大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・乃木坂学院高校演劇部物語・44『第九章・4』

2017-11-30 16:44:01 | はるか 真田山学院高校演劇部物語

まどか 乃木坂学院高校演劇部物語 初稿版・44   



『はるか ワケあり転校生の7ヵ月』姉妹版


 この話に出てくる個人、法人、団体名は全てフィクションです。


『第九章 竜頭蛇尾、そしてクリスマスへ・4』

「まあ、まどかちゃん! 里沙ちゃん! 夏鈴ちゃん!」

 予想に反して、お姉さんはモグラ叩きのテンションでわたし達を迎えて下さった。
 ちょっぴりカックン。
「オジャマします」
 三人の声がそろった、礼儀作法のレベルが同程度の証拠。
「アポ無しの、いきなりですみません」
 と、わたし。頭一つの差でおとなの感覚。
「クリスマスに相応しいお花ってことで見たててもらいました」
「わたしたち、お花のことなんて分からないもんで、お気にいっていただけるといいんですけど……」
「わたし達の気持ちばかりのお見舞いのしるしです」
 三人で、やっとイッチョマエのご挨拶。だれが、どの言葉を言ったか当たったら出版社から特別賞……なんてありません。
「まあ嬉しい、クリスマスロ-ズじゃない!」
「わあ、そういう名前だったんですか!?」
 ……この正直な反応は夏鈴です、はい。
「嬉しいわ。この花はね、キリストが生まれた時に立ち会った羊飼いの少女が、お祝いにキリストにあげるものが何も無くて困っていたの。そうしたら、天使が現れてね。馬小屋いっぱいに咲かせたのが、この花」
「わあ、すてき!」
 ……この声の大きいのも夏鈴です(汗)
「で、花言葉は……いたわり」
「ぴったしですね……」
 と、感動してメモってるのは里沙です(汗)
「お花に詳しいんですね」
 わたしは、ひたすら感心。
「フフフ。付いてるカードにそう書いてあるもの」
「え……」
 三人は、そろって声を上げた。だってお姉さんは、ずっと花束を観ていて、カードなんかどこにも見えない。
「ここよ」
 お姉さんは、クルリと花束を百八十度回した。花束に隠れていたカードが現れた。なるほど、これなら花を愛(め)でるふりして、カードが読める。しかし、いつのまにカードをそんなとこに回したんだろう?
「わたし、大学でマジックのサークルに入ってんの。これくらいのものは朝飯前……というか、もらったときには、カードこっち向いてたから……ね、潤香」

 お姉さんの視線に誘われて、わたしたちは自然に潤香先輩の顔を見た。

「あ、マスク取れたんですね」
「ええ、自発呼吸。これで意識さえ戻れば、点滴だって外せるんだけどね。あ、どうぞ椅子に掛けて」
「ありがとうございます……潤香先輩、色白になりましたね」
「もともと色白なの、この子。休みの日には、外出歩いたり、ジョギングしたりして焼けてたけどね。新陳代謝が早いのね、メラニン色素が抜けるのも早いみたい。この春に入院してた時にもね……」
「え、春にも入院されてたんですか?」
 夏鈴は、一学期の中間テスト開けに入部したから知らないってか、わたしも、あんまし記憶には無かったんだけど、潤香先輩は、春スキーに行って右脚を骨折した。連休前までは休んでいたんだけど、お医者さんのいうことも聞かずに登校し始め。当然部活にも精を出していた。ハルサイが近いんで、居ても立ってもいられなかったのよね。その無理がたたって、五月の終わり頃までは、午前中病院でリハビリのやり直し、午後からクラブだけやりに登校してた時期もあったみたい。だから色白に戻るヒマも無かったってわけ。そういや、コンクール前に階段から落ちて、救急で行った病院でも、お母さんとマリ先生が、そんな話をしていたっけ。
「小さい頃は、色の白いの気にして、パンツ一丁でベランダで日に焼いて、そのまんま居眠っちゃって、体半分の生焼けになったり。ほんと、せっかちで間が抜けてんのよね」
「いいえ、先輩って美白ですよ。羨ましいくらいの美肌美人……」
 里沙がため息ついた。
「見て、髪ももう二センチくらい伸びちゃった」
 お姉さんは、先輩の頭のネットを少しずらして見せてくれた。
「ネット全部とったら、腕白ボーズみたいなのよ。今、意識がもどったらショックでしょうね。せめて、里沙ちゃんぐらいのショートヘアーぐらいならって思うんだけど。それだと春までかかっちゃう」
「どっちがいいんでしょうね?」
 単細胞の夏鈴が、バカな質問をする。
「……そりゃ、意識が戻る方よ」
 お姉さんが、抑制した答えをした。
 とっさにフォローしようとしたけど、気の利いた台詞なんてアドリブじゃ、なかなか言えない。
「だって、『やーい、クソボーズ!』とか言って、からかう楽しみが無いじゃない」
 お姉さんが、話を上手くつくろった。妹が意識不明のままで平気なわけないよね……。

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高校ライトノベル・時空戦艦カワチ・060『婿殿を助けて日本を導いて!』

2017-11-30 15:19:27 | 小説

時空戦艦カワチ・060   
『婿殿を助けて日本を導いて!』

 

 

 時空戦艦副長 楠千早と名乗って直ぐに消えてしまった。

 

――じくうせんかんふくちょう……?――

 

 ふくちょう……副長のことだろう。

 むかしは無かった言葉だけども、ペリーの来航以来幕府の軍制は変わって、奉行ではなく総裁などと言うし、組頭ではなく隊長という。隊長の次の者を副長と呼称する……奈何は「おまえが男であればなあ」というくらいに頭の回転がよくて勉強もできる。

 その奈何でも「じくうせんかん」というのは分からない。

 幕末のこの時期「時空」という言葉も無ければ概念もない。

「せんかん」は千貫……千貫……銭(ぜに)が千貫の意味だろうか?

 

 その後、何度か手鏡に千早という女が現れた。

 ただ、ほんの一瞬と言ってもいい時間なので実の有る話が出来ない。

 女の姓が『楠』だということが分かった。

 楠千早……調べて分かった。楠正成の伝説上の娘の千早姫に違いない。

 楠正成は江戸期を通じて武士の鑑のような存在で、先般十五代将軍に就任した慶喜公などは水戸の出身でもあり楠正成を称揚している。

 これは、不思議な手鏡を通して千早姫が自分を導いてくださるのだろうと感激した。

「忠臣楠正成公の姫君なのですね!?」

 一瞬戸惑ったような顔になったが「そうです、これから言うことを……」

 なにか自分に伝えようとして切れてしまう。

 今まさに前島来輔との縁談が持ち上がり、奈何自身の人生が大きく変わろうとしている。調べてみると前島来輔という人物は予想していたとおり先祖代々からの幕臣ではなく、越後の百姓の息子である。世話役の勝安房守も三代前は越後の百姓だ。きっと、その縁からの話であろう。

 勝安房守様は幕府に海軍をお創りになっただけではなく、慶喜公直近であり、これからの幕府と日本を視野に置いて活躍されている。その勝様のご推挙、前島来輔様もひとかどの人物であろうと胸を高鳴らせた。

 

「前島来輔様に嫁ぐことになりました」

 

 その夜も、その一言だけを伝えると手鏡の面は漆黒に戻ってしまった。一瞬千早姫が目を見張ったような気がした。

 神さまのような千早姫が目を見張るんだ、前島来輔というお方はひとかどの人物には違いないと確信した。

――婿殿は日本を救う人物です! 婿殿を助けて日本を導いて! それが貴女の使命……――

 そこで切れてしまい、その後は長く通じることが無かった。

 

 その七日後、奈何は前島来輔に嫁いでいき、奈何の奮闘が始まった。

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高校ライトノベル・青春アリバイト物語・5《弾着やだよ~!!》

2017-11-30 06:52:28 | 小説6

青春アリバイト物語・5
《弾着やだよ~!!》



 こないだの台本忘れたのを見ても分かるけど、テレビ業界は一見優しい。

 スタッフ総出で工夫して、裕子が(なんと完璧に覚えた)プロンプターで収録をすませてくれた。
 だが、この業界、ジンワリと仕返しもされる。八重は、確かに放送局の大株主の娘であり、元AKPの選抜でもあった。表面は優しい。

