大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評『ハンガーゲーム2』

2013-12-29 08:09:13 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評
『ハンガーゲーム2』


これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に流している映画評ですが、もったいないので転載したものです。


今回、監督がフランシス・ローレンス(コンスタンティン)に変わって、これが大成功だったようです。

原作第2巻はヤングアダルトっちゅうよりはジュビナイルに成っていたし、設定とストーリーテリングに大穴が開いてました(映画を見て、どうやら翻訳のミスらしいが…1巻に比べて主人公の単視点からの物語と言うテリングでは無くなっている。3巻で、また元に戻るので、本作の原作部分だけが混乱している)
 物語は、この世界の分岐点になるエピソード。中央キャピタル以外は奴隷に他ならない12地区(実は13番目の地区があって、過去にキャピタルによる核攻撃で滅んだとされていた)には何の希望も無かったのだが、カットニスとピーターが小さな希望の灯火を点す。キャピタルの大統領はそれがいつか燎原を焼き払う炎に成りかねないと見抜き、なんとか彼女を支配しようとする。支配できないなら抹殺しなければならないが、処刑したのでは殉教者に成ってしまう。かくして第75回記念大会は彼女にとって絶対絶命の処刑会場として計画される。

 原作を読んでいると、この凄腕大統領があまりにも馬鹿剥き出しで、全く洞察力が無い。しかも、大会の裏で密かに進行している計画も穴だらけの運任せ。
 これがマトモな映画になるのか、ムッチャ心配やったんですが、杞憂でした。映画にはカットニスの単視点が戻っていて(100%じゃないんで、映画にも多少混乱があります)翻訳原作よりは説得力があります。ゲーム中の迫力も、上手く作ってありますが……これも原作の設定の都合上、前作にあった不条理が姿を消しています。
 その分、脳天気女エフィーですらキャピタルに対して怒りを露わにする等のシーンが挟まり、75回記念大会が無事には終わらない予感を醸しています。
 映画は演出と脚本が見事に原作の穴を埋めて、ある意味 前作より見応えのある作品になっています。 主役二人の成長が、ちょうど映画のキャラクターの成長に重なったのも幸運な結果をもたらしています。 出演者で言えば、レニー・クラヴィッツはやっぱり一番魅力的、ウッディ・ハレルソンも役柄の広さを今回も発揮、今回初顔のフィリップ・シーモア・ホフマンはさすがの巧さ。私のイチ押しは、テレビ司会者のスタンリー・トゥッチ、例によって蝋人形のように張り付いた笑顔で いかにもアメリカのバラエティー番組の司会者をカリカライズしている。
 改めて出演者顔ぶれを眺めると、百面相役者巧者のオンパレード、キャスティングは贅沢そのものです。これを見るだけでも価値有りと言えるでしょう。
 アメリカでは社会現象になった前作、今作も大ヒット中……ながら、日本ではさほどでもない。原作といい、映画といい、殆どCMが無く、配給元に全くやる気無し。邦高洋低で、アニメ/コミック原作以外は洋画が当たらない(スーパーマンすらコケた)現状では仕方ないかもしれないが……それと、気になるのが、今回もチケットを買いに行った時「字幕ですが よろしいんでしょうか?」と念押しされた事で、「なんでワザワザ映画館で吹き替えなんか観んとあかんのんじゃい!」と……まぁ、もう少し優しく表現いたしましたが、洋画を見る観客の質的変化が有るんでしょうかねぇ。以前、ソニーの映画担当重役をボロクソにこき下ろしました(吹き替えをメインにしていくとほざきおった)が、現実からすれば商売としては仕方ない選択なんでしょうか。 本年最後の作品としては少々不満でありますが、映画全体の出来からすれば、まぁ、オススメと言えるでしょう、ただし、こいつばかりは絶対に前作を見てからお出かけ下さい。本作が初見ってのは、たとえジェニファー・ローレンスの大ファンだとしてもおやめください。全く感情移入できませんから……あっと、老婆心より……トーホーシネマズのフードコーナーで「カツサンド」を買わない方がよろしいようで、元々 旨いカツサンドなんか期待していませんでしたが…予想を遥かに凌駕しておりました。あの不味さは犯罪的です。あれならキャベツ無しのソーセージだけホットドックの方が百万倍マシであります。

 と、まぁ あんまりしまらないラストとなりましたが、本年もグダグダ映画評にお付き合いいただき、まことに感謝感激、尚且つウダウダ書評にまでお付き合い下さる皆様方、まことにありがとうございました。 年明け、今年は100本の大台に乗るかと思いながら、終わってみれば、劇場公開77本(洋画46本/邦画31本)試写・資料ディスク合わせても82作品にて終了、これは 有力作品とのバッティングを避けた為、それが裏目に出て、逆に空白の週が案外多かったのと、本年後半 私の都合上週末1本しか見に行けなかった為であります。
来年はさて何本をグダグダ書けますやら……です。
 今年のベストはなんといってもオスカー候補作品の粒揃いでした。中でも“世界に一つのプレイブック”は もう奇跡でした。“リンカーン”のD・D・リュイスの演技も奇跡、アカデミー授賞式でのスピーチも忘れられません。“ザ・マスター”の無冠が信じられません、クエンティン・タランティーノにくれてやる賞があるならこっちが優先でっしゃろ(タランティーノファンの皆様、来年も喧嘩しましょうね)一々名前は挙げませんが、今年も「こんな映画は見る価値無し」作品が数本有りましたが、去年に比べると少なかったですね。代表は“プラチナデータ”と“47RONIN”。逆にベストは…これが沢山ありまして、アカデミー以降で無理やり選ぶなら“グラビティ”と“永遠の0”でしょうか。今年の特徴は賛否両論の作品が多かった事、“風立ちぬ”もそんな一本でしたが、その文句が「主人公がタバコ吸いすぎ」なんてなアホらしい物が大半、「物語に起伏が無い」なんてのがマトモに見える。これには笑うのを通り抜けて怒りすら覚えました。

 さて、いつまで言ってもきりがおまへん、ここらでやめます。毎年言ってますが、本メールは あくまでも私の「押しつけ」、ご覧になったあなたの「泣いた、笑った、面白かった」があなたのベスト作品です。当メールへの異論反論大歓迎!ただ、たまにくる匿名希望「アホ/ボケ/最低」メールには、この際 その昔、コンサート会場に来た お客様に放った某秀勝の「アホ言う者がアホじゃ!ボケェ!」をそのまんまお返しいたしす。  来年の楽しみは数々ありますが、その中で一番は“もうアイアンマンやんぺ”発言のロバート・ダウニー・ジュニア君、シリーズ4が大爆発ヒット、ギャラが大アップしても初志貫徹出来るのか? アッハァ 嫌みがキツい? それでは来年も宜しくお付き合いのほど、お願いいたします。皆様、良いお年をお迎えになって下さい。私、今から賀状書き、目標200枚……昨日まで書き上げ30枚……嗚呼

