大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・232『いい手があります!』

2021-09-12 10:13:39 | 小説

魔法少女マヂカ・232

『いい手があります!語り手:マヂカ  

 

 

 

 ブリンダに声を掛けて、わたしと二人で長門に化けることにした。

 

「歴史に残るコスプレだね!」

「艦娘の長門じゃなくって、実物大の長門だからね(^_^;)」

「オウ、任せといてよ。独立記念日にメイフラワー号に化けたことあるから!」

 アメリカ娘らしく、力こぶを作って息巻くブリンダ。

 長門は、全長で10倍、容積では1000倍以上違うんだけど、あえて言わない。

 

 イギリスの巡洋艦にはノンコに乗ってもらう。

 ノンコに化ける力はないけど、ブリンダの魔法でイギリスの若い水兵に化けさせる。

「おお、めっちゃかっこええやおまへんか( ◠‿◠ )!」

 試しに化けさせると、身長が180センチのイケメンになって、ご機嫌のノンコ。

「言ってみて、英語で『長門発見!』て」

 霧子が焚きつける。

「オッケー『ナガト ハッケン!』 どや?」

「ええと……日本語のままなんだけど」

「言葉までは無理なようね」

「仕方ない、声は翻訳機でやろう」

 そう言うと、ブリンダはポケットからメガホン型の翻訳機を出した。

「もうちょっと小型のないの?」

「大丈夫、この時代はヘッドセットなんて無いから。ほら、ちゃんとブリティッシュネイビーのロゴが入ってるだろ」

「なるほど、でも、役目が済んだらすぐに回収してやらないと、正体バレてしまうね」

「まあ、頑張るしかないでしょ!」

 魔法を万能と考えている霧子は意気軒高で、ブリンダの真似をしてポパイのような握りこぶしを作る。

 そんな簡単なものじゃないんだけど、不安にさせてはいけない。

「あの……」

「なに、赤城さん?」

「長門お姉さんの姿を消すのは?」

「ああ、それそれ……」

「そうだな……」

 

 そうなのだ、一瞬のうちに本物の長門と偽物をすり替える。

 そのためには、イギリスの巡洋艦が偽物を視認したところでリアル長門を消さなければならない。

 人や、家ぐらいのものなら問題は無い。

 消す=テレポートさせるのは無理だ。なんせ、4万トンのデカブツだからね。

 

「マジックアイテムを使えば、短時間なら見えなくすることはできるけど……」

 今度は、パチンコ玉ぐらいのボールを出すブリンダ。

「ああ、ハイドボールね」

 しかし、ハイドボールで隠せるのは人一人分でしかない。

「戦艦一隻だと、人の頭ぐらいのハイドボールになるよ。それも、人が手で操作しなければね……」

「わたししか居ない……かな?」

 握りこぶしの人差し指を立てて、自分を差す霧子。

「うん、そうだけど。わたしとブリンダは長門に化けて、ノンコはイギリスの巡洋艦の上だし、霧子を長門に載せている余裕が無いわよ」

「そうか……」

 

「いい手があります!」

 赤城さんが顔を上げた。

 

「赤城さんが手伝ってくれるの?」

「船霊に、そんな力はありません。まして、赤城は未完成ですから、こうやってみなさんの前に出ているのが精一杯です」

「では、どうやって?」

「八月の末に大連で武術大会があったんです」

 大連は旅順港に隣接する街で、日本人も多く住んでいて、時々、そういう行事が行われている。

 しかし、その武術大会を、どうしようと言うんだろう。

「優勝者は演習中の長門に乗せてもらえます!」

「そうなの!?」

「はい、観艦式とかだと、もっと大勢の見学者を乗せるんですが、演習中は危険が伴うので、特別に一人だけ乗せます」

「よし、その武術大会に参加して、優勝すればいいんだ!」

 

 霧子が、その気になった。

 