 が、ここにきて仕返しがやってきた。

「え、あたし撃たれるの!?」
 台本を見た八重が絶叫した。
「大丈夫だよ、奇跡的に助かって、後半では犯人捕まえるアクションもあるし」
 ディレクターは平然と言った。裕子も弾着ごときで、なんで嫌がるのかと思った。

 ちなみに弾着とは、銃弾が当たって血しぶきが飛ぶこと。で、当然実際に撃たれるわけではなく、仕掛けがある。
 ゼリーの付いていないコンドームに血糊が仕込まれていて、服の裏に装着される。そこからリード線が延びていて、効果さんが演技に合わせてスイッチを入れると爆発し、服地が破れ血糊が飛び散るようになっている。服地を破るくらいなので多少の衝撃がある。たいていの役者は平気でやるが、八重は、これが嫌だった。
 子供の頃に、打ち上げ花火が爆発して、すぐそばに居た八重は軽傷を負った。それ以来、花火がダメなのである。花火がダメなので、身に着けた弾着が爆発するなんて、耐えられない。
「これ、見せ場なんだよ。『高校生探偵・M』このごろ数字落ちてるからね。二ケタ取らないとワンクールで終わっちゃいそうなんだよ。

『高校生探偵・M』は、八重の唯一のレギュラー、それも主役の番組であった。これがポシャッタら、八重の挽回はちょっと難しくなる。

「なんなら、ヒロちゃんに代役やってもらう?」
 ベテランの八千草薫が、皮肉で言った。
八千草は、スタッフの言葉を聞いていたのである「服のサイズ八重さんといっしょなんですね」 そして自分でも観察していた。メイクをやって髪を変えると、かなりカメラが寄ってきても分からない。先日のプロンプの見事さも裕子の力として認識していた。やってやれないことはない。しかし、この程度で代役を入れるのは、役者としては恥ずかしいことである。

「それ、いいかも!」

 なんと、八重は、八千草の皮肉にのってしまった。
 裕子にも、これが八重の恥になることは分かっていた。だから「わたしなんか、とても!」と断ったが、テレビの軽さから、あっさり決まってしまった。
「本編(映画)だったら、役者生命にかかわるとこよ」
 ベテランの八千草は、ポツリともらした。この独り言が聞こえたのは裕子だけだった。

 収録はロケだった。都内の大川の河川敷で犯人と対決。そこで撃たれることになっている。
――こんなに見物人がいるんだ――
 裕子はびっくりした。河川敷の土手の上には野次馬が鈴なりだった。

「そこの、少し高くなってるとこがいいなあ」
 演出が、現場を見て思いついた。河川敷の中に川の中に突出した、高さ二メートルほどの張り出た土手があった。
「弾着は吹き替えでやるから、落ちるの八重ちゃんがやってみない?」
 監督は、八重を助けるつもりで提案した。河川敷に並んだ野次馬の中には週刊誌やレポーターが混じっている。八重も(普通には)やるもんだというところを見せておきたかった。が、これも八重は断った。もう誰も何も言わない。弾着のあと、裕子が、そのまま飛び込むことになった。

「ヨーイ……ハイ!」

 懐かしい昭和の感じで、監督はきっかけを出した。裕子は打ち合わせの時から「ピストルは何口径の何ミリですか?」と聞いていた。そして動画サイトで、実銃の発射や、アメリカ映画の銃撃戦を見ていた。そして、その銃と発射距離に合わせた撃たれ方を研究していた。
「はい、OK!」
 監督には珍しく、一発でOKが出た。
「続いて、転落撮るぞ!」
 リード線を外して、撃たれた瞬間の配置、道具の有り場所をタイムキーパーがチェック、OKが出たところで、ぶっつけ本番である。
「ヨーイ……ハイ!」
 同時に銃声、撃たれた反動で裕子は一メートルほど後ろに跳ね飛び、そのまま真っ逆さまに二メートル下の川面に落ちた。

 で、そのまま裕子は気を失った……。
 

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高校ライトノベル・ホリーウォー・24[ミッションパラサイト・2]

2017-11-30 06:44:48 | 小説3

ーウォー・24
[ミッションパラサイト・2]




 潤沢に擬態したスグルは、ワンボックスの先回りをして天安門中央前で待ち受けた。

 やってきたワンボックスのウインドウを肘でぶち割ると、ダッシュボードの下に手を伸ばし、コードをまとめて引きちぎった。
 やっと止まった車に武装警官の一団が銃を構えて取り囲んだ。
「慌てるな、警察官諸君。この車は外部からコントロールされていた。運転していたお嬢さんにも罪はない」
「あるかないかは、警察が調べる。あんたの身のこなしもただもんじゃない。いっしょに署まできてもらおうか」
 金筋の入った警官が、銃を構えたまま居丈高に言った。春麗と雪嶺も女性警官に捕まっている。

「慌てるなと言っただろう。君はわたしのパルスが読めないのか!?」
 金筋が慌てた顔になった。
「情報局の……!?」
「名前を言わなかったのは賢明だな。気を失っているが、運転しているのは北京市長のお嬢さんだ。ほれ、これが自動操縦のボックスだ。分析して出所を調べろ、これは単なる自動車事故。そうしておけ、君の進退にかかわるぞ」

 情報局の看板と呉潤沢の名前は効果絶大だった。この件は潤沢の預かりとなった。

「きみは、北京市長の娘だが、中身は違うだろう」
 潤沢のスグルは、自宅に着くなり、娘に、そう言った。
「いいえ、北京市長の娘です、すぐに家に戻してください」
「わたしの目はごまかせんよ。体と心の波動が一致しない」
「どんな方法か分からないけど、あなた、市長の娘にパラサイトしているわね」
 雪嶺のヒナタが続けた。
「……あなたがた、何者?」
「敵ではないとだけ言っておこう。世界はきみが思っているより複雑なんだよ、北京市長の娘が天安門で自爆するよりね」
「車は、あとで公安が引取りにくるでしょうが、改造した工場は分からなくしてあるわ」
「ううん、公安が調べたら、公安の自動車整備部に行き着くようにしといた。ちょっともめてもらおうと思って」
 春麗のキミがいたずらっぽく言う。

 それでも娘は頑なだったが、日本のエージェントであることまで話すと、ようやく安心してくれた。もっとも、それを証明するために、キミはアンドロイドとしての技術の一つとして、擬態の技術を見せてやらなければならなかったが。

「日本には、そんな技術があるんですね……わたし、チベット人のツェリン・チュドゥンと言います……いえ、だったというのが正確ですね。わたしは還魂の術で、市長の娘の体に入ったんです」
「パラサイト!?」
「よほど適合した人間同士でなければできません」
「じゃ、きみの体は?」
「魂が抜けると、体は死んでしまいます……わたしには戻る体がありません。市長の娘の魂を眠らせて、今は林音美として生きるしかありません。そして林音美として、天安門で死ぬ予定でした。漢政府を混乱させるために」
「でもチベットは、秦共和国に併合されてるんじゃないの?」

 ツェリンは庭の柳の木に寄生しているヤドリギに目を移した。

「秦は、漢に寄生しているヤドリギのようなものです。ヤドリギを枯らすのは柳を枯らすのが一番です」
 スグルは、なにを思いついたのか、庭の柳からヤドリギを切り離した。
「今の大陸国家は、みんな、このヤドリギみたいなもんだ。秦みたいにほとんど漢に取り込まれそうになっているところもあるが、互いに持ちつ持たれつだ。本気でこいつをバラバラにしよう……」

 スグルは、ヤドリギに張った蜘蛛の巣に絡み取られていた蝶々を器用に放してやった。ツェリンがやっと微笑んだ。

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高校ライトノベル・高安女子高生物語・59〔フラレてしもた!!〕

2017-11-30 06:38:39 | ノベル2

高安女子高生物語・59
〔フラレてしもた!!〕
       


 フラレてしもた!!