 来年、我が志忠屋はしばらく夕方から深夜型の店に衣替え(木村チーフのローマ風ピッツア登場)とあって、そのご案内も兼ねてますから投げ出す訳には参りません、必死こきます。今夜は眠れません……やろなぁ。しからば、一段とお寒くなっております、せっかくの正月、“風邪で寝正月”にならないようご自愛下さいませ。 ほな!ほんまにここらで“サイナラ、サイナラ、サイナラ”


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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評『永遠の0』

2013-12-23 08:28:17 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評『永遠の0』

これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が身内に流している映画評ですが、もったいないので転載したものです。


見て下さい……それ以外、一言もありません。

 見る方一人一人、いろんな感慨が有ると思います。私の押し付けは、映画をご覧に成った後でお読み下さい。
 さて、連休初日の土曜日とあって映画館は満員。年齢層はバラバラです。岡田君ファンの若いカップルからご老人まで、ざっと見てどの層が突出しているとは見えません。ちなみに、私の隣は初老の紳士と若い女性、親子には見えない……どういう関係なんでしょうね(余計な詮索)。映画が終了、エンドクレジットになっても殆ど席を立つ人はいませんでした。桑田の歌う“蛍”を聴きながら、それぞれ余韻をかみしめておられるのがわかります。
 単なる反戦映画ではありません。泣かせるだけの作品でも、日本人にしか解らない作品……そんな、ちっぽけな映画ではありません。百田尚樹の原作は、これから読むのですが「海賊と呼ばれた男」の経験からすると、この映画の背骨には原作がしっかり入っているのだと思います。

 原作者/百田尚樹と監督/山崎貴(三丁目の夕日)を改めて見直しました。“永遠の0”は、これまで何回もドラマ化のオファーがあったそうですが、脚本に納得がいかず断っていたそうであります。原作を読んで、何が作者を納得させたのかを考えるのも楽しみ。
 役者の演技はひとまず、本作の片一方の主役は素晴らしいCGの仕上がりでした。蒼穹に舞い上がる零戦の美しさ、繰り広げられる空中戦のリアル。 数量、性能共に優勢に成っていく米軍機を相手に最後まで互角以上の戦いをする事ができたのは、その軽量を生かした(防御が薄いという事です)航続距離と機動性です。 照準器に捉えられても、直進しているように見えて微妙に進路をずらす「滑り」というテクニックを、はっきり映像で確認できました。零の20㎜砲に比べて、圧倒的に直進性能に優れる機銃相手に「零マジック」と恐れられた操縦方法で……いやいや、そんなオタク話はどうでもよろしいでんな。
 
 さあて、漸く俳優さんの演技。CMは百田/岡田の二人で各局を走り回っていましたが、その時必ず百田氏が口を極めて褒めていたのが岡田准一の笑顔。作中、主人公/宮部久蔵が印象的な笑顔を浮かべるのですが、その笑顔の意味は総て違います。そのままに喜びであったり、裏に悲しみや寂しさ、諦観、覚悟が隠されている笑顔。岡田准一見事であります、きっちり演じ分けていました。彼の笑顔を見るだけで満足できます。演じる者として、当然出来て当たり前の演技ではありますが、岡田が物語を完全に理解し、宮部久蔵に深く入り込んでいる結果であります。精神主義の日本軍の中にあって、愛する者のために 徹底的に“生き残り”にこだわる。「臆病者」「面汚し」の汚名必至ながら、信念が揺らがない、この主人公の強さと しかし、戦況悪化の圧力の下 徐々に蝕まれて行く……この存在の悲しみが余すところなく演じられる。これは脚本と演出の構成の勝利でもあるでしょうが、まず岡田を賞賛したいと思います。

 物語は宮部の妻/松乃の葬儀が行われている葬儀場から始まる。泣き崩れる祖父(夏八木勲さん/本作が遺作になってしまいました)が、実の祖父ではなくお婆ちゃんの再婚相手だと知れる。孫二人が実の祖父を知ろうと かつての戦友を訪ね、映像は過去と現在を往復する。こういうテーマではオーソドックスな作りになっています。
 しかし、オーソドックスながら本作を非凡な作品に仕上げているのは原作の力と岡田以下共演者総ての人々のリアルな世界観です。 殊に橋爪功の死を目前にした老人、田中民(ミンの字は正しくはサンズイが付きます)演じるヤクザのの親分が出色。孫達はインタビューの初めには祖父を卑怯者と否定する話しか聞けない、橋爪功の井崎老人から初めて祖父の実情を知らされる、橋爪の淡々とした語りが胸にしみる。逆に田中の景浦は個人では抱えきれないほどの怒り悲しみを持ち続けている。田中の背後にそれが炎のごとくに立ち上がってみえる。そして、意外な所に最大の理解者がいた。
 老優の素晴らしさもさることながら各人の現役時代を演じた濱田岳/新井浩文/染谷将太らの熱演も光る。戦争の時代を手探りながらもリアルに演じた。当時、理解しきれなかった宮部の生き方が、自らの人生の中で深く理解されていった経緯が鮮明に見える。
 宮部は、ある想いから特攻に出て還らぬ人となる。必死で帰りたかった妻と娘を残して……残された二人が、戦後のある時期以降 幸せな人生を送れたであろう事が、そしてそれは間違いなく宮部の生き方が生んだ奇跡であることが、この物語を救っている。
 最後に、田中民さんの想いが本作の総てを言い表していますのでお借りします。“耐えて守るべき個人の正義/他人の可能性をどこまでも信じること/死のギリギリまで生命の輝きを見続けること……” 素晴らしい映画でした。


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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ読書感想『岳飛伝・7』

2013-12-20 07:47:06 | 読書感想
タキさんの押しつけ読書感想
『岳飛伝・7』北方健三


これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に流している読書感想ですが、もったいないので転載したものです。


 読み終えてビックリ! このシリーズで初めて戦闘の無い一冊でした。

 生きるための戦いはそこら中で繰り広げられていますが「戦争」が無いと言う事です。南宋を逃れた岳飛は、大理から南下、アンコール朝カンボジア北方(現ラオスかベトナム)に拠点を構え、少しずつ旧岳家軍の部下達が集まり始める。秦容がいるのはさらに西で、バガン朝(現ミャンマー……ちゅかあたしゃビルマと言いたい) 岳飛は大理から南下したのでええんですが、陰ながらにサポートしている梁山泊はメコン川をさかのぼる、現プノンペン辺りに町は無かったんですかねぇ。アンコールワット建設開始が1125年から、歴史上岳飛暗殺が1141年ですから……まぁ、インドシナの歴史は解らん事だらけですから ええとしますか。
 北に目を向けると、西遼に通商路線が完全に通り、ゴールやホラムズシャー(現アフガニスタン/イラン/イラク辺り)からの隊商もやって来る。そこより北の話はまだなく、モンゴル隆盛までまだ60年位の時間は
ある。金国境で小競り合いはあるようだがまだまだ金軍の方が圧倒的に強い。次巻辺りから海上の通商路を巡って南宋対梁山泊の戦いに入りそうです。
 南宋では韓世忠が精強な海軍を作っていますが、梁山泊の方が二歩も三歩も先にいます。南宋/秦檜は煮え湯を飲まされるんだと思います。そこで次に打つ手は金との同盟、梁山泊との陸戦か、南下して大越(ベトナム)との戦争か…そうなると岳飛の登場!となるが、あまりに史実から離れたストーリーにも出来ないだろうから、はてさて。