※ 主な登場人物

  • 渡辺真智香(マヂカ)   魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 要海友里(ユリ)     魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 藤本清美(キヨミ)    魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員 
  • 野々村典子(ノンコ)   魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 安倍晴美         日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長
  • 来栖種次         陸上自衛隊特務師団司令
  • 渡辺綾香(ケルベロス)  魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
  • ブリンダ・マクギャバン  魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
  • ガーゴイル        ブリンダの使い魔

※ この章の登場人物

  • 高坂霧子       原宿にある高坂侯爵家の娘 
  • 春日         高坂家のメイド長
  • 田中         高坂家の執事長
  • 虎沢クマ       霧子お付きのメイド
  • 松本         高坂家の運転手 
  • 新畑         インバネスの男
  • 箕作健人       請願巡査

 

 

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ライトノベルベスト『ボクは友達が居ない』

2021-09-12 06:46:58 | ライトノベルベスト

イトノベルベスト

 ボクは友達がない   


     

 ボクは男ではない!

 れっきとした、波野高校二年の女子高生だよ。

 一人称がボクなので、いわゆる『ボク少女』にカテゴライズされている。ほんとは女の子らしく「あたし」とか言ってみたいんだけど、そう決められているのだから、仕方がない。ボクの小さな秘密。

「ノラ、また優子と優衣のグループが睨みあっとる!」

 生活指導部長の温水(ぬくみず)先生が額に縦皺を作ってやってきた。

「で、またボクですか……」
「すまん、おれ達の言うことは、まるっきり聞かないんでな」

 ちなみにボクは、二年になって転校してきた変わり者だ。牧瀬ノラというのがボクの名前だけど、親しみと、使い勝手の良さで、みんな「ノラ」と呼ぶ。日本人とノルウェー人のハーフということなので、これも仕方がない。

「また、イサカッテんの?」

 下足室の横でにらみ合っている二つのグループの間に入った。

「あ、ノラ。こいつら話になんないのよ!」
「話にならないのは、そっちでしょう!」
「なんだと!」
「やるっての!」
「まあまあ、あと一言言ったら手が出ちゃうよ」

 そう言いながら、間に入る。先生達は、遠巻きに見ているだけだ。

「いいのよ、今日こそは決着つけなきゃ収まらないのよ!」
「そうだよ、もう勝負するっきゃ、手がないの!」

「それは、分かる」

 そう言うと、全員がズッコケた。

「もう、溜まりに溜まった憎しみだもんね。カタ付けるしかないでしょ」
「おいおい」
「先生は黙っててください。手に負えないからボクにまかせたんでしょ?」
「ああ、でも暴力はいかんぞ」
「暴力なんか使いません。両方ともリーダーが優子と優衣。名前に『優しい』が付いてるんだから、穏やかにいきましょ。今は、お互い熱くなってるから、言いたいこと整理して、放課後視聴覚教室に来て。そこで思いっきり言い合って。ボクが整理するから」

 そう言うと、二人のリーダーは、不承不承頷いた。

 まあ、今は昼休み。放課後までには、少し落ち着くだろう。

 勝負は放課後。

 と、視線を感じた。二階の窓から亜紀がボクのことを見つめている。

「今、そっち行くから!」

 満面の笑みを浮かべて、新館の二階へ。廊下の窓辺にブスっとした亜紀が肘を突いて下の生徒達を見ている。

「優子と優衣のグループがケンカすればいいと思ってたでしょ」
「うん、あいつら、弱いと見たら、集団でイジメやら嫌がらせするんだもん。両方とも消えて無くなればいい」
「まあ、そう言わないで。あれから、嫌がらせ無いでしょ?」
「う、うん……おかげさまで」

 亜紀は、下足室のロッカーにビニテで「死ね」とか「ウザイ」とか貼りまくられ、机の中にも同じようなメモが入れられていた。

 極めつけは、体育が終わって更衣室で着替えようとしたらスカートがなくなり、便器の中から見つかったという陰湿な事件だった。

 ボクは、一目で狂言だと分かった。

 確かに亜紀は、非社交的で表情が暗く、人を見る目が何かを含んでいるようで、みんなからシカトされていた。

 原因のほとんどが自分にあることには気づかず、いろいろ自分でやっては悲劇のヒロインになっていた。

 

 ガシャン!