 と、騒ぎ立てるのは早いかと思うけど。感覚的には、まさにフラレた。

 ちなみに、うちは今日で17歳になります。平成9年5月2日、金曜日、午後3:05に、あたしは上六の病院で呱々の声(産声を格好良う言うたら、こないなる)をあげた。
 なんで、こんなに詳しく生まれた曜日やら時間を知ってるかというと、頭がええから……ではなく、折に触れてお父さんが言うから。

 この日は、6時間目体育館で学年集会をやってて、それが3:05分に終わって、教室で終礼せなあかんよって、トロクソウ歩いてる生徒に「はよ、出え、はよ出て教室戻れ!」て怒鳴ってたから。
 なんせ、終礼を早よせんと掃除当番がフケてさっさと帰ってしまいよる。で……「早よ出ろ!」と言うてる時に、うちはお母さんのお腹から出てきた。それが面白いんか、なにかにつけて、お父さんが言うんで、覚えてしもた。というわけ。

 ほんまは、今日の放課後でも関根先輩が「桃谷のマクドでも行こか?」いうてささやかにマックシェ-クかなんかで「誕生日おめでとう」言うてくれたら、うちは、それ以上のことは望まへん。
 誕生日は、こないだメールでさりげのう教えたある。なんか言うてくるんやったら、夕べのうちやろと日付がかわるまで、スマホ前に置いて待ってた。

 せやけど、電話はおろかメールもけえへん。で、かねて用意のデートの申込みを送信した。

 コースは決めてた。悔しいけど、かねがねお父さんに教えてももろてたデートコース。いくつも教えてもろてたけど、静かにゆっくりをコンセプトに選んだ。

 連休は、どこにいっても人いっぱい。それがめったに人がけえへん絶好のスポット……て、別に飛躍したやらしいことは考えてません。念のため。

 京阪の三条で降りて大津線で蹴上まで行って、インクライン沿いに南禅寺の裏手に出る。途中日本最古の水力発電所やら、レールの幅が4メートルほどある、インクラインが見られる。ほんで発電所の裏側を行くと森の中と言うてええ琵琶湖疎水に出てくる。ほんでから、その支流沿いに森の中を500メートルほど歩くと、南禅寺の水路閣に出てくる。

 コースの説明つけてメールを送った「もし良かったら、連休のいつでも」と、メッセ。遠慮してるようで、がっついてるかなあ……迷いはあったけど、エイヤと送信ボタンを押す。

 で、5分で返事が返ってきた。

――ごめん、部活と美保との約束があって、一日も空いてない――

 これはないやろ。

 断られるのは半分覚悟してた。せやけど、わざわざ「美保との約束」……ヤケドに辛子塗るような答えせんでもええやんか。
 うちは、鴨居に掛けといたデート用のスカートとカットソー(こないだアマゾンで買うたやつ)を仕舞うて、布団被って寝た。どす黒い後悔が胸の中を蛇みたいにクネクネして、なかなか寝付かれへんかった。

「明日香、誕生日やな、おめでとう」

 学校で、担任のガンダムに言われた。嬉しいよりもキショクワルイ。なんで何人もいてる女生徒の中で、うちの誕生日覚えてんねん!? それが表情に出たんやろ、ガンダムは付け足した。
「クラス持つときに調査書見たら、俺と誕生日いっしょやったさかいに覚えてしもた」
「ほんまですか!? で、なんかクリスマスパーティーとか、奥さんとデートとか」
「この歳なって、そんなんしてもらえると思うか? もしやりよったら、なんか下心あるんちゃうかと疑うてしまう」
 なんとも味気ない返事。

 一日凹んだままで、帰りの桃谷のホームに立ってたらメールが入った。

――誕生日おめでとう。学――

 心臓が口から出そうやった。で、向かいのホームに気配。
 関根先輩が手ぇ振ってくれてる。うちはジャンプして、思い切り手ぇ振った。
――ほんなら、クラブあるから学校に戻る――
 メール読んでたら、関根先輩は、下りの階段を駆け下りていくとこやった。

 向かいのホームいうのが、ちょっと寂しかったけど。これが、うちと先輩との距離。

 少しは前進。

 そない思て納得した……。

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高校ライトノベル・真夏ダイアリー・58『ジーナの庭・3』

2017-11-30 06:32:39 | 小説5

真夏ダイアリー・58
『ジーナの庭・3』
    


 姿が見えるやいなや、わたしはジーナさんの胸に飛び込んだ。

「わたし、とんでもないことしちゃった!……ジェシカを原爆ごとテレポさせてしまった。なんの関係もないジェシカを!」
 ジーナさんは、わたしをしっかり抱きしめて、しばらくじっとしていた。頬に暖かいものを感じた。ジーナさんが泣いている……ジーナさんも泣いている。
「ごめんなさいね、辛い選択をさせて……」
「どうにかならないんですか……!?」
「テレポした直後、真夏がテレポさせたネバダ砂漠に着く前に、時空の狭間で原子爆弾が爆発した……ジェシカは、時空の狭間で蒸発してしまったわ」
「……そんな」

 そのとき、庭の向こうから、省吾がヨボヨボのおじいさんを車椅子に乗せてやってきた。

「省吾……あんた!」
 わたしは省吾につかみかかり、庭を転げ回った。
「すまん、すまん、こ、この通りだ!」
 省吾は、地面に頭をすりつけるようにして謝った。
「ばか、ばか、ばか……!」
 わたしは、泣きながら、省吾の背中を叩いた。
「その人は、省吾のお父さん。省吾は、その車椅子よ」
「え………」
 車椅子には、ドンヨリと虚ろに濁った目をした、百歳ぐらいの老人が虚脱して収まっていた……。
「これが……省吾……?」
「無理なタイムリープをしたんで、老化が止まらないの。影響を受けて、お父さんまで老け込んでしまった」
「すまん、真夏さん。この通りだ……省吾は、あと二十分もすれば死んでしまう。どうか勘弁してやってくれ」
「死ぬんですか……」
「限界を超えたタイムリープ。そして……持ってはいけない憎しみを抱いことで、症状が加速してしまったの」
 わたしは、ダグラスの中で正体を明かしたときの省吾の驚きと憎しみを思い出した。空港にテレポしたあとは、トニーの良心と省吾の憎しみがせめぎ合っていた。あれでこんなことに……。
「わたし、もう一度ダグラスの中に戻ります。レーザーで鎖を焼き切って、省吾がショックを受けているすきに、省吾とトニーを分離させ、それぞれテレポさせます」
「たった、三秒よ。三秒のうちに二人を分離させ、原爆と省吾とトニーを別々にテレポ……無理よ」
「でも、それしか無いから……!」
「真夏さん、もういい。失敗すれば、君も死ぬし……君の大事な人にも影響が出るんだ……このわたしのように」
 
 一瞬、お母さんの顔が浮かんだ。

「……大丈夫。このラピスラズリのサイコロがあります」
「それは……」
 ジーナさんとお父さんの声が同時にした。その瞬間、わたしの手を離れたサイコロは空中で回転し、閃光を放った!

 気づくと、ダグラスの中だった。窓の下には粉雪のようなビラが地上に舞い落ちている。

「同じ内容をラジオの電波でも流している。できるだけ、人の命は損なわないようにしている」
「爆弾はダミー……本体は、そのトランクの中でしょう?」
 機体が一瞬揺れた。トニーにはショックであった。
「ミリー、どうして、そんなことを……」
「わたしは真夏。IDリングはミリーの頭に付けてきたわ」
「真夏……!」
「さあ、そろそろ、戻りましょうか。後ろにグラマンが貼り付いているわ」

 わたしは、ラピスラズリのサイコロを投げた。
 一の面からレーザーが出て鎖を焼き切り、くるくる回る六面体には、驚くトニーの顔――分離!――そう念じると、他の面に省吾の顔、原爆のトランク、わたしの顔が次々に写った。わたしは、その一つ一つにテレポの行き先を念じた。
 そして、勢いで、最後の一面が見えた。なぜだかジェシカの顔が写った。
 
 しまった!