 大文豪のお手並み拝見。日本では東北の秀衡が本格的に船員の養成に乗り出しているが、頼朝の挙兵にはまだ40年程の時間がある、この先日本はどう絡んでくるのか(毎回おんなじ事を書いとりますなぁ)



『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』        

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高校ライトノベル・ライトノベルセレクト・142『12月8日』

2013-12-18 20:14:12 | ライトノベルセレクト
ライトノベルセレクト・142
『12月8日』



「12月8日はAKBの第一回公演の日だって言うんだよ」

 お父さんが、また言った。これで四回目だ。
 最初は、クイズ番組で、オバカタレントが答えられなかった時に、あたしが思わず答えた時。

 二度目は、職場の忘年会で。なんでお父さんの忘年会の様子を知っているかというと、家に仕事仲間の鈴木さんが電話してきたから。
「あ、香音(かのん)ちゃん。AKBの第一回公演はよかったね。そうだよね、今の子は。無理ないわよ。でも、忘年会で言わなくてもね、おもしろかったけど。あ、お父さんいるかな。携帯ずっと電源落ちてるみたいで」
 お父さんは、前世紀末のアイドルのコンサートから帰ってきても、マナーモードにしているのに気づいていなかった。

 三度目は、朝、新聞を取りに行って、挨拶のついでに向かいのオジサンに。
「そんな七十年も昔の戦争が始まった日なんて知らないよね。AKBの第一回公演知らない方がハズイよね」
 娘の麗花ちゃんが、通学電車の中でフォローしてくれた。

 で、四度目が今の。

 今日は、ひいばあちゃんのご機嫌伺いに、介護付きマンション「つどい」に来ている。で、開口一番お父さんが言ったわけ。
「ほほ、いいじゃない準ちゃん。今の子には今の歴史があるのよ」
「しかし、太平洋戦争の始まった日ぐらい常識だよ」
「じゃ、準ちゃん。5月15日は、なんの日?」
「ボクの誕生日……他になにかあったっけ?」
「上野戦争があった日」
「上野戦争」
「そう、彰義隊がお江戸の上野の山で、官軍に負けた日」
「そうなんだ……」
「まあ、準ちゃんが生まれる百年も前のことだから仕方ないけどね」
 さすが、ひいばあちゃんの貫禄。
「おときさんのお孫さんと、そのお嬢さんですか?」
「ええ、親父が順一、この子が香る音と書いて香音なんです。こちらあたしのお友だちの榊原虎夫さん」
 榊原さんは、ブルーのギンガムチェックのシャツにオーバーオールというイデタチ。なかなかのナイスガイ。
「しかし、ひ孫さんまで来られるとはうらやましい。それに香音さんは、実にキュートでいかしている。いい娘さんを持たれましたな、順一さん」
「いや、まだまだ子どもです」
「榊原さんは、お花のお世話でもなさってるんですか?」
 ポケットに無造作に突っこんだ軍手で、そうふんだ。
「あ、この軍手でばれたかな?」
「はい」
「あそこに花が見えますでしょ……」

 榊原さんは、ごく自然に、マンションの庭に案内してくれた。

「木にムシロが巻いてあるのは、どうしてですか?」
「ああ、こも巻きって言ってね。ああしとくと冬の間に虫が、あの中に集まって越冬するんですよ。それを春になったら外して焼く。害虫対策」
「そうなんだ」
「今は、クリスマスに合わせてポインセチアの世話です。ちょうど時分に鮮やかになるようにね」
 満足げに花たちを見る榊原さんは、入居者ではなく、管理人のオジサンに見えてしまう。
「失礼ですけど、おいくつなんですか?」
「ハハ、恥ずかしながら九十です。なかなかお迎えが来なくて、こんなことをやっております」
「昔は、なにをやっておられたんですか?」
「刑務官です」
「昔からですか?」
「その前は……職業軍人でした」
 ポツリというと、ポインセチアの葉っぱにハサミを入れた。より鮮やかなものにするために余分な葉っぱを切っているんだろうと見当がついた。あたしは、本物の元軍人さんを見るのは初めてだった。それを正直に言うと、少しはにかんで言われた。
「戦争で、軍隊は無くなったと思われていますが……」
 そう言いかけて、また葉っぱにハサミ。
「近衛師団の一部が残りましてね」
「コノエシダン?」
「英語で、the Imperial Guardと言います。イギリスでバッキンガム宮殿にいますでしょ。赤い詰め襟に大きなクマの毛皮の帽子」
「ああ、去年旅行に行ったとき見ました……ほら、これ!」
 あたしは、スマホのシャメを見せた。
「ハハ、衛兵の横にね……」
「ビクとも動かないんですよ」
「内心は、可愛い女の子だと思ってますよ。兵隊も男ですからね」
「榊原さんも、こんなのだったんですか?」
「日本は、もっと地味でしたよ」
 また、ポインセチアがきれいになっていく。

「戦後、近衛師団の一部が禁衛府と名前を変えて一年近く残りましてね。それをやっていました」
「へえ、軍隊が残っていたんですか?」
「装備は軍隊じゃありませんがね、組織や……志は残ったというところでしょかね。で、その後刑務官になったというわけです」
「あの、自衛隊とかは?」
「自衛隊ができるのは、もっと後です。警察官になるやつもいましたが……当時の警察官は、よく殺されましたからね。せっかく拾った命。塀の内側だと安全だと……そう思いましてね。ガタイばかりの根性無しです」
「そんなこと……」

 そのとき、一人のイケメンが庭にやってきた。
「トラサン、こんなとこに……あ、こんにちは」
「こんにちは。職員の方ですか?」
「いやいや、ボクのひ孫です。健一といいます」
「あ、よろしく」
「斉藤香音です」
「おときさんの、ひ孫さんだよ」
「ああ、あの品のいいお婆ちゃんの……そういや、なんとなく似てるなあ」
「そうですか? ひい婆ちゃん、若い頃可愛かったんです!」
「あったりい! でも偉いな、ひい婆ちゃん見に来るなんて」
「あなただって」
「おれ……ボクは、その……」
「セガレやジジイから小遣いもらって、代理ですよ。ほれ、このポインセチア、好子に」
「おお、婆ちゃんの好みに仕上がってる。斉藤さん、初めて見ますよね、ここで?」
「あたし、代理運転」
「代理運転……お父さん、酒でも飲んでいらっしゃるの?」
「いいえ、違反が積み重なって、免停なんです。一キロ百円」
「ハハ、これはしっかりしている」

