十年先の現代。やむなく友子は弟一郎の娘として社会に適応する「え、お姉ちゃんが、オレの娘!?」そう、友子は十六歳。女子高生としてのパラドクスに満ちた生活が再開された! 娘である栞との決着もすみ、久々に女子高生として、マッタリ過ごすはずであったが……。


 気が付くと、父でもあり弟でもある一郎がニヤニヤ笑いながら写真を見いた。

 夏休みの初日と日曜が重なったので、この妙な親子三人は、まず身の回りの整理から始めた。両親の一郎と春奈は、新発売のルージュの販売が軌道に乗ったので、友子はマッタリの一環として、オカタヅケという人間的な行為にいそしんでいるのである。
 ただ、友子は義体なので、身の回りは最高に機能的で、その点ではオカタヅケの必要など無かった。
 で、年頃の女の子らしく、適度に散らかして(人間的には飾り付けるという)いるのだが、これが、なかなか難しい。

「なによ、気持ちわるいわねえ」
「友子もみてごらんよ」
「あ……!」

 その写真を見たとたん、記憶が膨大な情報として蘇ってきた。

「これ、ディズニーランドが出来た年の連休だ!」
「そうだよ、このグズって、お袋にあやされてるのがおれで、全然構わずにビッグサンダーマウンテンの方見てるのが友子だ」
「ハハ、なんか今と関係逆過ぎるから笑えるね」
 「母」の春奈が、笑った。
「懐かしい、ちょっと借りていい?」

 友子は、部屋のベッドにひっくり返って、写真を見るというか、解析してしまう。
 軽い気持ちで見ても、数億の情報が頭の中で演算されていく。
「ああ、だめ。もっと軽い気持ちで!」
 友子は、気合いを入れてお気楽になった。
「このときのわたしって、ビッグサンダーマウンテンのことしか考えてないよ。一郎の泣き声も聞こえてこない。いいよなあ……こういうワガママな無神経は」
 数秒後、頭の中で、かすかなアラームが鳴り、ガバと身を起こした。
「これ……滝川さんに似てる」
 義体である友子に「気がする」は、あり得ない。写真を見れば、その人物から、すくなくとも数万の情報を得ることができるが、滝川らしきものからは、らしいという以外なにも分からなかった。
「ああ、これがいけないんだ。マッタリマッタリ!」
 再びバタリと仰向けに寝転がると、ベッドのスプリングが「プツン」と、音がして折れてしまった。
「いかん、十万馬力なんだ、わたしは……ちょっと、散歩してくる!」

 友子は、自分のCPUの中に「無意味」というカテゴリーを作ろうとしていた。昨日食堂で、アイスクリームとラーメンの汁を被ってしまったのは、機能不全によるバグである。人間的なマッタリとは似て非なるものである。友子はバグりかけたPCの持ち主のように必死であった。

 外に出ると、数兆の情報が飛び込んでくる。人間にとっては、体にも頭にも良い刺激なのだろうが、友子にとっては、ただCPUの負荷を掛けるだけに過ぎなかった。友子は、この負荷を取捨選択し、「無意味」をカテゴライズしようと、いわば逆療法に出たわけである。

「え、あんなとこに喫茶店が……?」

 再会という名前の喫茶店だった。友子のGPS機能は「確認不能」のシグナルを発していたが、しばらくすると、確認に変わった。

 もう、この土地に大正時代からありました。というような面構えをした店で、友子が入ると、レトロなドアベルの音がした……。

コメント

高校ライトノベル・トモコパラドクス・47『友子のマッタリ渇望症・2』

2018-11-04 07:03:40 | トモコパラドクス

トモコパラドクス・47 
『友子のマッタリ渇望症・2』
      

 三十年前、友子が生む娘が極東戦争を起こすという説が有力になったん…未来。そこから来た特殊部隊によって、女子高生の友子は一度殺された。しかしこれに反対する勢力により義体として一命を取り留める。しかし、未来世界の内紛や、資材不足により、義体化できたのは三十年先の現代。やむなく友子は弟一郎の娘として社会に適応する「え、お姉ちゃんが、オレの娘!?」そう、友子は十六歳。女子高生としてのパラドクスに満ちた生活が再開された! 娘である栞との決着もすみ、久々に女子高生として、マッタリ過ごすはずであったが……。


「お相席でよろしいですか……」

 思わぬ声をかけられた。

 駅前のパンケーキ屋はいっぱいなので、向かいの道を一筋入ったコーヒーハウスに入ったのだ。


 で、空席と思った四人がけのシートに腰掛けたら、ウェイトレスの女の子に言われた。
 言われて気づくと、向かいに、大人しめの学生風が、サマージャケットで座っていた。
「あ、ごめんなさい。気がつかなくって」
 そう言って、立ちかけると。サマージャケットが静かに言った。
「これも、何かの縁。よかったらいっしょにどうぞ」
 いつもの友子なら、断っている。そもそも、四人がけのシートに人が居ることに気づかないわけがない。
 面白いと思うより、そこまでボンヤリしてしまっている自分を、そのままにしたくて座ってしまった。

「オレンジジュース」

 そう、オーダーすると、向かいのサマージャケットが、店内の鏡二枚を使って友子のことを見ていることに気づいた。
「オレンジの成分分析で、産地のバーチャルトラベル。悪くはないけど、もっとリラックスしたら」
「え……」

 この時点で、サマージャケットが人間でないことは分かったが、不思議に警戒心は湧いてこなかった。

「ぼく、城南大学の滝川修。君は?」
 友子は、笑いを堪えて答えた。
「乃木坂学院の鈴木友子です」
「じゃ、トモちゃんでいいかな?」
「いいも、なにも、全て知ってるんでしょ?」
「知らない。トモちゃんが、あんまりくたびれてるみたいだったから、オレンジジュースについては読んじゃったけど」
「滝川さんも……義体なんでしょ?」
「そうだよ。ここじゃ、誰でもそうだし、誰も気にしないんだ」
「え……?」

 ウェイトレスの女の子と、三人のお客さんが、友子の方を向いてニッコリ笑った

「ここは、義体が心を休めるための店なんだ。僕たちみたいな……義体のためのね」
「それって……」
「ハハ、難しい理屈は抜き。とりあえずトモちゃんのオレンジジュースだけどね」
「和歌山産ですね?」
「そういう味気ない解析はやらないの。和歌山産のミカンというとね……」
 サマージャケットの滝川は、紀伊国屋文左衛門の故事から、前世紀のミカンの輸入自由化までいろんな話をしてくれた。それは、知識としては友子の頭の中には全て入っていることだったが、滝川の話が面白く、つい笑い転げてしまった。

「じゃ、今度は電話でもするよ」 
 
 楽しく話しているうちに、いつのまにか夕方になっていた。
 店を出るとき、『乃木坂』という店の名前を確認し、表通りに出る前に振り返った。

 そこは、ただの二十坪ほどの更地だった……。

コメント