 そう思った瞬間、わたしは再びジーナの庭に戻る自分を感じた……。

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高校ライトノベル・乃木坂学院高校演劇部物語・43『第九章・3』

2017-11-29 17:04:45 | はるか 真田山学院高校演劇部物語

まどか 乃木坂学院高校演劇部物語 初稿版・43   


『はるか ワケあり転校生の7ヵ月』姉妹版


 この話に出てくる個人、法人、団体名は全てフィクションです。


『第九章 竜頭蛇尾、そしてクリスマスへ・3』


 で、ここらへんまでが、竜頭蛇尾の竜の部分。

 考えてもみて、たった三人の演劇部。それもついこないだまでは、三十人に近い威容を誇っていた乃木坂学院高等学校演劇部。発声練習やったって迫力が違う。グラウンドで声出してると、ついこないだまでの勢いがないもんだから、他のクラブが拍子抜けしたような目で見てんのよね。最初はアカラサマに「あれー……」って感じだったけど、三日もたつと雀が鳴いているほどの関心も示さない。
 わたし達は、もとの倉庫が恋しくて、ついその更地で発声練習。ここって、野球部の練習場所の対角線方向、ネットを越した南側にはテニス部のコート。両方のこぼれ球が転がってくる。
「おーい、ボール投げてくれよ!」
 と、野球部。
「ねえ、ごめん、ボール投げて!」
 と、テニス部。
 最初のうちこそ「いくわよ!」って感じで投げ返していたけど、十日もしたころ……。
「ねえ、そのボール拾ってくれる!?」
 と、テニス部……投げ返そうとしたら、こないだまで演劇部にいたA子。黙ってボ-ルを投げ返してやったら、怒ったような顔して受け取って、回れ右。
「なに、あれ……」
「態度ワル~……」
「部室戻って、本読みしよう」
 フテった夏鈴と里沙を連れて部室に戻る。

 わたしたちは、とりあえず部室にある昔の本を読み返していた。
「ねえ、そのボール拾って!」
「またぁ……違うよ、それ夏鈴のルリの台詞」
 里沙の三度目のチェック。
「あ、ごめん。じゃ、夏鈴」
「……」
 夏鈴が、うつむいて沈黙してしまった。
「どうかした……ね、夏鈴?」
 夏鈴の顔をのぞき込む。
「……この台詞、やだ」
 夏鈴がポツリと言った。
「あ、そか。この台詞、さっきのA子の言葉のまんまだもんね」
「じゃ、ルリわたし演るから、夏鈴は……」
「もう、こんなのがヤなの」
「夏鈴……」
 演劇部のロッカーにある本は、当然だけど昔の栄光の台本。つまり、先代の山阪先生とマリ先生の創作劇ばっかし。どの本も登場人物は十人以上。三人でやると一人が最低三役はやらなければならない……どうしても混乱してしまう。
 じゃあ、登場人物三人の本を読めばいいんだけど、これがなかなか無いのよね……。
 よその学校がやった本にそういうのが何本かあったけど、面白くないし……抵抗を感じるのよね。

 竜頭蛇尾の尾になりかけてきた……。

「ね、みんなで潤香先輩のお見舞いに行かない。明日で年内の部活もおしまいだしさ」
「そうね、あれ以来お見舞い行ってないもんね」
 里沙がのってきた。
「行く、行く、わたしも行くわよさ」
 夏鈴がくっついて話はできあがり。
 そしてささやかな作業に取りかかった……。

 三人のクラブって淋しいけど、ものを決めることや、行動することは早い。数少ない利点の一つ!


 一ヶ月ぶりの病院……なんだか、ここだけ時間が止まったみたい。
 いや、逆なのよね。この一カ月、あまりにもいろんなことが有りすぎた。泣いたり笑ったり、死にかけたり……忙しい一カ月だった。
 病室の前に立つ、一瞬ノックするのがためらわれた。ドアを通して人の気配が感じられる。
 おそらく付き添いのお姉さん。そして静かに自分の病気と闘っている潤香先輩。その静かだけど重い気配がわたしをたじろがせる。
「どうしたの……まどか?」
 花束を抱えた里沙がささやく。その横で、夏鈴がキョトンとしている。
「ううん、なんでも……いくよ」
 静かにノックした。
「はーい」
 ドアの向こうで声がした、やっぱりお姉さんのようだ。

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高校ライトノベル・オフステージ・(こちら空堀高校演劇部)・118「広すぎるお風呂は瀬奈さん付」

2017-11-29 11:07:49 | 小説

高校ライトノベル・オフステージ(こちら空堀高校演劇部)
118『広すぎるお風呂は瀬奈さん付』
                

 

 

 え 広い……

 

 瀬奈さんに案内されて、少し降りたところにお風呂があった。

 

 十二年前は日帰りだったので、大お祖母ちゃんちの風呂は初めてなんだけど、あまりの広さに足が止まってしまった。

 まだ脱衣所なんだけど、ゆうに教室一つ分は有る。

「里の人たちも利用されますので大きんんです、さ、こちらにどうぞ」

 温泉旅館のように二つの壁面が四段の棚になっていて、一段ごとに八つの籠。4×8×2=62、ざっと六十人くらいは入れる。浴室に近いところが窪んでいて衝立で目隠しになっている。

「お嬢様、こちらへ」

 瀬奈さんが示したのは、その衝立の向こうで、入ると四畳半のスペースで、しつらえが高級になっている。

「こちらがお身内様の脱衣所になっております」

「ここでなきゃダメなのかしら?」

「お好きなところを使われて良いのですが、里の人たちが気を使われますので……」

 ああ、そういうことかと納得して裸になって浴室に向かう。

 

 え……広すぎる。

 

 浴室は脱衣所どころではなく、小学校の講堂くらいの広さに大小四つの浴槽がある。

 どうやら温泉で、浴室の外から、それぞれ掛樋が引かれて、盛大に湯煙を立てながらお湯を注いでいる。

 広場恐怖症ではないのだが、美晴はたじろいでしまった。

 夏休みのサンフランシスコで入った温泉も学校のプールのような広さだったけど、屋外でのスポーツ施設のような感じにたじろぐようなことは無かった。

 壁面の一つはゴツゴツの作り物ではない岩壁になっていて、この浴室が、元々は天然の岩風呂だったことを偲ばせる。

 大お祖母ちゃんちは天守閣さえあれば十分お城で通用しそうな屋敷なのだが、このお風呂は、それに倍する歴史の重さを感じさせる。瀬戸内家の始まりは、ひょっとしたら、この天然温泉の周囲から始まったのかもしれないと思った。

 

「お背中を流します」

 

 ハッとした。

 いつの間にか瀬奈さんがセパレートの水着で控えている。

「あ、え、あの……」

「嫡流の方のご入浴は、それぞれ役目の者が付きます。いつもわたしとは限りませんが、本日はわたしが務めさせていただきます。こちらへ……」

 檜の腰掛に座ると、瀬奈さんがユルユルと賭け湯をしてくれる。

 お風呂で人にお世話されるなんて初めてなので、いささか恥ずかしい。

「御屋形様と同じ肌をなさっておられます。やはりお血筋なのですね」

「え、あ、そうなんだ」

 三杯ほどの掛け湯を済ませると中ほどの浴槽を示された。

 入ってみると、思ったよりも熱くない。美晴は熱い風呂は苦手で、家の風呂も冬場でも四十度設定である。

「この浴槽が一番穏やかな温度設定になっています、慣れてこられましたらお好みの浴槽をお使いください。あちらの小さいのが一番たけだけしくて四十五度ございます。ちなみに、御屋形様は、あちらをお使いになっておられます」

 ただでも近づきがたい大お祖母さまが、いちだんと化けものじみて感じられた。

 同性とはいえ瀬奈に身体を洗われるのはきまりが悪かったが、髪を洗ってもらうのはラクちんで気持ちが良かった。

「えと……なんだか瀬奈さんの視線をヒシヒシ感じるんだけど」

「あ、申し訳ありません。お風呂のお世話はお嬢様の健康状態のチェックも兼ねております。まだ未熟者ですので、ご不快でしょうね、申し訳ございません」

「あ、いえ、そんなんじゃ」

 自分で指摘しておきながらワタワタしてしまう。

 

 風呂からあがって驚いた。

 