 帰りに、あたしもポインセチアを一鉢もらった。

「ありがとうございます。またね、おとき婆ちゃん!」
「準ちゃん、太平洋戦争じゃなくて、大東亜戦争だからね」
「それから、香音さん。12月8日は健一の誕生日でもあります」
「そうなんだ、ちょっと遅いけど、誕生日おめでとう!」
「ありがとう、たまには来ようね、ここにも」
「うん」

 今度会えたら、メアドの交換しようと思った。

 12月8日に新しい意味が付け加わちゃった……。


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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評『ゼロ・グラヴィティ』

2013-12-15 07:08:05 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評
『ゼロ・グラヴィティ』


これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に流している映画評ですが、もったいないので転載したものです。


こら、凄ぇ映画なんですが、まず文句を一つ“ゼロ・グラヴィティ”ってのは邦題です。

 原題は“GRAVITY”重力って意味です。それが“0”だから「無重力」っちゅうのが邦題、しかし 見終えての感覚からすれば原題のグラヴィティ=重力ってのがピッタリ。これが日本語タイトルならわからんでもないが、英語タイトルでなんでわざわざ“ゼロ”を付けたのやら……責任者出てこんかい!〓

 さて、気が収まったので後は褒め称えるのみ。映画には、記念碑的作品がたまにあらわれます。本作もまちがいなくそういう一本で、“グラヴィティ”以前と以後という風に表現されるでしょう。
 スペースSFが、かつて“2001年宇宙の旅”の前と後に分けられたように、後には“STAR WARS”の前と後に分けられたように、必ず“グラヴィティ”の前と後に分けられる表現になります。それは、宇宙空間を描くテクニックにもありますが、本作が単なるSFにとどまらず、人間存在の深い部分を描き出している事にもあ
ります。
 某監督の“ツリー オブ ライフ”なんてな一人よがりな作品が有りましたが、基本 本作は同じテーマです。ところが、某ツリーは眠気を耐えるのに必死にならなければ見通せなかったのに比べ、本作は全編ハラハラドキドキ、眠気? それって何? いや、じつに恐ろしい体験をサンドラ・ブロックと共にします、眠っているなど……何言うてまんねん。“エイリアン”を始めて見た恐怖にも似ていす。  本作、“2001年宇宙の旅”へのリスペクトに満ち溢れています。“2001年~”公開時、あまりの難解さに賛否両論、もしあの時本作が有ったならば「なるほどそうやったんか」とみんなが納得しただろうと思います。他には“エイリアン”のシガニー・ウィーバーのオマージュ、そしてリアルタイムムービーとしての挑戦……本作、信じられない事に91分の映画、宇宙空間で作業中 デブリ(宇宙ゴミ)に襲われ逃げる間もなく大惨事に巻き込まれる。
 ロシアが不用になった衛星を爆破したため発生したデブリが他の衛星をも巻き込んで予想以上のデブリの集団を産んでしまった。なんで“ロシア”なん?中国って言うたらんかい!実際、一番最近 衛星をミサイルで破壊したのは中国やんかいさ。主人公が最後に目指すのが中国の宇宙ステーション(現実にはそんな物は存在しない)であるから、皮肉にもなるとおもうんやけどね……まぁそらよろしいわいな。サンドラ・ブロック演じる主人公は、何の命綱も持たず宇宙空間に投げ出される、絶体絶命! これが怖い!ほんまに怖い。そこから救われ、しかし運命は二転三転、更なる窮地に放り込まれる。生還をあきらめるのも一度二度じゃない、それをなんとか乗り越えて行く。それがリアルタイムで描かれていく。“12人の怒れる男たち”を見る感動がある。
 “2001年~”“ツリー オブ ライフ”と同じく、人間の生と死 そして再生の物語、しかし 本作の90分の方が見る者の胸にガンガン迫って来る!映画の醍醐味ってのはまさにこれであります。  タイトルロールにNASA VOISE エド・ハリスの文字、エドは“アポロ13”でケープ・ケネディの地上管制官のボス/ジーンを演っていた人(あたしゃ大ファンです)こんなキャスティングもSF映画ファンにはたまらない。それと、本作、基本的に登場人物はS・ブロックとG・クルーニーの二人だけ。サンドラが本作でオスカー有力と言われる位なのでちょと置いといて、G・クルーニー……格好良すぎ! 男前! クルーニー演じるキャラクターは殆どの男が「こうありたい」と羨望の目で見る役柄、本作の飛行士マットは、そらもう究極であります。この時点でそんな選択を……しかも事も無げに出来る男……いやもう痺れた! 男ならほんまにこうありたい。
 まだまだ有ります。カットの撮り方を言うと、リアルタイム作品の殆どがそうであるように本作もワンカットが長い。しかも、ロングで撮っているシーンが人物に近寄っていくと いつの間にか自然に人物のヘルメットを通した画像になっている……なんでも無さそうで この撮影は凄い。
 テレビのCMで、宇宙船内でサンドラの涙が無重力で浮かび、その涙にサンドラが写っているのが凄いとか言っているが、こんなテクニックは前からある。しかし、使われているシーンが「ここしかないやろ」と思えるシーンなので効果抜群でした。
 これ以上は書きすぎになります。もっと書きたいけど、もう止め時。 後はご自分の目と体で感じて下さい。私、サンドラと一緒に宇宙を漂い、彼女があきらめた所では一緒に覚悟し、彼女の希望は私の希望で有りました。そして、ラスト……本作の題名は“ゼロ・グラヴィティ”ではなく“GRAVITY”でしか有り得ません。パンフレットにも“ゼロ・グラヴィティ”ではなく“GRAVITY”と有ります。なんで? ああ、これは文句じゃないんですが……う~ん、作品中に入る効果音楽が煩く感じる時が有ったかなぁ。ご存知のように宇宙空間は無音です。ここは音楽が無い方がええんとちゃうんか?と思うシーンが
幾つか有りました……まぁ、趣味の問題でありますら。

 兎に角、見て下さいませ、絶対損はありません。


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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評『ダン・ブラウン:インフェルノ』

2013-12-14 07:24:42 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評
『ダン・ブラウン:インフェルノ』


 これは悪友の映画評論家・滝川浩一が身内に流している映画評ですが、もったいないので転載したものです。


 インフェルノ……地獄って意味ですね。

 ダン・ブラウンのラングドン教授シリーズ第4弾……と言って分からなければ、トム・ハンクスの映画“ダ・ヴィンチ・コード”“天使と悪魔”の原作者です。本作との間には“ロスト・シンボル”という小説がありますが、どうやら本“インフェルノ”の方が先に映画化されそうです。
 ダン・ブラウンの小説は非常に多層化された構造を持ち、ミステリー小説の中でも特異な位置をしめています。初期二作はそうでもありませんが“天使と悪魔”以降の4作には「キリスト教」が大きな意味を持っています。