 で、ボクは、わざとボールを投げて、学校のガラスを割り、名乗り出て罰に早朝登校して校内清掃をすることにした。

 初日は下足室。亜紀のロッカーの近くを掃いていると、ノコノコと亜紀がやってきた。ボクの顔を見ると、サッと手にしたものを背中に隠した。

 白いビニテだということは直ぐにわかったけど「お早う」だけ言っておしまい。亜紀が上履きに履きかえているうちに、温水先生がやってきて、こう言う。

「チャチャッとやっとるか。手抜きしたら日にち増やすぞ!」
「はい、今日のとこは終わりです」

 そう言って、直ぐに亜紀とは反対の階段から二階に上がる。そして、亜紀の教室の前を通り、ノートの千切ったのを自分の机にいれようとしている亜紀に目を合わす。

「ハハ、また会っちゃったね(^_^;)」
「お、おはよう」
「変なの、さっき下足で会ったじゃん」
「あ、そうだったわね(;'∀')」

 おたついたところを後ろに回って、ノートの千切れを自然に見つける。

「ハハハ、自分でやっちゃ、だめでしょう?」

 亜紀は、顔を真っ赤にして大粒の涙を流した。カバンからビニテがはみ出していることにも気づかずに。

「これで、亜紀の秘密知っちゃったから、ボクたち、友達だね!」
「ノラ~!」

 顔をクシャクシャにして抱きついてきた。それから、亜紀は、そういうことをしなくなったし、ボクのことは友達だと思っている。

「ノラ、そこで三宅が、女の子ぶってる! 暴力事件だよ!」

 峯岸がいうので、しかたなく、ボクは渡り廊下へ行く。

「あ、今のはちがうんだ!」
「見りゃ分かるわよ。痴話ゲンカのはてでしょ。あんたたちのは夫婦ゲンカみたいなもんだもん」

 ホッペを赤くして、しばかれた千晶が照れた顔をしている。

「でも、人が見ちゃったから、あいこにしとこ。三宅君、歯を食いしばって……はい、千晶は一発かましましょう」

 千晶は、蚊も潰せないほどの可愛いビンタをくらわせる。

「ハハ、千晶、惚れた弱みだね!」
「もう、ノラは、そうやって、いつもからかうんだから!」
「そういう照れた千晶って、可愛いよな!」

 で、夫婦ゲンカは収まる。二人とも、ボクを友達と思っている。

 放課後になった。視聴覚教室の二グループのところに向かう。

「はい、双方、持ち時間は十分。相手の発言中は口出ししない。発言の順番はコイントス……はい、裏か表か!」

 で、順番を決め、言いたい放題言わせる。予備に五分とって、言い足りないところを補足させる。

「お互い様でしょ。言ったことに具体性もないし、言った、やられた時期もはっきりしない。はっきりしてんのは、もう、お互いに仲良くはやれないってこと。無理だね仲直り。でしょ?」

 互いのメンバーが頷く。

「じゃ、これからは、互いにシカトしよう。いわば冷戦だね。握手したって欺瞞だしね。それでいいね!?」

 ボクは、ムリヤリ善悪を決めない。女の子の睨み合いなんて、それこそ箸の上げ下ろしまで気に入らないところから始まっている。割り切るっきゃない。

 で、二つのグループのイサカイは無くなり、優子と、優衣のグループからも友達と思われる。

 でも、ボクには友達がいない。

 僕のシリアルは、NORA A007 

 対人トラブルシューティング用ガイノイド(女性タイプアンドロイド)のプロトタイプ。

 ボクにとって波野高校は実用試験の場でしかない。だから友達はいない。みんな検体にすぎない。ボクは、この四月にデータ分析された後、初期化されて他の実用試験にまわされる。

 じゃね!

 

 

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