 着替えが全て新しくなっている。

 いちばん驚いたのは制服だ。

 三年間着慣れたものではなくて、触っただけで分かる新品に替わっていたのである。

「新しいものと、御屋形様からの御指示でございましたが、制服をお召しになってこられたのはお嬢様の心意気であるとお見受けいたしましたのでご用意させていただきました」

 すばやくメイド服に着替えていた瀬奈さんが、心なし楽しそうな表情で言った。

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高校ライトノベル・青春アリバイト物語・4《え、台詞が入ってない!?》

2017-11-29 06:23:50 | 小説6

青春アリバイト物語・4
《え、台詞が入ってない!?》



 ただの付き人とは思うな。

 八重の付き人を始めた日に兄の裕一に言われた言葉である。
 真一の告白を断るために、とっさに出たでたらめアルバイトだが、裕子はやり通そうと決心していた。演劇部のコンクール審査にケチをつけたことで、狭いながらも高校演劇の中の有名人になってしまった裕子である。フンドシの紐は締めている。
 八重は、その日台本を間違えて持って帰ってしまった。

 なんと、すでに収録の終わった分の台本を持って帰ってしまっていたのである。

「え、うそ。これだと思ってた!」
 さすがの八重も青くなった。スタジオに入ってセットが台本と違うので、ようやく気付いたのである。
「ヒロ、あんたがしっかりしてないからでしょ!!」
 いつものように付き人に当たり散らす八重だったが、当然ながら八重に同情するような者はスタジオには一人もいなかった。
「そんなマネージャーさんにあたってもしかたないでしょ。ヒロちゃんは、ちゃんと今日の台本持ってるじゃないの」
 ベテラン女優の、八千草瞳がたしなめた。八重は、ときどき台本を忘れてしまうので、八重の付き人は、必ず予備の台本を持っている。

 責任の所在は明らかだった。しかし、八重を冷やかに見ているだけではすまない。このままでは収録ができない。

「カンペ用意しましょうか?」
 チーフADのニイチャンが言った。
「だめ、そんなので演れるような軽い役じゃないわよ。台詞も長いし」
 八千草が言下に却下した。

 スタジオが、シーンとした。

「あの、あたしがプロンプターやりましょうか?」
 裕子は、思い切って言ってみた。
「でも、台本持って入られたんじゃ、フレームに入っちゃうよ」
 ディレクターが、ため息交じりに言った。
「八重さんの台詞は、アンダーやれるくらい頭に入ってます。場面にあったエキストラの衣装着せてもらったら務まると思います」

 放送局と言うのは小回りが利くものである。ディレクターやカメラ、美術さんまで入って40分足らずで対策を講じた。

 その収録で、裕子は、まさの八面六臂であった。喫茶店のウェイトレス、近所のオバサン、女子高生、果ては犬の着ぐるみ(さすがに全身は写さないが)ゴミ箱のゴミ、カメラさんのクレーンにも上った。

「ふん、ヒロも少しは役に立つんだ」
 八重にしては、最大の賛辞ではあった。
「きみ、プロンプ慣れしてるね」
 これはディレクター。あたりまえである。裕子は、ついこないだまで、演劇部の何でも屋さんであったのだ。
「あなた、服のサイズ八重ちゃんといっしょなのね」
 これは衣装さんの感想。これが回りまわって、裕子の災厄になるが、裕子も八重も、スタジオのだれも気づいてはいなかった。

――バイトがんばれよな。休憩中とか帰りとか、少しでも会えないかなあ――

 お気楽な真一から、メールが入っていた。

――そんな、生半可なもんじゃねーっつーの!――

 そう返事を打ちながら、真一とのメールのやり取りが日常になってきたことには気づかない裕子だった。

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高校ライトノベル・ホリーウォー・23[ミッションパラサイト・1]

2017-11-29 06:19:41 | 小説3

ーウォー・23
[ミッションパラサイト・1]



「毛沢東は知っているね?」

 春麗と雪麗の父は、大胆にも天安門前を走行中の車の中で言った。

 むろん暗号化した会話になっている。実際は「オレのこと分かったかい?」になる。以下ややこしいので、解読された会話表記にする。
 雪麗に擬態したキミは、学校に迎えに来た『父』を見て万事窮すだと思った。『父』の呉潤沢は漢民主国情報部の腕利きで、要注意人物とPCにインプットされていた。何度かテレポしようとしたが、テレポ無効化のパルスを発せられるので、チャンスを逸したまま北京のど真ん中まで来てしまったのである。
「ヒナタのおかげで、なんとか復元できたぜ」
「え……ひょっとして……スグル!?」
「ああ、ヒナタがオレに関する記録や記憶を集めてくれたんで(第三回~第九回)なんとか九部通り復活できた」
「でも、その潤沢のなりは?」
「本物は日本で捕まっている。ユーリーは自己破壊したが、CPにメモリーの断片が残っていてな、それを三割がた復元したら、この潤沢のオッサンの情報が出てきて、博多ゲルで捕まえた。で、オレが潤沢に擬態して逆潜入したってわけ。本物の春麗と雪嶺も日本に呼び出して身柄を確保してある」
「うそ!」
「かわいそう」
 かわいそうと言ったのは雪嶺のキミである。かわいそうは言葉だけで、中身は「うまくやったわね!」になる。

 雪嶺も春麗も父は貿易商だと思っている。だから博多での身柄確保も外為法違反ということで、娘たちには真実を伝えていない。日本政府のやり方は、優しいとも狡猾とも言えた。とにかく、ヒナタとキミの危機に間に合ったのだから、スグルは大したガードと言えた。

「ただし勝負は、この一か月だ。キミがうまくテレポしてくれたんで、ヒナタの行方は分からない。つまり、中国大陸のどこに世界最強の自律型核融合兵器がいるか分からない。カードはこっちにあるというわけだ。この一か月、大陸のあちこちでヒナタのパルスを発信する。わざとらしくなく、圧縮したり偽装したりしながらな。でも、シンラも習もバカじゃない、一か月もすれば感づくだろう。それまで、やれるだけのことをやろう。まずは天安門広場で記念撮影でもしようか」

 三人は車を降りた。巡邏の武装警察も、仲のいい親子連れとしか思っていない。

「故宮の地下には、大陸最大のCICが作られつつある。大陸を統合したときの総司令部にするつもりだ。そう分からないように、わざと警備は緩くしてある。しかし、忍ぶれど色に出にけり……人の出入りや、監視カメラ、センサーの数や位置で、ある程度の……」
 スグルが写メのアングルを決めている間に、異常なオーラを感じた。
 天安門広場前にさしかかった車が一台制御不能に陥っている。運転手はパニック寸前だ。
「あ、あの車!」
 一台のワンボックスカーが、急に方向を変えて、天安門の正面に向かい始めた。運転手は必死でハンドルを逆に戻し、ブレーキを踏もうとしているが、コントロールがまるで効かない。

「二人とも、ここを動くんじゃない!」

 そう言うと、スグルは猛ダッシュで車に向かって駆け出した……。

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高校ライトノベル・高安女子高生物語・58〔初めてのアマゾン!〕

2017-11-29 06:13:56 | ノベル2

高安女子高生物語・58
〔初めてのアマゾン!〕
        


 話は前後します。

 月曜は、神戸の異人館街の遠足やったけど、その前の日曜は、今里のお祖母ちゃんの全快祝いに行ってました。

 以前、佐渡君のとこらへんで書いたけど、今里のお祖母ちゃんは左の腕を骨折して一カ月半も入院してました。

 単純な骨折やから、普通半月もあったら退院できるんですけど、お祖母ちゃんは骨粗鬆症のうえに足腰悪いよって、一カ月余分にかかりました。それが、やっと退院して快気祝い……というても、家で盛大にやるわけやない。布施のN寿司いうとこ行って、奈良の伯母ちゃん夫婦とうちの家族三人で、お寿司を食べる。
 今里の家から歩いても10分ほどやねんけど、お祖母ちゃんは家から奈良のオッチャンに車に乗せてもろてやってくる。うちら高安組は、寿司屋の前で順番取り。11時45分開店やねんけど、もう10人ほど並んではった。お祖母ちゃんがオッチャン伯母ちゃんといっしょに来た頃は、もう30人ぐらい並んでた。
 