 ブラウンファンには当たり前ですが、彼の小説は冒頭から謎の連続、半分読んでもなかなかその謎は解けません。所が今回、ラングドンは頭を撃たれ記憶喪失になっている。物語の中で謎に立ち向かう主人公が全く自分の立場すら解らないという設定、さらに命を狙われじっくり考えるもへったくれも、兎に角逃げ回る。その間に少しずつ得たデータから謎の核心に迫って行く。見えてきた謎はシリーズ中最悪のシナリオ。
 さて、ダン・ブラウンファンにはこれで充分、読まずにはいられない。ダン・ブラウンの特徴のもう一つはその舞台に行って見たくなるという事。
 今回はフィレンツェに始まってヴゥネツィアに移り更に東へ……ほんの二日間か三日間のお話ですが、例によって、その間に提示される都市・歴史・美術の情報は膨大。今作のもう一つの柱はダンテ・アルギェリの“神曲”、このあまりにも有名でありながら、題名は知っていても読んだ事のない一巻の書物が謎の中心をなします。
 誰が敵か味方か解らないのはミステリーの常道ですが、本作では物語の中で敵味方のベクトルがはっきり180度ひっくり返ります。それで正体を表す者もいますが、このことによって更に立場が解らなくなる者もいます。全く見事なミステリー構造で最後まで何を信じるべきか解りません。 もう、これは読むしかありません。扱っている問題は これまでで最恐怖の問題……絵空事ではないだけに読んでいて怖かったです。
 一読後、“ロスト・シンボル”と同じく問題が残るのですが、これは読者たる我々に考えろって事だと思います。

 さて、これ以上は書けません、後は皆さん読んで判断して下さい。単なるフィクションとして読んでも決して裏切られません。面白いのは180%保証いたします。文庫を待っている場合ではありません!!


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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評『47RONIN』

2013-12-08 07:24:23 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評
『47RONIN』


 これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が、個人的に身内に流している映画評ですが、もったいないので転載したものです。



さぁて、こいつをどう評価するか、結構ややこしい問題ありです。

 一切何も考えず、ファンタジーなんだと、世界観はそのままに受け入れるんだとすれば、まぁ映像は良く出来ていたと評価出来る。
 しかし、本作が赤穂浪士四十七士の討ち入りの映画だとするなら、言いたい事は山積み、一々書き連ねたら明日の朝までかかってしまう。だから、これは考えないとして、とりあえずインスパイアされたけど、討ち入りそのものを再現するものではないとして見る。
 にしても、四十七士を知らない外国人がこれを見て、誰に思い入れてどこに感動するのか?
 日本の江戸時代に一体どれだけの外国人が知識を持っているのか。ハリウッドは昔から結構無責任に白人以外の歴史物語を英語映画にしてきました。ローマ帝の興亡なんてな同じ白人だからええとしてたら、オードリー/ホセで作った戦争と平和はイデオロギー以前に「こんな物はトルストイ文学の映像化ではない」と攻撃されたわけだし、アンソニー・クインで撮った「フン族の王アッチラ」の物語は当時こんなものはアッチラの物語ではないと主体的に抗議する民族が存在しないながらも「いかがなものか」位の議論はあった。
 はっきり言って、日本人であれば、「忠臣蔵」の話を知悉していればしているほど、入り込みにくい映画です。
 なんもかんも忘れて、ファンタジーと見るにしても、中途半端で 誰に思い入れてどこで感動すりゃいいのか 全く不明。 ファンタジーとして見るには 半端に日本の文化や歴史観に踏み込んでいます。外国人が本作をどう見るのかは分かりませんが 日本人には……う~~むぅ 監督はCM畑の人だとか……元々の脚本に問題があったのは確かながら、MTVやCM出身監督の作品はスタイルを優先させるが為に作品の内実を蔑ろにする傾向があるようです。日本にも 歳だけくって巨匠面している大林某なんてな輩もいますからね(尾道3部作ファンの皆さんごめんなさい)
 これが純然たるファンタジーだというなら変に日本文化ファンだとか忠臣蔵にインスパイアされたとか言わないでいただきたい。日本人は困惑するだけです。日本語スーパー監修のウブカタトウさんはパンフレットにつらつら本作の意味を書いておりますが……私は納得できません。これを否定してしまうと翻案ファンタジーは成り立たないのかもしれませんがね。とにかく、どこを足がかりにして楽しめばいいのか……。
 まぁ、そんなこんな 一切別にして、菊池凛子ちゃん、気持ちよさそうに演じてました。柴崎コウは、この先ハリウッドからオファーが出るかもしれません。真田君は毎度このタイプの映画には欠かせない地歩を確実に築いています。
 ただ一人、赤西仁の大石主税は、なんで赤西なのか全く解りません。こんな使い方するなら他にもっとまともな役者はなんぼでもいてます。これは理解不能。もひとつ言うなら将軍綱吉をやってた役者は最悪でしたわ。日本人はエンタメなら割となんでも受け入れるんだと言われますが……こいつはどうなんでしょうねぇ。
 外国人にしても、ラストの四十七士全員(主税だけが大石家跡継ぎとして許される、侍ではないカイ/キアヌ・リーブスを含む内蔵助以下)の同時切腹、しかも介錯無しを、果たしていかように理解するのか。 はっきり申し上げて、映像はそれなり、ファンタジーとしてのテリングもそれなりながら、底にある設定があまりにも杜撰……だと感じました。あんまりお勧めはいたしません。



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高校ライトノベル・ショートファンタジーⅢ・神崎川物語・わたしの中に住み着いた少女

2013-12-06 08:57:25 | 小説
神崎川物語             

わたしの中に住み着いた少女
 

「え、また、あの役やるの」
 その子は、こたつの中に両手両足をつっこみ、こたつの上にアゴを載っけ、ミカンを見つめながら不足そうに言った。
 セミロングの髪が、こたつにかかり、前髪のすき間から不満そうな片目が覗いている。

 この子……この少女は、いつからか住み着いた。
 最初は気配……いや、単なるインスピレーションだと思っていた。
 わたしの作品は百五十本ほどあるが、その多くに十代の少女が登場する。
『犬のお巡りさん』の子ネコちゃんになったのが最初。
 最近は『はるか 真田山学院高校演劇部物語』のはるかになったり、『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』では、まどかになったりした。

『乃木坂学院高校演劇部』では、はるかとまどかの二役をやらせたりしたので、ご機嫌ナナメである。

 この少女の姿が見え始めたのは、『女子高生HB』の第一章を書き始めていたころであった。
「わたしはHB,シャーペンの芯じゃないよ……」
 と、最初の一行を書いて、あとが続かず、座卓で唸っているときに、こいつが現れた。
 目の前に気配を感じ、パソコンのモニターから顔をずらすと、目の前でコワイ顔をして、今のように、座卓にアゴを載っけて、わたしを観ていた。
 それから、なんの不思議もなく、わたしの中に住み着いた。

「違うよ、四十年前から、ずっと住んでいるんだよ」
 と、ホッペを膨らませる。

 わたしが、本を書いているうちは、わたしが書斎代わりにしているリビングの片隅で遊んでいる。
 わたしと違って、本が好きな子である。
 大した本というか、ムツカシイ本は読まない。赤川次郎や、氷室冴子がお気に入り、数は少ないが浅田次郎の本も読む。
「わたし、ポッポ屋が好きなんだ」
 ある日、機嫌のいいときに、事のついでのようにそう言った。
「あ、そうなんや……」
 わたしの気のない返事をとがめるでもなく。わたしの好きなコーヒー牛乳を二つ冷蔵庫から持ってきて、一つをわたしの前に置き、もう一つは、自分で飲みながら、佐藤愛子が兄であるサトウハチロウの悪口を書いたエッセーを読んでいた。

「『妹』書き直してみる気ない?」
 と、振ってきた。

『妹』はわたしが三十九年前に書いた戯曲で、十数回の上演実績がある。
 しかし、十年ほど前に、北陸の劇団で演られて以来、上演はおろか、わたしの記憶の中でも引き出しにしまったものになっている。
「あれなあ……三億円事件がでてくるから、かなり手え加えんとなあ」
 気のない返事をして、パソコンに目を落とすと、「テネシーワルツ」のメロディーが聞こえてきた。
「ん……」
 顔を上げると、少女が目を潤ませながら、じっとわたしの顔を見て、「テネシーワルツ」をハミングしている。
「どないしたんや?」
「このドンカン!」
 そう一言残して、少女は消えてしまった。

 何分か、そのままボーっとして……気がついた。
「テネシーワルツ」は『ポッポ屋』で、出てくる曲である。
 主人公の乙松が、亡くなった妻や、赤ん坊のうちに死なせた娘ユッコを思い出すときに出てくる曲である。

「そうやったんか……」
ドンカンなわたしは、やっと気づいた。
 その少女は、わたしの……妹であった。


 わたしは、三つ年上の姉と二人姉弟である……戸籍上は。
 姉の上に、昭和二十四年生まれの兄がいた。月足らずで生まれ、この世に三十分しかいなかった。当時の医療技術では、育たない未熟児であった。取り上げた産婆さんは、父にこう言った。
「死産やいうことにしとくさかいにね」
 たとえ、三十分でも生きていれば出生届をださねばならず、同時に死亡届も出さねばならない。
 つまり、葬式を出さねばならない。当時臨時工であった、貧しい父にそんな余裕はなかった。だから産婆さんは気を利かして「死産」としたのである。
 初めての子、それも待ちわびていた男の子。父と母の落胆は大きかった。 
 親切な、アパートの人たちが、ささやかな葬儀をやってくれた。
 ミカン箱の棺にオクルミにくるまれ、ほ乳瓶一本と、ささやかな花々を入れてもらい、子犬のような大きさの兄はリヤカーの霊柩車にのせられ神崎川の河川敷に葬られた。父は目印に子供の頭ほどの石をおいて墓標とした。
 しかし、そのささやかな墓は墓標ごと、その年のジェーン台風にさらわれてしまった。

 まだ、二十四歳でしかなかった、父と母は落胆し、このことが貧しい夫婦の一生の負い目となった。

 明くる年に、姉が仮死状態で生まれた。産婆さんの懸命の蘇生措置でやっと息をとりもどした。父と母は、初めての娘に「三枝子」という、パッとしないが、精一杯の想いをこめて、めでたい名前をつけた。「三枝の礼」からとった名前である。
 その三年後にわたしが生まれた。姉弟の中でただ一人まともに生まれた子であった。名前を「睦夫」とつけた。愛称は「むっちゃん」で、こう呼ばれるのは女の子が多く、子供のころは嫌だった。大学にいって分かった。「睦夫」の「睦」は、さるやんごとなき方の名前から一字をとっている。しかし画数が多いので、ペンネームは「むつお」としている。

 わたしは、嫌いなことはしない子であった。
 一番嫌いなことは勉強で、高校二年で留年し、三年の二学期にも担任から、「卒業があぶない」と言われた。
 普段、あまり口もきかない父が、始めて言った。
「睦夫、おまえには妹がおったんや」

 衝撃であった。わたしの三歳のときに母が身ごもった。あいかわらず臨時工であった父と母に、三人の子を育てる経済力は無かった。
 やむなく、その子は堕ろされてしまった。
 女の子であった。
 わたしは、十九歳で高校生をやっていたので、妹の姿は十六歳の高校一年生のそれであった。
「おまえが生きているのは、早産で死んだ兄ちゃんと妹のおかげやねんぞ」
 無念の思いを、父は、そう表現したのである。
 還暦までに半年を切ったわたしは、どこから見てもくたびれたオッサンであるが、妹は、いつまでたっても十六歳の少女のままである。
 可憐であると感じるよりも、いつまでも、わたしが衝撃を受けた時の姿であることが、わたしには重荷である。

 わたしは、母のお腹を隔てて、三ヶ月の間、妹といっしょにいた。
「生まれたら、あれもしたい、これもしたい」
 という想いがあっただろうと、不甲斐ない兄は思う。
 そして、自分が堕ろされると決まったとき、妹は、わたしに背負いきれないほどの想いを託していった。

 わたしは、男の子のくせに針仕事が好きで、劇団をもっていたころ、たいていの衣装は自分で作った。オンチなわりには歌が好きである。物心ついて最初に読んだ本は『オズの魔法使い』『不思議の国のアリス』であった。
 ママゴトも好きな変な男の子であった。高校に入って入部したクラブは、男子が一人もいない演劇部であった。


 また気配がするので、パソコンのモニター越しに覗いてみると、こたつにアゴを載っけて妹が言った
「今度のはるかは、ポニーテールでいくわね」
 妹の名前は、聞かずとも分かっていた。

 栞(しおり)という。

 わたしの人生のページに「ここ忘れるべからず」と挟まれた栞である。

「今度は、ひとのことじゃなくって、栞のことも書いてね」
 そう、ナレナレシく言う。こいつには、いっぱい借りがある。
「はいはい、書かせてもらいます」
「はいの返事は一回だけ!」
 で、とりあえず、この短編を書いている。
 そのあいだ、妹はミカンの皮を剥いている。
「兄ちゃんも、わたしもビタミン不足だから」
「そう……かな」
「うん、そうだよ」
「栞は、ビタミンの何が不足してんねん?」
「このドンカン」
「なんやねん?」
「ビタミンIにきまってるじゃん」