 6人でたらふく食べた。

 うちは定番のマグロから始めて、中トロ、鉄火、エビ、イカ、蛸、ほんでもっかい鉄火にもどって上がり。ちょっと少ないみたいやけど、ここのN寿司は1皿に3貫載って、ネタも大きいよって、お馴染みの回転寿司の倍くらいはある。
 ビックリしたんが蛸。符丁は「ぼうず」 何がビックリしたか言うと、蛸が生やいうこと。お馴染みの回転寿司やら出前寿司のたこは茹で蛸。いつもの調子で食べたら吸盤が上顎にひっついてえらいことやった。
 うちの味覚では、サビが足らんのでサビ入りのムラサキをハケで塗ったら死ぬかと思た。サビの効き過ぎ。上向いて、しばらく口を開けてる。わさびは揮発性なんで、こうやっとくと刺激が抜けていく。せやけど「アホな顔せんとき」いうて、お母さんに怒られた。伯母ちゃんが、せんでもええのに、その姿をシャメで撮りよる。こんな姿、関根先輩には見せられません。

 うちにひっついてきた楠木正成のオッサンが、しきりに「うまい!」を連発しとった。「もっと食え」言うとったけど、オッサンの言う通りしとったらブタになる。鉄火の追加で辛抱させた。どうも正成のオッサンの時代には寿司は無かったみたい。

 それから、お祖母ちゃんの手ぇ引いて喫茶店。正確にはお祖母ちゃんがうちの腕に掴まってる。保健で習たし、中学の職業体験で行った介護施設でも身に付いた「手のさしのべ方の基礎」せやけど、お祖母ちゃんは、嬉しかったみたいで、後でお小遣いむき出しで1万円もくれた!

 いつも通り前説が長い。

 うちは、この1万円で、始めてネットショッピングやった! それもお洋服!
 カード決済やと、大人やないとでけへんけど代引きやったらできる。そない知恵をつけてくれたんは、奈良のオッチャン。

 うちは、制服以外ではパンツルックが多い。家の中では、たいがいジャージ。せやけどジャージばっかり着てたらジャージ女になってしまう。ジャージ→くつろぎ→だらしないの三段論法は正解やと思う。人間は着てるもんで立ち居振る舞いが決まってくる。
 美保先輩に勝つためにも、ちょっとは女の子らしいしとかなあかん。

 女の子の夏のファッションを検索。正直目の毒。

 2時間ほどかけて、二つ選んだ。七分袖のカットソーと、大きな花柄のスカート(細いブラウンのベルト付き)
 カットソーとTシャツの違いがよう分からんよって、検索。

 カットソーいうのは、生地が編み物で伸縮性がある。Tシャツはただの(主に)木綿の生地。体のフィット感がちゃう。で、3回ほどクリックして、アドレスと住所打ち込んだらしまい。お届けは2日後てなってたけど、遠足から帰ったらもうきてた。
 惜しい、もうちょっと早かったら遠足着ていけたのに!

 で、部屋に籠もって1人ファッションショーやった!

 我ながら「馬子にも衣装」スカートがミニやけど、フレアーがかかっててフワっとしてる。カットソーは体に緩やかにフィット。ジャージやら制服とは全然ちゃうシルエットが、そこにあった。
――うちて、こんなに女の子らしかったんや!――
 感動してしもた。
――かいらしいのは認めるけどな、いきなり、これ着て学に会うのはやめときや――
 正成のオッサンが、いらんことを言う。
――河内の女は心意気や。まず、ドーンととびこんでいけ。ほんで相手に通じたらきれいにしたらええ――

 正成のオッサンの言うことは分かる。せやけど、こないだみたいに、いきなり夜這いかけるんはちゃうと思う。

 もどかしいなあ、青春いうのは……。

――なんもむつかしない。行動あるのみや――

「うるさい、黙ってて、オッサンは!」
「明日香、このごろ独り言多いなあ……」

 洗濯物干しに上がってきたお母さんに聞かれてしもた……。

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高校ライトノベル・真夏ダイアリー・57『ジェシカ!!』

2017-11-29 06:07:39 | 小説5

真夏ダイアリー・57
『ジェシカ!!』
    


 一瞬光が走り、わたしとトニーは、元の空港にテレポした……。

 わたしが、ミリーではなく真夏であったこと。そして、自分の意思ではなく急にテレポさせられたことで、トニー(省吾のアバター)は気絶していた。

 彼方の空には、アメリカ軍の攻撃によって墜ちていったダグラスの煙が、染みのように残っていた。

「よかった、あの飛行機といっしょに撃墜されたかと思った」
 ジェシカは、親友が無事に帰還したように喜んでくれた。ジェシカは、簡単な説明をしただけで、未来人であるわたしと省吾のことは理解してくれた。そして、この省吾を騙す芝居にも付き合ってくれたのだ。
「で、このトニーは、もう元のトニーなの?」
「いいえ、まだよ。気が付いたら説得する。その前に……」
 わたしは、トランク型の原子爆弾に手を伸ばした。

 うかつだった。トランクとトニーの手はチェ-ンで繋がれていて、トニー、いえ、省吾が目を覚ました。
「触るんじゃない!」
 省吾は、トランクを抱えると、わたしたちから距離を取り始めた。
「省吾、お願い、バカな真似は止めて!」
「真夏、おまえは分かってないんだ。この戦争をやめなければ、真夏にも言えない怖ろしいことがおこるんだ」
「他に方法が……」
「ない。もう、あらゆる手段を尽くしてきた。真夏自身、こないだワシントンで失敗したばかりじゃないか」
「だからって……」
「きみたちには悪いが、ここで原爆を起爆させてもらうよ。予定より遙かに多い人が犠牲になるが、仕方がない……真夏がタイマーを壊したから、ちょっと手間だけどね」
 省吾は、チェ-ンを外し、トランクのロックを解除した。
「省吾……!」
「君たちは、殺したくない。今すぐ車で、ここを離れるんだ。10分待つ。10マイルも離れれば大丈夫だ」
 体の中を熱い血と冷たい血が、同時に流れたような気がした。
「そう……じゃ、さっさと、そうさせてもらうわ。こんな気の狂ったやつと話しても無駄だわ。あんたたちも早く!」
 そう言うと、ジェシカは、銃を捨てて走り出した。
「ねえ、あなたは、元々はトニーなんでしょ。今は省吾に乗っ取られてるけど、トニーは目覚めているんでしょ。そうでなきゃ、たった今、説明なんかしなかったわよ。あっさりボタン押して爆発させているわ。わたしたちに10分の猶予をくれたのは……あなたの中のトニーがさせたことでしょ」
「ミリー、早く逃げるんだ。ぼ、ぼくには……それしかできない」
「トニーが目覚めかけてる……」
「トニー、そんなもの捨てて。こっちに来て!」
「ダメ、省吾の呪縛は、そんなに甘いもんじゃない。それに……」
 言葉を続けようとすると、滑走路を横切って、一台のクーペがヘッドライトを点けたまま走ってきた。省吾は一瞬ヘッドライトのまぶしさにたじろいだ。
 その瞬間、クーペは省吾の真横を通り、運転席から飛び出したジェシカがトランクを奪い取り、滑走路を転げた。

「ジェシカ!!」

 三人の言葉が重なり、わたしは……しかたなく指を動かした。

 同時に、ジェシカの姿は、トランクと共にかき消えてしまった。無人のクーペは、滑走路を横切り、土手に乗り上げ横転していた。
「ジェシカ……」
「テレポさせた」
「どうして、どこに!?」
「あの原子爆弾は、あいつの手を離れると、三秒で爆発する……ああするしか仕方がなかった」

 どこか時空の彼方から、アレが爆発した気配が伝わってきた。
「ミリー、十秒だけ息を止めて」
「え……?」
「早く!」
 直後、弱かったが、時空の閉じきれない裂け目から、放射能を含んだ風が吹いてきた。
「あ、トニー!」
 ジェシカが消えたのと反対の方向。そこに呪縛の解けたトニーと、元の姿に戻った省吾が横たわっていた。
「トニー、トニー!」
 ミリーは、トニーを抱き上げた。
「大丈夫。ショックで気絶してるだけ。すぐに目が覚めるわ」
 わたしは、その横に芋虫のように転がっている省吾から目が離せなかった。
 