 Iが愛のカケコトバであることに気づいたころには、栞はパソコンのモニターの中で、まどかを演じておりました。

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高校ライトノベル・あすかのマンダラ池奮戦記・7『あすか賢くなる!』

2013-12-04 11:31:52 | 小説
あすかのマンダラ池奮戦記・7
『あすか賢くなる!』
         



「で、名前は? 依代をしながら意識が醒めているなんて、ただ者じゃないわ」

 意地悪そうな笑みを浮かべて、フチスミ……いや依代を見つめるイケスミであった……。

「桔梗、天児桔梗(あまがつききょう)」
「天児……!」
「アマ、アマガツ……?」
「天国の天に鹿児島の児と書くんだ。伴部村の神社の子だね?」
「社は二十年前の台風で倒れて、それっきりだけど、この子のお父さんが、映画のセットみたいな代用品を建てて細々とやっていた。でも……そのお父さんの神主さんも、今度の地震で……」
「他に家族は……?」
「天涯孤独……一人ぼっちって意味さ」
「どうして、イケスミさんにわかるの?」
「その桔梗って子、身を投げにきたんだね、フチスミさんの花ケ淵に……」
「よくわかったわね……二人だけの秘密だったのに」
「イケスミだよあたしは。意識が起きてさえいりゃあ、なんだってお見通し。依代になりながら起きているなんて、天児の子とは言え、本当は強くて賢い子なんだね」
「……繊細で賢い子。だから、新しい町や学校にもなじまず、死のうと思った」
「あの……繊細で賢い子だと、どうして、なじめずに死のうと思っちゃったりするわけ?」
「だって、あんたはなじんでるでしょ、町にも学校にも?」
「うん、あたしは バカでガサツで弱虫なわりにお調子者で……」
「でしょ。万代池が無くなるのに死のうなんて思わないしさ……」
「ちょ、ちょっと!」
「ごめん、ちょっとひがんでみただけ……」
「桔梗は、このあたりでただ一人わたしの依代になれる素質を持った子だった」
「ソフトとハードの関係だね。あたしとイカスミさんみたいに」
「イケスミだっつーの」
「その桔梗が、廃村の二日後、たった一人でわたしのところへやってきた。これは運命だと思った。この子もね……二人でそう感じた時、わたしは溺れているこの子にのり移っていた……その時……」
「その時?」
「かすかにオオガミさまの声が聞こえたような気がした……」
「はるか出雲から、オオガミさまの声が……」
「見とどけよ……とおっしゃった」
「何を見とどけよと?」
「おもどりになるまでのこと、それしかないわ」
「でも、もう十一月も末だよ」
「どういう意味だ?」
「……もう帰ってこないんじゃ……だって何もかも水の中に沈んでしまって、変な不良の神さまたちもここをねらってるみたいだし……」

 バサバサっと鳥たちが怯えて飛び去ったあと、ドドーンと彼方で崩れる音。怯えるあすか。

「神さまは嘘は言わない」
「でも、もどってくるとは言ってないんでしょ。出雲に行ってくるとだけ、そしてかすかに、見とどけよと、そう言っただけでしょ?」
「神無月を過ぎて、神々がもどられなかったことなどない!」
「だって、まだもどってこないじゃないか!」
「それは……」
 答えに窮するイケスミ。
「先生だって、トイレにたったきり職員会議にもどらない人がいる。生徒の大事な進路を決める職員会議にだよ!」
「学校の教師ごときと神さまをいっしょにするな! 神さまを信じろ!」
「だって、イカスミさんだって、マンダラ池を見捨てたじゃないか、二度ともどってきやしないんじゃないか!」
「勝手なことを申すな!!」

 両手をつかって気をとばすイケスミ、数メートルふっとび、地面に体を打ちつけられるあすか。

「……イカスミ!」
「あたしの名はイケスミだ、二度とまちがえるな」
「この子は恐ろしいんだ、いろんなことが……もうもどしてやった方がいい。そんな顔してると禍つ神になってしまうわよ」
「……そうだ、そうだったな。ここまで連れてくるだけの約束を、ついひっぱり過ぎたな。すまんあすか……ほら、約束の成績票」
「あ、ありがとう……!?」
「どうかした?」
「オ、オール5だ……あたし、こんなには賢くないよ」
「あすかの頭も、それにあわせてよくなっているわよ」
「ほんと?」
「フチスミさん、なんか問題言ってやって」
「うーん……じゃ、微分方程式ってなーんだ?」
「未知関数の導関数を含んだ方程式。未知関数が一変数のとき、常微分方程式といい、多変数のとき偏微分方程式という……え?」
「和文英訳『日本語のおはようは、英語のグッドモーニングと同じです』くりかえそうか?」
「ううん『オハヨウ イズ ジャパニーズイクォリティー トウ ジイングリッシュグッドモーニング』……おお!?」
「古文法、推量の「ら」を用いた著名な和歌は?」
「春すぎて~夏きたるらし白妙の~衣干したり~天の香具山……万葉集巻一、持統天皇の御製。ちなみに持統天皇、名はタマノハラノヒメ、またはウノノサララ、天智天皇の第二皇女で天武天皇の皇后、草壁皇子没後即位、第四十一代の女帝。ちなみに神田うのの「うの」は、このウノノサララからきている……すっげえ!」
「な、賢くなったろう」
「ありがとう、頭の中に百万個電気がついたみたい」
「ちょっと甘すぎない?」
「同じ学校受けられる水準にはしといてやらないとな、真田ってイケメンと」
「ああ、それないしょ、ないしょ!」
「アハハハ……そうだったわね」
「え……?」
「神さまに内緒は通じないからな」
「がんばってね」
「もう……!」
「それから、その成績票、破いたり傷つけたりするなよ」
「うん!」
「元のバカにもどっちまうからな」
「元のあすかちゃんも悪くないわよ」
「もう、フチスミさんたら」
「……南東のケモノ道はまだ無事。まだ日が高いから、少し教えてあげれば一時間で轟って街につく」
「トドロキ……」
「このへんにしては大きな街だからすぐに、駅が見つかる。特急に乗れば一時間ちょっとで東京。ほれ、電車賃……バカ透かすんじゃない本物。木の葉なんかじゃないからね」
「南の方はまだ息をひそめているけど、北の禍つ神達が雑魚のように群れはじめている。その藪の中に武器が隠してある。間に合わないときは、それで始めといて。さ行こうあすか、こっちよ」
「うん、ありがとう、じゃ、イケスミさんも、どうぞ無事でね! 死んじゃやだよ……!」

 あすか、フチスミにいざなわれトドロキへの道へ、強まるアヤカシの気配……。



※このお話は、もともと戯曲です。実演の動画は下記のURLをコピーして貼り付けてユーチューブでご覧ください。

 http://youtu.be/b7_aVzYIZ7I

※戯曲は、下記のアドレスで、どうぞ。

 前半: blog.goo.ne.jp/ryonryon_001/.../2bd8f1bd52aa0113d74dd35562492d7d‎

 後半: blog.goo.ne.jp/ryonryon_001/e/5229ae2fb5774ee8842297c52079c1dd‎

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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評『攻殻機動隊ARISE2 /RED』

2013-12-02 07:14:43 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評
『攻殻機動隊ARISE2 /RED』


これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に身内に流している映画評ですが、もったいないので転載したものです。


☆攻殻機動隊ARISE2

 攻殻は予想通り、素子がフリーのコンサルタントをしながら仲間を集めるお話しであります。

 後の“人形使い”にあたる?かもと思える存在も登場しますが、あまり深くは考えない方がよさそうです。その辺は司郎ファンが勝手に盛り上がればええんでしょう。ウブカタトウさん……その辺の呼吸は判った上でストーリーを作っています。実録歴史物で名をなしたとはいえ、それ以前はSFアニメ原作で世に出た人、心にくいばかりに攻殻ファンの見たがっているストーリーを紡いでいます。
 来年1年かけて、後2作作られるわけですが……本来、勿体ぶりやがってと怒りたいところながら、これだけみごとに世界を構築されると文句の付けようがありません。例によって映画を見た人間に限ってブルーレイディスク販売(一判には12月25日発売)しとります。あざとい商売とは思いつつ乗らざる得ないのがファン心理……私? そんなもん、きっちり購入いたしました。映画館は満席、とはいえ攻殻機動隊ファン以外にはあんまり意味なし、解らん人には全く解らん世界であります。

☆RED2

 前作以上に皆さん楽しそうにやってました。ブルース・ウィルス/ジョン・マルコビッチ/ヘレン・ミレンの3人はもとより、ブルースの彼女役メアリー・ルイス・パーカーも大暴れ、本作で一番笑わしてくれるのは彼女です。主役の中で一番気持ち良さげにやっているのがヘレン・ミレン、オバハンになったなぁと思いつつ、やっぱり美人はキャサリン・ゼタ・ジョーンズ。女性の時代ですねぇ、男の役者より女性キャストの弾けっぷりが目立ちます。前作比、今作の方が圧倒的に面白い、ブルース・ウィルス出演作で久方ぶりに安心して見れました。イ・ビョンホン……まぁそれなりに面白い役柄、これって“スコルピオン”のアラン・ドロンへのオマージュなんでしょうねぇ。アンソニー・ホプキンズも重要な登場人物で、本作の“リアル”は彼一人で担保していると言って過言ではありません。ブライアン・コックスのイワンも健在、なりふり構わずヘレンに崇拝の目を向ける。おっさん・おばはんに向けた、オッサン・オバハンによるコメディ、おっさんおばはんはなんも考えずにお出かけ下さいませ。


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劇団往来番外公演『ドクトル クノック』

2013-12-01 17:39:02 | 評論
劇団往来番外公演
『ドクトル クノック』



 原作:ジュウル・ロマン 翻案・脚本:さかもとがしん 演出:要冷蔵


 一心寺シアターには初めていきました。


 一階は、一心寺千佛堂で、その地下がキャパ300の劇場になっています。最寄りの地下鉄(夕陽丘四天王寺前)から、ちょっと距離があるのが難ですが、この距離は、かつての府立青少年会館と森ノ宮駅ほどで、感覚的には心地よい感じでした。

 ジュウル・ロマンはフランスの作家で、かつて国際ペンクラブの会長をやっていたぐらいの知識しかなく、この『クノック』は未見でした。日本での初演は1927年帝国劇場の演芸場で新劇協会が演ったのが初で、新劇の作品としては古典に分類されるでしょう。

 原作は未見ですが、脚本家は、舞台を昭和初期、大恐慌後の河内に移しています。従って、台詞は河内弁。高安、信貴山、柏原、弓削などの、わたしの地元の地名がバンバン出てきて、とても親近感でした。

 なんとも、人をくった話であります。

 ドクトル・クノックがパルパレェ医師に替わって、この河内にやってくるところから芝居が始まります。
 駅のホームに出迎えるパルパレェ医師夫妻。そこにやってくるクノック。クノック以外が河内弁であることを除けば、典型的な新劇の舞台です。
 ところが、このクノックは、無免許医師なのです。かつて横浜の外国航路の船が船医を募集しているのに医師として乗り込んだのが始まりです。船は体裁、あるいは船舶法により、医師が必要なので、クノックが無免許であることを承知で雇います。
 以来、子どもの頃から頭に入っている医療知識を総動員して、堂々と無免許医師を続けます。

 クノックには、マネジメントの才能があり東西屋(チンドン屋)を雇い、宣伝をやったり無料診療の日を作ったり、心理的な誘導で病人を仕立て上げ、医業の有効需要の喚起をやります。今の感覚では、とんでもないことなのですが、時代を昭和の初頭にしたこと、牧歌的な河内を舞台にしたことで、クノックはとても善人に見え。クノック先生の医業の成功の大団円が、とても落語的な面白さに満ちています。
 一心寺シアターでは、かつて桂枝雀さんなどの落語会が開かれたことを思うと、ますます落語に思えてきます。開幕前に乃木さんが出てきて、「帰りにそこの階段を上ったら忘れてしまうくらいのつもりで見てもろたら、ええんです」といいます。まことに、そのまんまのお気楽な芝居ではありました。
「芸術は場数だ! 演劇はカーニバルだ!」という往来のコンセプトが生きています。

 大阪弁、あるいは河内弁を、こんなに自然に舞台語として使えるのは、松竹新喜劇と往来ぐらいのものでしょう。

 インターミッションの道具の転換を、道具職人の法被を着たスタッフに、かけ声をかけさせ見せ物としてみせたことも、空気を弛緩させない、良い効果がありました。

 子役の使い方と、子役の上手さは、この劇団の得意技になった感があり、東西屋の親子がからむところは、そこだけで、落語の小話のようで素敵でした。

 しかし、この芝居には仕掛けがあります。

 この芝居の原題は『クノック - 医学の勝利』といいます。クノックは医療ではなく、マネジメントとして医業を成功させるのです。なんでも商売になる、してしまうという資本主義のアイロニー(皮肉、あてこすり)があります。「階段を上ったら忘れてしまう」という真逆の言葉で、かえって印象的になります。

「この芝居の中の出来事は、今の世の中に通じるモノがあります」という開演前の言葉は余計であったように感じました。新劇が、よくやる「この道は、いつか来た道」を想起させ、身構えてしまいます。カーニバルに徹したほうが良かったような気がします。

 来年は『チンチン電車と女学生』を再演されるとか、反戦と反核以外に、なにを見せていただけるか楽しみであります。


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