 その姿は、まるで、九十歳のおじいさんのようだった。
 ぐっとせき上げてくるものがあったけど、ミリーの気持ちを思うと、表情には出せない。
「まるで、魔法使いのおじいさん!」
 ミリーが吐き捨てるように言った。
「ごめんね、ミリー。ジェシカのこともごめん……とりあえず、こいつを連れて帰る。どうしていいか分からないけど……分からないけど、出来る限りのことはする」
「ジェシカは、親友だったんだから。ジェシカだって、ほんとはトニーのこと好きだったんだから!」
「……分かってる」
 そう言うのが精一杯だった。

 ジーナが、わたし達を呼び戻していた……。

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高校ライトノベル・乃木坂学院高校演劇部物語・42『第九章・2』

2017-11-28 16:48:43 | はるか 真田山学院高校演劇部物語

まどか 乃木坂学院高校演劇部物語 初稿版・41   

 
『はるか ワケあり転校生の7ヵ月』姉妹版


 この話に出てくる個人、法人、団体名は全てフィクションです。


『第九章 竜頭蛇尾、そしてクリスマスへ・2』


 で、この『竜頭蛇尾』は、言うまでもなくクラブのことなのよ……ね。

 あの、窓ガラスを打ち破り、逆巻く木枯らしの中、セミロングの髪振り乱した戦い。
 大久保流ジャンケン術を駆使し、たった三人だけど勝ち取った『演劇部存続』の勝利。
 時あたかも浅草酉の市、三の酉の残り福。福娘三人よろしく、期末テストを挟んで一カ月は持った。
 公演そのものは、来年の城中地区のハルサイ(春の城中演劇祭)まで無い。
 とりあえずは、部室の模様替え。コンクールで取った賞状が壁一杯に並んでいたけど、それをみんな片づけて、ロッカーにしまった。
 三人だけの心機一転巻き返し、あえて過去の栄光は封印したのんだ。
 真ん中にあるテーブルに掛けられていた貴崎カラーのテーブルクロスも仕舞おうと思ってパッとめくった。

 息を呑んだ。クロスを取ったテーブルは予想以上に古いものだった……わたしが知っている形容詞では表現できない。

 わたし達って、言葉を知らない。感動したときは、とりあえずカワイイ(わたしはカワユイと言う。たいした違いはない)と、イケテル、ヤバイ、ですましてしまう。たいへん感動したときは、それに「ガチ」を付ける。
 だから、わたし達的にはガチイケテル! という言葉になるんだけど、そんな風が吹いたら飛んでいきそうな言葉ではすまされないようなオモムキがあった……のよね。
 隣の文芸部(たいていの学校では絶滅したクラブ。それが乃木高にはけっこうあるのよね。わたし達も絶滅危惧種……そんな言葉が一瞬頭をよぎった)のドアを修理していた技能員のおじさんが覗いて声をあげた。
「これ、マッカーサーの机だよ……こんなとこにあったんだ」
「マックのアーサー?」
 夏鈴がトンチンカンを言う。
「戦前からあるもんだよ……昔は理事長の机だったとか、戦時中は配属将校が使って、戦後マッカーサーが視察に来たときに座ったってシロモノだよ。俺も、ここに就職したてのころに一回だけお目にかかったことがあるんだけどさ、本館改築のどさくさで行方不明になってたんだけどね……」
 おじさんの説明は半分ちかく分からないけど、たいそうなモノだということは分かる。
「ほら、ここんとこに英語で書いてあるよ。おじさんには分かんねえけどさ」
「どれどれ……」里沙が首をつっこんだ。
「Johnson furniture factory……」
「ジョンソン家具工場……だね」
 わたし達にも、この程度の英語は分かる。

 技能員のおじさんが行ってしまったあと。そのテーブルはいっそう存在感を増した。
 テーブルは、乃木高の伝統そのものだ。貴崎先生は、その上に貴崎カラーのテーブルクロスを見事に掛けた。
――さあ、どんな色のテーブルクロスを掛けるんだい。それとも、いっそペンキで塗り替えるかい。貴崎ってオネーチャンもそこまでの度胸は無かったぜ。
 テーブルに、そう言われたような気がした。

 結局、テーブルには何も掛けず、造花の花を百均で買ってきて、あり合わせの花瓶に入れて置いた。それが、殺風景な部室の唯一の華やぎになった。
――ヌフフ……百均演劇部の再出発だな。
 憎ったらしいテーブルが方頬で笑ったような気がした。

 貴崎先生のテーブルクロスは洗濯して、中庭の木の間にロープを張って乾かした。
 たまたま通りかかった理事長先生が、こう言ったのよね。
「おお、大きな『幸せの黄色いハンカチ』だ、君たちは、いったい誰を待っているんだろうね」
「は……これテーブルクロスなんですけど」
 と、夏鈴がまたトンチンカン……て、わたしも里沙も分かんなかったんだけどね。
「ハハハ、その無垢なところがとてもいい……君たちは、乃木坂の希望だよ」
 理事長先生は、そう愉快そうに笑いながら後ろ姿で手を振って行ってしまわれました。

 晩秋のそよ風は涙を乾かすのには優しすぎたけど、木枯らし混じりの冬の風は、お日さまといっしょになって、テーブルクロスを二時間ほどで乾かしてしまった。
 それをたたんで、ロッカーに仕舞っていると、生徒会の文化部長がやってきた。
「あの……」
 文化部長は気の毒そうに声を掛けてきた。
「なんですか?」
 里沙が事務的に聞き返した。
「部室のことなんだけど……」
「部室が……」
 そこまで言って、里沙は、ガチャンとロッカーを閉めた。気のよさそうな文化部長は、その音に気後れしてしまった。
「部室が、どうかしました?」
 いちおう相手は上級生。穏やかに間に入った。夏鈴はご丁寧に紙コップにお茶まで出した。
「生徒会の規約で、年度末に五人以上部員がいないと……」
「部室使えなくなるんですよね」
 里沙は紙コップのお茶をつかんだ。
「あ……」
 わたしと夏鈴が同時に声をあげた。
「ゲフ」
 里沙は一気に飲み干した。
「あ、分かってたらいいの。じゃ、がんばって部員増やしてね……」
 文化部長は、ソソクサと行ってしまった。
「里沙、知ってたのね」
「マニュアルには強いから……ね、稽古とかしようよ」
 八畳あるかないかの部室。テーブルクロスが乾くうちにあらかた片づいてしまった。

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高校ライトノベル・志忠屋繁盛記・13『写真集・3 玉手山遊園の観覧車』

2017-11-28 15:23:07 | 志忠屋繁盛記

志忠屋繁盛記・13

 

『写真・3 玉手山遊園の観覧車』    

 

 この物語は、かつての志忠屋にヒントを得て書いたフィクションです

 

 

 あ 玉手山遊園や……

 

 写真集の巻末近くで思い出の遊園地を発見したタキさんだ。

 なぜ巻末近くかといううと、大和川からこっち、どのページを見ても黒歴史そのもの、あるいは、それに繋がる写真ばかり。

 懐かしくはあるが、いかんせん黒歴史、アイドルタイムに見ていて思わず呟いた言葉がKチーフやランチタイムから居続けの常連さんなどに聞かれてはまずいので、巻末に飛んだというしだい。

 

 玉手山遊園は、平成十年に閉じられたが、日本で二番目に古い遊園地なのだ。  

 

 八尾から近いこともあって、タキさんにはディズニーランドやUSJよりも、ある意味思い入れが深い。

 写真集に載っているのはゴンドラがわずか9個しか付いていない観覧車だ。

――吊り橋をいっしょに渡ると、いっしょに渡った異性を好きになる――

 社会の時間にN先生が脱線して『吊り橋論』の話をした。

 要は、吊り橋などを一緒に渡ってドキドキすると、脳みそが勘違いして、その異性を好きだと思ってしまうという話。

 中学生にもなると色気づいてくるので、N先生は、うまく牽制球を投げたのだ。

 タキさんは、こういう話され方をすると――なるほどなあ――と思ってしまう。

 道徳的に、かくあるべし! などと言われると反発してしまうが、N先生のように科学的かつウィットに富んだ言い方をされると「なるほど」と思ってしまう。

 

 で、その週の日曜日は子供会の遠足の日だった。

 

 もとより子供会というのは小学生のものなのだが、生まれついてのガキ大将。

 それに家の宗旨がキリスト教ということもあり、何かにつけて境界や町内の用事は進んで参加する。

 ガキ大将でもあるので、自然とその場を仕切ってしまうことが多い。

「玉手山遊園は目えが届かへんねん、コウちゃんなんかが来てくれると助かるねんけどなあ」

 世話係のオッチャンに言われては行かざるを得ない。

 実際のところは、子どもたちに人気のあるタキさんなので、なまじ大人が仕切るよりも楽しくなることを、みんなが知っている。

 同様に声を掛けられた中一三人といっしょに楽しく玉手山遊園に出かけたのであった。

 三つのグループに分けた子どもたちを、タキさんたち中学生はうまく遊ばせた。

 お昼はいっしょにお弁当を食べながらのビンゴ大会。人間いっしょに飯を食ってビンゴをやれば身も心も温まってくるのだ。

「これで、こいつらの絆の『き』の字くらいはできたよ、オッチャン」

「ありがとう、ありがとう、午後は好きにしてくれてええよ」

 

 三人の中学生、タキさんの他は酒屋のせがれと、もう一人は、あの百合子だ。

 

「コウちゃん、いっしょに回ろか」

 酒屋のせがれをソデにして百合子が寄って来た。

「秀(酒屋のせがれ)は?」

「子どもらと盛り上がってるから……」

 大人びた言い方で馬跳びをしている秀を一瞥した。

 なにか吹っ切ろうとしている風を感じたので、タキさんは並んで歩いた。

「秀と付き合うてんのかと思てた」

「友だちとしてはね……あ、すみません、シャッター押してもらえます?」

 最後まで言わずに、持っていたカメラを通りがかりのアベックに声を掛ける百合子。

「撮りますよー引っ付いてー」

「はーーい」

 アベックの照り返しだろうか、百合子はちょっぴり大胆に腕を組んできた。不覚にも胸キュンのタキさんだ。

「ありがとうございます、よかったらお二人のも撮りますけど」

「そう、じゃ、お願いしよかな」

「観覧車背景に撮ってもらえます?」

「ちょうど乗ってきたとこやねん(o^―^o)ニコ」

「ハイ、いきまーす……」

 

「わたしらも乗ろっか!」

 

 アベックにカメラを返すと、素敵な笑顔でタキさんにねだる百合子。

 ついさっきまで秀の彼女だと思っていたので、気持ちがポワポワと浮き上がってしまう。

 浮き上がったまま二人は観覧車のゴンドラに乗った。

 ジェットコースターはあちこち制覇しているタキさんだが、観覧車は生まれて初めてだ。

 狭いゴンドラの中では互いの膝が触れ合ってしまう。ゆっくりと上昇するゴンドラ、互いの息遣いさえ聞こえてきそう。

 秀とのことで封印してきた気持ちがあることをゴンドラの上昇とともに感じてくる……ドキドキと自分の心臓がうるさい……しかし、これは……きっと吊り橋効果や……せやけども……ああ、なんちゅうカイラシイ目すんねん!

 外の景色を見るふりをして、時々目線を避けるが、かちあった時の百合子の目は凶器だった。

 

 9個のゴンドラしかない観覧車は三分足らずで地上に戻ってしまった。

 

「ほんなら、あたし子どもらの相手してくるわね」

 地上に降りると、百合子はそそくさと行ってしまった。

 なじられたような気がしたが、N先生の影響だろうか――とりあえずは、これでええねん――自分に言い聞かせるタキさんだった。

 で、結局はS高校の偵察に行く百合子を玉櫛川のほとりで見かけるまで、ろくに口もきかなかった二人であった。

 

「マスター、ディナータイムでっせ!」

 

 タキさんは日常に引き戻されてしまった。

 

 

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高校ライトノベル・青春アリバイト物語・3《裕子が、こんなにがんばれる理由》

2017-11-28 06:51:31 | 小説6

青春アリバイト物語・3
《裕子が、こんなにがんばれる理由》



 たった一日とは言え、裕子の頑張りには事務所のみんなが驚いた。

 正直、裕一は明日からは別の付き人を付けようと、あちこち連絡をしていた。付き人希望の子は結構いる。
 だが、八重の名前を出したとたんに、みんなしり込みしてしまう。八重の我がまま傍若無人ぶりは、業界では現在進行形の災厄と認識されている。だから、あくる日から裕子の代わりが務まるような、務めようというような者は一人もいなかった。

――裕子、明日も大丈夫か?――

 一日目の終わりには、そんなメールを裕子に打った裕一であった。
 むろん、裕子は、この程度では辞める気はなかった。予想以上の難物ではあるが、自分は、これを超えておかなければならないと思い定めていた。須藤真一がいきなりコクってきて、その条件反射で「バイトあるから!」と言った裕子ではあったけど、これをやり通さなければ、伊藤裕子は潰れそうではあった。

 原因は、こないだまで在籍していた演劇部である。

 裕子は、一年間温めてきた脚本を「絶対創作劇!」と言って譲らなかった顧問を説き伏せてやったのだ。
『すみれの花さくころ』という既成脚本で、一年の時、たまたまYouTubeで発見した。大学生のと高校生のとがあったが、出来はともかく人間の営みや想いへの温かいまなざしが感じられてほれ込んだ。へそを曲げた顧問は非協力的だったが、予選で見事に最優秀をとった。顧問は手のひらを返したように協力的になり「やっぱ、既成もいいもんです。ええ、最初からこれを勧めてましたから、オホホ」などと悦に入っていた。

 ところが本選でこけた。

 観客の反応は上々であった。気の早い後輩など「関東大会は金曜にしてくださいね。あたし土曜は検定があるから」などと言っていた。
 それが、上位三番にも入らなかった。
「作品に血が通っていない。思考回路、行動原理が高校生のそれではない」
 という、言語明瞭意味不明な講評で落とされた。頭に来た裕子は審査員に噛みついた。
「どこをもって、血が通っていないんですか!? 高校生の思考回路や行動原理ってなんですか!?」
 と、ごく正当に噛みついた。審査員はろくに答えられなかった。で、審査発表で落とされた。
 裕子は、同じ内容を内容証明付きの手紙で審査員に送った。一週間後の合同合評会で、裕子はたまげた。
 配られたレジメの講評の中から「作品に血が通っていない。思考回路、行動原理が高校生のそれではない」がスッポリ抜けているばかりでなく「帰りの電車の中で、ふと、この学校にもなんらかの賞を出すべきだったと思った」なんて後付のおためごかしまで書かれていた。

 裕子は高校演劇連盟に抗議文を書き、ブログでも書いた。アクセスは多く、みな関心は持ってくれるようだったが、反応は冷ややかであった。裕子はレジメを読み倒して、審査員が自分の好みで作品を選んでいることを突き止めた。
「こんなとこで誉める? こんなとこけなす?」
 そういうところが随所にあることを発見し、ブログを補強し、審査基準が無いことが大きな原因であることを見抜いた。

 顧問は再び手のひらを返した。

「あれは、伊藤裕子が勝手にやったんです。やっぱり、高校演劇は創作劇でなくちゃね」
 などと触れ回り、裕子は……言い放った。
「こんな演劇部、やってらんねえ!」

 このことがあったから、須藤にコクられた時も言下に断った。皮肉なことに須藤は、そういうキッパリとして自分を主張できる裕子が好きになってしまったのだから、ややこしい。

 須藤くんなんかと付き合ったら、傷の舐めあいと思われる。だから断った。
 で、アリバイに始めた服部八重のマネージャーという名の付き人も、辞められない。

 やっぱ、途中でケツ割ったんだ。そう思われるくらいなら死んだ方がましだと思った。

 この、裕子の決心が、わずか半月の間に、いろんなところに波紋をおこすのであった。

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